Monday, December 31, 2007

2008年を迎えて考えること


ロハスに関して云えば、21世紀になって出現したコトバだが、やっと2007年にかなり意味を持つようになった気がする。もちろん、環境、グリーン、リサイクル、代替エネルギー、「もったいない」のコンセプトなどは、これまで存在していたものの、消費者、企業、そうして政府機関などが、環境や健康を真剣に考えるようになったとっかかりの年ではないだろうか。

これまではバラバラに動いていた多くの社会運動が、日本や極東ではロハスと云う概念で括られ、ロハスと云う概念が一般化されていない欧米では、表現はまとまらないがナチュラルライフスタイル、ホールサム、グリーンなどの形容詞がつけられたライフスタイルが、徐々にではあるが主流にのし上がろうとしている。

私は、昨年はAdvertising Ageと云うアメリカでは広告業界の定番の出版物を購読していた。広告業界は、ウェブの浸透などで、右肩上がりの成長は見込めなくなっている産業の一つと考えるが、相当苦戦しているのが諸々の記事の行間から読み取れた。広告そのものは無くならないだろと思うが、片側通行だった、生産側の意向「だけ」の情報伝達ができにくくなっていることは明らかであり、消費者側の権利行使が、今までにないくらい強まってきているのが時代の流れと考えている。ここで広告業界を叩くつもりは当然ない。しかし、メーカーやリテーラーの意向だけでは購入動機につなげにくくなった中で、広告業界が苦戦していることを感じていると述べているだけだ。

人々は薄々感じ始めているが、これまで、環境問題や、資源枯渇の問題、医療健康維持の問題などは政府や大企業が率先して改革できないものだと云うことが実感され始めたのではなかろうか。医学の進歩は著しいが、一方では、薬漬けになった多くの市民は、医薬業界の言いなりになってしまってはいけないと云うことで、自己健康管理の意識も非常に高まっている。アメリカの知的層が中心かも知れないが、健康意識の高い人たちは、オーガニックを求めるのは、自己の健康だけを願ってではなく、需要を高めることによって、メーカーの生産プライオリティを変更させようともしている。しかも、オーガニックの進展は、化学肥料や、除草剤、殺虫剤などの使用を減らす二次的なベネフィットもあるので、それを運動のテーマにもし始めている。

私は赤ワインが好きだが、オーガニックのワインでもかなり良いものが出てきているので、通常のものからかなり切り替わってきた。1週間に2−3本は飲んでいるので、年間に120−150本くらいの消費になるだろうか。朝はカフェオレーを飲むが、これももちろんオーガニック牛乳だ。ほぼ毎日飲んでいるので、夫婦で140リッターくらいの消費になるだろう。このように、一家庭単位でも、数字は小さくはない。オーガニック消費が増えて行くことは、農地への化学品散布が減っていることを意味していることを考えると、小さな貢献だが、チリも積もればと云うやつであり、皆でオーガニックを消費すれば、生産者も無視し得なくなると云うものだろう。

私はアメリカの自動車メーカーにいたので、よく分かるが、長年アメリカのクルマメーカーは、燃費の問題を避けて通ろうとしていた節がある。しかし、徐々に日本のメーカーが燃費を意識した時代先取りをしてきたので、消費者は、度重なるガソリン高騰を意識し始めたり、中東依存を避けようとしたり、あるいは、地球環境を守ろうとすると云うことで、燃費効率の良いクルマに移行をしていった。アメリカの家電などでも、エネルギー節約の「スター」印のモノが多く出始めている。すでに家電を持っている人が買い替えるインセンティブはまだ少ないが、次々に買い替えるときに、節電対策ものを買うことは当然になってくるだろう。

地球温暖化などで、多くの人の意識は変わってきている。アメリカでは、連邦政府に頼ろうとする意識は少ないようだ。個人消費者の力の目覚めが、ロハス的な運動と連動になれば、今後のアメリカの消費意識は相当変わるものと考えて良い。消費大国アメリカが、一夜で根本から変わることはないだろうが、消費するものの選択肢の中に、今までだったら考えられなかったものが出現してくるだろう。新年もその動向を見守って行きたい。

Friday, December 21, 2007

代替エネルギーに参入を高めるベンチャーキャピタル

今年、地球温暖化問題が大きく脚光を浴びるようになって、この頃やっとアメリカでもホンモノの代替エネルギーに関する議論がなされるようになってきたと思う。長年凍結されていた、自動車メーカーの燃費の企業平均値目標が法的に引き上げられるようになったのは、産油州テキサス出身で石油大企業と近しい関係にあるブッシュ大統領の決断としては驚きとしか言いようがない。これまでは、小手先だけのエネルギー対策だったものが、徐々に、改革を加えて行かなければ、アメリカとしてもやって行けなくなるだろうとの危機意識の高まりは大変に嬉しい。もちろん、まだまだ改革を排除しようとする懐疑派の勢力は強いだろうが、賢い消費者あるいは実業家が先導して動き始めているので、後手の連邦政府も、真剣に動かなければいけなく理由も大いにある。

先月開かれたバリーでの環境国際会議で、アメリカ(一部日本も)は、世界の大勢から見ると大いに非難を受けた。環境をテーマにノーベル賞を受賞したアルゴア元副大統領もアメリカが進歩の阻害をしていると非難するなど、アメリカとて地球温暖化を全く無視続けることはできなくなったと云って良い。もちろん、国家政策として経済にダメージを与えずに、大幅転換をするのは、インフラの整備の必要性、弱者への対策、経済メカニズムの変換などを伴うだけに、難しいことはうなずける。しかも、石油に依存するアメリカの経済に影響力の強い企業の抵抗も相当なものだろう。

今回紹介する事例は、アメリカのニュートレンドと云う気がしてならない。ソーラーパネルを作っている新進企業のNanosolar社にスポットを当ててみると、何かアメリカの新しいインタネット時代の事業家の顔がちらちらと見え始めている。第二次インターネットブームで巨額の資産を築き上げた、新人類起業家たちが、アメリカの経済を、これまでにない尺度で産業転換を民間の力で試み始めているのだ。日本だったら、経済省などが音頭取りをするような案件なのだが、新進気鋭の若手起業家によって経済転換が試みられていることは注目に値する。

検索エンジンで一躍大成長をしたGoogle社の創業者のLarry PageおよびSergey Brin両氏は、社内の従業員がハイブリッド車を購入する時は会社から補助金を出していることでも有名だが、Nanosolar社などにも本格的に投資を始めている。もちろん彼らだけですべての資金を出している訳ではないが、ハイテク産業の巨財をなした起業家たちが動いていることで、スピードもやり方も重厚長大の従来のビジネスアプローチと大いに変化をしている。

Nanosolar社は、2001年に加州サンノゼで設立された、社歴が新しい会社だ。彼らのビジネスはソーラーパネルを生産販売することなのだが、エネルギー交換効率を指向するよりも、生産コストの引き下げに重点を移し、印刷技術で回路をプリントするなど生産原価を大幅に下げ、ソーラーパネルの普及率を高めようとするビジネスプランだ。すでにサンノゼとドイツベルリンに生産拠点を設け、サンノゼは2007年12月から、ベルリンの事業所は2008年第一四半期に立ち上げることを目標にしている。Nanosolar社の目標は年間生産キャパシティを430メガワットにするように考えており、アメリカの太陽発電パネルの生産を3倍近いところまで持って行こうとするものだ。

代替エネルギーなど見て行くと、とかく国家事業的な方策で考えられることが多く、最新鋭の技術指向も強い。何が何でも高くなってしまい、研究室では良いが実用化が難しいモノになってしまう可能性もある。一般消費者も使えるパソコン(つまり、パーソナル・コンピューター)を開発したのは、大企業のIBMなどではなかったことを考えると、このような新規エネルギー事業の発想を、国家的次元で考えることが無駄が多いと云えるのかも知れない。変化が遅いことに、苛立つ若い起業家たちが、機能、効率や最先端技術よりも一般家庭ででも簡単に使えるようになる単価の低い低コストの商品を作り始めたと云うのは、やはり底辺の広がりを加速度的に速めて行く最善の方策に違いない。単価を下げるために市場調査などもせずに、一挙に生産施設に投資手をしてしまったことに大いに敬意を表したい。パソコンなどの進化を考えれば、Nanosolar社の実験は大いに注目をしたいところであり、太陽エネルギー利用に関してアメリカのマーケットの反応も楽しみだ。すでに2008年生産分はすべて売り尽くしているようだ。この会社に、日本の三井物産も投資していることを聞いて、嬉しくなった。2007年のノーベル賞アカデミーの選択は、地球温暖化にスポットを当てることだったが、2008年は、代替エネルギーの分野で大きな飛躍をする年になるように願って止まない。

Saturday, November 24, 2007

生牛乳を求める人たち

日本においては有機牛乳はまだ珍しいと云うのに、アメリカでは、乳製品の消費が多いためか、有機の範疇が広まっている。しかも、有機は有機でも、自然放牧の度合いまでが差別化要因になるほど、牛乳へのこだわりは大きい。まだ、主流になっている訳ではないが、今度の流行は、Raw Foodの影響を受けているものと思うが、殺菌しない牛乳を求める人が増えているらしい。殺菌は英語ではPasteurizedと言うが、通常の牛乳はこの殺菌を行なった過程でないと市販できない仕組みになっている。もちろん、衛生当局としては、生牛乳を販売させたときのリスクを考えてのことなので、理解できないでもないが、生牛乳派の主張は、

「本当に有機のえさでストレスが少なく成育している乳牛は、牛乳の質が良いだけでなく、牛がリラックスしているので牛自身の病気に対する自然な抵抗力がある。だから、一般牛のように抗生物質などを与える必要など全くない。健全な、乳牛の牛乳なので、衛生上気をつければ、問題ないはずだ。しかも、殺菌をすると云うのは、高温処理をするので、悪い菌を殺すだけでなく、善玉菌も殺してしまう。これでは、せっかくある栄養素を殺菌プロセスで除去してしまうことになる」と言うことになる。この生牛乳を飲むと、抵抗力も高まり、子供の集中力も高まると言う。誰がこのような研究をしたのかどうか知らないが、自然回帰を求める人の心理はよく理解できそうだ。

市販できないのに、それがどうして増えてきているかと言うと、自分の牛から採って飲むことについては、衛生当局とて文句は言えないと云うことなので、牛の所有を共有して行くことがなされているらしい。法律上は自分たちの牛の牛乳をどのようにして飲んでも構わないと言うことになる。この牛の共同所有が、生産側が対応できる限界を超えていると云うことで、参加するのに大きなウェイティングリストがあるらしい。しかも、その権利を得るのに支払う金額は、ガロンあたり7ドルくらいするらしい。通常の牛乳が2ドル50セントくらいだとすると、有機牛乳は5ドルを超えており、3倍くらい値段は高い。これだけ、高いコストの牛乳でも買おうとするのだから、牛乳へのこだわりが高いのは分かるだろう。

ボールダーから東に行ったところ、ブライトン市のジョンソン・エーカー農場の共同乳牛配給に加盟をするのに300名の待ちリストがあるそうだ。このような共同所有の仕組みを提供しているところがコロラド州だけでも15カ所くらいあるそうだ。300名も待ち人がいるのであれば、その人気でより多くの乳牛共同所有農場が出現し始めてもおかしくない。いずれにしても、健食を考え始めている人たちにとって、牛乳の高価格で驚くようなことはないようだ。安全な食とは何かを本当に考えさせられる動きだ。

共同所有の権利をするために申し込むサイト

www.johnsonacres.com.

コロラド州におけるその他の生牛乳生産の案内

www.rawmilkcolorado.org.

Friday, November 23, 2007

Black Fridayと反消費運動

アメリカ国民の一大行事である感謝祭の翌日は、Black Fridayと言われる日だ。感謝祭は木曜日なので、その翌日の金曜日と云うことになる。アメリカの小売業界がクリスマス商戦へ本格的に突入をする日でもあり、多くの店舗が、ショッピングの勢いをつけ始めるために、超目玉商品を超目玉価格で提供し始める日だ。特に、電気製品などは、限定数ながら、モノによっては、人気商品でも半額に近い価格で売られる。ブラックフライデーと言われる所以は、小売業界は、この日からクリスマス商戦で年間の売り上げの半分位を上げるからで、それまで赤字だった店舗が、黒字に転換するとき(願望)を表している。とにかくテレビや新聞での宣伝がすごく、消費を煽ることが多くされる。お店によっては、朝の4時に開店をすると云う滅茶苦茶ぶりが展開され、ショッピングカートをヨーイドンで開店と同時に店内に入るようだ。もちろん、お目当ての商品はだいたい見当をつけてあるので、人気あるような目玉商品については、人が殺到をするので、恐らく新宿駅などのラッシュアワーの何倍かのプレッシャーがかかるようなショッピングシーンだろう。とにかく、消費を煽ることで景気をつけようと云うことだからすごい。

ここで、ロハスと商品について少し考えてみたい。ロハスだから消費をしない訳ではないが、これでもかと云うような景気対策にでもなるように期待されている消費運動には少し幻滅する。消費者は王様と言われるが、そんなことはない。どのメーカーも市場のある程度の予測を立て、それに基づいてリスクを冒して商品の生産に突入をするのだ。市場の需要を見てから対応をすると云われるトヨタ自動車のようなかんばん方式でさえもある程度鉄鋼製品やガラス、タイヤなどの市場予測値を立てた上での商売だ。注文生産でない以上は、予測をベースにして生産されることが当然考えられる。

私も、ドイツの自動車メーカーの仕事をしていたときに、日本向けの生産については、4ヶ月半前に注文するだけでなく、年計販売計画をヨーロッパ本社に出していたので、ある程度消費を達成させると云うメーカー側の意向が強くあった。日本に輸入されたものを送り返す訳にいかないので、結局はあらゆる手で販売し尽くしていた訳だ。消費者が王様なのかと考えたくなる。消費を押し付けている姿勢がここで出てくることは否めない。

アメリカでも、反消費運動が出ているらしい。このように、メーカーの都合だけで、広告代理店などを使い、メディアでどんどん売り込み合戦をされると、消費意欲が強くなってしまうことも当然だろう。私にしても、正直言って欲しいものはいくつもある。でも、皆が同じように買い始めれば、経済は潤うだろうが、この行き過ぎた消費主義には問題がありそうだ。反消費運動は行き過ぎだが、限りある世界資源をどのように活用して行くのか、サステイナビリティをどのように考えて行くのか、もう一度考えるべきではなかろうか?今日の世界人口は60億くらいだそうだ。それが今の予測だと2050年には人口は今のままで推移すれば90億になるだろうと言われている。もちろんどこかで歯止めがかかるだろうが、30億以上の人口増加は、中国の人口の2倍以上の増加と云うことになる。

クリスマスなどの目出たいときに、買い物をするなと云うつもりは毛頭ないが、現行の経済体制をどこかで変える必要が出てきていることだけは確かだろう。ロハスをそのような視点で考えれば、消費と云う概念さえもおかしなものになる。アメリカでは、消費者と言わずco-producer(共同生産者)と云う概念が出始めている。生産者が、需要者の意向を受けて生産するので、共同生産者と云う概念だ。つまり、作ってしまったものをどのように消費させるかでなく、無駄なくニーズに応じて作って行こうと云うものだ。物質主義から、どこかで転換をするときに来たのではなかろうか。ブラックフライデーの日にそんなことを考えている。

Thursday, November 15, 2007

市のレベルで高まるグリーン活動




今月の初めにワシントン州シアトル市において2007年の全米市長会議が開催された。全米大小の市町村から参画した市長の会議の模様を多くのマスコミが取り上げた。取り上げた理由は、多分ブッシュ大統領の環境政策に対して、大きな不満を持っているからに他ならない。しかも、連邦の環境施策を待っていたら、地球の温暖化問題について対応が遅れる心配も多くあったのだろう。

ノーベル賞を受賞したゴア副大統領は、衛星を通じてメッセージを送った。やはり環境派だったビル・クリントン元大統領は会議に参加している、暗に共和党の政策を非難するような会合にもなったような記事は出ている。しかし、党派的な活動が中心になるような会合ではなく、よりグリーンな活動をどのように実質的に実施して行くかが、会合の大きな目玉になったようだ。つまり、政治の世界では市民に一番距離的に身近な市長たちのことであり、市の実体経済とかけ離れた空想論を話しても、市民から反発を受けるような事態も予想されていることから、北極グマの生態系が壊されているとか、北極の氷が溶けているという議論ではなく、より身近な、子供たちの喘息が増えているとか、外国の石油に依存していると光熱費の高騰などが必至だとかで、市長レベルでは適しているからだ。

今回のテーマの中には、資本主義と消費者などのバランスなども話題になったらしい。クリントン元大統領は、彼のプレゼンテーションで1100の市町村が、共同調達を行なうことによって、省エネ用品を安く買い付けできるように企業と交渉をしたことを披露した。また、民間の世界で最大のスーパーのウォールマートがスポンサーになり毎年気象保護大賞を企画して、市などでそれぞれの共同体で、エネルギー依存度を下げたり、排出ガスを大幅に削減して地域社会に貢献したところに大賞をあげようと云うことを決めたりしている。

http://walmartstores.com/microsite/walmart_sustainability.html.

また、アメリカ建築化協会と共同で、地球温暖化ガス排出でインパクトが高い建築物の大幅な方向転換をすると云うことで、時限を決めて活動をするようになった。2030年までにはカーボンニュートラルな建築物を作るようにしようという目標なども立てられている。

このように全米市長会議などで、年のグリーン化が横断的に議論されるのは素晴らしいことだ。連邦政府が、対応に苦慮している段階で、地球温暖観の問題をローカルなレベルでどんどん推し進めて行くことが出来れば、スプロールでエネルギー効率が極めて低いアメリカの都市から大きな変化が生まれてくるだろう。

クリントン大統領の出身のアーカンソー州フェイェットビルのダン・コーディー市長は、グリーン化を推し進めること、人間や歩行者、サイクリスト重視の都市設計などにすることによって、経済は大きく活性化されてきたと講演をしたと云う。もちろん、その陰には、近隣の超大手ウォールマートがグリーンな購買活動、会社のグリーン化を展開し始めていることが大きな支えになっているのは言うまでもないことだが、ライフスタイルの良いところが、さらに人を引きつける大きな要因になっていることが分かる。

日本などにおいても、環境型、生活重視の都市改革がなされることを願って止まない。道のりはまだ遠い。でも、動き出さなければ、私たちが住む生活環境は悪化するばかりだろう。改善へ向けてのローカルレベルでの情報交換が、今ほど重要なときはない。

Sunday, September 23, 2007

恐ろしい肥満の急増傾向

先週末から東京に戻ってきている。東京に戻ると築地を定宿としてあちらこちらを廻るが、当然食事は一つの大きな楽しみだ。築地界隈で多くの食事観光客に混じって食事をする訳だが、最近ではより多くの「太り気味」の人を見るようになったのは気のせいなのだろうか?昨日も仲御徒町の行きつけのジャンボ餃子を出す昇龍へ行って食べたが、家族連れで来ていた客人の中には明らかに太り過ぎの人がいた。もちろん食べにいくところがジャンボ餃子で有名なのだから仕方ないのだろうが、数年前には気がつかないような現象だったので、日本の肥満の現象も本格化しつつあるのだろうかと懸念をした。昇龍を出て、アメ横を知り合いと散策していると何とジャンボ「たこ焼き」を目にした。最近では日本も食事の量が、大食漢向きのメニューが多いところが増えていると云う。

今日のリンクはCNNが掲載しているアメリカの超肥満の推移の州別チャートだ。1985年からの推移なので22年間と云う比較的短い間にアメリカ人の肥満度がいかに急増しているのか驚かされる。ボールダーが所在するコロラド州は引き続きアメリカで一番肥満の少ない州であることは明白だが、それにしてもそのチャートの数字を見ると赤で彩られた州の25%以上もの州民がすでに肥満と認定されている訳で、それがアメリカでいかに多くの州でそのようなレベルになったかを見ると恐ろしくなる。ボールダーはコロラドでも尚更健康的なので肥満の人は例外的だが、それでもそこにも徐々に増えてきている事実はあるかも知れない。

ロハスの観点で見ると、健康と云うキーワードを抜きにして考えられない。肥満と健康は相容れないものなのだが、このように知らぬ間に増えてきていることは肥満がアメリカでの最大の健康に関する課題だと云われていることがよく分かる。しかし、その肥満を助長するような社会の仕組みは一朝一夕では変わりそうもない。根幹にあるのはアメリカの農業政策から始まり(といっても農業生産者が潤っているのではなく、巨大農業関連企業が潤っていると考えなければいけない)、アメリカ政府の健康管理に関する諸官庁の意思統一、クライシスマネジメントの意識がない問題、野放図な広告媒体のやり方などの問題も大いにあるが、消費者の健康意識が高まっていながら、それを実行できない皆で太れば怖くない発想がどこかにあるからかも知れない。より声高にこの問題に対応していくべきなのだろう。

日本の現状はまだ比較的安全のようだが、CNNの地図チャートを見ているとアメリカにおいていかに短期間で肥満が増えてしまったかを見ると、日本においても緊急に対策を練っておかないと、10年後の日本人の体型はかなり変化をしてしまうかもしれない。だから適宜な運動とスローフードの実施、食事を楽しむ方式を量から質に変えていくことも必要だし、日本古来の良い伝統と最新の健康データーの活用によってより長命で健康なライフスタイルが楽しめるように今から真剣に対策を講じていくようにしなければならない。アメリカのデーターは、無視し得ない大きな警告に違いない。

Tuesday, September 18, 2007

小麦高騰報道の裏

世界の小麦生産が、落ち込んでいるとの報道されている。そのために、小麦を使った数多くの製品価格が跳ね上がっているのだ。小麦と云えば、パンがすぐに思い出されるが、パンに限らず、パスタ類なども供給が足りないために価格が上がっているので、ことの重大さは理解いただけよう。しかも、価格の跳ね上がり方が半端でなく、原料価格を最終消費者にそのまま転嫁できないメーカーは、大問題だろう。シカゴの先物取り引きで先週小麦価格の1ブッシェルあたりの価格が8ドル87セントまで急上昇して、今週の月曜日に8ドル75セントに落ち着いた。しかし、この価格帯は、昨年ものが3ドル95セントだったことを見ればいかに異常な水準、上がり方であるか分かるだろう。

小麦の生産が落ち込んでいる理由は、悪天候や気象の変化、干ばつ、あるいは逆に洪水などの理由が上げられている。小麦の生産輸出国であるオーストラリア、南アフリカやアルゼンチンで干ばつが起こったのに対して、アメリカでは干ばつと洪水の混合みたいな状況が発生したためと説明されている。しかし、このような気象の変化だけでこの問題は説明できないようだ。つまり、専門家筋の解釈によると、今回の小麦粉供給落ち込みの裏にある背景を見ると生産者側が、小麦からエタノールに使われるトウモロコシに作付け面積を増やしたことがあるとも上げられている。

ご存知の通り、エタノールは、再生可能なトウモロコシを使い、ガソリンに添加する燃料としてにわかに脚光を浴びつつあり、市場の石油価格の高騰が故に、エタノール増産への勢いが増してきているものだ。現にアメリカの農業政策もトウモロコシを家畜の飼料や、コーンシロップや多くの食品に使われてきていたものが、エタノールに供給シフトが発生してきているために、家畜飼料やその他食品全般に影響を与えてしまっているのだ。つまりアメリカのエネルギー政策のツケが、食品価格高騰と云う別の問題に跳ね返っている。しかも、その影響がトウモロコシ関連だけでなく、小麦にも飛び火したことで、アメリカのエネルギー政策が世界の家庭の事情を火の車と化してしまったと云える。

この問題で一番大事な点は、エネルギー政策を見るときに、省エネを求めるのではなく、これまでの生活水準を維持しようと云う、はなはだ無駄なライフスタイル保全がまかり通っている点だろう。アメリカはエネルギーの使用については決して倹約国家としては知られていない。無数のハイウェー、大きなRV車群、無駄なエネルギー利用国家として世界でも特筆だ。その、無茶なライフスタイルを維持しようと云うことで、トウモロコシからエタノール生産が始まったものだろうが、これでは、地球温暖化などは解決されにくい。

もう一つ問題なのは、トウモロコシや小麦などの基礎食品生産が大規模農場化しており、生産品目の多様化より、より単一化に向かうおかげで、市況の需給変化によって、生産の切り替えが突然行なわれたりするので、これまでに無いインパクトが発生している。経済効率を追求する大規模農法がもたらす問題点だと言える。

今後このように個人のレベルをはるかに超えたところで発生する問題をいかに、管理抑制するか検討をしていかなければいけないが、この大規模農法をそのまま受け入れるのではなく、新たなロハス的な地元に密着した消費者と生産者の連携を考える時代にもなりつつあると云えるかも知れない。もちろん、スケールメリット(経済規模)をすべて否定をするのではなく、環境や消費市場へのインパクトを良く含んだ上で、解決するようにすることが緊要だろう。いずれにしても消費者は、カネと云う投票権をフルに使い、徐々に無秩序に行なわれるこのような行動を許さないように気をつけていかなければならない。

Monday, September 17, 2007

米証券取引委員会(SEC)-環境問題で新たな視点

米証券取引委員会は、米国の投資家保護の機関としてはとても重要な組織だ。投資家保護と云っても、機関投資家だけでなく個人の投資家も視点に入れた活動を行う団体だ。1929年の世界恐慌で信用が失墜していた証券市場の信用を回復する目的で設立されたものだが、現在その役割はさらに大きくなっていると言える。企業が証券市場で資金調達をする際にごまかしを許さない正義の味方と云えば正しいだろう。この米証券取引員会が、地球温暖化の問題で脚光を浴びつつあると云うことを知っている日本の人は少ないだろう。とてもアメリカらしい視点なのでここで簡単に紹介をしてみたい。

ワシントンポスト紙のSteven Mufson記者は、この米証券取引委員会が新たな役割を強いられるだろうと云うことを紹介している。忘れてはいけないことは、米証券取引委員会の役割は投資家の保護と云うものだ。そのために、各企業が業績発表を行なったり、資金調達をするときに出すリポートの中身についても目を光らせているのは、良く知られていること。公平さを保つために、発表の正確度、不正な呼び込みをさせないこと、インサイダー情報などの取締りも強く、メーカー、資金調達をしたい企業、金融機関に勤めている人にとってはかなり怖い存在だ。

ここで、地球温暖化の話になっていく。つまり、気候の変化などで業績などに大きな影響を与えかねない産業の一つに保険産業が上げられる。つまり、これまではハリケーンの発生が少なかったところで、徐々に気象変化によりハリケーンの数が増えたり、規模が大きくなったり、荒れ、変化する気象によって住宅や建物の被害が増える可能性がとても大きいからだ。ニューオーリンズがハリケーンカテリーナで大被害を受け、まだ、被害から回復していないことは良く知られていること。

ワシントンポスト紙が報じるところによると、全米の家8軒の内1軒を保険保証をしているAll State社が米証券取引委員会にたいして提出をしている345ページにもわたる財務報告(有価証券報告に類似した資料)については、気象の変化、地球温暖化、温室効果発生がスや二酸化炭素などについては一切触れていないと言う。また石油最大手のExxon Mobil社についても、ほんの簡単にしか触れていない。

地球温暖化が原因で発生しているとされている大きな気象変化について、投資リスクの可能性を公示開示する義務があるのではないかと云うことで、複数の州の財務長官や投資ファンドのマネジャーが米証券取引委員会に対して公示開示強化をするように規則を変更するように主張を始めている。もちろん、このような投資リスクの潜在性を公示したところでどのようになるか分からないが、投資家に対して保全をすると云う目的で、企業のおかれているリスクを洗い出させると云うことは、地球温暖化の議論をさらに一歩進めることになり、企業にとっても、新規投資を含む活動を行うときに新たに検討しなければいけない課題が増えたことになる。

この問題について、まだ米証券取引委員会は確固たる方針を打ち出していない。しかし、州政府や投資ファンドの要求が出たことによって、企業の中には自発的にこの問題を取り上げるところが出てきているようだ。現在電力メーカーの最大手で、温室効果ガス発生の最大手でもあるAmerican Electric Power社が、自らのガス発生と規制の影響で業績がどのように変わるかと云うスタディを行ない発表している。このような事例が、まだ、例外的な状況だが、投資家側の意見を聞き入れる、あるいはディスクロージャー(開示)することの姿勢を示す企業が徐々に出てくることが予想される。

オーガニック食品の産業でもそうだったように、消費者がグリーン企業への投資を強める趨勢は強まってこよう。アメリカのタバコ業界も消費者投資家に圧力をかけられたように、企業のグリーン度は売り上げや利益などとともに重要な選択の尺度になってきそうだ。個人投資家の思惑は、企業にとって油断ならない要素になってきていることだけは事実だ。米証券取引員会が、規則を変えるかは別として、アメリカのロハスの影響はここまで来たと言えよう。

Friday, September 07, 2007

ウォールマートがロハス化潮流を無視できないファイエットビル市


アメリカ南部アーカンソー州の大学のある田舎町が突然にロハスの実験場的な変貌を遂げようとしている。ワシントンポスト紙が伝えるところによると世界で最大のリテーラーであるウォールマートの本社ベントビル市から約半時間のところにあるファイェットビルという静かなカレッジタウンがウォールマートが打ち出しているグリーン施策を受けて、一躍グリーン先端企業の集積基地化していると報道をしている。これまで、ウォールマートについて昨年何度か連載でブログ記事を書いたが、Green Washing(つまり本来はグリーンでないのに、あたかもグリーンであるかのようなフリをするときに使う言葉)と懐疑的な目で見られていたウォールマートが、より実質的にグリーン化し始めた結果、グリーン企業の城下町的な様相を示し始めたと云うことだ。

ウォールマートは、フォーチュン誌の売り上げベースでトップ500社の中でトップの大企業だ。一昨年は、石油価格の高騰で一時的にエクソンモービル社にトップを譲ったが、過去6年間の内5年トップを占めてきた正真正銘のアメリカの最大企業と云える。現在世界で190万人を雇用し(アメリカだけでも130万人雇用している)、アメリカ民間企業ではトップの雇用主であるだけでなく、隣接のメキシコやカナダにおいても最大級の雇用主なのだ。最新の会計年度(2007年1月末日締め)では売り上げが3450億ドル(トヨタ自動車売り上げよりも70%ほど大きいーいずれもフォーチュン誌からの数値)とその経済的な影響力は計り知れない。そのウォールマートが、社運をかけてロハス化を目指し始めていることはアメリカの市場全体を占う上で極めて重要なことだ。

もちろん、重要なのはアメリカだけでも61,000のサプライヤーを有しているその購入パワーだ。2006年の買い付け金額だけでも2000億ドルに及び、それがアメリカの就労に与える影響は300万人の仕事に相当すると云うことだから凄い。また、ウォールマートを訪れる買い物客は、全世界では毎週1億7600万人も及び、アメリカだけでも毎週1億2700万人が訪れている。アメリカの人口は3億人程度だから、約国民の42%が毎週ウォールマートを買い物のために訪れている計算になる。

その巨大ウォールマートが、エコに焦点を当て始めたから、この豊かな市場を目指して環境系、自然系、ロハス系の企業がウォールマートと云うお城の周りに集積を始めると云うのは自然かも知れない。その集積の候補地として選ばれたのは、大学町のファイェットビルと云うから、ボールダー、バークレー、アンアーバー、サンアントニオ、ポートランドなどのカレッジタウンが引き寄せたロハス系企業の傾向と重なっている。


ウォールマートの150万ドルの寄贈によって、アーカンソー大学はこの町にApplied Sustainability Centerを開設した。南部のこの保守的な町が、サステイナビリティのメッカになろうとしているのは普通のアメリカ人には、なかなか理解できないことに映るかも知れない。しかし、ハイテクのシリコンバレーなどに象徴されるように、この町をサステイナビリティのメッカにしようとの動きが出始めている。シリコンバレーに対抗してこの町では、ここをグリーンバレー(Green Valley)を呼び始めている。ファイェットビルのダン・クーディ市長はまさにここをサステイナブルムーブメントの中心地に仕立てようと考えている。

ウォールマートのあるベントンビル市やロジャー市は従来型のサプライヤーのベースとして巨大化しているが、大学町で少しはリベラルな町のファイェットビルは、サステイナブル企業の集まりとなり対照的な状況だ。ファイェットビルの市長は通勤に電気自転車を使い、家をソーラーエナージーで賄うように建て直すことを考えていると云う。町で任命された最初のサステイナブル部長の給与は、その部長が実行する省エネの成果の中から給与をもらうと云うことなど通常の市では考えられないことをし始めている。交通信号の電球もLEDに切り替えられ、そのため町の年間の電力使用の節約が5万3000ドルにもなった。

これらの動きはウォールマートの購買力のなせる技。すべての商品・サービスなどに行き渡るのには時間がかかることだろうが、ウォールマートがロハス化に着実に動き始めている証左だ。先のブログ記事はテキサス州オースティンのホールフーズがボールダーのワイルドオーツを買収完了をしたことについて書いた。今度は、ホールフーズがまだ足下にも及ばないウォールマートの大きな動きが出始めていることを紹介している。日本のロハスの動きも盛んになってきているが、このレベルの差はまさに隔絶の観がある。このロハスのエネルギー方向性は、もはや止めようもないとてつもないエネルギーに膨れ上がってきている。

Saturday, September 01, 2007

成熟期に入るホールフーズ

長らくボールダー発のナチュラルスーパーとして君臨してきたワイルドオーツが、先週全米で最大のナチュラルスーパーのホールフーズに吸収合併された。ホールフーズは、テキサス州オースティンに本社があり、ボールダーに本社をおいてきたワイルドオーツが軍門に下ってきたためにボールダーにおける拠点の再編成が注目されてきた。ワイルドオーツは当市において本社機能はもとより、販売拠点を三つほど有していたこと、あるいはトウェンティー・ナイン・ストリートモールにもフラッグシップ店のオープニングを計画していたためにまさに市民の大きな関心事となっていた。ホールフーズがワイルドオーツの買収を発表したのは今年の2月だが、春に連邦取引委員会(FTC)が、ホールフーズがハイエンドのナチュラルビジネスで寡占的な立場に立つと云うことで、吸収合併に反対を表明し、調査に乗り出し、裁判所に吸収合併の中止を求める訴えを起こした。

今回の吸収合併で大きな話題になった課題はいくつかある。それらを紹介すると:
1、ホールフーズがナチュラル市場で果たして寡占的な地位を獲得したのかどうか。つまり、価格競争を妨げられるほどの力になったのかどうかが争われたこと
2、ワイルドオーツの発祥の地で、ロハスのメッカと云われているボールダーで、ホールフーズがどのような拠点の再編を行なうのか
3、ホールフーズのCEOのジョン・マッキーが、ヤフーファイナンスのブログに匿名でワイルドオーツへの中傷批判、あるいは自社ホールフーズの礼賛をしたことによる倫理上の問題、内部のものの株価操作とも取れる活動などが話題になった。

結果的に言うと、裁判所の出した判断は、もはやホールフーズがナチュラルビジネスで寡占的な力を発揮していないと云うこと。つまり、ナチュラルなビジネスは、かなり主流に入ってきており、他のナチュラルスーパーの活躍をはじめとして、大手のウォールマートやセーフウェー、キングスーパーなどもナチュラルそうしてオーガニックなビジネスを強く展開し始めているために、消費者はホールフーズにいかなくともナチュラル、オーガニックな食品などを買えるようになったと判断した訳だ。ボールダーにおける新規ホールフーズの拠点展開については、集約化が噂されていたものの、結果的には、ボールダーの伝統的なワイルドオーツの拠点を維持保全することが発表され、ボールダーッ子を喜ばしている。唯一の方向転換はトウェンティー・ナイン・ストリートモールのフラッグシップ店のオープニングを中止して、開店させないところに持って行ったくらいだろう。それは、現在のホールフーズの拠点を拡大する予定を組んでいたこともあり、そちらを優先させることが決まったと云うものだ。

また、同じホールフーズ傘下においても、ワイルドオーツのメイン拠点だった、ブロードウェーの拠点は、原点に戻りアルファルファマーケットと命名され、アルパインアベニューのアイデアルマーケットは、引き続き同じ名前を継続していくことになった。この二つの店舗のグレードアップはされることが発表の中にあり、ボールダー市民を安心させるだけでなく、ボールダーのナチュラルビジネスの伝統を敬意を持って保存することになった。ベースラインのワイルドオーツは、ホールフーズマーケットエクスプレスと云う名前に変更され、新たなホールフーズの実験店舗の役割を果たすことになるとの発表だ。マーケットエクスプレスは、大学のキャンパスに近いところにあることもあり、日本のコンビニ的な手軽さで、いろいろとナチュラル用品を集める拠点になりそうで、今後の実験は注目されるところ。隣町のスペリアーにおいて作られていた、ワイルドーツの実験店舗は、そのままホールフーズに名前を変えて行くことになりそうだ。

今年から来年にかけて、ボールダーのナチュラルスーパーは大きく変わって行くことになるだろう。サンフラワーマーケットが新規参入をしてくるだけでなく、既存のセーフウェーもナチュラルブティック形式で成功をしていることから、このマーケティングをさらに強化して行くことだろう。セーフウェーのオーガニックラインも拡充してきていることもあり、セーフウェー店あと二拠点の改装もされてくる可能性も高い。また、大手のキングスーパーなどもナチュラル食品の展開を始めていることから、ボールダーのナチュラルマーケットはさらに先鋭化することが見えている。

ジョン・マッキー氏の経営者としてあるまじき行動については、アメリカのメディアはかなり叩いてきたが、裁判所がホールフーズのワイルドオーツ吸収合併を許したことから、注目はその再編に対して向けられてしまい、現時点ではネガティブなメディア報道は減ってきたと云えよう。ホールフーズは、ナチュラルビジネスの大成功企業に伸し上がってきたが、その自らの成功が競争相手を引き込むことになってきたと云える。健康や環境問題を無視してスーパー事業が営めなくなってきた時代だが、その中心的な役割を果たしてきたホールフーズがワイルドオーツの買収でさらにメインストリームに突入をし始めた。機会があれば、ボールダーの現況を追加的に書いて行きたい。

Sunday, August 12, 2007

大きく変貌するアメリカの玉子市場

玉子は筆者に取って子供の頃から好きだった食材だ。いろいろな調理の方法があるが、子供の頃から自分でゆで卵にしたり目玉焼きにしたり、あるいは納豆と一緒に混ぜて食べてきたものだ。最近の日本での玉子の小売価格は知らないが、戦後の高価格時代から生産性の高まりもあり、比較的長い間インフレを除いた実質価格は下がっていたものだと思う。その背景には、生産者がどんどんと設備を拡張して数多くの大型養鶏場を作ってきたりしたからと言えるだろう。そうして多くの消費者の栄養の向上に役に立ってきた観がある。長いこと玉子は栄養と多様性の王様として君臨してきた。

しかし、玉子が量産できる背景には、多くの問題が内包されていることが徐々に分かってきた。もちろん、栄養価が高いこともあり、すでに飽食の日本人に取ってはコレステロールと云う化け物と玉子がくっついたりしたものだから、いつの間にか玉子は、善良な食材と云うイメージから過食飽食の時代にあっては、逆に悪者になってしまうことにもなった。さらに、問題になっているのは、玉子を産む鶏の扱いがあまりにもひどい事例が多々あり、その扱いの悪さが原因でストレスの固まりのような鶏の玉子となるだけでなく、変な飼料などもらっていること、自然な生活もさせていないことから来る問題となった。玉子が悪いと云うよりは、人間が玉子を悪くさせてしまった原因とも言えそうだ。急激に成長をさせるために、多くの養鶏所の鶏の足は骨折するのだそうだ。足の筋力がつかない段階で人工的に太らせてしまっているからだ。何だかそのような鶏や玉子なんか食したくない感じもする。

最近、量産された玉子を人々が敬遠をするようになってきた。その理由を探っていくと多くの理由が挙げられそうだ。養鶏場で大量生産された玉子や鶏の肉が敬遠されるようになった背景には、養鶏場で大量生産された鶏は、人工飼料だったり、栄養強化、成長剤、劣悪で非人道的な環境において成育されていることから、そのような玉子や鶏の肉は何か消費者にとって不安をもたらすような意識になってきていることが上げられよう。要するに育て方が不安の原因になっているのだ。

アメリカでは、籠に居られて育てられる鶏のことをcaged chickenと云うが、最近ではcaged free(つまり籠に入られて成育されていなくて、放し飼いの鶏)の玉子が大流行になってきているようだ。この裏には動物愛護協会などの地道な活動や存在は無視できないもの。もちろんこのcage free鶏や玉子は、とても割高だがそれでも需要があまりにも急上昇しているために供給が追いつかないようだ。cage freeだと云う認定をしている団体はHumane Farm Animal Careと云う組織だが、2003年に、認定顧客2社で約19万羽だったものが、現在では19社で190万羽の鶏の成育環境などを認定するところまで急増した。

アメリカの大手レストランチェーンのWolfgang Puck社も全面的にcage freeを求めるチェーンとなったりしているだけでなく、アメリカではcage freeを求める運動が盛んになったことだけは間違いない。現在のアメリカの玉子消費の5%近くにも上っているようだ。こうなってくると、ちょっとした流行だけと云うことで見過ごさせなくなってくるのだろう。

鶏がcage freeなら、牛の方はgrass fed(牧草飼育)が流行だ。まだ、何が安全な基準かどうかは確定していないが、量産方式はどうも知的層の中では反発され始めている。これらの購入者層が、ロハスの中核的なヒトだからレストランやスーパーなどでもcage freeが見受けられるようになっている。これら基準で収まるとは思わない。より精度の高い基準が目立ち始めることになると思う。ただ美味しいだけで済む時代から、食べる対象の動植物がどのように飼育・栽培されてきているのかも大きな選択基準にだけはなってきているようだ。

Monday, August 06, 2007

アメリカお持ち帰り食材の動向

スローフードの運動が始まってから久しい。しかし、アメリカではファーストフードだけでなく、テークアウト、つまりお持ち帰りの習慣がどんどん増えてきているらしく、忙しい現代人の姿とスピーディーなライフスタイルが顕著になってきている。テークアウトの代名詞はチャイニーズ料理だったが、最近では中華料理にこだわらず、ちょっと気取った高級料理店のモノも増えているらしい。いつの間にかテークアウトを無視できない状況になってきているようだ。スローフードを標榜するヒトも多くなっていると思うが、ファーストと便利を追求するヒトは減らないようだ。

1955年には、食品購入の予算の25%がレストラン関係に使われてきていたものが、今日においてはアメリカ人が食費の内、外食に投下する比率は何と48%にも達している。こうなってくると5370億ドルものの外食産業が無視し得ない状況になってきていると云えそうだ。しかも、その使われ方に変化を見せているのは、お持ち帰りの比率が高まっている点だ。2006年の統計で見るとレストラン内で食事をする回数とお持ち帰りの比率は既に逆転していると云う。つまり、アメリカ人は平均して一年に208外食を食事するとのことだが、その内でレストラン内が81回なのに対して、お持ち帰りが何と127回になると云う。このような統計は業界団体の調査機関が発表しているので、中身と意味を良く吟味してかからないといけない訳だが、アメリカの外食比率、その中でもお持ち帰り比率は確かに増えているらしい。

レストランなどもこうなってくるとドライブスルーの施設を増やしたり、電話での注文などにも応対できるようなインフラをつくらなければいけない。厨房のレイアウトや料理人のアレンジも変わって来よう。もちろん、携帯電話やインターネットなどでの注文も行なわれるようになるだろうから、食事の風景が相当変わってくることだけは間違いなさそうだ。

忙しい現代人が、時間を惜しみ食事を切り詰めて行くのは想像できるが、問題はなぜ生活をそのように小刻みにしていき、自分の首を絞めていくのだろうかと云う問題だ。お持ち帰りだから悪いとは言わないが、一年中それをしていると食事をベースに自分での体調を整えることはできにくくなるだけではなかろうか?ロハス的指向の強いボールダーでは、自分で食べるものを、簡単であっても作ろうとする傾向が強いと思う。ファーマーズマーケットに行き、その日の朝取れ立ての食材を買ってきてサラダなどにして食べることは栄養価の問題だけでなく、精神的にもロハス的にも健全なはずだが、それを怠っているアメリカ人の食生活は理解しにくい。

マイケルポーランの本にも書かれていたが、フランスのパラドックスに悩んでいる訳だが、フランス人はワイン、チーズやパンその他脂身の多いものを食しながらも肥満の比率が低いことに驚いているは滑稽としか言いようがない。食事に時間をかけ、楽しみながら食べていくことがどれだけ健康に良いのか理解をしていない模様だ。アメリカでは、ハヤメシはアメリカ民主主義の柱のような意識でいるので、パワーバーやすぐ手頃に食べられる栄養価満点のスピーディー食材が多い。

日本でも外食文化が浸透し始め、自分で食事を作ることをしないヒトが増えてきている。そうしていつの間にか日本では、これまでなかったような肥満のヒトも増えているのは、何か関連ある気がする。メタボリック症候群や糖尿病の増加などは、食生活だけが原因でないにしても、大きな要因であるのに違いない。忙しいことは大変だと思うが、こころの余裕を作るようにして、食べるものを作る楽しみをもち続けること、地産地消に努めること、時間をかけて食べるようにすることを心がけることが、健康につながることを理解しておく必要があると思う。

Friday, August 03, 2007

牧草育ちのステーキを食べよう

スーパーマーケットで売られている食品で、生産者の顔が見えるモノは少なくなった。場合によっては、皆無に近いと言って良かろう。生産効率、輸送効率、販売効率などを考え、食品の流れは消費者にとってブラックボックスに入ったも同然だ。最終的に奇麗にパッケージングされ、手頃なコストで販売されると消費者にとってもとても買い求めやすい土壌が長年築き上げられてきた。

私も10年前にアメリカに来てからよくステーキを食べてきた。一番好きなカットはリブアイ(Rib Eye)で、脂が適度にあり、ジューシーで肉質が良かったので、知人や友人を招いてはそれをバーベキューして食べてきたものだ。もちろんUSDA(米農務省)の高級グレードのものを買ってきては楽しんできたし、安心だと思って買ってきたのだ。Grain fed(トウモロコシなど雑穀の飼料で育ってきたもの)の特性は、ひときわジューシーで栄養価が高いものと考え買ってきた背景がある。しかし、先月紹介をしたマイケル・ポーラン氏のOmnivore's Dilemmaによると米国の大手の畜産業は必ずしも健全な食品を作ることに専念をしておらず、どうやって速く肉生産のサイクルを速めるのかに躍起であると云うことを読み、大地の恵みであるはずの肉についてはかなり懐疑的になった。それは豚や鶏でも同じであるらしい。

生育を速めると云うことは、多額の補助金で栽培されたトウモロコシを使い、畜舎に何千頭もの牛をかき集め、大量に餌を与えながら太らせると云うもの。肉生産のサイクルを速めるためにも、成長ホルモンを使ってきたことは良く知られている。ポーラン氏の本によれば、通常5年間かかるであろう成育をたった18ヶ月で達成させてしまうこともあるのだそうだ。運動もしていないので足腰が弱い牛は、良く足を骨折するらしい。それほど成長が急なものであり、トウモロコシは元来牛の餌でないものなので、牛の方も拒絶反応を示すことも多いらしい。つまり胃酸過多などを経験するなどなれないものを無理矢理食べさせられていることになると云うものだ。

牛舎には何千頭もの牛を飼うことで、その糞尿の量は恐ろしいものとなり、糞尿の池ができて数マイル先からでも異臭が漂うものとなるらしい。衛生上の問題も発生することは当然となり、牛が病気にならないように抗生物質を投与されることもあると云う。メタンガスの発生もあると云うことで、この糞尿の結集は、本来であれば肥料にもなりうるものが、逆に環境に悪い影響を及ぼすものにもなってしまうのは何とも恐ろしい。

牧草育ちの牛などは、ロハスの環境サイクルに適っている。雑草を食べながら、糞尿を落としてさらに雑草の成長をもたらしていく自然のサイクルだ。太陽エネルギーを雑草の緑が組み込んで成長をしていくサイクルを利用できることは素晴らしい。このニュヨークタイムズの記事では、ニュージランドやオーストラリアが畜産補助金をもらわずして、りっぱな輸出産業になった事例をしょうかいしている。

巨大牛舎でJR山手線並みにギューギュー(牛牛)詰めにされている姿と比べるとニュージランドの事例は健全な産業の事例だ。政府主導の貿易政策で決められる畜産の輸入には、消費者を念頭においていると云うよりは、政策的なプライオリティが働いている気もしないでもない。アメリカにおいてもColeman Meatなどのようにナチュラルなビーフを中心にしている健全な事業体もある。このようなところが、量産と成長剤などでコスト安にできた牛肉を生産して販売していると、消費者は何が良いのか惑わされていることにもなる。生産者の顔が見える販売をこれからどんどんと増やしていくことに努力をすることで、我々の財布の動きが経済的な力となり企業がより安全な食品作りに専念できるように強い圧力を作り上げていきたい。自分としては、ボールダーの郊外に自らの牧場をもち、牧草育ちの家畜をもっているエリオット家の牛肉だけを買うように心がけるつもりだ。自分が買うものは多少高くとも、ナチュラルなものが良いのは目に見えているからだ。

Tuesday, July 31, 2007

ブラジルの地球温暖化観に変化の兆し

世界の地球温暖化の原因を探っていくと先進工業国の経済活動が大きな原因となっていることは知られている。特にその中で、世界人口の5%前後しかないアメリカが、世界のエネルギー使用の25%にも及ぶことが知られれば知られるほど発展途上国は、自分の国の発展を抑制してまで地球温暖化の議論に乗らないように心がけてきたと言える。アメリカのライフスタイルは、無駄が多いことは知っていても、そのライフスタイルを求める世界的な基調はなくならないのだから、地球温暖化の議論はどうしても先進国のエゴにしか見えて来ない、あるいはある程度は地球温暖化の科学的な議論は分かるがそれでも発展したい自己矛盾などもあると云うのが、発展途上側の考えに違いない。

環境問題では至って先端的なボールダーの街にしても、近隣市をまじえた郡レベルで、新規住宅建設に関して建坪の制限をここ数ヶ月検討をしてきているが、カウンティーの政策はまだまとまったとは言えない。カウンティー側の視点としては、1家族が住む家の建坪として600平米を限界として、それ以上大きい住宅については、公共のオープンスペース購入のための税金を払うか、超省エネ住宅にするかなどを提案してきた。それに対する不動産業者や建設業者などは、年間に建設許可される件数がきわめて少ない新規大型住宅に課税や制限を設けるのは不公平であり、その他大勢の古い住宅のエネルギー効率を向上する方が、大きい意味での環境には良いと云う議論を展開している。双方の良い分は理解できるものの、ボールダー郊外では確かに800平米以上の家はいくつもあり、そのようなところの光熱費代を考えるとなぜそこまで大きい家を必要としているのか、それについては理解に苦しむことも多い。ボールダーでもそうなら、全米ではもっとひどいと云わざるを得ない。そのアメリカの無駄遣いの趨勢を多くの国々は見ているのだろう。

アメリカ人が所有するクルマにしても、まだ大型RVに依存している人が多いのにはびっくりする。中東依存を下げたいと言いながら、ライフスタイルの変更は、アメリカの権利として譲れないような姿勢をとる人も多い。もちろん、流れとしては省エネを目指さない訳ではないが、国家的な急務として取り上げていないのも事実であり、発展途上国から見たらアメリカの姿勢を疑うとしてもおかしなことではない。

発展途上国は、排ガス規制とか、その他の環境への配慮をするような余裕はないと云うところだろう。それぞれの国内政治でも、地球温暖化の問題よりも、より緊急度の高い問題が国民から上げられてくるだろうと云う意識は強い。しかも、ライフスタイルはアメリカの真似をしたいが、妬みとも言える反米感情があるのも事実だ。事実、アメリカは多大な農業補助金を国内の農業関係者に出しており、その政策のあおりで、各国の農産品がすんなりとアメリカに輸出できない貿易的な制約も存在しているのだ。ブラジルなどの砂糖や砂糖からできたエタノールの輸入を認めるのならまだしも、アメリカは、実質的には農業政策が、外交と重なるときにはブラジルにとってあまり面白くないことも多く発生しているのは事実だ。

そんな背景もあり、ブラジルのダ・シルバ大統領は、ことアメリカや先進国の地球温暖化抑制の話し合いに関しては、どうしても懐疑的だったし協力的でなかったのだ。経済的なナショナリズムが発生をすると云うのは当然のことだったかもしれない。この、ニューヨークタイムズ紙の記事は、ダ・シルバ大統領が、まだ懐疑的な姿勢を崩していないものの、地球温暖化による天候、気象現象の議論が遠い先の話だと思えなくなる事情がブラジルで既に発生してきていることを報道している。ブラジルではこれまで発生したことのない台風が起こったり、干ばつや異常気象が多く発生している模様だ。ダ・シルバ大統領は、アマゾンの乱開発について、欧米の有識者の指摘を無視してきた観があるが、ここへきて、自国の将来についてみ直し始めたと云うのが真実だろう。

各国のおかれている状況は、国内政治の状況を考えると一致団結してこの大きな地球温暖化の問題に取り組むような状況ではない。しかし、異常気象が、発生し始めるとなるとどうしても無視し得ない何か見えないモメンタムにつながっていることだけは間違いないだろう。地球温暖化だけでなく、地下水源の枯渇や表土流出による砂漠化の加速など、人間の奢りによる地球環境の変化は着実に見え始めている。発展途上国の発展する権利を認めてあげるような度量と先進国としては自国のライフスタイルの改善を行う勇気が必要なときに来たようだ。さて、日本の政治状況を見る限り、そのような地球的な問題を語るような土俵にはありそうもないようだ。日本の政治家に何処まで求めて良いものだろうか。100年の国家の計を語れるようなリーダーを求めてやまない。

Tuesday, July 10, 2007

食品の安全

ヒトの健康を考えるときに、重要な柱の一つが何を食べているかと云う点だ。最近の中国の食品の衛生が問題化され、中国品の輸入については政府当局だけでなく消費者の目も厳しくなってきている。しかし、中国品に限らず、食品について厳しい目を持つようになったからと云って、実際に食している食品が安全かどうかを理解している人は少ないに違いない。食品の安全については検査をしている衛生当局が把握しているだろうと多くの人が考えているから、その実態は見えなくとも、何となく安全だろうとの考えで終わっている。私もある程度そのように考えてきた。

企業や国が決めている食品の安全基準は、当然悪意をベースに設定されているものではないが、生産者の顔が見えなくなった現代の食品を何処まで信じて良いのか分からなくなってきているのも事実。実際、雪印の問題や不二家の問題についても、企業の問題処理のときの対応を見ていると、これも何処まで信じて良いのか不安がつのると云えまいか?企業の存続、利益確保の方が、消費者よりも大事だったと云うことが言えたのではないだろうか?そんな感じがしてならない。

食品の安全と云う意味では、多くのことが言えるだろう。単純なる衛生上の問題や、産地の偽りや、嘘の表記なども上げられるはずだ。しかし、今日写真とリンクで掲げているマイケル・ポーランのOmnivore's Dilemmaを読むとそのような偽りなどの前に、食品産業を超えた農業政策の問題から取り上げ、いかに今日の食卓が汚されているのかが分かる。この本を読むと、アメリカの農業政策について大きな懐疑を持ち始める。しかも、それが加工食品の形でどんどんと川下にも流れ始めることを考えると、このような基本的なところから問題を来しているのか不安と恐ろしさを味わってしまう。

ポーランはアメリカの食糧政策の根幹にある、トウモロコシと大豆の生産からまず切り込み始めて行く。そうしてそれが、家畜産業へとつながり、その他の青果物食料品といかにつながって行くのか、あるいは食品の加工品はどうなのか見事に淡々と書き記して行っている。彼の記述はジャーナリスティックなところがあるかもしれないが、オーガニックだから良いのではないと云う点まで掘り下げて行く。ホールフーズもウォールマートも、扱っている商品は少し違うかもしれないが、ポーランの分析では両方ともウォールストリートの奴隷との定義であると云うことになり、ホールフーズへの否定的な意見も多い。

私は、ロハスと云う概念から、ここまでアメリカは進展をしてきているのだと云う気持ちがしてならない。きれいごとのロハスではなくなっているのだ。食品を見るときに、見えないチャンネルの中での問題点を曝け出しているこの本のインパクトは大きい。日本でも農家は、農薬などを使わない食品を自分たちで食し、農薬品を使ったものを市場に出していると前から多くの人のコメントで聞いたことがある。実際はどうなのか分からないが、最終消費者との接点が無くなっている現在のディストリビューションだったらあり得ることかもしれない。このように中間業者が多くなってしまい、生産者と消費者が接点無くなっているところに大きな問題もあろう。しかも、国民を守るべき政府にしても、どうしても化学肥料や農薬全般、種のメーカーなどとの接点が強いことが多くあり、消費者がとかくすると忘れ去られてしまうことも多い。アメリカの巨大農業資本が見え隠れする中で書かれたこの本は恐ろしいし、ある意味では理想の実例も書いてくれているので、食品について実に新たな視点で物事を見るようになってきた。自分のロハス度はさらに高まっていると言えるかもしれない。この本の和訳が出されることを願っている。著者は加州大バークレー校の先生だ。

Saturday, June 30, 2007

グリーン・ムブメントの進化

グリーン・ムーブメントは、地球温暖化や多くのハリウッドの俳優たちなどがグリーンなショッピングを推奨することから、多くのメディアで取り上げられ、企業もグリーン指向の商品をどんどん開発することによってグリーンなショッピングをすることが一つの流行になってきている。この勢いが進めば、グリーンでない消費財は取り残されるような傾向にまでなってきており、何をホンモノのグリーンと定義するのか、そもそもグリーン消費とは何かのところまで行き着いていってしまうに違いない。グリーンに始まり、オーガニックやロハス、ナチュラル、サステイナブルなどの形容詞がついた販促の声はますます大きくなっていくだろう。

アメリカでは環境派の消費者のことを皮肉を込めてTree Hugger(木に抱きつく人)と云う。乱開発を排除して、自然を残そうと云う環境派の意味するところから始まったものと思う。しかし、いろいろな消費者分析などを見ていると、徐々にではあるがそのロハス指向の消費者に分類されている市場セグメントは毎年増大している。そうしたらTree Huggerと云う元々あった、強い環境意識のイメージは薄れ、単なるロハス消費者になってしまう。

では、何のためのロハス消費なのかを考えていくと、もちろん自分の健康を推進したりすることは焦点の一つだが、地球のサステイナビリティを考えていった場合、消費そのものがいけないと云うことになりかねない。今日取り上げているニューヨークタイムズ紙の記事はまさにこの問題を突いている。高級消費材を、いくらサステイナブルにしたところで、それを作り上げるのに相当のエネルギーなどを浪費しているから問題にし始めている人たちの考え方の紹介だ。オーガニック食材にしても、季節外れのものを遠隔から持ってくると云うことについてエネルギーの無駄を問い始めている。

このブログは約半年ほどお休みをいただいていた。自分の出版に関する方で忙しくしていたと云う点もあるが、多少の充電期間に充ててきたと云うことも十分に云える。ロハスをどのような視点で見続けていくのか、サステイナブルなし点をさらに高めていくのにはどのようにするべきなのかを考え始めていた。実際、読み始めているいくつかの著作では、グリーン・ムブメントはさらに高いステージに進み始めている。そのために、ロハスの先端企業とされていたホールフーズマーケットや多くのところも、この新たなるムーブメントの推進者たちの意見も無視し得ないものになってきている気がする。

テーマが大きいだけに、数回のコメントだけで終わらせたくはない。このブログを読んでくださっている方の参考になるように、多くの視点からの情報をまとめてみたいと思う。そうしてアメリカの考えがどのように変わってきているのかも勉強してみたい。バラバラに走っていた環境問題、成人病問題、地球温暖化、いろいろな現代病、エネルギー価格高騰、食から見たオーガニックの問題、などは、どうやら多くのところでつながっていると云うことが識者の間で認識が一致し始めた。単発的にだけ見てきたものだけでは問題の処理が難しい、複合の社会問題であり、特定地域だけで動いても問題の解決にならない。つまり、個人の意識を高めより世界的な規模で、解決していかなければいけないことも増えて来よう。書く頻度は減らすので、ご容赦いただきたい。

Monday, January 08, 2007

南米の農業を助けるロハス市場

ロハス市場の成長は、南米の農業従事者にとって思わぬ恩恵をもたらし始めている。しかもその恩恵と云うのは、歴史的にアメリカの大手農産物企業が南米の農業従事者から搾取してきた、バナナ、パインアップルなどではなく、オーガニックな食材で、健康食だったりすることが多いようだ。あるいは、コーヒーなどのようにコモディティ化しているものであっても、フェアトレード(公正な価格を農業従事者に支払う方式)と云うような原住民や、資本力を持たない人に多くの恩典をもたらすものが増えていると云う。

例えば、ボリビア人が大地からの贈り物としてみていたキノア(豊富なビタミンやミネラルを有する穀類の一種)などが、最近ではアメリカ人の健康意識の高い人たちに大いに受けられるようになったことなどがそうだ。ボリビアの農民は、有機のキノアをどんどんと植え付けをしているらしい。アメリカのロハス健康ブームの波に乗り、いくら作っても需要があるからだ。特にオーガニックの食材は需要が高く、キノアに限らず、その他の多くの食材も認知され、輸出され始めている。メキシコの天然甘味料のブルーアガベ(今日の写真はメキシコのハリスコ州でのブルーアガベの生産の写真だ)、ニカラグアの胡麻、パラグアイの砂糖、エクアドルの野生のキノコ、、ペルーのコーヒー、チリのドライアップルやアルゼンチンの小麦なども関心を呼び起こしているらしい。

アメリカ企業の中でも、単に有機だからだけでなく、フェアトレードをすることによってもたらされるベネフィットも理解し始めており、そのために従来型の商習慣では存在しなかった、フェアトレードの意識があり、ロハス的なディストリビューターなどの参入があり、農産物調達でもより魅力的な価格付けが行われるようにもなり、生産意欲も上がってきていると云う。

コロラド州立大学(CSU)のCenter for Fair and Alternative Trade Studies(フェア・オールタナティブ貿易慣行研究センター)のLaura Raynolds所長は、ラテンアメリカの認定オーガニック商品の作付け生産などに投入している面積は、アジア、中近東、アフリカをも凌駕するものだと見ている。同所長の推定によると、ラテンアメリカのオーガニック食品の輸出は2億5000万ドルくらいに達するだろうと推定している。この背景は簡単だ。つまり、2005年のアメリカの全般的な食材の伸びは1%ぐらいだったものが、こと、オーガニック食材になると16%もの伸びをみせ、138億ドルにも達した模様だ。有機の業界団体であるOrganic Trade Associationによれば、1997年にオーガニックの食材は全体の08%にしか満たなかったものが、2005年には2.5%にも上昇している。もちろん、供給が追いつかない事由などもあり、本来的な潜在需要はさらに高いと見なければいけない。

南米の農業は、輸出については、欧米系の大手食品メーカー主体のものだったことが多い。そのために零細の土着の農業従事者は、経済的な恩恵をあまり受けなかったと云って良い。しかも、そのように買い叩かれて生産物が買われるような従来の資本主義的な方策では、まともな生産に意欲が湧かないこともあっただろう。そのために一部の農業関係者が非合法な作物の生産に力を振り向けていたのであれば、仕方ないことだったかも知れない。ロハスの地球環境や個人の健康に対する意識がこのように、予想もしないような健全なアメリカの外交政策の一部になっていたとしたら、ロハスの役割は相当なものと云えよう。ボールダーにいると、このような南米の食材に接することが多い。経済援助などで援助依存漬けするよりは、心のこもった新しい市場や業態の成立が、同地域の経済発展に寄与していると考えればとても面白い。実態はまだまだ難しいところだが、徐々に改善されるきっかけが出ることを願っている。

Friday, January 05, 2007

グリーンな食事のすすめ



アメリカにはCenter for Science in the Public Interest(公益科学センター)と云う団体がある。この団体はこれまで35年にわたってファーストフード、レストランの食事、あるいは映画館でのポップコーンが、いかに消費者にとって悪いものであるのか唱えてきたところ。この団体の専務理事であるMichael F. Jacobsonは地球環境にやさしい食事を提唱し始め、Six Arguments for a Greener Diet (「よりグリーンな食事をする六つの理由」CSPI, ISBN: 0-89329-049-1)なる本を出版した。主席執筆者のヤコブソン氏は動物性の食品をとるより、植物性の食事をより多く食することが、健康寿命を延ばせることを証明するとともに、この植物性の食事をより多くすることで水質汚染、空気汚染、地球の温暖化、動物の苦しみなどなどを削減するだけでなく、食中毒なども減少させることができるだろうとしている。

牧畜業の問題については元旦のブログで書いたところだが、この本もそれに沿った同様の警鐘を呈している。アメリカ人は、毎日一億ポンド、あるいは一兆カロリーの食料品を食している。約3億人のアメリカ人の食糧需要(穀物、肉類、家禽類、野菜や果物)を満たすために巨大な燃料、肥料、水、殺虫剤や広大な農業用の土地が必要になっている。人間のための食糧生産のためだけでなく、家畜などの食糧などのためでもあるのだ。折角の食糧生産を行っても、家畜用の飼料となり、人間は、脂肪の多い動物性食品を食べる一方で、植物性の食糧の消費が減少している。つまり、野菜、果物や穀類などが十分に消費されない状況となってくる。その結果、心臓疾患、脳梗塞、糖尿病、癌などが発生しやすくなる。肥満などによって、多くの人の寿命なども不要に縮められている。このヤコブソンの著作は、食事のより健康な食事が、より健康な地球を維持するために如何に役に立てるかについても豊富な事実を使い書いている。

グリーンな食事をするべき理由:

*毎日野菜や果物をもう一皿余計に食べることができれば、心臓病による死亡率は16%減少することができる
*乳卵菜食主義者(lacto-ovo vegetarian)は、菜食主義者でない人に比べて心臓病による死亡率は24%も低い
*アメリカ人は推奨されている植物繊維の必要量より50%少なく摂取している
*穀物飼料で育てられた牛は、草(粗飼料)で育てられた牛の肉より、脂肪は100%余計にある
*家畜などが放出するメタンガス(地球温暖化の悪原因)は、全メタンガスの19%になること
*毎年屠殺される牛、豚、羊は1億4000万頭にも及ぶこと
*14兆ガロンの水:家畜の飼料を生産するために使われる水資源

同書は肉食を止めろと云っているのではないらしい。ただし、いくつかの食事に関するマイナーな変更をすることで地球温暖化に関するインパクトを減少しせしめることができると云う。どのようなインパクを与えるのかについても計算表のウェブリンクも紹介している。
換算表サイトリンク


ロハスを考えるときに、単なるグルメ料理やスローフードを超えたところでも地球規模的なものの考え方が必要になってきていることを如実に示している。ベジェタリアンやビーガンは単に自分の健康のためだけでなく、地球環境のためにも大きく貢献していると云う自負も産まれてくるだろう。この狭い地球で生きていく上で、皆で協調的なライフスタイルの構築が急務と云えるかも知れない。ボールダーの有機産業や、ベジェタリアンの生活様式の中には、何か深い意味が秘められている気がする。今後もこの環境と健康のテーマをできるだけ紹介していくことにしたい。

Monday, January 01, 2007

牧畜産業の成長が放つ警鐘

のどかな牧草、放牧などを連想するとまず地球温暖化とはまったく縁がない世界だと云う気になる。今日の写真は私の家の庭から見えるボールダーカウンティ−のオープンスペースであり、近隣の牧場主に牛を放牧するようにカウンティーの役所が貸し出している。こんなところが汚染の原因だとは思いたくもないし、牛糞の臭いが来ても自然を感じていたのに、どうも違うらしい。

国連のFAO(食糧農業機構)と云うきちんとした国際機関が云うことなのだから信じなければいけないが、牧畜産業について改めて考えさせられてしまった。国連の機関が云うところによれば、信じ難いことだが牧畜の方がクルマの地球温暖化排気ガスを排出するのだと云う。CO2相当で見ると、牧畜業の方が、クルマより18%ものCO2排出を余計しているのだと云う。もちろん、ガスの排出だけでなく、土壌ならびに水源の汚染にも悪影響を及ぼしていると云うのだから始末悪い。

FAOの Livestock Information and Policy Branch部長であり、リポートの作者の一人であるHenning Steinfeld氏は、家畜は環境問題の汚染源としてもっともネガティブな貢献をしている分野の一つと述べている。この問題については緊急な対策が必要だとも述べている。

世界経済が繁栄するに従って、毎年肉や酪農製品の消費拡大がされてきていると云う。世界の肉の生産は1999/2001年の2億2900万トンから、2050年には倍増して、4億6500万トンになるだろうと推測されている。その間の牛乳の生産も5億8000万トンから10億4300万トンになるだろうと見られている。

人間の活動による牧畜用地や、牧畜用地への転換などによって生じる牧畜セクターが排出するCO2は9%に留まるが、もっとタチの悪い温室効果ガスを排出しているのだ。つまり人間の活動によって生じる亜酸化窒素(nitrous oxide)の65%ものガスを排出していることになる。これが如何に悪いかを見るのには地球温暖化潜在指数がCO2の296倍にも相当すると云っただけでも理解できよう。この排出の大半は牛の糞から出てくるものなのだ。また、人間が関与するところのメタンガス発生においても37%ものガスを排出に相当する(CO2よりも23倍地球温暖化要因となる)。また、人間が関与するアンモニアの発生でも64%も出している計算のようだ。

地球全体の地上面積の30%近くが、恒久的な牧草のために使われているだけでなく、耕作可能な土地の33%もの農地が、飼料用の生産のために使われていると云う現状がある。アマゾンの原生林を牧草地にして森林資源をどんどん枯渇させている原因はまさにこの牧草地を作るための作業だ。つまり牧草地の拡大が、森林資源の現象と、二酸化炭素の上昇原因を作っていることになる。

これらの問題に加えて、水資源の汚染、土壌の劣化などを引き起こしているだけでなく、問題が錯綜していると云わざるを得ない。ここで、すべての問題を列挙するつもりはないが、牧畜や牧草の地球温暖化などに与えている影響の大きさを理解することによって、我々宇宙船地球号にいる人間が、ミクロの世界だけでなく、マクロの世界においても広く環境のインパクトを考えざるを得ない状況に至って来たことを理解しなければならない。ロハスは、きれいごとだけではない、社会改革の問題をも内含していることを十分に理解した上で、総論的に地球環境などを見るようにしたい。