Wednesday, December 24, 2008

客寄せに必死なホールフーズ

アメリカの経済的な状況は、まだ、出口が見えない暗闇の中にある。マネーサプライがタイトになっている原因は専門家でない私にはよく判らないが、いずれにしても多くの業態で困難な状況が生じているのは事実だ。もちろん、生活必需品などは、支出を倹約しても買わざるを得ず、低価格路線を打ち出しているウォールマートやボールダーのサンフラワーマーケットなどは比較的うまくいっていると言えよう。しかし、これまで、高価格路線を歩んで来たいくつかのリテーラーでは、消費者離れが起きており、そのためにリテーラーなどが利益を無視するかのような価格付けでモノを販売しているようだ。ニューヨークにいる息子たちの報告では、メイシーズやバーグドルフ・グッドマンなどの高級店で感謝祭の翌日のブラックフライデーにはブランドモノの投げ売りのような状況があり、バーゲンセールを目がけて多くの淑女たちがブランドモノを取りあうような醜い状況だったと言う。

食品について言えば、ナチュラルやオーガニックの王者としてこれまで業績を上げていたホールフーズがここへ来て苦戦をしている。ホールフーズが悪くなったのではないと云う気がする。どの店舗を見ても、前と変わらない素晴らしい品揃えだが、ホールペイチェック(給与ごと吹っ飛んでしまうことへの皮肉)と揶揄されて来た価格政策の見直しが迫られている。

もちろん、これまでホールフーズの独断場的な存在だったナチュラル商材市場は、多くの競争相手の参入で、変化させるべきところ変化の対応が遅すぎた観がある。私はホールフーズは甦るだろうと信じたいが、確かに直面している問題は多い。特に今の経済的状況では需要は消費者の懐と切り離すことができないだけでなく、マーチャンダイジングを強化することを怠ったり、景気後退の影響で低いマージン商品に移っていく消費者の購入動向に敏速に対応をしなければどうしようもなく遅れていくだろう。

ホールフーズはこれまで、自社の名前が持つ吸引力で、販促などあまり打って来た試しがない。しかし、今年に入ってから、コンベンショナルなセーフウェー、キングスーパーがライフスタイル店を導入したり、ナチュラル商品を重視する政策を打ち出すと、オールマイティだったホールフーズも重い腰を上げ、チラシやディスカウントを行なうようになった。当然、ボールダーの郊外に拠点を構える、Costcoやウォールマートなどもオーガニック商品を増やし始めており、いくら上級ランクと言っても、客足が遠のきはじめたのは無理もない。

クリスマスイブに一大イベントとしてホールフーズが大セールを行なうことにしたのは、新聞の全面広告でも分かる通りだ。予告のために3日以上も連続して15段広告を打って来た。50%値引きの破格価格もさることながら、24日の朝6時に来た100名のお客様で25ドル以上の買い物をした人にはプレゼントを贈呈するという客寄せとなった。また、通常は開店していない夜中から朝5時までにはコーヒーやピザを無料でサービスすると言う販促だ。

同社の株価の推移を見てみるとかなりきびしいことが分かる。投資家からも相当なプレッシャーがかかっていることだろう。しかし、私はホールフーズの置かれている問題はナチュラルビジネスの低下を意味することではなく、逆に多くの競争相手の参入で競争環境が激化していることの証左であると見ている。専門店から通常店へのナチュラルの広まりは、今後ますます勢いを増していくことだろう。

Friday, December 19, 2008

クルマ共有の概念広まる

今日は任期残り少ないブッシュ大統領がゼネラルモーターズ及びクライスラー救済のための処置を打ち出した。救済ではなくメーカーは融資だと言っているが、国民の目には救済だと映っている。アメリカの景気後退の凄まじさから言ったら、何らか措置を講じなければいけないということだろうが、経営が傾いた背景には市場の資金の流れがタイトになったのはあるにしても、メーカーの自己責任が多いと多くのアメリカ人は感じているようだ。

自動車の販売はかってない水準へ落ち込んでいるが、これまでの資源利用効率の悪さから見てみると、アメリカの自動車利用の仕組みを見直すことは必要なことだろう。特に居住密度が高い都市部や既にかなりの公共輸送機関があるところでのクルマの所有が見直されてもおかしくない。都市部と言ってもクルマが全くないことも困るときがあるだろう。しかし、高い駐車場、クルマ保険、修理、などなどを考えていくとあまり必要がないのに、無理矢理所有してきた観がしないでもない。私はボールダーの郊外近いところにいるので、ないととても不便だが、無理をすれば、なくても生きていけなくもない。ニューヨークや東京のような都会だったら、特別なときにあればということで十分に用が足りるだろう。

このような背景を前提にして北米ではクルマの共有のような仕組みのZipCarが出現して、今では大きく伸び始めている。クルマを「所有」することで受けるデメリットを回避することが目的だ。ZipCarの優れていることは、単に足になるクルマを必要なときに持つということではなく、レンタルのタクシードのごとく、TPOに合わせて、クルマの車種を選定できる点だろう。もちろん、それには事前に予約する必要はあるが、所有をすれば、多くのクルマを持ち、ニーズに応じて使い道を変えていくということなどできないからだ。このZipCarのコンセプトを作り上げた人たちは、ロハスの視点でものごとを考えてきた先駆的なビジネスマンと言えるだろう。

ただ、ZipCarが大きく注目を浴びるに付けて、既存企業が手をこまねいている訳にもいかない。下手をすると新しいビジネスの動きに取り残されていくからだ。その例が今月発表になったクルマレンタルの最大手、Hertz社のZipCarについて随する行動だろう。アメリカだけでなく、ロンドンやパリなどでも動き始めているが、都会でのクルマ所有率の低下につながることは間違いないだろう。物質的なモノの所有にこだわらなければ、一時的な時間借りのシステムは資源の効率的な活用につながっていくだろう。

自転車などの貸し出しシステムも欧州を中心に始まっているが、クルマの所有パターンの変化も今後大いに予想されうるので、自動車メーカーの将来モデルを研究している人たちは、移動の自由確保、資源の効率化且つ再利用、利益確保などの要素を考えながら、動いていかざるを得ないだろう。クルマの時代が終わったとは思わないが、社会的位置付け、その存在意義などは大いに再検討をされることになるだろう。

Monday, December 15, 2008

シンプル・ライフのトレンド

ギャンブルや華やかなショーなどで多くの観光客を引き寄せ、急成長していたラスベガスが昨年あたりから景気の落ち込みで苦労をしているらしい。ギャンブル好きには景気の状況がどうなろうとも関係ないかもしれないが、無駄の多い奢侈なライフスタイルは、ロハスの時代にはそぐわないのだろう。砂漠の中でのホテル前に打ち出される強烈な噴水群、大きなエネルギーを無駄遣いするネオンサインなどは、自然との調和を求めるのではなく、あたかも自然に挑戦しているような姿勢だ。私にとって、砂漠の中に建てられているホテル群は、ロハス経済の中では蜃気楼のような、幻想的な存在でしかないように見える。住宅バブル、投機的な市場や石油で大儲けをした中東の資産家などが、実体のない博打の経済で遊び狂っていたのだ。

豊かな生活をすると云うことは、もちろん悪ではない。しかし、その豊かさの定義がどのようなものかとなると、単なる物質的なモノの所有や贅沢尽しの財を利用するということになると問題が多い。自然との調和がないこと、あるいは精神的な健康とかけ離れていることも、人の本来の充足感を満たすものではないのではなかろうか。これまで多くの場合、豊かさの定義の中に精神的な、情緒的な豊かさが忘れ去られていたものが、復活してきていると言える。もちろん、ハイペースの中で仕事をしている人にとって、経済的な余裕がない限り、精神的や情緒的な余裕を求めることさえ難しいのかもしれない。しかし、アメリカにいるとそれを求める人々が徐々に増えてきている気がする。資本主義の牙城とも言われるアメリカが、変化していることが面白い。

私は個人的に長いこと合気道の指導をしてきているが、昔はセルフ・ディフェンス、つまり護身術のためということが多かったが、最近ではより精神的な充足感を求めて来る人が多い。ロハスのコンセプトをまとめたポール・レイ博士、シェリー・アンダーソン博士なども、彼らの名著The Cultural Creativesの中で、ヨガ関係のビデオの販売がディズニーのライオンキングのアニメのビデオ販売を凌駕したと書き記したのがもう8年以上も前だ。

ニューヨークタイムズ紙のSHIVANI VORA記者がまとめているところでは、シンプルライフを求めて、ヒンズー教的なアシュラムや仏教的な禅寺などで、週末やより長期にわたり瞑想や禅の修行に来る人が増えていると言う。しかも、その来る人々が、これまでだったら、何らかヒンズー教、仏教、禅などの信者などが中心だったものが、最近では一般の市民の参加者が増えてきているのだそうだ。

朝4時半に起床をしたり、他の参加者と口を交わすことなく黙々と落ち葉を掃き掃除したり、地産地消の有機野菜をふんだんに使った菜食主義の食事をしたり、都会の喧噪を離れ、現代社会のリズムを断ち切る生活をすることによって、精神的な豊かさを経験する人が多くなってきていることは嬉しい。毎日ストレスが多い中で生活をしていると、生きるプライオリティが何なのか見失うことも多くなることだろう。こうやって喧噪から離れる体験は、記事では現実からの逃避とも書いているが、私はストレスに対抗する抵抗力になる気がする。

この記事は、ニューヨークタイムズの記事なので、同地域に近いアシュラムや禅瞑想場のことを書いているが、この現状はアメリカ中に広がっていると言って良い。特にボールダーは、ナロッパ仏教大学がある街でもあり、チベット仏教の一大センターでもあるシャンバラセンターの所在地としても知られるので、特にこの街の人々の中で瞑想をする人は多い。

現代社会は、大量生産方式を打ち出してきたことから、過剰消費を奨励し、その中で多くの人は、疑問を持ち始めてきたと言える。複雑怪奇な生活も、便利になった側面は喜べるとしても、ストレスが増えたのも事実。だからこそシンプルライフも求められるようになるのはおかしなことではない。ボールダーのロハス的な生活が、一つの回答を出してくれている気がする。

Wednesday, December 03, 2008

転機を迎えたアメリカのエネルギー政策

二年近くも続いたアメリカ大統領選挙運動が終わり、オバマ候補が44代目のアメリカ合衆国の大統領になることが決まった。大統領選挙戦終盤戦において発生した金融危機はアメリカ金融界だけでなく、経済界、産業界などにも大きな影響を与え、その余波は世界経済にも及び、11月の半ばに世界20各国の首脳が対策を練るためにアメリカに集うことになった。しかし、任期残すところわずかのブッシュ政権は、各国首脳と新たな新政策を打ち出すことができず、各国との協調策をとるという声明文だけで終わった観がある。実際のところ、大きな政策の変化は2009年1月20日に就任するオバマ新大統領を待つということになったと言って良い。

オバマ新政権は、アメリカの大統領就任の歴史の中でも最も難題が多く、複雑困難な政策課題を抱えた状況で大統領に就任をすることになった。ビッグスリーの自動車問題への救済策を含めたアメリカの経済金融危機は言うまでも及ばず、イラクからの撤退、国民の健康保険問題、不法移民の問題、グアンタナモの捕虜処遇の問題、そうしてエネルギー環境政策などへの緊急な取り組みが求められる難しい局面にある。

エネルギー環境については、今年の夏頃にはエネルギー価格が高騰していたものが、経済金融危機に陥ったことで世界的にエネルギー需給関係が緩和され、一時的に原油コストが大幅に下がってしまっている。従来であれば原油コストが下がっているときに、エネルギー政策に政策のフォーカスがいかないところだろうが、まさに、エネルギー価格が下がっているこのときに、経済活性化とエネルギー政策を同時に進めようとする政策が打ち出されるのではないかとの推測が強い。大統領に選出されたオバマ氏が、就任後10年以内でアメリカの中東やベネズエラからの石油依存を無くそうと大きく公約しているからだ。

ビッグスリー経の公的資金援助の是非についても今週後半に上下両院で二回目の公聴会が開かれる。前回はコーポレットジェットで議会に乗り込み公的資金援助を求めてきたものの、その経費削減に対する繊細さがない無神経さを議会やメディアに叩かれ、公的資金援助を受けるのであれば、その資金でどのような企業の再生を行なうのか具体策を出してこいという強い指摘を受けて、今回は、具体的な再生策を準備して乗り込んでくることになった。コーポレットジェットで殿様の様相でお出ましでなく、今回は3人とも揃って各社のハイブリッドでデトロイトから運転してくると言う。クライスラーにもハイブリッドがあったのかと今になって知るような話だが、60%以上の人が支援に反対と言うから米国民にここまで見放されてしまったのかと感じると、3社の首脳も低姿勢でいかざるを得なくなったのだろう。

とにかく、2008年夏のエネルギーコストの急騰と秋口から本格化したサブプライムローンの破綻にはじまる大幅な景気後退は、いつものアメリカだったらエネルギー価格が急落してしまえば、エネルギー政策が無策になるところが、今回は未だかってない米国産業構造の大幅な転換のきっかけになりそうな気配だ。ビッグスリーは、これまで、利益率の高い大型のトラック系のクルマに販売の重点を置いてきた。小型車開発やハイブリッド、電気、水素自動車の開発をやっているのだが、本腰を入れていたというよりは、必要になったときに技術を持ち合わせていれば良いというような安心感があったのだろうか。労組側も、コスト削減につながるような譲歩は行なってきたが、経営側と労組共々ことの重要性に気がつかないようだったと言えまいか。しかし、ここへ来て、一時的であったにせよ、ガソリン価格がアメリカでは未曾有のガロン当り4ドルを超えたときに、地球温暖化などで多くの人々が謳ってきた省資源の課題に急に火がついたように市場が転換してきているようだ。大型車を売って利益を上げていたビッグスリーは、知らずのうちにアメリカのクルマ市場の50%を切ってしまっており、いつの間にか多くの国民に切り捨てられていたのだ。だから、今回の公的援助の嘆願にも関わらず、国民のサポートが少なくなっているのだ。アメリカ国民のエネルギーを見る目は、ビッグスリーよりも健全だったと言えるかもしれない。

石油資源の自給度が30%を切っており、70%近くの石油を多くの反米的なところから購入している事実を見せつけられた点も大いにアメリカの国民感情を揺さぶったと言って良い。地球温暖化については、まだ、大問題にしていない人も多い中で、中東、ベネズエラ、アフリカ、ロシアなどの産油国を潤し、勝手なことをさせてはならないという気持ちを持った愛国心強いアメリカ人も多いようだ。もちろん、今回の大統領選挙の公約でもグリーンエネルギーへの転換を標榜するオバマ次期大統領の方向性に賛同をする若い人、まっとうな人も多いのは事実。それらの複雑分子が結集することになり、アメリカのエネルギー政策を転換せざるを得ない勢いを作ったと言える。

世界の人口の4−5%の国が、エネルギー消費は25%近くにも達する異常さが解決するときになるのだろうか?少なくともかけ声は大きい。それが政策的にどのように変革するのか、オバマ次期大統領のエネルギー長官や人事を見てみたい。国家安全保障、経済のブレーンなども発表されているが、今後の人事発表は大いに期待しているところ。エネルギー政策とグリーンな雇用創出が一体化して来る可能せいもあり、アメリカの今回の経済金融危機は、改革のための障害ではなく、大きな起爆剤になったと言えるのではなかろうか。

Thursday, October 23, 2008

求められるグリーン・ニューディール政策


アメリカを震源とする世界の景気後退が、深刻化しており、1929年世界恐慌以来最悪の不況になるだろうとの見通しだ。各国の蔵相などが緊急対策をとっているが、各国政府の財政金融支援にも関わらず不安定な状況が続いている。このような不況状況になると懸念されるのは、地球温暖化対策やポスト京都議定書やグリーンに関わる施策が、景気対策や財政金融支援など取って代わられ、プライオリティを下げられるだろうと云う思惑だ。現在は、景気後退のおりでもあり、石油価格などもバーレル当り150ドルの高騰から70ドルを割るような状況でもあり、再生可能なエネルギーへの関心も薄まっていく観もある。一時ガロンあたり4ドル台に高騰したアメリカの自動車用のガソリン価格は、3ドルを割り込んでおり、省エネしようとする勢いも下がっているとの観測にもつながる。石油資源が枯渇するのではないかと云うパニックの状況でパーレル当りの価格は200ドルに到達するかもしれないという悲観的な観測から、今では70ドルを割っているだけでなく、下手をすると60ドルも割ってしまうかもしれないほどの急落ぶりだ。それが何と半年という期間の間に起こった事実なので、市場の乱高下の現実はきびしい。現状では恐れられていた、資源の問題は吹き飛んでしまったかのようだ。

果たしてどうなのだろうか?グリーンな政策も後退してしまうのだろうか?気になるところだ。だが、このような時期だからこそ、世界の経済を根幹から見直す必要もあるのではないかと思う。景気後退や不況と云う言葉が出てくる以上、その根本的な対策を真剣に考えるべきときが来たと言えまいか?


約79年前の1929年に発生した世界大恐慌の対策として出された政策は、ルーズベルト大統領のニューディール政策だった。大不況から抜け出すための政策は、国家的大型公共事業の展開だった。フーバーダムなどの建設やTVAなどの建設が行なわれたのもこの頃だ。経済を学んだ者ならよく知っている事象だ。

2008年の大不況に直面して、イギリスやアメリカの学者の中にグリーン・ニューディール政策を推奨する人が多く出始めている。このグリーン・ニューディール政策は、金曜市場の不安、長期的な石油市場の問題解決、そうして食糧をも含む環境問題の解決と云う三大問題を同時に解決しようとしている学者たちの提言なのだ。今年の半ばから、気象条件などが取り返しのつかない状況になるのに後100ヶ月しかないと云う危機意識が芽生えている。この、時限的な危機意識から人々が立ち上がり始めているのだ。特に政治家たちが、大局を見ることをせずに、個別の問題にしか目が行かないところに不満を抱き動き始めている内容のものなのだ。彼らの提言が含まれている内容は下記の通りだ:

1、再生可能なエネルギーやより広範なグリーン産業への産業構造転換のための巨大投資を行なう
2、上記によって、グリーンな雇用創出(グリーンカラー)を求める
3、金融セクターの管理を高める一方で、グリーン雇用につながる資金フローを高めようとすること
4、金融バブルの状況から、その国家的指導のエネルギーを産業、環境、農業、労働組合などを結束するような方向性に転換をすること

これまでバラバラだった、問題の対応を、より包括的な目で次世代にニーズに合った形で転換しようとする環境運動派や学者たちの提言と見て良い。ルーズベルト大統領のニューディール策も、単に雇用創出としてだけでなく発電・エネルギーや農業用灌漑などの基幹産業を大公共事業を通じて展開したものであり、アメリカの経済再興を可能にしたことが知られている。

このグリーンなニューディール策を展開するのには、もはや一地方や一国だけの問題ではなく、世界的に同時に展開をすることが求められてくるわけだが、大統領になるのが徐々に確実視されてきているオバマ大統領候補も意思表明をしてきているように、2009年になれば、消費を促すための景気対策でなく、より社会のインフラを転換するような産業投資への動きが出てくるものと予想される。まだ、具体的な処方箋は出されていないが、オバマ候補のこれまでの動きからすれば、基幹産業へのグリーン転換投資がされるのは間違いないだろう。グリーン・ニューディール策が、次期政権の中でどのような姿で現れて来るのか、これからも大いに注目をして行きたいところだ。

Friday, August 29, 2008

オバマ民主党候補指名と米国エネルギー政策

アメリカの新エネルギー・ニューディール政策か

昨晩、デンバーで開かれていた民主党党大会が閉幕した。この民主党党大会は党の大統領候補を指名する大事なイベントであり、既にオバマ候補が事実上指名されているのは、周知の事実であるとはいえ、それを公式化するイベントだった。党大会の最後を飾ったのは、オバマ候補の指名受諾演説だったが、名演説家として知られているオバマ候補の名に恥じない素晴らしい歴史に残る演説だったと言えよう。

オバマ大統領は、19ヶ月間にわたる予備選の期間において多くの演説や方針を明らかにしてきたが、アメリカ国民の中には、具体性がないと云う批判も多かった。もちろん、上院議員を一期も勤め上げていない候補だけに、彼の実績は未知数のところも多く、大統領候補として人物評価できないと多くの国民が評していたのは事実。同じ民主党のヒラリークリントン候補と競り合っていたときも、変化を求める理想論を述べることが多く、具体策が見えないと言われていたからだ。私にとっては、オマバ候補は、施政方針は比較的によく見えていたと判断しているが、主流派でないこと、黒人マイノリティーであること、ヒラリーを蹴り落としてしまった結果ヒラリー陣営の不満を買ったことなどで、具体的な非難ができないことから、オバマ候補は未知数の人とのレッテルを貼られてしまったものと思う。

デンバーのインベスコ競技場において開催された民主党党大会において、オバマ候補は「政治的」な指名受諾演説を行なったわけだが、そこで、具体的な政策目標などをはっきりと打ち出した。もちろん、民主党党大会と云う性格もあり、まだ、政策にどのように反映して行くのかは、大統領に選出されるまではどのような施策となるのか、詳細はまだ未知数だ。しかし、オバマ候補が、テレビに釘付けになっていた国民の前で公約したことは、大きな政策指標になることだけは間違いない。オバマ候補のエネルギー政策についてのところを抜粋して翻訳を試みてみた。読者にオバマが大統領になったときの方向性をご理解いただければと思う。

「、、、そうして、わが国経済、安全保障、そうしてわが地球の未来のために、大統領になったときの目標をきちんと定めておきたい。つまり、10年で中東からの石油依存を終わらせたい。われわれは、これを実行する。」

「ワシントンはこれまで30年間にもわたり、わが国の石油依存症について話をしてきた。ジョンマッケインはその内の26年間ワシントンにいた訳だ。その間に、彼はクルマの燃費規制強化についてはノーと言ってきたし、再生可能なエネルギーへの投資にもノーと言ってきた。再生可能な燃料にもノーと言ってきた。そうして、マッケイン候補が上院議員になってから、石油の輸入量は3倍にも膨れ上がっている。」

「この石油依存症を断ち切る時が来た。われわれは、(新たな)石油掘削が単に応急処置だけであって、長期的な問題の解決策ではないことを理解しなければならない。政策として取り上げるのにはほど遠いものだ。」

「私が大統領になったのなら、天然ガス資源の活用、クリーンな石炭の技術への投資、そうして原子力エネルギーをどのように安全に使うことができるか模索する。自動車メーカーに対して、未来の燃費効率の良いクルマが、アメリカで生産されるように、設備投資のために助成をして行こうと思う。また、アメリカの消費者が、これらの新しいクルマに買い替えられるように施策を講じたい。また、次の10年間にわたり、1500億ドルの資金を経済的で再生可能なエネルギーのソース:風力、ソーラー、そうして次世代のバイオ燃料に資金投下をしたい。この投資により、新規産業が形成され、高給で、しかも、アウトソースできない新規の500万人の雇用を創出するようにしたい。」

オバマ候補のエネルギーの政策目標でわかることは、アメリカのビッグスリー、あるいは既にアメリカに来ている海外メーカーの設備切り替えに、オバマ大統領は本格的に経済的な援助を行なって行くことを示していることだ。この演説を聞いて、アメリカの石油産業はどのような反応を示して行くのだろうか。自動車メーカーも、燃費効率を高める投資でなければ、政府援助を受けられない訳であり、アメリカの自動車市場は3−5年で相当変革をすることが予想される。しかも、現在の悪い燃費のクルマを持っている人の買い替えを補助することも暗に述べていることから、現在市場にあるクルマが大いにスクラップ化され、燃費効率の高いクルマの比率が高まることは、アメリカのクルマ文化の革命と同時に、政府主体としたエネルギーの「ニューディール政策」色を感じるのは、私の勝手な想像なのだろうか。燃費効率の高いクルマへと一斉に切り替えて行くとなると、その経済的なインパクトは計り知れない。もちろん、輸入車にではなく、国内で生産しているメーカーでなければ、助成策は活用できないだろう。想像するだけでも面白い事態になりそうだ。

アメリカは、世界の総人口の4−5%くらいなのに、石油消費は25%くらいだそうだ。だから、クルマの燃費改善を強行して推進して行くことで、世界の石油消費に大きなインパクトを与えて行くことは十分に想像できる。どのような具体的な政策になるのか、大いに注目したいところだ。

いずれにしても、指名受諾演説において、サステイナブルな施策が不可欠になったのは、アメリカの方向性変化を強く物語るものだ。

Thursday, August 21, 2008

ゴミの埋め立て地に風力発電か、ニューヨーク市

最近ディズニーとピクサー社が作ったアニメの映画「Wall-E」を見てきた。子ども向けだけでなく、大人にも評判が高いアニメであり、おおむね全ての映画評論家から4−5星をもらっている環境問題を主題とした映画だ。地球がゴミに埋もれ、生活環境に適さなくなったので、人類が宇宙へ脱出して、ソーラーエネジーで機能するゴミ処理の機械一台が、700年にもわたって人間が残して行ったゴミの処理を続けていると云う物語だ。主人公はロボットなのだが、そのおかれた社会環境をみると考えさせられることが多い。きれいとは言えないゴミ処理の問題を扱っている割には、実に可愛い映画だ。

当然人間が生活をすると何らかのゴミを排出している。人間が多く集まる都市ともなると、ゴミ処理は一般人はあまり目にしないが、大きな問題であることには違いない。チリも積もれば山となると言えば、少しは前向きな発言なのだが、ゴミの場合は、その処理が大きな問題になるのだ。どこへ捨てるか、どうやって燃やすか、どうやって運ぶかなどが大きな問題となる。もちろん、ゴミには生ゴミもあったりするのでメタンガスが発生するなど、その跡地の利用でもそう簡単ではない。環境汚染につながる産業廃棄物などもあり、ゴミ処理場の取り扱いには頭を悩ますものだと思う。

世界的な大都市は全て同じような悩みを持っている。しかも、近代化している都市であればあるほど、その問題は先鋭化してくると言える。ニューヨークのような大都会も同じような悩みを抱えてきた訳だが、ゴミの埋め立て地として使われてきたところがにわかに脚光を浴び始めている。その場所は、ニューヨーク市南西のスターテンにあるフレッシュ・キルズゴミ処理場跡地だ。このゴミ処理場は、操業をしているときは世界で最大の埋め立て地だったのだ。2200エーカー(890ヘクタール)のこの埋め立て地は、20世紀後半のニューヨーク市の主たるゴミ処理場となっていたのだ。開所されたのは1948年だが、地元住民の嘆願などもあり、2001年の3月に閉鎖された。(9/11の事件の時には、ゴミ処理のために一時的に再開された)。単に埋め立てだけでなく、山盛りもした関係で、ゴミの山は最盛期では、自由の女神より25メーとも高くなってしまったという。それ程チリも積もってしまった訳だ。

スターテン島の行政関係者は、ゴミ処理としての機能を閉鎖するように長いこと嘆願や運動をしてきたのだが、ここへ来て、その跡地に風力発電の基地を作ろうと運動し始めている。もちろん、ニューヨークのブルームベルグ市長もニューヨーク市をよりサステイナブルな都市になるように発言をしていることもあるので、スターテン島の関係者は、、跡地の再利用で、風力発電プロジェクトに熱が入ってきている。

これまで、ニューヨークの環境汚点の代表格だったフレッシュ・キルズゴミ埋め立て地がニューヨーク市にとって初めての大型風力発電所になる可能性を秘めてきている。7機の風力タービン(400フィートの大きさ)を設置すると云う計画になっており、それにより17メガワットの発電ができるだろうと見込まれている。この発電量は5000家庭の電力をまかなうのに十分なものだそうだ。この案は、十分な下調査のもとで作成をされているものらしく、スターテン島の電力需要の3%をまかなうものらしい。

スターテン島の話とは別個だが、カリフォルニア州の会社で屋根に風力タービンをつけているMarquiss Wind Power社が、風力発電の実力を見せるために、ニューヨーク市のビルの屋上に無料でデモ用に風力タービン設置の申し出を行なっている。高層ビルが建ち並ぶニューヨークの景観がどのように変わるか見物だが、実際問題、今後のビル設計などには当初から風力や雨水の取水、ソーラーなどの設計が当初から組み込まれることは当然になりそうだ。

ボールダーの風力についても、フォローして行くようにしたい。

Friday, August 15, 2008

ロハスな合気道、世界に浸透

今日は、通常と違った内容を書くことにしたい。と云うのも、私が英訳した「合気道開祖植芝盛平伝」が講談社インターナショナルから国内発売になったからだ。世界での発売は12月1日からだと云うことで、すでに英文のアマゾンドットコムで予約受付が始まっているくらいだ。講談社インターナショナルという出版元が良いと云うだけでなく、合気道開祖の伝記が初めて英訳されて出版されているので、それに対する期待も高いのだろうと推測している。

日本で始まった合気道は既に世界中に広まっている。合気道は植芝盛平翁によって昨世紀に創立された武道だが、武道としての位置付けだけでなく、人々の思想観までに影響を持ち始め、合気道は武道を超えたライフスタイルの領域まで進んできたものと思う。言い過ぎかもしれないが、ある意味では禅の思想のようなインパクトも持ち始めている。アメリカなどではコンフリクトリゾルーション(つまり、対立・紛争状況を解決する)するための経営的手段にも使われたり、事業を展開する上で合気道的なマインドで衝突を回避しながら皆が前に進む際のビジネスモデルに合気道を導入している人もいる。だから、英文版アマゾンドットコムにキーワードとして"Aikido"を入力すると、何と4277もの書籍の案内が出てくる。もちろんその中には絶版になったものもあるが、合気道がいかに武道を超えたところまで広まってきているのか示す一つの尺度だ。

合気道には試合がない。人々が稽古をする時にお互いに切磋琢磨する訳だ。決して弱者の武道ではないのは、機動隊や逮捕術として婦警にも合気道の指導がされていることからも判ると思う。試合がないから合気道にはオリンピックの対象にもならない。しかし、ゲーム化しないでいられるために合気道が真の武道としての奥深さが残されて行くのだと思う。もちろん、ヨガやピラテスのように健康のために稽古されている方も多いだろう。しかし、欧米だけでなく、中東、アジア、中南米、アフリカなどでも日本的な礼儀も浸透してきており、稽古する相手との切磋琢磨の過程で自然に対する畏敬の念が高まる感じがする。自分だけが、あるいは勝者だけでこの世の中で生きているのではなく、他の人々あるいは自然界との共存があってできるのだという自然のことが、植芝翁の伝記を読むにつけ理解できてくる感じだ。武農一如を唱えた植芝翁の考えはきっと、多くの人々の心を癒すことだろう。日本の武道が、武闘ではない、壮大な精神文化論、社会的なヒーリング、そうして多くの人々の健康のために一つのロハス的現象として世界に広まっているのは、心から喜ばしいことだ。

訳者としての苦労話はここで書くことをしないが、私の英訳を、見事に流れるような英語に書き直してくれたMIT大学の先生であるメアリー・フューラー女史にチーム・メイトとして感謝の言葉を捧げたい。

Sunday, August 10, 2008

節電、代替エネルギーに走る米企業


自動車文化の発達は、アメリカの都市をだだっ広く押し広める効果があった。国土が広いアメリカは、一部都市部において超高層ビルがあるが、ほとんどの街の郊外のショッピングセンターと言えば、せいぜい2−3階建ての建物だが、とてつもなく広い敷地に広大な面積で建物が建てられているのが現状だ。だから、一方では、容積に対する空調などの効率は悪いが、平たい屋根面積は多く、採光を確保したり、ソーラーパネルなどを設置するのには最適だ。私も長い間、あれだけの面積を活用しない手はないなと思っていたが、ここへ来て、特に税制面での優遇策をとっている州では、急速的にソーラーパネルの設置が行なわれるようになっているらしい。

ニューヨークタイムズは、次のように報じている。この数ヶ月、ウォールマート、Kohl's, セーフウェー、ホールフーズなどが大規模なソーラーパネルを店舗の屋根に設置はじめている。この背景には、12月末日に期限切れする税制優遇策を確保すると云うことらしい。まだ、まだ、屋根にソーラーパネルを設置したチェーンストアは限られており、設置したところでも拠点数の10%にも満たない。しかし、連邦政府が、税制優遇策を再度施行したり、州政府などでも実施するところが出てくれば、ソーラーパネルの設置は急加速化してくることが予想される。

これは、税制面だけの問題ではなく、代替エネルギーを設置している姿勢を見せることによって、環境派としてのレッテルを貼ってもらうとするPR面での意義も大きいようだ。すでに、ボールダーの店舗をはじめ、多くのところでは「グリーンエネルギ店舗」のステッカーを張り出しているところも多いが、今後このペースはますます広がってくるだろう。

デパートのKohl'sは、すでに43拠点がソーラーパネル設置をしているが、今後数ヶ月でそれを85拠点まで増やそうとしている。Macy'sにしてもしかりで、現状では18拠点あり、年末までには後40拠点に設置をすると云うことだ。スーパーの大手、セーフウェーも23拠点にソーラーパネルを設置しようとしている。その他に多くのところでソーラーパネルの設置がとり行なわれるようになっている。

慎重派として知られているウォールマートは、現状では17拠点にしかソーラーパネルを設置していないが、規模の経済を欲しいままに動かせるウォールマートとしては、かなり大掛かりなことを考えているに違いない。世界で最大のリテーラーである巨人ウォールマートは、アメリカにおけるスーパーセンターやディストリビューションセンターだけでも4100カ所を誇っており、ニューヨークタイムズ紙が報じる数字によると、その屋根面積を合計するだけでもニューヨークのマンハッタン島にほぼ匹敵する面積であるというから恐ろしい。つまり23平方マイル(約60平方キロ)と云うことだ。

現在、各企業がソーラーパネルの設置のために動いていることから、ソーラーパネルの値段はかなり高いらしい。供給が需要に追いついて行けないと云うのが、現在の状態かもしれない。しかし、需要はさらに高まりそうなので、ソーラーパネルのメーカーもキャパを増やす方向で動くのは想像できるだろう。実際株式市場のアナリストは、現在のソーラー市場は昨年までの70億ドルの市場規模から2010年までには300億ドル規模に成長するだろうと見ているらしい。これを後追いするかのように、州政府は2010年までには石炭以外などの代替ソースから発電量の20%を引き出すように義務づけているし、その数字は2017年までには33%までに引き上げられるようになっている。

一つのチェーンがソーラーパネルを設置したところで、インパクトはあまり大きくないだろう。しかし、社会的な気運の盛り上がり、グリーンなイメージの必要性から、多くの企業がソーラーパネルを設置するようになると、勢いが高まるのは事実だ。そうして、その勢いいつの間にか、ソーラーパネルの生産効率とコストの低下をもたらす直接の引き金になるだろう。ポジティブスパイラルの始まりだ。しかも、一回設置したら、その後のエネルギーコストが下がってくるので、企業側の反応もさらにポジティブになってくるだろう。

ソーラーパネルだけではない。多くのチェーン店は、最近ではUSGBC (US Green Building Council)が発行するLEED(Leadership in Energy and Environmental Design)認定を取得するべく動き始めている。当然、認定書をもらうことは申請手続きも面倒であり、コストも高いが、それだけ系統的にエネルギーの効率化を求め始めていることを示しており、ただ、単にオペレーションコスト削減だけでなく、それを消費者や投資家にもきちんと説明できるような内容にするべく努力している証左だ。こうなると、設計、建築事務所なども省エネから、より積極的な代替エネルギーを活用するビル設計へと変化することになり、認定の意味するところは大きくなってくるのは環境のためにもとても良い結果になるだろう。ロハスは、アメリカではあまり知られていない言葉だが、その概念は着実に広まりつつある。

Saturday, August 09, 2008

ホールフーズ、牛のひき肉を自主回収

ナチュラルやオーガニックビーフなどを取り扱うホールフーズが、病原性の大腸菌問題で、発病者が大量に発生する前に自主回収をすることに決めた。この牛肉の生産者は何と、コロラドのコールマン・ナチュラル・ビーフ社なのだが、原因は不明だが、衛生上問題が多いとされ、アメリカの食品衛生局としょっちゅう問題を起こしていたことがある食肉加工業者のNebraska Beef社経由で調達していたものであることが判り、ホールフーズが自主回収という緊急策に出たというものだ。

ネブラスカ・ビーフ社は、度々、衛生管理の問題からFDAの査察を受けるなど問題を引き起こしていたところとして知られ、今回、ホールフーズ以外のスーパー(クローガーなど)に卸していた牛肉のひき肉が、東部においてO157の大腸菌発生のために31人が発病するなどリコールが先行していたばかりだ。衛生当局は8月1日にホールフーズから牛のひき肉を買った人も7名発病したと聞いた段階で自主回収に立ち上がった。

ホールフーズは、信頼のあるコールマン・ナチュラル・ビーフ社から調達していたので安心仕切っていたのだろう。なぜ、ナチュラルとして伝統あるColeman Natural Beef社がこのようなネブラスカ・ビーフのような問題の多い食肉加工業者を使ったのだろうか?コールマン・ビーフ社がMeyer Natural Angus社に身売りされることになっていたこともあり、コールマンの体制に何か問題があったことだけは事実だ。とにかくホールフーズ社にとっても不思議な現象のようだ。コロラドのように、自然の恵みの雨があまり多くないところの牧草はあまり青々としていないだけか、最近では餌用の穀物の値段も高騰していたこともあり、ただでさえ、競争力がないナチュラル・ビーフのコストが、最近高くなっていたために、経営が苦しくなっていた可能せいもある。今後の関係者の情報をかき集めてみたいと思う。

コロラドは回収の対象となっていないようだが、いずれにしても地元の安心企業の不手際もあり、しかも、拙宅でもよく使うコールマン・ビーフなので、じっくりフォローをしてみたい。関係者ではないので全ての背景が判るようになるとは思えないが、少しだけ調べてみたいと思う。いずれにしても、大手の食肉加工業者のレベルの低さが、毎度問題にされてきている背景は何なのだろうか?このような事件が起きると、多くの食肉が処分されたりしているので経営的にも大きな打撃のはず。繰り返される背景に、何か訳があるのだろう、、、

Thursday, August 07, 2008

ミニ店を導入する予定のウォールマートの影響

スーパーマーケットの激戦に関して少し書いたのでもう一つ付け加えよう。これまで、ナチュラルスーパーの最大手のホールフーズは、事業を拡大するために、店舗面積を増やし、取扱商品点数も増やすような戦略をとり続けてきた。その一環で新規の店舗面積が8万平方フィートくらいのところがいくつも出てきたのは多くの方もご存知の通りだ。ナチュラルスーパーとしてはかなり大型になるボールダーの旗艦店が8万スクエアーフィートになるのは、理解されているところだ。一方では、スーパーの最大手のウォールマートなどは、低価格路線で事業を展開してきたのだが、「いつも低価格」と云うスローガンから「Save Money, Live Better」つまり、「節約して、より良い生活をしよう」と云うスローガンに変えたのはごく最近だ。ウォールマートは、スーパーセンターと言う巨大店舗を抱えているが、どうも機動力が高く、低価格路線から離れた新たなチャンネル構築を目指そうとする動きに出始めていると云うのが最近の話題だ。

ウォールマートは、ホールフーズなどの発展には大いに興味を持ってきたが、持ち前の経済力、購買力の違いにより、ホールフーズを真似することはあっても、それ程脅威を感じてきたとは思えない。本心を言えば、ウォールマートが脅威を感じているのはイギリスの最大手のスーパーチェーンのTescoのアメリカ襲来だろう。現在、TescoにしてもWalmartにしても手の内を明かさないで、着々とお互いの手を探り合っている。ウォールマートがアリゾナ州フェニックスの市場においてはっきり何をしようとしているのか定かでないが、部分的な情報の漏れから新規に取り組もうとしているいくつかの方向性が表面化している。パイロット店舗と称して動き始めているウォールマートが何をするのか注目されるところだ。ウォールマートがMarketside(マーケットサイド)と云う名前で新規店舗の実験をこの夏後半に始めることをほのめかし始めているからだ。最近その人材募集のウェブ広告が出されたりしており、メディアやブロガーたちがウォールマートの動きをパパラツィーのごとく追いかけ始めているからだ。

まず判ってきていることは、小型形式のグロッサリーで名前をMarketsideと決めたことだろう。そうして、ロゴがここに掲げられているものになりそうだと云うことだ。これがはっきりしてきたのは商標登録された情報から判ってきたらしい。

アリゾナ州のフェニックス界隈で展開される4店舗の大きさは1万5000平方フィート(約1400平米)になるなることが見込まれている。この面積が判ったのは4店舗の内3店舗での酒販免許申請に売り場面積が表示されていたからしい。この、売り場面積の1万5000平方フィートは、ウォールマートが現在所持している小売店規模では一番小さい「Neighborhood Market」形体のの3分の1くらいのプチ店舗になることが見込まれている訳だ。

もちろん、ウォールマートがこのMarketsideでどのような事業を展開するのか、実験段階なのでまだ確定していないと思うものの、関係者が想定している、事業形状は次のようになる模様:

1、必要最低限のベーシックグロッサリーを揃える
2、より上級指向の特選やナチュラルフーズ(ドライグロッサリー品)
3、フレッシュなミートおよび生鮮野菜果物
4、惣菜・テークアウトの上級もの

最後の項目については、Marketsideがどのような惣菜やデリー品目を取り揃えるか見えてこないらしいが、Tescoが展開している広範でアップスケールでないFresh and Easy Neighborhood Marketに対抗するものを出すのなら、ここが差別化の要素になるだろうと見込まれている。ウォールマートは"City Thyme" と"Field & Vine"の二つの名前を商標登録したらしいので、Marketsideの惣菜商品群のためのブランディングのために使われるだろうと憶測されている。

北米で4000のスーパーセンターを保有するウォールマートの販売力は凄いが、あまりにも大店舗なので、多くのコミュニティではウォールマートの進出が認められていないことが多い。ボールダーのように、市民がウォールマートの進出に反対してきたところも少なくない。サンフランシスコのベイエリアなどもそうだし、広大な郊外にしか不動産を取得できなかったこともあり、都市部での進出が阻害されてきたと言う戦略的なマイナスも自己認識しているのだろう。また、これまで、Always Low Prices (Everyday Low Prices)などの標語からSave Money, Live Betterとよりライフスタイルをも加味したメッセージにしてきていることもあり、ウォールマートが都市部のより裕福層にもアピールできるようにしようとしているのかもしれない。ロハスや知的層に受け入れられるようになるのには、商品形体も変えなければいけないだろう。イギリスのTescoの襲来を押し止め、一方ではナチュラルスーパーのホールフーズのこれまで持っていた市場にも食い込むことも考えていると考えてもおかしくない。

Tescoが展開し始めているFresh and Easy Neighborhood Market形体はホールフーズがボールダーのベースラインにあったワイルドオーツの前店舗を改装するときのテーマに似ている。日本的なコンビニの形体でナチュラル、オーガニックの食材を気楽に買えるような場を提供しようとして、各大手が動き始めている訳だが、店舗面積がどのように変わろうと、各社がナチュラル、オーガニックな食材を提供する方式として考えていることで、消費者のニーズを汲み取ろうとしているのは判る。ナチュラルやオーガニックのニーズがこのように高まることは、生産者に対しても大きなディマンドになることは間違いなく、アメリカにおける、コンベンショナル(一般品)な食材がよりナチュラルとオーガニックへと転換して行く原動力になりそうだ。

大手スーパー、セーフウェーのオーガニック戦略

アメリカ経済の減速とインフレの傾向が相まって、アメリカの消費者は苦労し始めている。経済が順調に発展しているときとは違い、消費者は中身を落とさないで、必需品や食品の買い物の節約に必死だ。そのことを非常に端的に現しているのが、スーパーマーケットのプライベートブランドへのシフトと急成長だ。

プライベートブランドというと、どうしても昔は自社ブランドで劣悪なデザインのパッケージングを行い、低価格で販売していた時代があった。そのためにプライベートブランドと聞くと、少し懐疑的になることが多かったのも事実。しかし、アメリカでは、各大手スーパーは、自社ブランドのイメージ発揚に躍起だ。とくにメッセージ性を高め、トップブランド商品の品質に近づけるように努力してきた結果だ。ネーミングもしっかりと定め、パッケージングデザインも光り始めている。そのために、アメリカのスーパーマーケットチェーンでプライベートブランドを提供しているところは全て大成功をしているのだ。景気が悪いと入っても、消費者が必需品の買い物を控えることができないからだ。そのために、トップブランドのものよりは、価格がよりリーズナブルなプライベート品に流れているようだ。スーパーマーケットの大手である、ウォールマート、クローガー、スーパーバリュー、セーフウェーなどは、プライベートブランド品の売り上げ増で嬉しい悲鳴を上げている。

このプライベートブランドの商品が、外見だけでなく、中身的にも改善してきたことの裏付けは、限られた家計費の人だけでなく、どちらかと言うと高額所得者層の中でも受け入れられ始めていることからも判る。当然、品質の大幅な改善があったからこそできたことだ。これまではドライグッズ、加工品などが主たるものだったが、最近では、乳製品、肉類、青果物なども対象になるなど、プライベートブランドの範囲が広まってきている。しかも、その中でも、大きな発展の基軸になっているのがナチュラルとオーガニック製品のプライベートブランド化だ。


今日ここで紹介するのは、アメリカスーパーマーケット、ドラッグストア業態の中でランキング4位のセーフウェー社は(純スーパーではクローガーに次ぐ2位、ただし、王者ウォールマートについては別カテゴリーに入っているので簡単に比べられない)、自社のO Organicsの事業があまりにも成功をしたので、自社ブランド商品を他のリテーラーにも販売して行くことを発表したくらいだ。O Organicsを立ち上げてまだ2年間しか時間が経過していないので、その急成長ぶりがうかがえるというもの。その他各社のオーガニックプライベートブランドの動向はまた報告するとしても、自社の販売網を超えたところまで売り始めているセーフウェーのオーガニック商品戦略は大いに注目するに値する。ナショナルブランドに影響を与えない訳はなく、今後のポジショニングに変化が出るのは必至だろう。

オーガニック商品は、とかくアメリカでは、特別扱いを得て、高額所得者にしか届かない価格で売られていることが多かった。しかし、大手スーパーが、徐々にオーガニックの導入と、さらにプライベートブランドでのオーガニック商品の投入によって、オーガニックはより一般大衆の手の届く範囲に入ってきた。セーフウェーは、それをオーガニックの民主化と位置づけているようだ。

セーフウェーが2005年に発売し始めた、O Organics はまさに破竹の勢いで伸び始めている。2005年の初年度だけで1億5千万ドルの売り上げを自社の1700強の店舗で達成した。現在は30カテゴリーのラインで300のSKUを持っている。2008年には売り上げが4億ドルになるだろうと見込まれている。また、もう一つのラインであるEating Right ブランド商品だけで2億ドルの売り上げを見込んでいる。このブランドは高ファイバー商品や健康に視点をおいた商品戦略なのだ。

アメリカの景気が、現在のところ芳しくないが、それでも、このオーガニックや健康に配慮したプライベートブランドは、後退する気配を見せていない。こうやって見ると、トップのチャートでホールフーズの利益率がマイナスとなり苦戦を強いられていることが判る。プレミアムの販売だけでは、景気後退の時にオーガニックの販売が壁に突き当たるのは証明されているかのようだ。オーガニックを欲しがっても、高価格帯なら、客離れが進むというものであり、その中での、セーフウェーのO Organicsの販売増はうなずけるというもの。ナチュルとオーガニック業界のリーダー的な存在である、ホールフーズが、手をこまねいている訳ではないが、戦略の転換が求められてくることになろう。ここ一年の株価の下落傾向を見てもホールフーズのおかれている市場環境がいかに難しいものか理解できるものだ。二桁の成長率を経験していたホールフーズは、店舗展開のスピードを落とさざるを得ない状況にも追い込まれている。

O Organicsの顧客対象は新生児の母親と言うことらしい。新生児の母親たちは、よりクリーンで、より健康な食品を求めているからだそうだ。利便性もプレミアムの条件に入ることから、セーフウェーのO Organicsブランドは、いろいろなセグメントカテゴリーをまたいで設定されている。ミルクやバターだったり、コーヒーも含めたり、冷凍食品などもある。しかも純正な食品だけでなく、スナック類にも手を出している。その事例がポップコーンだったり、チップスとサルサだったり、アイスクリームなどもある。O Organicsのブランドを形成しているのは Lucerne Foods, Schreiber Foods, Ready Pac Produce, Overhill Farmsなどが調達したり、加工したりした商品群だ。これらの会社はBetter Living Brands Allianceと言うグループを形成して、セーフウェーのO Organicsをサポートしている。

アメリカで、オーガニック商品需要は供給力を超えて伸びている。オーガニックの生産認定を受けるのに、切り替えに時間がかかるからだ。特に農産物の場合は、コンベンショナルな農場からオーガニックへの転換に時間がかかるからだ。だから、オーガニックの価格帯に大きなプレミアムがついてしまっている。景気後退の時期にも重なり、この産業は大きな変革の時期に直面している。流れはよりオーガニックと云うことで予測できるとしても、その中でのプレイヤーの動きがどうなるのか、予断を許さない。ロハスの発展期の悩みであることだけは言えるだろう。

Wednesday, August 06, 2008

変わるか、クルマの嗜好

今日はいくつかの長期トレンドのチャートを見ながら、アメリカが現在直面している問題が突然に現れたのではなく、アメリカの政府、メーカー、そうして消費者のエネルギーの現状を無視してきた長期的なトレンドの結果である点を示してみたい。ブッシュ大統領のエネルギー政策だけが問題ではなく、アメリカのクルマの文化自体が、制御しにくい誤った方向に行っていたのだと云うことを判っていただけると思う。しかし、現実の問題の直面し始めて、アメリカの消費者も、やっと目覚めてきたという気がしてならない。もちろん、一部の人間は、まだ、自己責任を取ろうとせず、世界の現状を無視し続ける人もいるだろう。だが、世界のエネルギー余剰の現状が変わるにつけ、アメリカの事実認識が変わることは避けられない事態のようだ。

アメリカ人は、長いこと、クルマと云う移動の自由を与えてくれる、この文明の利器に惚れ込んできていた。しかも、より大きく、よりパワーがあるもの、より自己主張できるアクセサリーがあることを求めてきていた。他人との差別化を求める心理については、今後もなくならないだろうが、大きなモノ、パワーのあるモノという欲求は変わらざるを得ない事態だ。その精神的な背景には、これまで大きなクルマでよりパワーのあるモノを買えば、周りの人が、そのヒトは成功者と判定されていたのにも関わらず、エネルギー価格高騰の中では、それが、全く違った社会判断につながり始めたからだ。現在大型車や、トラック、RVなどに乗り続けているのであれば、以前であれば、豊かさ、タフな性格、前を行く小型車を潰してしまう奢りがある人間だったモノが、周りの人は次のように判断するだろうとニューヨークタイムズの記事は報道している:

1、セカンドカーを買いたくとも買えない
2、現在のクルマのリースから抜け出せない
3、このクルマを売れないから新しいクルマに買い替えることができない

などと周りが見る雰囲気が変わってきているのだ。それに、環境的な側面も表面化して、地球環境を破壊し続けているが、このモンスターから抜け出せないでいる人と云う雰囲気なのだ。ゼネラルモーターズが、大型車の看板モデルだった軍用車から派生してできたハマーモデルを売却しようとしていることからも想像できる。

アメリカ人のクルマを廻る心理は確実に変わっているのだ。クルマがセックス・シンボルだったり、個人の成功度の尺度、物質的な所有欲のシンボルだったりしたモノが、大型車で燃費の悪いクルマを乗り続けることで、周りの見方もどんどん変わってきているので、クルマそのものの象徴的なプラスが、いつの間にか、社会的に受け入れられないネガティブなモノに変貌していると言うのだ。これまでクライエントに大型SUVなどを見せびらかせた人が、そのようなクルマに乗り続けていると、現実離れした非常識な人と見られかねない状況になった。これまでは大型化であることで快適性や安全性(自分の方が相手より安全であると云う身勝手な安心感かも知れないが)を求めていた人たちが、経済性、環境性、商品信頼性など、別の次元の要求項目にシフトしていることが考えられる。もちろん、デザインやスタイルが良いことに越したことはなく、近所や仲間の人に、羨ましがれる点があることは必須であるのは当然だ。でも、嗜好は、これまでのアメリカでは考えられない方向になってきたのは事実だ。
BMW社が買収したローバーのミニクーパーは、上級モデルやアクセサラリーがついていればいるほど売れるという。自慢をしたがる気持ちは無くならなくとも、これまでの方向性とは違っているのだ。もちろん、社会全体が変化するのに時間はかかるだろう。でも、変化が始まったことには違いない。

グリーンな嗜好をどのように満たして行くかが、今後の自動車の文化を見極める上で面白いところだ。クライエントだって、グリーンなクルマだったら、反応が良くなる世の中だ。しかも、中東や反米的な思想を持つ産油国に金を支払いたくないという「思想的」「愛国的」義務感も出てきているらしい。メルセデスベンツ社が買収したスマート車に関心が高まっているのはうなずけるところだ。

アメリカの社会的インフラは、東海岸の大都会は別として、公共交通機関は少ない。しかも、インターステートハイウェーのネットワークが出来上がった後成長した街ほど、クルマ依存の度合いは高い。今後ともプラグインハイブリッドや電気自動車の普及発達で、アメリカに再度クルマが大型化する傾向がない訳ではないと思うが、現状では、ここ当分クルマの嗜好はグリーンな方向へ動いて行くだろう。しかし、電気自動車が、インフラとともに出来上がってきた段階では、また、大型車シフトがくる気がしてならない。アメリカのクルマ文化は、広大な国土に合わせて大型車が潜在的に好まれていると考えるからだ。アメリカのクルマ文化が、どのように変わっていくか、あるいは定着して行くのか見物だ。

Wednesday, July 30, 2008

暗礁に乗り上げた多国通商交渉とロハスの視点


WTOの多角的通商交渉(ドーハラウンド)が、合意に達することができずに、座礁したとの記事を読んだ。総括的な関税の引き下げという大きな目標を掲げての交渉を2001年から行なってきた各国政府関係者の失意は大きいかも知れない。私も長いこと自由貿易を展開することについて賛成の立場だっただけに、今回の合意に至れなかった背景がどこなのか、世界の貿易の基本は変わってきているのか、知りたくて、多くの新聞の報道を読み漁った。このブログの読者の中には、多角的通商交渉とロハスにどのような関係があるのか不可思議に思う方がいると思うので、少し今回の交渉の座礁について私が判る範囲内でまとめてみたい。当然、私はボールダーと云う辺境に住んでいて、交渉と関係ないのでとんちんかんなことを言うかも知れないが、各国の意思がまとめられなかった背景などについては十分に検証するだけの情報はありそうだ。

さて、今回の参加者の中でまとめる方向から逸脱したのはどうも中国とインドの存在が強いことが多くの論評で出ている。その中で、食糧自給や自国の食糧安全保障と深くかかわり合っているようだ。中国はこれまで輸出市場を求めて、自由貿易を強く標榜していただけに、その姿勢の変化は、中国にとっての石油などのエネルギーや原材料調達のようにゲオポリティックスの範疇からすれば、食糧自給も外せない大事なポイントと見直してきたことを示しているのだろう。中国が2001年11月にWTOに加盟をしてから、自由貿易原則を強く押し出してきていた。アメリカが、急増する中国からの繊維品などの輸出にセーフガード条項を発動して、アメリカ市場の生産者を保護しようとしたときなどについても大きく反発をしていた訳だから、その変化の意味は大きい。

今回のドーハラウンドの交渉において、中国もインドと同様に農産物などに関するセーフガード(輸入制限や関税の一時的引き上げを認める緊急避難の仕組み)を強く求めたらしい。アメリカなどの欧米諸国の中には、農業を保護しており、大規模農法や、機械化によって、生産性やコストは効率が良いので、国際的な競争力はめっぽう強いときがあるからだ。下手に、アメリカの農産物の輸入を完全に自由化すれば、国内農業は押しつぶされてしまう可能性もある。だから生産性がまだまだ低い中国やインドなどが、穀物メージャーの思いのままになりたくないと考えたのは無理からぬ話と見える。石油、工業原材料も海外依存度を高めている中国としては、食糧の依存度も高まることに警戒を強めたのは判る気がする。だから、話し合いは座礁してしまった。

今年は、5年おきに法案化されるがアメリカの農業法が通過したばかりだ。巨大な政府の補助金がアメリカの大手農業企業へ、直接間接に支給されて行く。自国の農業に巨大な補助金が出ているアメリカでも、途上国からの農産品に対してはかなりの関税をかけている事例がある。それなのに、アメリカが輸出するときは自由にさせろと云うのは強権を持つ者の奢りと言えなくもない。特に他国、しかも中国やインドのように準大国からして見ると、食糧安全保障が絡んでくると当然心配にもなろう。

一つの良い事例が、アメリカが自国のエネルギー自給を少しでも助けようと言うことで、突然にトウモロコシを使ったバイオエタノールの生産を奨励するようになり、バイオエタノールの生産メーカーに大量のインセンティブが回るようになったことから、世界の食糧市場に異変を来たし、基本的な穀物の市況は高騰してしまった経緯がある。悪意がなかったとしても、多くの国がこれによって消費者物価が高騰して甚大な被害を受けたのは言うまでもない。食糧の国家安全が維持されるのには、大きく懸念されるような案件であるのは間違いない。古い話になるが70年代のニクソン大統領のときも、豚の餌になっていた大豆が不作の時にニクソンは大豆の輸出を制限するような動きに出て、日本を驚かせたこともある。その際日本は、大豆の供給先をブラジルへ転換するなどの作業をせざるを得なかった。国家リスクを考えるとただ事ではない。

アメリカの行動だけが原因ではないが、天候やその他の事情で、世界的な穀物市況は高騰をしてしまっており、人口超大国の中国とインドが恐れを為している背景は理解できないでもない。輸入に頼るようになると云うことになると、エネルギーなども海外に依存している関係で、中国が神経質になったのは推察できる。

アメリカ国内でさえ、巨大穀物メージャなどに対する反発が強い。もちろん全ての消費者がそれを感じている訳ではないが、巨大資本が中小の農家を吸収合併してきて、農業が巨大産業化してしまっていることに対する懸念は強い。種子にしても生物多様性を無視したような形で、特殊な耐性を持つ種子の特許化に動いたりしているために、多くの農家の自由の幅がかなりきつく縛り上げられてきている。ファーマーズマーケットなどの動きが出てきているのも、よりローカルで生物多様性を維持しようと云う間接的な消費者の抵抗の印とも言える。

国家レベルでの国益などを考えた際は、確かに他国のことを先に考えるよりは、自国の利益を考えるべきなのかも知れない。しかし、交付金漬けの一部産業が、国益と称して輸出圧力をかけて行くのには、どこか抵抗を感じ始めているのは事実だ。地産地消の点からも、フードマイルの視点からも、あるいは巨大資本のコンベンショナル農法などにも問題がありそうだ。ドーハラウンドが今後どのように推移するか、見守って行きたいが、発展途上国や生物多様性などなど、今後の多国間通商交渉の中でもロハス的な議論がされてもおかしくない気がする。日本においても、自国の食糧自給問題が、取りざたされているが、どうも世界的な局面において、その声は小さい。日本の農業を守ること、日本の食糧安保を守ると云うこと、日本の環境を守ることで、日本の政府がとらなければいけない施策は多い。国民的な議論がより高まって欲しいものだ。

Monday, July 28, 2008

ファーストフードへの警戒高まる


ファーストフードほどアメリカ人の合理性を示す尺度はないかも知れない。アメリカ人は何が何でもマルチタスキング(つまり複数の作業を同時に行うことを言う)をしたがる国民だろう。クルマを運転する時にコーヒーを飲み、ハンバーグを食べている。クルマの仕様でカップホルダーがいくつあるかが気になる消費者が多いのでも頷ける。全てが時間の節約、効率の高まりなどを目指して、社会経済の仕組みにも影響を与えてきた経緯がある。しかし、そのマルチタスキングは、必ずしも効率を上げないことが判ってきている。昔の日本では音楽を聴きながら勉強することなどは「ながら族」と言われていたが、今の日本でも、それは社会概念でもなくなったくらい一般的な事象になってしまっており、「ながら族」と云う言葉さえ聞かれなくなったのだと思う。

アメリカは、多民族国家であり、伝統からの束縛を嫌ってきた国であることから、一般的あるいは伝統的な食事のマナーもあまり優れていない面がある。子供の食事についてもフォークやナイフの使い方さえしっかり教えられない親も多く、食べるモノがほとんど手でつかむが多いことはこれまでも述べてきたところだ。そういう中で、ファーストフードやファーストフードのテイクアウトは、時間節約、便利さ、コスト効率などの集大成と言えなくもない。ホットドッグやハンバーグなどがアメリカのライフスタイルの象徴と言われる所以だ。

しかし、国民の中における肥満の増大で、便利で、コストが安いことだけに眼が行かなくなってきていることも事実だ。かなり極端なことかも知れないが、MSNBCが伝えるところによるとロサンゼレス市議会は、低所得者が多く、肥満の比率が高い南ロサンゼレス地区におけるファーストフードレストランの事業許可にモラトリアム(事業発給許可一時停止措置)をかけることに決めたらしい。まだ、市長の最終的な決断が求められるとのことだが、市議会議員の大多数が、ファーストフードのレストランを増やさないように決断したと云うことが画期的と言えるだろう。アメリカ的でない判断のようにも見えるからだ。

その背景にあるのは、南ロサンゼレスには、健食などを提供するレストランはまずなく、ほとんどがファーストフードで占められており、低所得者を食い物にしていると判断されたからだ。健食のオプションさえない地域なので肥満が増えるのは仕方ないという発想だ。だから、モラトリアムを導入して、健食を提供するようなレストランがくることを願っているのだろう。しかし、ファーストフードは、宣伝広告力を持っているので、教育レベルも低い地域の人々に健食を提供すると言っても、その健康の意味することを説得させることは難しいことなのだろう。市議会の活動が、悪いことだと言わないが、ファーストフードレストランのメニューを大幅に改善させるように指導しなかったら、あまり意味がない気がする。また、地域住民が、「食」についての意識を変えていかない限り、最も便利で、コストも安く、空腹を満足してくれるモノに惹かれ続けるのは当然だ。どうやってそれをやるかは頭の痛いところだろうが、若者に食(農産物も含む)を作る喜びを教えていくことから始めなければいけないだろう。私にはそんな気がしている。学校教育の中に畑作業をし始めているコミュニティーもあり、野菜などを作る喜びから始める作業で、若い人々の意識が大きく変わっているとの報告もある。

ロサンゼレス群の公共衛生部のの数字によると、南ロサンゼレスの人口の30%ははobeseカテゴリーの肥満で、都市部の19.1%、経済的に豊かな西部ロサンゼレスの14.1%に比べてかなり悪い。黒人やラティーノのマイノリティーは特に肥満度が高い。ラティーノの28.7%、黒人の27.7%が過度の肥満と云う数字だ。これに対する白人の過度の肥満は16.6%だという。ハリウッドではファーストフード婦負ションと云う風刺映画もでき、ラティーノがいかに搾取されているかなども社会風刺されている。驚くべき数字だが、南ロサンゼレスのレストランの73%がファーストフードというレポートもでている。豊かな西部ロサンゼレスのファーストフードレストラン数は、低いと言っても42%だそうだ。アメリカの食文化がいかにファーストフードで占められているか判る。

カリフォルニア州は、州レベルとして初めて健康に悪いとされているトランスファットの使用を禁止した先進的な州政府だ。日本でのトランスファットが悪いという意識はまだ少ないようなのでここでも、世界の潮流として何が行なわれているのか強調をしたい。アメリカから習った悪いモノをいつまでも保全する必要はない。日本の政府も国民の健康を考えているのだから、先端的な動きに強権を発動しても動くべきだろう。メーカー指導もどんどんするべきだと見ている。

ロハスのメッカと言われているボールダーでも、ファーストフードはあるが、極めて限られていることはこれまでも述べてきた。しかし、先進的な州や自治体は、ファーストフードの制限をしようということで動き始めているところにアメリカの切羽詰まった状況があると言えまいか?ファーストフードレストランの営業許可出さない市町村がボツボツ出始めている。いくつかは風光明媚なところで街の景観を崩す心配から認めていないところもあるが、肥満との関連で動き始めているところも多いのは注目に値する。ファーストフードのメニュー改善を盛り込み始めているところも出始めているので、この業態に対する社会プレッシャーは高くなることは間違いない。企業が自主的に動かないのなら、行政府が動くというパターンは望ましくない。しかし、変化が起きることだけは言える。

今後のファーストフードの展開については、この健食との絡みで大きな変化が出始めてくるだろう。その気配は既にでてきている。便利さやコスト安が問題なのではなく、健食をないがしろにして成長をしてきたファーストフード産業が新たな尺度で動かなければいけない時期が迫ってきていると云うことだ。ロハスの影響は、このようなところでも出始めているのは健全な方向転換への兆しと言えなくもない。