Monday, December 31, 2007

2008年を迎えて考えること


ロハスに関して云えば、21世紀になって出現したコトバだが、やっと2007年にかなり意味を持つようになった気がする。もちろん、環境、グリーン、リサイクル、代替エネルギー、「もったいない」のコンセプトなどは、これまで存在していたものの、消費者、企業、そうして政府機関などが、環境や健康を真剣に考えるようになったとっかかりの年ではないだろうか。

これまではバラバラに動いていた多くの社会運動が、日本や極東ではロハスと云う概念で括られ、ロハスと云う概念が一般化されていない欧米では、表現はまとまらないがナチュラルライフスタイル、ホールサム、グリーンなどの形容詞がつけられたライフスタイルが、徐々にではあるが主流にのし上がろうとしている。

私は、昨年はAdvertising Ageと云うアメリカでは広告業界の定番の出版物を購読していた。広告業界は、ウェブの浸透などで、右肩上がりの成長は見込めなくなっている産業の一つと考えるが、相当苦戦しているのが諸々の記事の行間から読み取れた。広告そのものは無くならないだろと思うが、片側通行だった、生産側の意向「だけ」の情報伝達ができにくくなっていることは明らかであり、消費者側の権利行使が、今までにないくらい強まってきているのが時代の流れと考えている。ここで広告業界を叩くつもりは当然ない。しかし、メーカーやリテーラーの意向だけでは購入動機につなげにくくなった中で、広告業界が苦戦していることを感じていると述べているだけだ。

人々は薄々感じ始めているが、これまで、環境問題や、資源枯渇の問題、医療健康維持の問題などは政府や大企業が率先して改革できないものだと云うことが実感され始めたのではなかろうか。医学の進歩は著しいが、一方では、薬漬けになった多くの市民は、医薬業界の言いなりになってしまってはいけないと云うことで、自己健康管理の意識も非常に高まっている。アメリカの知的層が中心かも知れないが、健康意識の高い人たちは、オーガニックを求めるのは、自己の健康だけを願ってではなく、需要を高めることによって、メーカーの生産プライオリティを変更させようともしている。しかも、オーガニックの進展は、化学肥料や、除草剤、殺虫剤などの使用を減らす二次的なベネフィットもあるので、それを運動のテーマにもし始めている。

私は赤ワインが好きだが、オーガニックのワインでもかなり良いものが出てきているので、通常のものからかなり切り替わってきた。1週間に2−3本は飲んでいるので、年間に120−150本くらいの消費になるだろうか。朝はカフェオレーを飲むが、これももちろんオーガニック牛乳だ。ほぼ毎日飲んでいるので、夫婦で140リッターくらいの消費になるだろう。このように、一家庭単位でも、数字は小さくはない。オーガニック消費が増えて行くことは、農地への化学品散布が減っていることを意味していることを考えると、小さな貢献だが、チリも積もればと云うやつであり、皆でオーガニックを消費すれば、生産者も無視し得なくなると云うものだろう。

私はアメリカの自動車メーカーにいたので、よく分かるが、長年アメリカのクルマメーカーは、燃費の問題を避けて通ろうとしていた節がある。しかし、徐々に日本のメーカーが燃費を意識した時代先取りをしてきたので、消費者は、度重なるガソリン高騰を意識し始めたり、中東依存を避けようとしたり、あるいは、地球環境を守ろうとすると云うことで、燃費効率の良いクルマに移行をしていった。アメリカの家電などでも、エネルギー節約の「スター」印のモノが多く出始めている。すでに家電を持っている人が買い替えるインセンティブはまだ少ないが、次々に買い替えるときに、節電対策ものを買うことは当然になってくるだろう。

地球温暖化などで、多くの人の意識は変わってきている。アメリカでは、連邦政府に頼ろうとする意識は少ないようだ。個人消費者の力の目覚めが、ロハス的な運動と連動になれば、今後のアメリカの消費意識は相当変わるものと考えて良い。消費大国アメリカが、一夜で根本から変わることはないだろうが、消費するものの選択肢の中に、今までだったら考えられなかったものが出現してくるだろう。新年もその動向を見守って行きたい。

Friday, December 21, 2007

代替エネルギーに参入を高めるベンチャーキャピタル

今年、地球温暖化問題が大きく脚光を浴びるようになって、この頃やっとアメリカでもホンモノの代替エネルギーに関する議論がなされるようになってきたと思う。長年凍結されていた、自動車メーカーの燃費の企業平均値目標が法的に引き上げられるようになったのは、産油州テキサス出身で石油大企業と近しい関係にあるブッシュ大統領の決断としては驚きとしか言いようがない。これまでは、小手先だけのエネルギー対策だったものが、徐々に、改革を加えて行かなければ、アメリカとしてもやって行けなくなるだろうとの危機意識の高まりは大変に嬉しい。もちろん、まだまだ改革を排除しようとする懐疑派の勢力は強いだろうが、賢い消費者あるいは実業家が先導して動き始めているので、後手の連邦政府も、真剣に動かなければいけなく理由も大いにある。

先月開かれたバリーでの環境国際会議で、アメリカ(一部日本も)は、世界の大勢から見ると大いに非難を受けた。環境をテーマにノーベル賞を受賞したアルゴア元副大統領もアメリカが進歩の阻害をしていると非難するなど、アメリカとて地球温暖化を全く無視続けることはできなくなったと云って良い。もちろん、国家政策として経済にダメージを与えずに、大幅転換をするのは、インフラの整備の必要性、弱者への対策、経済メカニズムの変換などを伴うだけに、難しいことはうなずける。しかも、石油に依存するアメリカの経済に影響力の強い企業の抵抗も相当なものだろう。

今回紹介する事例は、アメリカのニュートレンドと云う気がしてならない。ソーラーパネルを作っている新進企業のNanosolar社にスポットを当ててみると、何かアメリカの新しいインタネット時代の事業家の顔がちらちらと見え始めている。第二次インターネットブームで巨額の資産を築き上げた、新人類起業家たちが、アメリカの経済を、これまでにない尺度で産業転換を民間の力で試み始めているのだ。日本だったら、経済省などが音頭取りをするような案件なのだが、新進気鋭の若手起業家によって経済転換が試みられていることは注目に値する。

検索エンジンで一躍大成長をしたGoogle社の創業者のLarry PageおよびSergey Brin両氏は、社内の従業員がハイブリッド車を購入する時は会社から補助金を出していることでも有名だが、Nanosolar社などにも本格的に投資を始めている。もちろん彼らだけですべての資金を出している訳ではないが、ハイテク産業の巨財をなした起業家たちが動いていることで、スピードもやり方も重厚長大の従来のビジネスアプローチと大いに変化をしている。

Nanosolar社は、2001年に加州サンノゼで設立された、社歴が新しい会社だ。彼らのビジネスはソーラーパネルを生産販売することなのだが、エネルギー交換効率を指向するよりも、生産コストの引き下げに重点を移し、印刷技術で回路をプリントするなど生産原価を大幅に下げ、ソーラーパネルの普及率を高めようとするビジネスプランだ。すでにサンノゼとドイツベルリンに生産拠点を設け、サンノゼは2007年12月から、ベルリンの事業所は2008年第一四半期に立ち上げることを目標にしている。Nanosolar社の目標は年間生産キャパシティを430メガワットにするように考えており、アメリカの太陽発電パネルの生産を3倍近いところまで持って行こうとするものだ。

代替エネルギーなど見て行くと、とかく国家事業的な方策で考えられることが多く、最新鋭の技術指向も強い。何が何でも高くなってしまい、研究室では良いが実用化が難しいモノになってしまう可能性もある。一般消費者も使えるパソコン(つまり、パーソナル・コンピューター)を開発したのは、大企業のIBMなどではなかったことを考えると、このような新規エネルギー事業の発想を、国家的次元で考えることが無駄が多いと云えるのかも知れない。変化が遅いことに、苛立つ若い起業家たちが、機能、効率や最先端技術よりも一般家庭ででも簡単に使えるようになる単価の低い低コストの商品を作り始めたと云うのは、やはり底辺の広がりを加速度的に速めて行く最善の方策に違いない。単価を下げるために市場調査などもせずに、一挙に生産施設に投資手をしてしまったことに大いに敬意を表したい。パソコンなどの進化を考えれば、Nanosolar社の実験は大いに注目をしたいところであり、太陽エネルギー利用に関してアメリカのマーケットの反応も楽しみだ。すでに2008年生産分はすべて売り尽くしているようだ。この会社に、日本の三井物産も投資していることを聞いて、嬉しくなった。2007年のノーベル賞アカデミーの選択は、地球温暖化にスポットを当てることだったが、2008年は、代替エネルギーの分野で大きな飛躍をする年になるように願って止まない。