Friday, March 21, 2008

ボールダーを訪れた日本のバイオディーゼルチーム

石油燃料が動力源として大きな影響力を持ちはじめ、個人が移動をする自由を本格的に享受しはじめたのは、戦後のアメリカだろう。フリーハイウェーがどんどんと建設され、白い柵と庭付きの郊外住宅も夢でなくなり、モータリゼーションがはじまったのは1950年代のアイゼンハワー大統領のときだった。逆に、郊外住宅の出現は、クルマの必然性を高め、クルマ社会が確固たる存在となった。ドライブスルーや郊外の大手ショッピングセンターなどはアメリカの繁栄を示すバロメーターにもなったのだ。その後73年や79年に二度にわたるオイルショックを経て、地球資源が限りあるものと言われるようになっても、クルマ社会への依存は減るどころか、アメリカを超えて、欧州や極東の日本などにも転移した。

21世紀になり、モータリゼーションは、もはやアメリカだけのユニークな現象でなく、巨大な人口を有する中国やインドだけでなく、これまで物質的な余裕がなかったロシアや東ヨーロッパなども広まった。石油の産出が、その世界的に増え続ける需要を満たすことが難しくなり、石油の需要が逼迫しはじめている。多くの識者の中には、世界中の路上を走るクルマの増大が、地球温暖化の一因であることを語りはじめたりすることで、代替エネルギーの模索に真剣度が増してきている。水素自動車、電気自動車、トウモロコシなどを主に作られたメタノール燃料などを使うクルマなど、多くの試みがされている。メタノール燃料は一見、資源の再生が出来るということで、理想的に考えがちだが、トウモロコシ自体を生産するのに巨大な農業補助金が出されていたり、トウモロコシの生産にもかなりの「石油資源」が使われるなど問題も多い。しかも、トウモロコシがメタノールを作るために補助金をもらえるとなると大豆や小麦の生産作付けが、トウモロコシに転換されるなど、世界的に食糧の高騰につながってきており問題はエネルギーを超えて、食糧全体に広がり、厄介だ。その他の代替案が、現存のガソリン方式を乗り越えられないのだが、何とかしなければいけないという危機意識は高まっている。

今日、コロラド大学のボールダー校に、日本のバイオディーゼル車を持って世界一周を試みる3人の若者がきた。バイオディーゼルで試みられていることは、調理などに使った油などを再利用して、バイオディーゼル燃料に転換して、捨てるしかなかったものを再利用したりする考えだ。バイオディーゼルを試みているところは多く、市、大学や個人レベルでバイオディーゼルそのものは大して珍しくはない。しかし、山田周正、伊藤達也、村田さとりの3人のバイオディーゼルアドベンチャーチームは、クッキングオイルを回収するだけでなく、自らクルマに積載した製油システムを使い、車両を動かすということで画期的なことだ。バイオディーゼルの給油所はいくつかあるらしいが、それでも、製油所を抱えながら走っているようなものであり、廃油をもらうことさえ出来れば、それを再生しては知り続けることが出来るというトテツモナイ実験車両なのだ。今日は、大学の構内で、その仕組みの説明を受けて、彼らの行なっている世界一周と云う大構想は、ものすごいロマンに満ちたものであることが分かった。山田さんの話では、多くのヒトに不可能だろうと言われていたものを、また多くの善意あるヒトの協力を得て作り上げた、技術の粋を集めたものであることが理解できよう。

もちろん、このような廃油から燃料を再生していくのはとてもロハス的なことだ。ただ、私は、このデモのときに近くにいたアメリカ人と話しているときに、そのヒトは、室内空間の半分くらいが、製油設備やタンクのために使われ、ヒトの生活居住空間を最少限に抑えているのを見てびっくりしていた。アメリカだったら、UHaulてきな、牽引車両(trailer)を使うだろうとそのときに思った。日本人は、どちらかと云うと、まだゆとりを作るより、目標達成を優先するのだろうと思ったりした。旅は、アメリカの西海岸ではじまり、現在やっとコロラドだ。これから世界一周を達成するのには道のりは長い。この若者たちの大成功と武運をお祈りして止まない。

Sunday, March 09, 2008

マクロとミクロの循環


ニューヨークタイムズ紙に鳥に餌を与えたいのなら、まず虫たちに餌を与えないといけないという記事が出ていた。もちろん当然と言えば当然のことだが、都会の人間はとかく、鳩や小鳥たちに餌を与えるときに、どうしても家に残ったパンや買ってくる小鳥の餌を想定するに違いない。

よくミミズがいる土地は良い土地だと言われることがある。でも、ミミズが生きていける環境が必要で、それは様々な土壌菌が必要だということはあまり聞かれない。ミミズやその他の小さな昆虫が居れば、小鳥たちの餌になり、鳥たちも糞を落とし、自然のサイクルは動いていく。

最近の都会は、緑が少なく、その上で公園と言っても、人間様のことばかりを考えた施設であり、砂利が敷かれたり、コンクリートの遊歩道があったり、土壌菌の出現する場所などが少ない。子供の頃どろんこ遊びを経験してきた小生にとって、最近の子供は汚れて帰ってくるようなワンパク小僧たちがいるのだろうかと思ったりする。家では、清潔好きな母親が、殺菌石鹸や殺菌トイレタリーで家中が無菌状態のようになってしまっては居ないか?

その土壌菌が繁殖するように土地を改良するとなると、そのような考えでもってすれば良くなるはずがない。今回の富山訪問で大きな感銘を受けたのは、その土壌菌を培養して、農地や家畜の餌に入れている工夫と努力だ。現代人は、ますます土地から離れ、有益な細菌から遠ざかってきている。しかも、栄養価の下がった加工食品や人工肥料などで作られた作物などを食べている。レタスに虫がいるようなら、今どきの家庭主婦はスーパー側に抗議をするかもしれないくらい虫アレルギーだ。

トヤマNB菌を開発されたスズキファームの鈴木さんと永田さんは、もっともミクロの世界を見ている人たちであり、それがよりマクロの環境へ波及する力を感じ取っている人たちだ。循環型経済は、とかく人間の視点から見た循環ということだろう。だが、本来は、マクロとミクロは共生し合ってこそ、この世の中が健全に循環していることに他ならない。

野鳥の会など、鳥の観察をする人は自然を大事にする人が多い。当然のことながら鳥のハビタットを守ってあげることから、鳥の生息が増える訳であり、自然保護が大事になってくる。乳酸菌への関心の高まりは、この広義の自然循環を示しているものだが、特定企業が推奨している乳酸菌だけが良いのではなく、バランスの取れた乳酸菌に限らない土壌菌全般の活用も視野に入れるべきだろう。最も小さい仲間たちが、我々人間の大きな助っ人になっているという認識と自然観も必要な時期に来ている。

Thursday, March 06, 2008

進んでいる日本の有機農法

戦前まではほぼ一般的には有機農法だったものが、アメリカが押し付けて行った「科学的」農法信奉のためにここ数十年、日本の良き循環型農法伝統が忘れ去られ、日本の農土は薬漬けの土になってしまった。土本来が持っている、微生物群の循環型農法が軽視され、無菌でしかも「薬依存」農法が長いこと定着してしまった。近年、トイレの水洗化とともに、昔ながらの汲取式を知らない層の時代になってしまったが、その過程で、こと農業については土の持っている魔力が、半減してしまうような世の中になってしまった。青果物などは結果は見た目は良いが、栄養価が下がったり、場合によっては、残存農薬などがあるような農産物が増えてしまい、人間が長い期間にわたって築き上げていた土壌菌などに関する叡智が突然に消え失せてしまうようなことになった。農作物は、味がまずくなり、場合によっては残存農薬などによって、食べる人にとってアレルギー反応を引き起こさせるような事態にまでなっている。加工食品なども添加物が多くなっているので、医食同源というコトバが、まるで矛盾するかのような時代だともいえる。飽食の中にあって、抵抗力の下がって行く身体は、もはや何のために食べているのか、単に腹を満たすためなのかと思わせるような現象になっている。実に困ったことだ。

土壌菌と言っても、現在の科学でさえ解き明かせない数多くの細菌群がある。それらの集合体としての共存バランスがあってこそ、健全な作物が出来ていたものが、サプリメントのビタミンを飲ませて、健康に良いだろうというくらいの安楽な気持ちで化学肥料を撒いてきたのが最近までの農業だ。それだけでなく、除草剤、殺虫剤なども撒いてきたものだから、畑や田んぼから、多くの微生物、虫や小動物が居なくなってしまう恐ろしい状況だ。

もともと看護士をされていた富山の鈴木伸子さんは、看護をしている人たちの健康状況を見て、どうも彼らの不健康は「食」に問題があるのではないかと疑いはじめたのが、もうかなり前のことだった。ふとしたことから長崎で伝染病などを含む臨床医学などを勉学してきた永田英基さんと巡り合う。鈴木さんの観察を述べると、永田さんはバランスのある細菌の欠如が成せる仕業だろうと述べたと云う。こうして平常でバランスの取れた土壌菌を畑や田んぼに入れたりしたら良いのではないかと判断をするようになる。富山県の立山連峰の山林に入り、土壌菌採集を始め、それを培養しながら、おからなどと混ぜ合わせて肥料は飼料を作りはじめた。土壌菌などの研究にも力が入り、英国のチャールズ皇太子が率いる国際的な細菌学の組織にも発見された新種の細菌を6ほど登録するなど、富山の小さな企業が、日本の大学や研究者を驚かせるようなレベルまで持って行った。

小生、鈴木さん、永田さん

世界的にも乳酸菌などへの関心は高いが、永田さんは乳酸菌は熱に弱く、単独ではあまり力にならないと話してくれた。それよりも、細菌のコロニー、つまり集団でバランスを保たせることが、土にとっても、胃腸に入った段階での消化においても効果がいっぱい出ることを確信して、多くの新規商品の開発、特許申請などとパワフルな活動を展開してきた。最近では、多くの農家でも関心が持たれはじめており、しかも動物の糞尿処理などへの活用などで、韓国や中国などからも引き合いが来ていると云う。アメリカなども大きな市場があるところであり、鈴木さん(社長さん)、そうして永田さん(技術担当)も心は、すでに国内だけでなく視野は海外まで入ってきているようだ。

土がイキイキしていることで、作物が育ち、おいしくなる。土がイキイキすると云うことは、科学的栄養剤がバラまかれていることではなく、少し分かりにくいことだが、微生物の小さなコスモス(小宇宙)が出来上がることによって、微生物が食べ合ったり、彼らの小さなレベルで糞尿を出したり、死んだり、酵素を出したりしていることが出来るからこそ栄養価の高い土地になって行くのである。私はそのような説明を受けた。鈴木さんの会社の名前は、スズキファームだ。現在、北は北海道から南は沖縄まで有機肥料を納めている。しかも、スズキファームの飼料肥料は、土壌菌やアミノ酸がいっぱいの優れものなのだ。同じ土壌菌を使い、人間様も飲める腸内細菌としてのサプリメントも出されている。このトヤマ立山連峰から取れた土壌菌をトヤマNB菌と称している。私もここ二週間ぐらい飲んでいるが、胃腸の調子とともに、気持ちがよいほど元気になってしまう。私の腸内細菌が元気に消化を代行してくれ、エネルギー吸収を助けてくれているからだろう。

佐々木淳さん
今回の岐阜や富山を案内してくれたのは、東京のIT実業家の佐々木淳社長(国立ベースにシーンズという会社を経営)。名古屋空港まで迎えに来て下さり、日本の心臓部を彼のクルマで案内をしてもらった。私は今回お目にかかった面々をボールダーに招待をして、アメリカでも人暴れがしてみたくなった。何が出来るのだろうかと考えるだけで気持ちがワクワクしてくる。今回の出張は、明日からまた別の大手メーカーとの面談を控えているが、楽しいことが多い。このような有機農法は進んでいるので、サステイナブルな農法をどのように進めていくかも楽しみだ。

Wednesday, March 05, 2008

循環型農業について



今月は幕張で来週から開催されるFOODEX展に参画するために日本へ戻ってきている。いつも日本へ戻る時は、ロハス的な生活をされている方、お仕事をされている方のところにお邪魔している。アメリカのロハスの温度差などについて自分で目で見てきたいからだ。日本のロハスの進行は独特だ。日本も良い意味では相当変わっているし、アメリカなどの動きとは違った角度でモノゴトが見られるのはさすが神道日本の自然が八百万の神の国の背景があるからであろう。

最近のトレンドで気になっていることは、日本でも一部には同じだが乳酸菌や酵母などについての評価が高まっていることだ。食の内容もさることながら、肉眼では見えないミクロの世界の微生物たちに対する関心が高まってきている。これは新しい現象ではなく、日本では伝統的に、みそ、醤油、日本酒、漬け物など昔から家庭には醸造や家庭料理の中で多くの乳酸菌、酵母、目には見えない微生物などのお世話になっていたものだ。それが生活の便利さを追い求める風潮が出てきたり、所得も上がってきたり、自分のところで糠味噌臭いことを避け、スーパーで手頃に買ってきてしまう生活へと徐々に転換をしてしまってい、その良き伝統が無くなってしまったようだ。加工食品を多く食べるようにもなり、あちらこちらの街角にあるコンビニで食生活を済ませている人も多く見かけるようになってきている。しかし、加工食品などの大きな欠点は、多くのものが、保存料や添加物を有していることから、腸内細菌などを機能させないようにしてしまっていることだ。こうなると栄養素的には肉や多くのものを食べながら、腸内でしっかりと食べたものを分解して栄養素を必要な期間に吸い上げて行くプロセスが機能しなくなってしまっているのだ。人間は、腸内の微生物たちと共生してきた事実を忘れてしまった。

アメリカでも現象は同じで、過食からだけでなく、加工食品を食べていることから、栄養素が吸収され得ない人々が肥満になってきている。しかも多くの面で成人病などが出現しており、医療分野でも処理できないほど大きな社会問題になってきている。内蔵機能が働かなくなってしまい、抵抗力も低下してしまっているので、健康への一つの方向性としてまたこの腸内細菌のことを再評価しようとする動きが強い。ソトコト誌でも案内をしたが、豆乳を成功させて財を成したスティーブディモス氏などは、昨年末にNext Foods社を立ち上げ、その中でGoodBellyブランドの非酪農製品の乳酸菌入りのヨーグルトのような商品を打ち出してかなりの勢いでビジネスが伸びている。乳酸菌を活用して腸内活動を活性化するという目論見だが、アメリカの市場はかなり前向きに反応をしている。

日本に目を向けると、やはりこの乳酸菌などに目を向けているところも多い。しかし、日本の凄さとしては、乳酸菌などを凌駕して、より自然の形での土壌菌などに目を向けている企業もあのを発見してとても嬉しく思った。腸内細菌は乳酸菌だけと考えている人も多いようだが大きな間違いであり、本来、多くの人の腸にはそれこそ無数の微生物が共生していてくれてそのお手伝いがあることで良い消化ができることを認識している企業群が出てきていることだ。

昨日日本列島のへその緒に当たるような位置付けの岐阜県山県市洞田にある村井農場を訪れた。この農場は養鶏場を営んでいられるが、ここでとれる玉子は、おからなどを特殊な方法で培養した細菌(酵母)のコロニーを使いで発酵させて作った特殊な餌をもらって成長している。 餌が安定的であり、鶏の栄養吸収が良いことから、健康な鶏が出来て、もちろん抗生物質や余計な薬品などを必要としなく鶏がスクスクと健康的に育っている。鶏の腸内活動もとても健康的に動いているので、ストレスも少なく、鶏舎を覗いてもわめきたてることもなく、とても穏やかな雰囲気だったことに驚いた。鶏糞なども、この細菌コロニーなどの影響もあってか、残留アンモニアも少なく、臭さが目立たない状況だ。これほど大きな鶏舎を覗いたことはないが、鶏糞が臭いことを聞かされていたこともあり、今回は実に驚いた。


村井農場のオーナーの村井敏彦さんは、特殊生産赤玉なる玉子を近隣だけでなく、東京にも納められていると云う。最近では、楽天などでも発売をされはじめているようで、自然満点の卵を食べたい人にも大きく喜んでもらっているようだ。陽星卵(ようせいらん)ブランドで売られているこのたまごは、美味であることはもちろん、健康で薬漬けにしていない(餌も自然の優れもの)鶏から取れるだけあって、アトピーで悩んでいる人たちも生玉子をエンジョイできるものに仕上がっているようだ。よいものは消化にも良いということだ。

こうやってみると、つくづく考えさせられることがある。現在の食の行政がどうなっているのか?消費者の健康と食の関係をより真剣に考えるときに来たのではないか?土壌についてはこれからも多くのことを調べて書いて行きたいが、なぜ日本の農業が沈滞しているのか?なぜ日本人は「豊かな食生活」をしながらもこれほど病気になってきているのか?、真剣に考え直す時が来たのではないかということだ。自然循環を忘れた農業は、行き詰まって行くだろう。村井農場のような、原点に戻るような農法を再現させ、日本人の健康な生活を取り戻したくなる話だ。昨晩から、富山に来ている。この富山で、立山連峰のすそ野でデカイ視野を持った、パワフルな会社に出会った。それについてはまた続報で書くが、ここでもロハスの革命に火がつきはじめている。