Wednesday, July 30, 2008

暗礁に乗り上げた多国通商交渉とロハスの視点


WTOの多角的通商交渉(ドーハラウンド)が、合意に達することができずに、座礁したとの記事を読んだ。総括的な関税の引き下げという大きな目標を掲げての交渉を2001年から行なってきた各国政府関係者の失意は大きいかも知れない。私も長いこと自由貿易を展開することについて賛成の立場だっただけに、今回の合意に至れなかった背景がどこなのか、世界の貿易の基本は変わってきているのか、知りたくて、多くの新聞の報道を読み漁った。このブログの読者の中には、多角的通商交渉とロハスにどのような関係があるのか不可思議に思う方がいると思うので、少し今回の交渉の座礁について私が判る範囲内でまとめてみたい。当然、私はボールダーと云う辺境に住んでいて、交渉と関係ないのでとんちんかんなことを言うかも知れないが、各国の意思がまとめられなかった背景などについては十分に検証するだけの情報はありそうだ。

さて、今回の参加者の中でまとめる方向から逸脱したのはどうも中国とインドの存在が強いことが多くの論評で出ている。その中で、食糧自給や自国の食糧安全保障と深くかかわり合っているようだ。中国はこれまで輸出市場を求めて、自由貿易を強く標榜していただけに、その姿勢の変化は、中国にとっての石油などのエネルギーや原材料調達のようにゲオポリティックスの範疇からすれば、食糧自給も外せない大事なポイントと見直してきたことを示しているのだろう。中国が2001年11月にWTOに加盟をしてから、自由貿易原則を強く押し出してきていた。アメリカが、急増する中国からの繊維品などの輸出にセーフガード条項を発動して、アメリカ市場の生産者を保護しようとしたときなどについても大きく反発をしていた訳だから、その変化の意味は大きい。

今回のドーハラウンドの交渉において、中国もインドと同様に農産物などに関するセーフガード(輸入制限や関税の一時的引き上げを認める緊急避難の仕組み)を強く求めたらしい。アメリカなどの欧米諸国の中には、農業を保護しており、大規模農法や、機械化によって、生産性やコストは効率が良いので、国際的な競争力はめっぽう強いときがあるからだ。下手に、アメリカの農産物の輸入を完全に自由化すれば、国内農業は押しつぶされてしまう可能性もある。だから生産性がまだまだ低い中国やインドなどが、穀物メージャーの思いのままになりたくないと考えたのは無理からぬ話と見える。石油、工業原材料も海外依存度を高めている中国としては、食糧の依存度も高まることに警戒を強めたのは判る気がする。だから、話し合いは座礁してしまった。

今年は、5年おきに法案化されるがアメリカの農業法が通過したばかりだ。巨大な政府の補助金がアメリカの大手農業企業へ、直接間接に支給されて行く。自国の農業に巨大な補助金が出ているアメリカでも、途上国からの農産品に対してはかなりの関税をかけている事例がある。それなのに、アメリカが輸出するときは自由にさせろと云うのは強権を持つ者の奢りと言えなくもない。特に他国、しかも中国やインドのように準大国からして見ると、食糧安全保障が絡んでくると当然心配にもなろう。

一つの良い事例が、アメリカが自国のエネルギー自給を少しでも助けようと言うことで、突然にトウモロコシを使ったバイオエタノールの生産を奨励するようになり、バイオエタノールの生産メーカーに大量のインセンティブが回るようになったことから、世界の食糧市場に異変を来たし、基本的な穀物の市況は高騰してしまった経緯がある。悪意がなかったとしても、多くの国がこれによって消費者物価が高騰して甚大な被害を受けたのは言うまでもない。食糧の国家安全が維持されるのには、大きく懸念されるような案件であるのは間違いない。古い話になるが70年代のニクソン大統領のときも、豚の餌になっていた大豆が不作の時にニクソンは大豆の輸出を制限するような動きに出て、日本を驚かせたこともある。その際日本は、大豆の供給先をブラジルへ転換するなどの作業をせざるを得なかった。国家リスクを考えるとただ事ではない。

アメリカの行動だけが原因ではないが、天候やその他の事情で、世界的な穀物市況は高騰をしてしまっており、人口超大国の中国とインドが恐れを為している背景は理解できないでもない。輸入に頼るようになると云うことになると、エネルギーなども海外に依存している関係で、中国が神経質になったのは推察できる。

アメリカ国内でさえ、巨大穀物メージャなどに対する反発が強い。もちろん全ての消費者がそれを感じている訳ではないが、巨大資本が中小の農家を吸収合併してきて、農業が巨大産業化してしまっていることに対する懸念は強い。種子にしても生物多様性を無視したような形で、特殊な耐性を持つ種子の特許化に動いたりしているために、多くの農家の自由の幅がかなりきつく縛り上げられてきている。ファーマーズマーケットなどの動きが出てきているのも、よりローカルで生物多様性を維持しようと云う間接的な消費者の抵抗の印とも言える。

国家レベルでの国益などを考えた際は、確かに他国のことを先に考えるよりは、自国の利益を考えるべきなのかも知れない。しかし、交付金漬けの一部産業が、国益と称して輸出圧力をかけて行くのには、どこか抵抗を感じ始めているのは事実だ。地産地消の点からも、フードマイルの視点からも、あるいは巨大資本のコンベンショナル農法などにも問題がありそうだ。ドーハラウンドが今後どのように推移するか、見守って行きたいが、発展途上国や生物多様性などなど、今後の多国間通商交渉の中でもロハス的な議論がされてもおかしくない気がする。日本においても、自国の食糧自給問題が、取りざたされているが、どうも世界的な局面において、その声は小さい。日本の農業を守ること、日本の食糧安保を守ると云うこと、日本の環境を守ることで、日本の政府がとらなければいけない施策は多い。国民的な議論がより高まって欲しいものだ。

Monday, July 28, 2008

ファーストフードへの警戒高まる


ファーストフードほどアメリカ人の合理性を示す尺度はないかも知れない。アメリカ人は何が何でもマルチタスキング(つまり複数の作業を同時に行うことを言う)をしたがる国民だろう。クルマを運転する時にコーヒーを飲み、ハンバーグを食べている。クルマの仕様でカップホルダーがいくつあるかが気になる消費者が多いのでも頷ける。全てが時間の節約、効率の高まりなどを目指して、社会経済の仕組みにも影響を与えてきた経緯がある。しかし、そのマルチタスキングは、必ずしも効率を上げないことが判ってきている。昔の日本では音楽を聴きながら勉強することなどは「ながら族」と言われていたが、今の日本でも、それは社会概念でもなくなったくらい一般的な事象になってしまっており、「ながら族」と云う言葉さえ聞かれなくなったのだと思う。

アメリカは、多民族国家であり、伝統からの束縛を嫌ってきた国であることから、一般的あるいは伝統的な食事のマナーもあまり優れていない面がある。子供の食事についてもフォークやナイフの使い方さえしっかり教えられない親も多く、食べるモノがほとんど手でつかむが多いことはこれまでも述べてきたところだ。そういう中で、ファーストフードやファーストフードのテイクアウトは、時間節約、便利さ、コスト効率などの集大成と言えなくもない。ホットドッグやハンバーグなどがアメリカのライフスタイルの象徴と言われる所以だ。

しかし、国民の中における肥満の増大で、便利で、コストが安いことだけに眼が行かなくなってきていることも事実だ。かなり極端なことかも知れないが、MSNBCが伝えるところによるとロサンゼレス市議会は、低所得者が多く、肥満の比率が高い南ロサンゼレス地区におけるファーストフードレストランの事業許可にモラトリアム(事業発給許可一時停止措置)をかけることに決めたらしい。まだ、市長の最終的な決断が求められるとのことだが、市議会議員の大多数が、ファーストフードのレストランを増やさないように決断したと云うことが画期的と言えるだろう。アメリカ的でない判断のようにも見えるからだ。

その背景にあるのは、南ロサンゼレスには、健食などを提供するレストランはまずなく、ほとんどがファーストフードで占められており、低所得者を食い物にしていると判断されたからだ。健食のオプションさえない地域なので肥満が増えるのは仕方ないという発想だ。だから、モラトリアムを導入して、健食を提供するようなレストランがくることを願っているのだろう。しかし、ファーストフードは、宣伝広告力を持っているので、教育レベルも低い地域の人々に健食を提供すると言っても、その健康の意味することを説得させることは難しいことなのだろう。市議会の活動が、悪いことだと言わないが、ファーストフードレストランのメニューを大幅に改善させるように指導しなかったら、あまり意味がない気がする。また、地域住民が、「食」についての意識を変えていかない限り、最も便利で、コストも安く、空腹を満足してくれるモノに惹かれ続けるのは当然だ。どうやってそれをやるかは頭の痛いところだろうが、若者に食(農産物も含む)を作る喜びを教えていくことから始めなければいけないだろう。私にはそんな気がしている。学校教育の中に畑作業をし始めているコミュニティーもあり、野菜などを作る喜びから始める作業で、若い人々の意識が大きく変わっているとの報告もある。

ロサンゼレス群の公共衛生部のの数字によると、南ロサンゼレスの人口の30%ははobeseカテゴリーの肥満で、都市部の19.1%、経済的に豊かな西部ロサンゼレスの14.1%に比べてかなり悪い。黒人やラティーノのマイノリティーは特に肥満度が高い。ラティーノの28.7%、黒人の27.7%が過度の肥満と云う数字だ。これに対する白人の過度の肥満は16.6%だという。ハリウッドではファーストフード婦負ションと云う風刺映画もでき、ラティーノがいかに搾取されているかなども社会風刺されている。驚くべき数字だが、南ロサンゼレスのレストランの73%がファーストフードというレポートもでている。豊かな西部ロサンゼレスのファーストフードレストラン数は、低いと言っても42%だそうだ。アメリカの食文化がいかにファーストフードで占められているか判る。

カリフォルニア州は、州レベルとして初めて健康に悪いとされているトランスファットの使用を禁止した先進的な州政府だ。日本でのトランスファットが悪いという意識はまだ少ないようなのでここでも、世界の潮流として何が行なわれているのか強調をしたい。アメリカから習った悪いモノをいつまでも保全する必要はない。日本の政府も国民の健康を考えているのだから、先端的な動きに強権を発動しても動くべきだろう。メーカー指導もどんどんするべきだと見ている。

ロハスのメッカと言われているボールダーでも、ファーストフードはあるが、極めて限られていることはこれまでも述べてきた。しかし、先進的な州や自治体は、ファーストフードの制限をしようということで動き始めているところにアメリカの切羽詰まった状況があると言えまいか?ファーストフードレストランの営業許可出さない市町村がボツボツ出始めている。いくつかは風光明媚なところで街の景観を崩す心配から認めていないところもあるが、肥満との関連で動き始めているところも多いのは注目に値する。ファーストフードのメニュー改善を盛り込み始めているところも出始めているので、この業態に対する社会プレッシャーは高くなることは間違いない。企業が自主的に動かないのなら、行政府が動くというパターンは望ましくない。しかし、変化が起きることだけは言える。

今後のファーストフードの展開については、この健食との絡みで大きな変化が出始めてくるだろう。その気配は既にでてきている。便利さやコスト安が問題なのではなく、健食をないがしろにして成長をしてきたファーストフード産業が新たな尺度で動かなければいけない時期が迫ってきていると云うことだ。ロハスの影響は、このようなところでも出始めているのは健全な方向転換への兆しと言えなくもない。

Friday, July 25, 2008

窮鼡フォード、巻き返しで踏ん張れるか?

デトロイトのビッグスリーがアメリカ市場で大苦戦をしていることを知らないアメリカ人はいない。しかし、80年代のようにデトロイトが可哀想だと云うアメリカ国民の意識は少ない。日本の自動車メーカーが対米投資を相当なレベルで増やしてきたので、日本車叩きは聞こえ無いどころか、日本車に対する需要も注文待ちと云うように引きが高い。日本のメーカーが賢かったのは、投資先州を分散することにしたので、各州に大規模投資をし、就職先を作った日本の自動車メーカーは、各州の上院下院の議員と強い絆を築いてしまっている点だろう。もはや、ワシントンでジャパンバッシングをしようとしても難しくなってしまったのだ。

このように投資の問題だけでなく、日本側の車種構成がアメリカのクルマのニーズシフトにピッタリだったことも大きな要因だ。しかも、近年、トヨタのプリウス、ホンダのシビックのようなハイブリッドで市場に先駆的イメージを植え付けるのに成功していることも忘れてはいけない点だ。その上、トヨタ社(ヤリス)、ホンダ社(フィット)、日産社(ベルサ)などは、韓国勢の躍進を少しでも歯止めするということで、より若者向き、より小型、より燃費効率の良いクルマの導入を怠ってこなかった点が、幸運だったものだ。上を狙うだけでなく、後方にも眼を配るやり方は戦略的に正しかったと言える。最近では、ホンダ社がフィットのハイブリッド化することが噂されているので、たのしみなことだ。

アメリカのビッグスリーはどうかというと、大型のSUVの収益率が高かったために、SUV薬物依存症のように小型車転換の政策が取れずに石油価格が上昇するたびに売り上げを落として行った経緯がある。私はビッグスリーの中の一社に長いこといたので、デトロイトの見方はよく理解できるが、不可解だったのは、ヨーロッパで小型車などを多く取り扱い順調なフォードやゼネラルモーターズ(欧州ブランドはオペル)が何故アメリカにそれを投入しないのか、と云うことだった。GMなどは、サターンなどのブランドを使い、最近ではオペル車をベースにしたクルマをアメリカ市場に投入し始めているが、サターン自体が売り上げがあまり伸びていないので、GMも欧州車投入を本格的に検討をしなかったのだろう。

しかし、窮鼡となったフォードは(窮鼡と言っては失礼かも知れないが)、やっと重い腰を挙げ、新たな動きを始めようとしている。その背景には、トップにもと航空機メーカーのボーイング社のマラーリ氏を社長に登用したからに他ならないと思う。「外部もの」を使うことで、デトロイトにやっとNIH症(Not Invented Here syndromeは排他的な行動のことを言う。自分が設計デザインしたものでなければ採用はしない技術者の欠点とでも言うべきか)が無くなるきっかけができたようだ。売り上げが急減しているフォードとしては、早く体質改善を目指さなければ、長期的視点で見れば完璧に衰退することになりかねない。しかし、売り上げが下がっているとは言え、世界市場の中で見ると欧州フォード、ラテンアメリカフォード、アジアフォードは利益を上げているのだ。そこの体質をアメリカに持ち込めるのかにかかっている気がする。それを今までのデトロイト自社勢力(村体質的な)は認めていなかったものを、マラーリー社長は必死になって社内の幹部説得に動いているらしい。社外ものだっただけにできる発想かも知れない。

フォード社が発表しているところによると、「2010年から欧州ベースの小型車6モデルを使って小型車攻勢」をかけるという。ベースとなるのは欧州フォードのフィエスタ・モデルとフォーカス・モデルだが、現在アメリカの連邦規制に合うように調整を急ピッチで始めたという。

また、フォード社はSUVのエスケープなどのハイブリッド車2モデルを出しているが、2009年までには4モデルまで引き上げる予定だそうだ。12月には、大型トラックやSUVを生産している工場を小型車生産に転換し始めるらしい。また、フォード社は、現在のクルマのラインアップに使われているエンジンのほとんどのものをより燃費効率の良いものに切り替えか改善するかを始めており、2010年末までにはその作業は完成する予定とのことだ。
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一番大胆なのは、2010年までに、欧州フォードとの車体共通化は40%に引き上げ、2013年までにその共通比率を100%に引き上げると云う点だ。もちろん、欧州におけるガソリン価格はアメリカの価格に比べて倍以上しているので、それと同じベースにすると云うことは、フォード社の提供するクルマのラインアップの燃費水準はかなり改善されることだ。トラックをどうするかは詳しく述べられていないが、共通化については、トラックを除外し乗用車だけについて述べているのかも知れない。推移を見守りたい。トラックについては、業務用で人気のあるF150モデルは、次期世代のモデルを今年の終わりに出すが、燃費は7%向上しているという。

ここで、自動車情報を細かく書くつもりは無い。しかし、2番手のフォードが、このように動くことを発表すれば、ゼネラルモーターズも動かざるを得ないと思う。欧州フォードと同じく、欧州オペルを抱えているGMとしては、遅れを取らないためにも、似たような戦略に出てくる可能性が高いだろう。つまり、一挙にアメリカの新車モデルの燃費性能はかなり向上されることを予想させる事態だ。今回のガロンあたり4ドルのガソリン価格は、アメリカの不動産の貸し付け不況と相まって、相当な大型車を崇拝する自動車文化に風穴を開けたと言っても良いかも知れない。アメリカ人のエネルギー消費感覚についても、同様に大きなインパクトを与えたのは良いことなので、産業界がこのチャンスをどのように利用するのか、楽しみだ。昨日もオバマ候補がベルリンで演説を行ない、その中でも、地球温暖化に対応しなければいけないことを言っていた。ここ数年のアメリカのチェンジ(生まれ変わりとでも言いたい)は、窮鼡となったフォードのように大きなものになるとの大きな期待が生まれてきている。フォードのマラーリー社長は、標語として“One Ford, One Team, One Plan, One Goal.”(つまり、一つのフォード、一つのチーム、一つの戦略、一つの目標)を掲げている。オバマ候補が次期大統領なら、同じようなことを言うような気もしている。アメリカの経済は、不確定な時代に突入しているが、社会の大きな変動からの新たな価値観が生まれ、発展が可能になることだけは言えよう。

Monday, July 21, 2008

医療コスト増大の対策を考える

人が健康に生活をするためには、ある意味では外部社会のノイズを減らし、伝統に眼を向け、新しい科学の情報を厳格に選別して組み入れながら、自然の理にかなった「食」を摂るべきだと思う。きびしく、健食とは何かを自問自答をするべきだと言うのが私の考えだ。外食も楽しいし、自分が持ち合わせていない食感を使ったエスニックなものを食することも生きることに喜びを感じるためには大事なことだと思うが、人々は、私が言うところの外部社会のノイズに耳を傾け、メディアなどが作り上げる広告を含むノイズのために、誘惑され自分の「食」の柱を崩してしまって他人様が推奨する「食三昧」路線に走りがちだ。コレステロールや高血圧、肥満や運動不足は、本来、健食とは関係がないはずだ。全ての食事を健食だけにして、外食をするなと言っているのではない。ただし、大方健食に焦点を絞り込めば、生活習慣病などと云うような言葉さえ無くなるのだろう。

今日は食について述べるのではないが、ニューヨークタイムズに面白い記事が出ていたので紹介をしたい。この健康の関する動きは、何か常識を覆すような動きだが、よく考えてみるとこれまでの健康産業自体が間違った方向へ行っていたのではないかと考えさせられ、本来の姿を模索している、連邦政府、州政府や自治体の悩みを浮き彫りにしていると言えよう。もう数十年も前だが、日本の国の予算で大きな問題は3Kと言われていた時代があった:国鉄、米と健保だった。国鉄は一応は民営化されているので、除外するとして、洋の東西を関わらず、農産物の補助金と健康医療の問題は頭痛の種であることは間違いない。

健康医療費がうなぎ上りなのは、今日はその理由を詮索しないようにするが、国や自治体だけでなく、健康保険のサービスを提供している企業にも苦痛を与えている。国民にとっても、アメリカにおいては国民健康保険が無いために、所得層によっては健康保険サービスを受けられない層が増えており、社会的な不安の原因にもなっている。今年の大統領選挙においてもヒラリークリントン前候補が打ち出した国民階保険の政策提案は、アメリカ国民の強い政策要望であると見て良いだろう。

しかし、現在でも巨額の医療費予算がつぎ込まれているのにも関わらず、健康のサービスを賄えない理由とは何なのだろうかと多くの人を悩ませてきている事象の一つだ。アメリカの医療は多くの矛盾を抱えている。医学や病院は最先端レベルを行っているにもかかわらず、人々の受ける医療サービスはあまり高くない。この社会的矛盾を解決する方策の一つとして、ホームドクター、内科医、小児科医などに対して、報酬を引き上げてみようと云う実験がとり行なわれているという。一般的に考えると、財政難の時に、医師に対して報酬を引き上げるのは変な感じがするのだが、この実験を試みている人の考えは、報酬を高めることによって、まだ問題が発生する前の段階で医師たちがより丁寧な診断を行ない、患者と今以上に時間をたっぷりとかけることによって、その後の何千ドルもする高価で不要な検査料、専門家の診断や病院での治療を避けようとするものである。

全米で見ると、公的な医療保険のメディケーアや商業的な医療保険が負担するのは、診察一回につき60ドル程度の金額だそうだ。もちろん電話やインターネットでの往診は皆無に近い。現在のスタッフやインフラを維持するために(医師が加入する訴訟保険なども含めて)60ドル程度では、診察時間を縮めるしかないらしい。こんな短い時間での診察になると危険信号を見逃すことも多くあり、後で取り返しのつかない大病になるケースも多いらしい。そうなると、公的保険のメディアケーアや商業的な健康保険が支払う代価が数十倍に膨れ上がってしまう。このために州政府や自治体は、基本負担分は変えずとも、その他に患者さんの診察をさらに精度を高めるように、時間をかけてもらって診察するための補助をしている。費用が負担されるので、電子メールや電話による診察にも応じ始めてるところもあるそうだ。

保険企業も複数の州で試験的に数千人の医師と200万の患者などで運用のテストを行なっている。また、公的部門のメディケイドやメディケーアはノースカロライナ州の実験で2006年に1.62億ドルも節約を達成したという。その支出節約は、本来払ったであろう金額よりも11%もの節約と云う方かなり大きいと言わざるを得ない。

このコンセプトはブッシュ大統領の賛同するところではないらしいが、議会は大統領の拒否権を覆すだけの力を発揮して、このメディーアのパイロットプロジェクトテストのために1億ドルを供出することで可決したところだ。このプロジェクトの中には、医師がスタッフを雇い、より木目の細かい医療サポートを行なうことを認めている。まだ、実験の段階だが、かなり前向きな結果が予測されているからこそ、このような実験に予算を付け始めているのだろう。

病気の状況が相当悪化する前に発見し治療をしようという方針は、医師の資格を取る人が、高額の報酬を与えているような高度に専門的な医学治療分野でなく、よりホームドクターになるような分野の医師を育てようと云う目論見もあるらしい。つまり、医学部卒業者の7%しか行っていなかったホームドクター(平均年俸が15万ドル)なのに対して、胃腸科専門医(40万6千ドル)、心臓外科(43万3千ドル)という片寄った医師の配分を避けようというものだそうだ。アメリカの医師会数値によると、2006年における専門別の医師はホームドクターが251、000人なのに対して、専門分野を持っている医師は472、000人いるらしい。

このように医療の面で事態がかなり悪化するまで野放図にする仕組みにも大きな問題があることが判る。薬剤メーカーも、病気が相当悪化した時にはもっともっと専門的な薬が売れる訳だ。医療とは何なのだろうか、健康維持をすると云うことで、我々市民は誰を信じたら良いのか判らないときも出てくる。だら、平常から健康に気をつけるように、健食、運動、ストレスなどに大いに注意を払いたいものだ。健康三昧なんて素晴らしいではないか。三昧とは、もともと梵語で「心を一つのものに集中させて、安定した精神状態に入る宗教的な瞑想」を指しているらしい。みなが健康三昧をしたら、世界はきっと素晴らしいところになりそうだ。

新車販売のステッカー・ガイドライン

アメリカ消費者の欲するクルマのテイストを変えるのはどれくらい大変なことか、長いこと考えてきた。1970年代の二回のオイルショックを経てアメリカの大型車は無くなるのかという予測に反して、アメリカでは大型車は豊かさの象徴のごとくして小さくなる傾向が見えなかったからである。ガソリンの値段も徐々に上がっていたのだが、ピケンズ氏が言うように、アメリカの石油の内、輸入モノに依存する度合いは、1970年の24%から最近の70%と云う水準まで上がってきてしまった。歴代アメリカ政府がこの点を無視してきた点は信じられない。

アメリカ人は、持ち前の楽観主義からか、ガソリンの値段が上がっても、また、景気のサイクルで下がってくると云うことを考えていたとしか思えない。しかし、最近になると中国やインドなどの石油需要が増大しているので、値段が下がって来ないという実感みたいなものを感じたせいか、突然に消費市場は転換し始めている。しかも、大きいことは良いことだという発想が、地球温暖化などの知識人の呼びかけによって、徐々にではあるが、大きくなくとも良いではないかという発想に切り替わりつつある感じがする。

今日紹介するのは、今月の初めにカリフォルニア州が打ち出した新車販売時の性能やオプションの表示の他に、「地球温暖化スコア」なる認定数値をクルマの窓に貼ることが義務づけされたという。加州は、単一州としては、全米でも最大の自動車市場でもあり、一方ではスモッグなどで悩まされていたこともあり、これまでは「スモッグ・スコア」を表示することが義務づけられていた。今回の地球温暖化スコアが実施されるようになるのは2009年の1月からだが、地球温暖化スコアなるものを表示したから人の購買にどれだけインパクトを与えるのか想像できない。1−10までのスコアで、数字が高ければ高いほど環境に良いクルマと云う定義になるのだが、何だか子供騙しみたいな感じがする。カリフォルニア州のシューウォーツネーガー州知事が、共和党の出身なのにも関わらず、こうやって多くの施策をとり行なっているのは素晴らしいことだが、見込んだ成果が得られない、何か不発弾的なプロジェクトの気がしてならない。

民間の努力は、より人々の財布の方に眼を向けさせているので、その方が効果的なことになるかも知れない。アメリカの大方の街では、自動車無しの生活は、あまり考えられないが、今までの走行距離無視のやり方は無くなってきていることだけは事実だ。人々は、毎回自分でガソリンを満タンにする度にコストが上がっているのを感じ取っていることから、スーパー、リテーラーの間で、どのように人々に自分のところに消費者に来てもらうのか必死になって考え出そうとしている。これまで、バーゲン探しで、複数のスーパーへドライブしていた消費者を自分たちのところだけに来させようとして、ルーティンで買うものを取り揃えてあげるとか、リピーターの場合はさらにディスカウントを与えるかなどの施策を打ち出そうとしている。

この図でも判るように、消費者への呼びかけは、3カ所を回ってバーゲンハンティングをする代わりに、当スーパーだけで買えば、年間163ドルの燃費節約になり、買い物としては6.5バスケットほどの買い物が無料になりますよと云う働きかけだ。確かに、アメリカの道路の混雑具合は減ってきている。毎月のガソリン代の家計費分を一定にして行くからには、より効率的なドライブの必要が迫られている。相乗りも増えたりしているので、アメリカ人消費者は、政府の無策を個人の知恵で補うように一生懸命に努力している。

スコアカードは、金銭的なメリット、デメリットとして、消費者の懐とはっきり連動をしない内は、政府の諸施策は実効性の少ないかけ声としか考えられない。財布のひもを握る消費者は必死だ。その辺りのセンスを導入した政策が欲しいところ。

Friday, July 18, 2008

タクシーのグリン化


ボールダーを訪れる日本人はほとんどの場合びっくりするのは、路上で流しをしているタクシーをほとんど見かけないことである。実質的にタクシーを見るのは限定されたダウンタウンの一部ホテルの前だけだ。それだけ、ボールダーではタクシーを見かけない。街については、バスの路線がしっかりとしており、回数は少ないが、一応は町中をカバーしている。

コロラドへの玄関となるデンバーの空港からボールダーに来るのにも、バスやシャトルバスを利用する人が多い。シャトルバスの場合は、ボールダー市への入り口近くにあるブローカーインホテルに横付けされてから、ミニバンに乗り換えて各家庭やオフィスまで送ってもらえるので、とても便利だ。

ボールダーはタクシーが極めて少ないが、ニューヨークのイメージはタクシーが多いというものだろう。地下鉄は完備されているのに、ニューヨークッ子はタクシーがとても好きなようだ。ニューヨークのタクシーに乗って驚くのは、ドライバーが白人の場合は、殆どが東欧の人であり、後は国籍不明な人々が寄り集まっている職業のようだが、彼らとて現在のエネルギー高騰には悩まされていることだろう。

AP通信が伝えるところによると、ニューヨークのイエローキャッブとの愛称で呼ばれるタクシーの世界でもグリーン化をしなければいけないという気運がとても強くなってきている。その一例として、自動車メーカーがハイブリッドの配分を市のタクシーのために確保してくれることを約束したことにも良く窺える。

アメリカの自動車市場では、最近小型車の売り上げが急増して、RV車や大型車の販売が急減しているようだ。そのために、タクシー会社がハイブリッド車を求めても、配分するだけの余裕も少ないだろう。しかし、ニューヨーク市長のブルームベルグ市長の働きかけのせいか、自動車メーカー3社がニューヨーク仕向けのハイブリッド割当に優先的に行なうことを約束したようだ。これは、ディーラーの方からすれば、売れ筋のものを、タクシーに配分割り当てると云うことで不満も多く出て来ようが、そこは、ニューヨーク市の力なのだろうか、GM, Ford, Nissanの3社が供給確保を申し出ている。ニューヨーク市には現在既に1300台のハイブリッド車が走っているとのことだが、2012年までに、全市で営業している13000台のイエローキャブタクシーをハイブリッドにしようという目論見だ。

ニューヨーク市の新営業規制によると、10月1日以降に配車される、タクシーは25MPGを達成せねばらなず、翌年にはその規制目標が30MPGに引き上げられるという。ちなみにMPGはマイル・ペル・ガロン(ガロンあたり走行マイル数)のことだが、アメリカの最大の都会がこのように国の基準を超えて燃費規制を始めているのは大いに注目したい。比較のために言うとすれば、現在は知っている一般的なフォード車のクラウンビクトリア車は燃費が14 MPGなのに対して、ハイブリッド車は36MPGまでになると云う。


日産社が提供しようとしている予定のハイブリッドモデル車はAltimaモデルで、月間200台確約しているそうだ。GMは、シボレーMalibu車、フォードはRVのEscape車を50台ずつ供出することを確約している。市町村や州レベルの公用車などにも燃費規制が求めて来られることが予想されるので、アメリカの燃費の動向は、供給が許す限り大いに変化して行くことになりそうだ。大型車が売れにくい状況が続くと、アメリカの省エネと環境改善が一挙に改善されることにもなりそうだ。「Small is beautiful」への回帰と言えなくもない。

風力発電普及に懸命な石油王

1980年代の日本でT. Boone Pickensという名前を挙げれば震え上がった企業も多いはずだ。日本メーカーの買収を試みて名を馳せた人物だからである。アメリカでもPickensは石油関連企業を中心に企業買収M&Aなどを行い財を成した人だ。この80才になった人物が現在PickensPlanと云うものを打ち出し、アメリカのエネルギー政策に大きな提言を行い始めている。個人の財力と実行力がある人物のことだから、アメリカの風力発電の行く末に大きな影響を与えることが考えられるので、このPickens Planの概要について少し触れてみたい。

「アメリカは外国の石油に中毒症状(依存症)に罹っている」から始まるセンセーショナルはコメントは、アメリカのエネルギー政策のアキレス腱を覗かせている。しかも、これは改善されてきているどころか、1970年に24%だった海外石油依存率が、現在では70%にもなっている点が恐ろしい。そうして、その依存分を購入するためにアメリカが支払っている対価は何と年額で7000億ドルにも達して、現在のイラク戦争に費やしている年間費用の4倍にもなると言うのだ。今後10年間での石油代金支払いだけに10兆ドルにも達するこの数字に着目して、ピケンズ氏は人類の歴史の中で最大の富の移転になるだろうと明言している。世界で毎日産出されるのが8100万バーレルの石油に対して、アメリカだけでその2100万バーレルが使用されているそうだ。つまり全世界で産出される石油の25%がアメリカで消費されていることになる。しかも、アメリカ人の全世界で占める人口比率は4%に過ぎないと云う。

ピケンズ氏の言によれば、石油産出は2005年にピークに達してその後は需要の増加や価格の高騰にも関わらず、この三年間における石油産出は下がってきているのだと。石油産出コストは上がり、石油探査は毎回難しいところに移っている。しかも、増え続ける需要を満たすだけの石油は掘り起こせなくなっているのだと。真実は、安価で簡単に発掘できる石油の時代は終焉した。しかし、悪いニュースばかりではない、良いニュースは、アメリカの気候図を見ていくと、アメリカはまさにウィンドパワーではサウジアラビアの石油に匹敵するだけ豊かな風力資源を有していると。

気候気象などの研究によると、アメリカ中部を南北に走るGreat Plainsは世界における風力発電の潜在性としてはトップクラスにランクされる地域だそうだ。現在の風力タービンは、塔の高さが123メートルにも達し、羽の長さだけでも直径44メートルを超えるものだが、一般的に一基の風力タワーで一年間に3メガワットを発電する。これは輸入石油の1万2000バーレルに相当するものだ。現在のアメリカの風力発電は480億kWhの発電を行っており、450万家庭に必要な電力量だという。この数量では、アメリカの総需要の1%を満たすだけなのだそうだが、ピケンズ氏によれば、風力発電の潜在性は高く、相当数量を賄えるようになるだろうと見ている。

また、ピッケンズ氏は、自動車の燃料としてはガソリンを無くし、アメリカに豊富にある天然ガスを利用するように訴えている。天然ガスはコストも安く、国内で自給できることから、そちらにシフトをするべきだという。天然ガスですでにHonda Civic GX Natural Gas Vehicleなどがアメリカで売られており、ピケンズ氏はホンダ・シビック車を推奨し、クローズアップしている。 ハイブリッドや電気自動車の議論も高まっており、アメリカの自動車市場は今後10年で大きく変化することになろう。

ピッケンズ氏は、石油で長者になっただけあって、テキサスで彼の実力を信じている人も多い。そのためテキサスの公共事業委員会(Public Utility Commission)は、西部テキサスにある風力発電の地域から、都市部までに送電線を建設するために50億ドルに近い予算を通過させたばかりだ。この風力発電を活用できるために、投資される金額は、電力利用者が毎月4−5ドルの追加支払うことで財源が捻出されていく予定だ。公的部門が、連邦政府(国)を超えてこのように率先していくやり方には驚かされるところがあるが、一旦インフラができたら、その後の発電コストは風力が原材料になるので、テキサス地区の経済発展の大きな基礎となっていくことが想定される。

また、昨日はノーベル賞をとったAl Gore元副大統領なども、アメリカは10年後までには脱石油、石炭を果たすべきだとの大きな提言を行っており、脱石油を中心に大きな関心と注目がされている。ゴア副大統領は、アメリカの現状は、中国から金を借りてきて、それで中東の石油を買い付け、そうして環境を汚染しているアメリカのやり方のすべてを変更するべきだろうと言っている。

行間を読んでいると、イラクアフガン戦争に巻き込まれているのは、アメリカが当地域からの石油依存が高すぎて、地政学的に必然的に巻き込まれているのだと云うことを言っているようだ。アメリカは資源は豊かであり、それを活用しようというのは至極当然なことだが、どうも中東離れをするきっかけも求めていることが窺える。いずれにしても、議論が、環境にとって良くなる方向、あるいはアメリカの経済基盤変化に大きな推進力となるような方向へと進み始めているのは素晴らしいことだと思う。ピッケンズ氏は、風力発電により、より多くの職をアメリカ人に提供をして行くことを求めているが、それはアルゴア副大統領も同じことを言っている。国家的にエネルギー自活して行くためのリーダーシップを、政府部外の民間人の声で動き始めている訳だが、アメリカあるいは近海の油田開発に頼るより、再生可能なエネルギーとして風力を取り上げたりする意識が高まっただけでも嬉しい。

日本においても国家政策として、エネルギーの問題をより積極的に取り組んでいかないと、省エネだけでは十分でない気がする。官庁が率先しているアクションの中に、より大胆な国家事業的な施策が盛り込まれることを願ってならない。

Thursday, July 17, 2008

肥満とダイエット(カロリー編)

肥満とロハスの関係はどこにあるのかと考えられるブログの読者も多いと思う。ここで取り上げたいと考えている項目は、いかに生活に身近な環境が、反ロハス的になっているのかを示すことによって、消費者が身体のこと、自分たちの消費する食事、などなどを考えていくきっかけになればと思うだけだ。われわれの生活基盤は、良くも悪くも、消費中心の社会にあり、消費者があたかも自分たちで選択をしているように思えたりする時でも、いつの間にか大企業の販売促進と云う枠組みに中に入ってしまい、自分の健康にとって何が良いのか判断し辛くなることが、あまりにも多いことを感じているからに他ならない。メーカー側や販売側に悪意がなくとも、積もり積もっていくと多くの人々の健康に大きな問題を与えかねない社会になってきていることの証左でもある。だから、企業側だけのルールで食品などの販売するのは、リスクがあると考えねばならない。ここでは消費社会を否定しているのではなく、企業の方向性をウォッチする姿勢を消費者あるいは、消費者の立場に立った政府が持たない限り、誤った方向へ進んでいくだけだろうともう訳だ。

ニューヨークの街は、2年前だったか、レストランや食べ物に含まれていたトランスファット脂肪酸の使用を制限すると云う強い姿勢に出た。レストランなどは、便利でコストが安かったトランスファットを使えなくなったことから、調理の仕方を変更せざるを得なく、食感を守るのに多くの工夫が求められるような状況だった。でも、ニューヨーク市側は、市民の健康を考え、大きな税収減でもあるレストラン業界の反対を押し切って実行することにした。日本の状況は、ネットで調べている限り、3%以下です、とか言いながらまだ売れ続けられているのはどうかと思うが、ニューヨーク市では、既に次のステップをとり始めている記事をMSNBCが取り上げているので、紹介することにしよう。




ビッグアップルとの愛称で親しまれているニューヨーク市は、今年の4月からチェーン・レストランの各食品の値札に、値段のフォントと同じ大きさでカロリー量表示を義務づけたと云うのだ。チェーン・レストランはまだ、いくつかな法的救済策を求めているようだが、市は今週の金曜日から、表示をしていないところに2000ドルの罰金を科すことを実行する手はずだ。強硬な処置だと思うが、ニューヨーク市に置ける肥満の悪化や、それに伴う多くの生活習慣病の発生で、低所得者の医療費の問題でも市は、頭を悩ませてきたことからのこのような手段にとって出たのだと思う。東京では考えられないことかも知れないが、実際に、国民のメタボリックシンドロームの心配で、政府が音頭をとり、人々のウェーストを計り始めている記事は全米でも大きな話題になったことを知っている日本人も少なかろう。各国や各市の悩みは、違った対策で出てくるにしても、健康が大きな主眼になっていることだ。

写真を見ていただければ、判ることだが、チェーン・レストランで挙げられているスターバックスのケーキ類のカロリー数はものすごいものがある。ダンキンドーナツのチョコレート・チップ・マフィンは630カロリーだと言う。スターバックスのラスベリースコーンは470カロリー、クッキーでも610カロリーのものがあると言うのだ。有名チェーン店のT.G.I. Friday’sのメニューを見ていると、1000カロリーより少ないメニューを探すのに苦労したのだそうだ。しかも前菜とかデザートでさえ1000カロリー以上のものだった模様だ。

ニューヨーク市が、このように先鋭的な施策をとろうとしているのは、政策目標としてobese(超肥満)の人の数を15万人に減らすこと、そうして糖尿の発生を3万人抑制しようとするものらしい。この、カロリーをメニューに掲出する施策を打って出ようとしている市は、ニューヨークに限らず、シアトル市、あるいはカリフォルニア州のサンタクララ市、サンフランシスコも今年の後半に実行される模様だ。他の市は、ニューヨークのものよりさらに厳しいものを検討しているともいわれ、レストラン側が、塩分、炭水化物、脂肪、コレステロールなども掲出することを検討しているという。

このようなカロリー表示が無かった段階では、ローカロリーを目指して、チョイスをしていたと思っていた人をびっくりさせているようだ。T.G.I. Friday’sのピーカンで衣揚げしたチキン、マンダリンオレンジ、ドライクランベリー、セロリーのサラダが1360カロリーだそうだ。レストラン業界としても、グルメ志向のみならず、このカロリーも考慮して新規メニュー作りに励まなくなるというものだろう。

実態を知らされていなかった消費者が、このような形で、選択するための情報を与えられるようになったことは素晴らしいことだと思う。最後にスターバックスのフラプチーのの一種のカロリーカウントを掲出することにする。これからこれを注文することには少し勇気は必要になりそうだ。

Wednesday, July 16, 2008

肥満とダイエット(広告編)

アメリカの肥満の原因について、もう少し調べてみると、無視できないのは、広告産業の存在だ。広告業界で見ると、当然のことだが、あまり栄養価もないモノを、あたかもこれがないと生きていけないような錯覚の陥れるような、インパクトの強い広告がある。何千と生み出される新商品の中で目立とうとすれば当然のことだが、売り込みに関する広告業界の熱心さには圧倒されると言って良かろう。

イギリスでは、既にジャンクフード(ファーストフード屋駄菓子類のことか)を子供のテレビ視聴時間中に規制する法律が通っており、イギリス圏のカナダ、オーストラリア、ニュージランドでも、肥満と広告の相関関係についてはウェブでも多く語られている。しかし、アメリカになると、タバコ業界については、禁煙運動のためにあれだけ必死に動いた活動家も、ことジャンクフードに関しては、いくつかの訴訟があったりしているが、まだ大きな社会問題にはなっていない。なっていないと云うのは言い過ぎかも知れないが、禁煙家にとって他人が吸うタバコは不愉快だが、回りにいる他人が食べ過ぎても、それはその人の問題だけと云う気持ちも強いのだろうか。いくつかの財団などでは、この問題を真剣に取り上げているものの、まだ、ムーブメントと云うほどには至っていない。YouTubeなどでAdvertising, Foodでキーワードを入れても、きちんとしたものは欧州系のYouTubeから来ているものが多い。

広告で問題なのは、ジャンクフードの広告は多くされているが、健食を勧める公的広告が極めて少ない点だろう。そのバランスの無さが、消費者運動よりも、健康保険の仕組みが破綻しているアメリカ政府の主導で動かざるを得なくなってきていることが皮肉だ。ことに今年の大統領選挙の際、民主党の党代表選出に際して、ヒラリー・クリントンとオサマ・バラックが大きく対決した問題でもあった。「食」があまりにも基本的に悪いので、アメリカ人が不健康になっていることが大きな問題だ。

学校と云う教育場においても、何カ所にもこれまでコカコーラなどの飲料メーカーなどの自動販売機や菓子類の販売機が置かれていた。先端的な街では、徐々にそのような風習が取り除かれるようになってきている。しかし、まだ、アメリカの多くの学校では、教育財源の欠如から、販売機を置かせてあげる代わりに、スポーツプログラムへの補助金などをもらっている学校もあり、意識変革がなされるにはより大きな推進力が必要なも事実だ。

日本の学校施設においてそのような補助金的な動き、あるいはメーカーからのキックバックは無いだろうと思うが、子供の頃は外で歩きながら、何かを食べてはいけない習慣がいつの間にか消失してしまい、ながら族のスナック喰いは蔓延している気がする。日本の消費者が、駄菓子屋ファーストフードの広告規制を求めるようになるとも思えない。果物などの健食的なスナックなどが少ない日本で、今後の子供たち、大人も一緒だが、どうなるのだろうかと不安に駆られる今日この頃だ。

Tuesday, July 15, 2008

激戦模様になってきているナチュラル市場

アメリカのナチュラル市場は、元々はヒッピー運動や地元のファーマーズマーケットから生じたものなので、高級イメージではなかったと云って良い。暗くて何だか薄汚いものをまとめあげて高級志向に持って行ったのがナチュラルマーケットナンバーワンのホールフーズマーケットだ。写真のホールフーズは今年の4月にニューヨークに行った時に撮影したものだが、ホールフーズと言えば、日本のハイエンドの紀ノ国屋、明治屋などに近い雰囲気のマーケットポジションであり、立場が強固なものと思われてきた。特に、ナチュラル、オーガニックの成長が現在でも右肩上がりの状況なので、ホールフーズのマーケットリーダー的なポジションは確固たるものになるだろうと彼ら自身も見ていた。

ホールフーズはとてもきれいなところだが、ハイエンドへ行ってしまった観があるので、一部では気取り屋さんのスノッビーなイメージでも受け取られている。裕福でないナチュラルフーズ愛好家の間では、ホールフーズではなく、ホールペイチェックなどと揶揄されている。ホールペイチェックの意味するところは、給与を全部巻き上げてしまうほど価格が高いというものだ。

しかし、ホールフーズと云えども、高級志向で安泰しては居られない状況になってきているのも事実。市場はまだ、オーガニック食品比率は全食品の中では3.5%くらいだと見られているが、その伸び率は眼を見張るものがあり、その他大手のスーパーが見逃している訳ではない。しかも、ホールフーズがはじまった原点のようなところを狙っているスーパーなどもあり、王者の地位は必ずしも以前のように堅固ではなくなってきている。

ボールダーにおいて、元々アルファルファやワイルドオーツの創始者だったギリランド氏が、サンフラワーマーケットを作り、舞い戻ってきて、real food,,,, silly prices つまり「ホンモノの食品をアホ臭い値段で」と云う単刀直入なスローガンで殴り込みをかけてきているからだ。しかも、その他のマーケットもそれぞれにアグレッシブなアプローチでナチュラルやオーガニックを取り扱い始めている。そうなると、ホールペイチェックなどとあまり嬉しくない肩書きなどはもらいたくないと云うのが正直なところだろう。



このような激戦化しているナチュラルマーケット市場と、最近のエネルギー価格の上昇に伴う食品インフレにより、ホールフーズは対応策を余儀なくさせられてきた。その結果、これまで、マーケティングやチラシをやって来なかったホールフーズも次第に通常のスーパーに類したマーケティング策を打ち出すようになってきている。Real Dealと命名されたホールフーズのキャンペーンはディスカウント、クーポン、やりくりなどの提案、低予算でできるレシピーやウェブ上の消費者とのインタラクティブな活動まで広い分野を含むものになった。

世界的で記録的な食品インフレに直面した消費者が、引き続きナチュラルフーズを買い求め続けられることを前提にしたとプログラムだとホールフーズ側は言う。家計にいかに負担を少なくして良いものを買い続けられるのかと云う側面を打ち出してウェブで多くのプログラムを展開し始めている。

このプログラムの中核になるのが、"The Real Deal"といわれるものであり、28ページにもわたる消費者向けのバリュー(買い得品)ガイドになっている。また、これまでになかったことにナチュラル産業のクーポン販促企業の最大手の一つであるMambo Sprouts.com社と連動をしてクーポンなどを消費者に手渡し始めている。これもバリューガイドに掲載するなどもしている。

Real Dealの一環として、さらに絶対お買い得商品(The Real Steal)と云うカテゴリーの赤札商品を紹介することも狙っている。Real Steal(値段が安すぎるので、盗み同然と云う意味合いだ)に含まれるものとして、ゴールデンパインアップルが2ドル99セント、養殖でない南米パタゴニア産のホタテ(スキャロップ)がポンドあたり6ドル99セントのような事例だと発表している。

ホールフーズの経営者にとって厳しい状況になってきているが、消費者にとってナチュラルフーズがより身近なものになって行くプロセスと考えれば、目出たいことだ。特にボールダーでの激戦が消費者へのプラスになっていることは日頃から買い物をしている筆者にとっても嬉しいことだ。

Tuesday, July 08, 2008

肥満とダイエット(スーパーサイズミー編)

アメリカの国民が肥満化していることについては、これまでこのブログで度多に取り上げてきた。原因は多々あるだろうが、どういった背景でいつの間にか人々が肥満化してきたのか少しの分析を試みたい。こんな分析をして何の役に立つのかと云う意見もあろうが、日本もアメリカの後追いをしているので、少しでも消費者の注意を喚起して似たような事態にならないことを望んでいるからだ。この情報は、National Heart, Lung, and Blood Institute’s (NHLBI) Portion Distortion Quizと云うところからとったものだが、写真はDivine Carolineから拝借した。

アメリカの消費社会の象徴の一つにコカコーラのボトルがある。このボトルはデザイン意匠をとるほど、重要な商業デザインなのでアメリカの食品パッケージングデザインの中では突出したものと云える。しかし、今のアメリカにはこのようなデザインのボトルを探そうとすれば、例外的にしか見つからない。スーパーで買うボトルは「お徳用」サイズものばかりだし、ファーストフードでは、カップだけ貰い、自分で好きなだけ注ぐことができる仕組みになっているためだ。アメリカのカップの小サイズは日本の特大サイズに匹敵するくらいのものだろう。アメリカの特大は64オンスもあるので、約一升瓶程度のサイズと云う驚くべきサイズになっている。これだけで約776キロカロリーになると云うのだからアメリカ人の馬並みの飲み方はひどいものだ。

また、シアトルコーヒーと云われ、アメリカでグルメコーヒーが出現してきたのはここ20年くらいだろうか。それに伴い、従来のコーヒーにミルクを入れるようなものから、商品的付加価値を設定すると云うことで、ありとあらゆる不要なものまで入れ込み、コーヒー本来の味を超えて、別ジャンルの新食材カテゴリーを作り上げてしまっている。イタリアやフランスでは、贅沢なコーヒーはあるが、あくまでも嗜むようなサイズであり、アメリカのがぶ飲みの文化からはほど遠い。アメリカ人のコーヒーカップのサイズも、なぜあそこまでコーヒーを飲まなければいけないのかと驚くような容量なのだ。緑茶をビールの大ジョッキーで飲むようなものだと言えば、その巨大さ加減がお判りいただけるだろう。

こういった飲み物系だけでなく、食事はピザを始め、全ての分野で20年前と比べるとアメリカは、ほぼことごとくサイズが大きめになってきているようだ。サーブするお皿にしても20年前の標準なお皿が、サイズ的に小さく見えてきているとのことだ。皿が大きくなると、どうしてもサーブする量が貧弱だと困るので、皿に合わせて料理の量が増えていると言える。

ここまで書いてくると、日本はどのようにしているのだろうと考えたりする訳だが、まだまだアメリカに劣っているけれども、日本の中にもスーパーサイズミーの方向が出始めているので、気をつけなければならないだろう。アメリカには、It's a great deal(お得だ)と云うコンセプトが次第に強まってきたようだ。何故そのようになったかを考えると、どうしても広告のやり方を考えずにはいられない。つまり、他と商品的に差別するのには、価格とサイズは大きな差別化要因となるからだ。つまり、消費者はマーケッターの人によって、もっと消費する方向へうまく誘導されてきた訳なのだ。誰ももっと食べろとは言っていないのだが、小さいサイズはケチ臭く見えてくるように社会は変動してしまったことになる。ちょっぴりでも多いのが良いものなのか、実際に中身が良いのか悪いのかを考えずに、スーパーで二つの商品が並んでいると消費者はいつの間にか、内容量が少しでも多い方に手が伸びて行く現象があったと言える。

広告代理店は、顧客メーカーの販売成功を願っている。販売が増えれば、広告が成功したと云うことで、それによってビジネスがさらに増える。だから、最終消費者の利益を考えるよりも、メーカーの売り上げの方に眼が行ってしまっている。だから、消費者がやらなければならないことは、量で選ぶより、中身を吟味することだろう。自分の健康の具合、全体的な栄養の摂取などをよく吟味してから、その全体の中で、何が良いのか選別眼に磨きをかけて行く必要があるようだ。肥満とダイエットについて、いくつかの角度でブログを少し続けてみたい。

Monday, July 07, 2008

肥満とダイエットのイタチごっこ

一昔は、少し太り気味の人に対して貫禄が出ましたねとか言ったものだ。現在でも、一部の発展途上国では太っていることすなわち、裕福ということと結びつけられているところもあるようだ。しかし、医療の進歩や科学の発展で、人間は、少しやせ気味の方が長生きできることが研究の結果判ってきている。なぜそうなのか、と云ったことをここで書くつもりは無いが、満腹というのは、いろいろな意味で身体に余計な負担をかけることだけは間違いなさそうだ。

これもかなり昔に読んだ本に書いてあったが、人間にはいくつかの基本的な欲があるが、大体が満たされることは少ないと書いたものだった。それらの欲を羅列してみると、金銭欲、出世欲、政治欲、睡眠欲、性欲、名誉欲などに混じって食欲があった。その著者が書いていたのは、欲が満たされない場合、人間はストレスを持ち続けると云うものだったが、食欲を除くその他の欲は、多くの人間にとってなかなか満たされないものが多く、社会的ストレスが高いと云うものだった。唯一、食欲は簡単に満たされるものなので、ストレスが高まったりするときは、人間は満足感を味わうために、食欲を満たすのだという説だった。面白い論法に思えたが、アメリカの現在の肥満については、こんな議論で説明できないほど国民の肥満度は増え続けている。

CalorieLab社が毎年まとめている、アメリカ各州の肥満度地図統計が本日発表された。またしても、アメリカの各州は、首都ワシントンDCを除き、全ての州で肥満度の比率が増えていると言う。私の住んでいるコロラドは、さすがボールダーの所在州でもあり、肥満度は一番低い州となっているのが眼につくが、それにしても、これは単なる少しOverweightウェートオーバーの肥満ではなく、極度に肥満というObeseカテゴリーの数字を表しており、健康に良い指標であるはずが無い。子供なども、BMIが高まっているので、昔「成人病」と言っていたものを今では「生活習慣病」と云わざるを得なくなってきている。まったく困った事象だ。

アメリカの約66%が太り気味からObeseと云う分類もされるようになっており、国民のうち3人に1人くらいが何らかのダイエットを試みていると云う。しかも、そのダイエット食に支出されている金額が、市場調査会社の数字によると550億ドルにも達すると云う。しかも、この市場は、毎年3−4%伸びている高度成長市場ということである。この市場の大きさの凄さを見る尺度として、何とダイエット世界食品市場の約70%がアメリカの市場なのだと言われている。

あまり数字を羅列したたくは無いが、アメリカの食品の本質のどこかが間違っている気がする。本来の「食」の基本がずれているとしか言いようがない。アメリカは便利、標準やスピーディーということを念頭に入れて、食品のブランド化が凄い勢いで進められてきた。特に軽食やフランチャイズの発展を見ていくと、アメリカに敵うところは世界でない気もする。それらの「食」文化の中に欠点が出てきていることが、徐々に判ってきているが、軌道変化にはまだ時間がかかりそうだ。

一方では太らせて、もう一方ではやせるためのビジネスを展開。そのような食品業界の画策、策謀がなされているとは思わないが、翻弄されているのは一般消費者ということだけは間違いない。食べるという基本的な行動を、現在ではメーカーやメディアの広告で振り回され、本来自分にとって何が良いのかも判断できなくなっているというのが、現実だろう。アメリカでは、多くの識者が、食べることの必然性、健康との関わり合いなどについて、多くの優れた書物を著している。しかし、実体経済は、売り上げを増やし、経営基盤を強くするということで、身体に必ずしも良くないものまでもどんどんと押し付けてくる。広告が持つインパクトは、大人だけでなく、多くの子供や幼児にもすこぶる大きい。日本でもアメリカ流のファーストフードの定着化は驚くべきものであり、健康要素よりも利益要素を追求するようだったら、日本の肥満は、政府の盛んなメタボリック対策事業や広報活動にも関わらず、間違った方向に移っていくだろうと危惧している。

日本におけるロハスの活動が全てとは言わないが、正しい「食」の推進との食に関わる基盤整備を行なっていく上でとてもロハス活動は重要な役割を果たしていくことにはなりそうだ。メーカーの都合の良いロハスではなく、実際に自分の生活環境、食事環境に適った視点でものごとを見ていかないと、日本もアメリカの追随をすることになりかねないので注意が必要だ。健康に関わる自分のこだわりを見出そう。

Friday, July 04, 2008

地産地消を推進し始めたウォールマート

Cleantech GroupのDavid Ehrlich記者によると、アーカンソー州ベントンビルに本社を構える世界で最大のリテーラーであるウォールマート社は、効率的なディストリビューションセンターを有しているのにも関わらず、より各地地元の野菜や果物の比率を増やすようにコミットを始めることを発表したという。この背景には、地産地消というロハス的なコンセプトをベースにしているよりは、エネルギーコストの上昇による、ディストリビューションコストを削減することの方が実態に近いようだ。

ウォールマートは、青果物に関しては、ほぼ70%を国内の生産者から調達をしているが、その調達の方法を、より地元調達重視のパターンを強化して、今年だけでも地元ものの調達金額を400億円以上に持って行こうと考えているようだ。地元からの購入を増やすということは、当然フードマイレッジを削減することになる。そのために環境へのインパクトは削減される。アメリカの青果物は、現在のところ生産者から消費者に渡るまで平均して1500マイル(約2400キロ)輸送されている訳であり、アメリカ最大のリテーラーがコミットすることによって、環境へのインパクトの改善はかなりのものが見込めると云うもの。もちろん、集約されている調達方式を変更することによって、ウォールマートに口座を持っている生産者は増えることになり、調達業務はかなり複雑化するものが予想されるが、それだけ現在のエネルギーコストの上昇は、アメリカの商流にも大きな変革の機会を与えたことになる。グリーン運動をいくら声高らかに叫んでも、コストの上昇が引き出す変革のモチベーションの方が確実に高いようだ。

いくつかの事例を示しておこう。これまで桃はジョージアやサウスカロライナと云う主要生産州から調達していたものが、現在はすでに18州から桃を購入し始めている。規模が大きいだけに、ウォールマートが桃の調達先を拡大したことによって、ウォールマートは672,000フードマイルを節約し、112,000ガロンのディーゼル油節約に換算され、フレートと燃料削減によるコスト節約は1億4000万円にも及んだと云う。

シラントロにしても、これまでカリフォルニア州だけから調達して全米で販売していたものを、フロリダ州からも調達し始め、東海岸はフロリダから調達するようになった模様だ。この調達先をもう一カ所増やしただけで、1シーズンでシラントロだけで250,000フードマイレッジを節約したそうだ。いずれにしても、まだ、2カ所だけというのを見ると、全米で4000店舗以上を抱えるこの巨人が、改善できる余地はまだまだあると言えるだろう。

ウォールマートは、また、牛のガロンボトルのデザインなども変えている。これまでのデザインでは、輸送にはどうしても特殊なクレートが必要で、コストもかかり、無駄が多かったので、消費者へのコスト削減(10−20セント)も実現し、新しいガロンボトルを導入することにした。これも、ロジスティックスのコストを引き下げようと必至になっている、ウォールマートの大きな試みだ。メタルラックを無くすことで、同じスペースで9%以上の牛乳を余計に運べるようになった模様。



ウォールマートは液体洗剤においても、濃縮版を本格的導入することによって、無駄な輸送費の削減、パッケージのプラスチック使用量の削減、そうして梱包に使っていた箱材の削減なども達成した経緯があり、同社のコスト削減目標は、間接的ながら環境へ相当ポジティブな影響を与えているのは事実だ。

エネルギーコストの上昇は、あらゆる意味でアメリカ経済の根幹を揺さぶり始めている。安いエネルギーコストをベースに怠惰をむさぼっていたアメリカは、巨人ウォールマートの目覚めによってどのように生まれ変わっていくのか、面白い社会実験がはじまっている。

Tuesday, July 01, 2008

押し寄せるライフスタイルの変化

第二次大戦後、アメリカは豊富な国内石油資源をベースに未曾有な経済成長を遂げた。その原動力になったのは、もちろん、安価な国内エネルギー資源があったことが挙げられる。テキサス、カリフォルニア、ルイジアナ、オクラホマ、コロラドなど石油産出州があったことも大事だし、その後アラスカからも石油を引っ張ってくることができるようになった。しかし、国内の産出の限度を超えてアメリカの石油に対する旺盛な需要が続いてきた。2度のオイルショックや徐々に産油国の地政学的な状況が悪化し続けても、アメリカは石油麻薬に取り憑かれたように石油消費を高めていった。

冬になれば、家の中にいてもTシャツを着れるくらいに暖房を強くして、夏になると逆に何か厚手のものを着ないと寒くなるようにクーラーを効かせて来たアメリカだ。SUV(RV)なども、ほとんどの人がオフロード・ドライブをしないのにガス・ガズラーを買い続けてきた。アメリカ人男性の多くは大型トラックを買い求め続け、新築の家も床面積が光熱代の上昇を気にしないかのように広まり続けてきたのだ。郊外に大きな家を建て、遠くの仕事先までドライブ通勤をすることが日常だったし、お母さんたちは、ステーションワゴンの伝統を徐々にワゴン車に移り変わり、サッカー・ママとして子供の課外活動のためにあちらこちら運転手まがいの生活をしてきた。

世界の石油産出のピークが近い内に来るだろうと言われてきたのは、かなり古いことだ。しかし、最近では、需要側が、新生中国やインド高度成長市場、東欧市場などと相まって、生産国の多くでの政治的な不安、民族主義の勃興や欧米のオイル・メージャーの力が及ばないところ、環境への配慮などでも市場の変化は相当前から、安価な石油資源時代の終焉を示唆してきたできごとは多い。しかし、アメリカの消費者は、あるいはワシントンはこの問題に対して本気で対抗することをして来なかったと云える。テロの問題を口実に、現ブッシュ政権はイラク戦争を始めたのではないかと云うことも言われているが、ことの真偽は判らないにしても、ブッシュ大統領やチェーニー副大統領が元々石油産業出であると云うことを考えるとあり得ないことではないことを窺わせる。

なぜ石油価格がこのように急激に高騰したのか、定かでない点もあるが、いずれにしても供給の限界に対して、需要がますます旺盛に伸びていく背景から投機家が動いているという説も頷ける。でも、このように急激に高騰することは、アメリカ経済の根本を揺さぶることになるのは間違いない。元々、安価な石油資源を前提に出来上がっている経済だけに、住居の郊外型現象、ハイウェーでの交通渋滞、全米そこら中へのトラック輸送に依存する輸送網のアキレス腱、経済地域の専業化、広大な国土面積をカバーする航空、物流ネットワークなどなど、アメリカは突然大きな壁に突き当たり、その見直しが迫られてきている。

リスクの高い住宅ローン貸し付けによるサブプライム問題で、アメリカの住宅市場は冷えてきているが、その上に、これまで郊外生活を夢見てきた人々も、交通費が少ない都市に回帰する傾向が出ているようだ。大都会における公共交通網もこれまでにない勢いで電車やバス、あるいは地下鉄に人が眼を向け始めていると云う。バケーションのステイケーション(stay + vacationの合成語)になり、地元に近い観光地や活動地でバケーションを済ませようとしている人が増えてきている。もちろん、キャンピングカーなどは売れなくなってきているし、そのような従来のアメリカの居間、寝室、トイレを移動するようなドライブ文化は一部例外的な傾向となっていくことだろう。

スーパーではナショナルブランドよりも、フードマイレッジを気にして、地産地消、地元優先のような傾向が強まっていくはずだ。アメリカの三大自動車メーカーも、大型車に依存をしてきていただけに、販売、経営へのインパクトは大きく時間がかかる自動車開発だが、それを真剣に推し進めていかないと企業の存亡にも関わることになり、全ての大きなスケールでの変化になっていくだろう。面白いと思った点は、デンバーのヒッケンルーパー市長が最近日本を訪れたのだが、そのせいもあってか、デンバー市庁舎における「日本的クールビズ」を標榜し始めている。新聞にはクーラーの利用を抑えようというような社説も出てきたり、企業の在宅勤務などももっともっと奨励されてきたりしているのは、問題の厳しさを現していると云える。

このような社会の大きな変化が、ガソリン価格でリッターあたり100円程度で起こっていることであり、欧州並みに200円くらいになったときのアメリカは、大きく変わらざるを得ない状況になってくることだろう。アメリカの知恵の見せ時だし、大統領選挙の動向もしっかりと観測していきたい。