Thursday, January 31, 2008

大は小を兼ねる

ボールダーにいると、どうしてもロハスのエピセンターと言われるところだけあって、ロハスのパイオニアたちに会ってしまい、ボールダー的な思考が偏ることを警戒しなければならない。今月の半ばにソトコトの取材でアーカンソー州のフェイェットビル(Fayetteville)に出向いたが、新たな視点でロハスについて考えることができた。アーカンソーに行った大きな理由の一つは、世界で最大の売り上げを誇るウォールマートの取材だった。それについてはソトコト誌を読んでいただけたらもっと詳しく書いたので、ここではそのウォールマートに特に言及せず、アメリカの大手企業が、本格的にロハスを考え始めていることを述べてみたい。

最近日本では、中国の餃子の残留農薬の問題で大きな社会問題になっていることを読んだりしたりしている。昨年の日本でいろいろな食品の偽装問題などに比べたら、トテツモナイ問題だ。中国の実態についてはあまり知らないので、変に煽り立てることは書きたくないが、日本の消費者が食品の安全を強く求める時代が到来したと云って良い。

アメリカの消費者も似たり寄ったりの状況だが、国情が違うせいか、マスコミが取り上げるだけでなく、そもそも食の安全やナチュラル運動は消費者の中に根付いた運動の原点もある。つまり、60年代70年代のヒッピー文化に根付いた、大手企業への不信観が強い。ボールダーなどは、そのようなヒッピー文化と縁も切れないので、どうしても大企業反発の声は強く、大企業がロハスやグリーンといっても、簡単に信じてくれない。現に、巨大ウォールマートは、長い間ボールダー進出を考えてきたとの報道があるが、巨大ボックススーパーへの市民の反発が強く、まだ実現していない。

ボールダーの街には、コーヒーチェーンのスターバックスも多く見かけられるが、地元の人がサポートをしているのは地元のコーヒーショップであり、その数は独立系のショップは厳然として多い。しかし、大都市や、ボールダーのような気概のある都市を除くと、普通のアメリカの街におけるグルメコーヒーのショップでは、スターバックスが相対的に強い存在だと言えるのではないかと思う。ラテやその他の付加価値の高い(値段も高い)ブランドイメージコーヒーを提供してきたのだ。スペシャルティストアとして急激に伸びてきたところだ。

しかし、ここ1−2年、ハンバーガーチェーンのマックドナルドが、グルメコーヒーや健康的なアジアサラダを朝食メニューに展開しはじめており、マクドナルドと云う全米ネットワークを持つ巨人が急激にビジネス転換の実験を行なってしまっている。そうして彼らの株主へのレポートでもグルメコーヒーのおかげでビジネスが改善していることも記述されている。グルメコーヒーのことをマクドナルドではプレミアム・ロースト・コーヒーと云う表現で売り出している。つまり、これまで全くグルメ指向でなかったマクドナルドが、市場のニーズをうまく汲み取れば、かなり少ないリスクで、グルメ化を達成してしまう事実だ。ブランド認知力もあり、拠点展開も全米くまなくあり、そのディストリビューション能力や、購買交渉力からすると、規模の経済ですぐさまにビジネスの巨大展開を実現してしまう気がしてきた。

マクドナルドの株主報告によると2006年の時点で、アメリカには約550,000軒のレストランがあり、年間の総売上高は3,650億ドルだったと推測している。その中でマクドナルドの拠点は約14000軒であるにもかかわらず、マクドナルドが占める売上高の比率は全米の数字の7.4%にも達するという。一つの外食チェーンの力で、全米の外食支出の7.4%を得ていると云うのは化け物に近い。そのようなところが、グルメコーヒーを始めたが、もうすでに成功を収めはじめ、市場の変化に対応をして成功した味を噛みしめている。今後食材のニーズやアメリカでの健食が話題になるにつけ、業態変更をしていけば、簡単にナチュラルにも転換できるようになることだろう。

昨日ウォールマートのAurora実験店舗を見て、すでにウォールマートもかなりロハスを打ち出している。食材の分野でもオーガニックかが進んでいる。大手の参入によって、アメリカのロハスもすでに第二ステージに入ってきた観がある。スターバックスが、どのように巨人に対抗をするのか、スペシャルティコーヒーで残るのか、拡販で伸びようとするのか、市場はかなり早く変化しはじめそうだ。