Thursday, December 28, 2006

ビッグ・ビジネスになったヨガ

NY Timesが伝えるところによると、アメリカのヨガ人口はここ数年急増している。Mediamark Research社の調査によると、一週間に最低二日ヨガをトレーニングする人は、2001年の130万人から、2006年には300万人になったとのこと。その期間での成長率は実に133%だ。今年の春の別の調査によると、直近12ヶ月でヨガを一回でもトレーニングしたと云う人は1000万人に及んだと云う。

ヨガがこのようにポピュラーになってくると、それに関連するビジネスも大いに伸びてくることは言うまでもない。ビジネス規模を示す最新の数字は2004年のものだが、ヨガ・ジャーナル誌が行った調査によるとアメリカ人がヨガのクラス、衣類、書籍、マットなどヨガ関連商品、あるいはヨガ・リトリート(瞑想合宿)、やヨガバケーションのために使った総金額は29億5000万ドルにも及んだと推計している。

ヨガのトレーニングを行うにあたって、もともと瞑想にふさわしい、ファッション性もないような服装で始まったが、最近ではヨガのウェア関係も大きなファッションのステートメントになり始めており、コットンのような材質だけでなく、ライクラやマイクロファイバーなどを使ったウェアも出現している。そのようなウェアの動きに中で、ヨガ・ウェアブランドのPrana, Be Present, Inner Waves, やLululemon Athleticaなどに加わり一般スポーツウェアのNikeやFilaブランドも出始めている。

これまで、どちらかと云えばニッチ市場だったヨガが如何に主流に影響を及ぼし始めているかを見ていると、大手アパレルブランドのLiz Claiborne社がPranaブランドを取得したことからも分かる。この買収によって、Pranaブランドは一挙に全米、世界の主要市場で買い求められるブランドに昇格した。カナダのバンクーバー発のLululemon Athletica社も、元Reebok社の社長を招き入れ、積極的に日本やアメリカ市場での拡販に努めている。ファッション性が高まってくると、こういった市場でのヨガブームにさらに火がついてくることになろう。

ヨガのブームはブームだけに終わるのか否か。私はヨガはブームではないと見ている。あるいは、人々の生活においてより深いインパクトを与えるようになるのか注目したい。ヨガの持つ瞑想性や自然、環境、健康、食事などのロハス特性があるので、ブームを超えたものになっている気がしてならない。スローフードと平行して、ライフスタイルのスロー化を求める人間的なニーズが産まれているのではなかろうか。当地ボールダーはまさにこの傾向の最先端を走っているところだ。ヨガだけではなく、その周辺をサポートする業態も着実に成長して定着している。ビッグ・ビジネスが入り込むことについては、ロハス的な観点からすれば、何かわだかまりが残る気もする。でも、ウォールマートがオーガニック分野に進出してきているように、ロハスの進化の過程ととらえるべきではなかろうか。ヨガのブームで考えさせられるものがある。

Wednesday, December 27, 2006

矛盾だらけのアメリカの燃費議論(2)

アメリカではこれまで新車を売る場合、そのモデルの燃費を表示する義務がある。しかし、その表示された燃費と云うのは、あまりにも非現実的な数字であったため非難の対象となっていた。そのために環境保護庁(EPA)は、消費者が新車を購入するときにより現実的な基準ができるように今月にその策定方法を変えた。この変更が実施されるのは2008年モデルからとなるので、来年の秋からの実施となる。

このこと自体何もおかしいことではない。消費者のために計算基準をきっちりしていることは大いに歓迎なことと云えよう。しかし、この燃費の策定情報で一番大きな影響を受けるのはハイブリッド車になる模様と云うのには少し懸念が生じた。ハイブリッドの市内燃費がガロンあたり30%も落ちると云うのだから何か作為的なことを感じさせる。

もちろん、影響を受けるのは、ハイブリッドだけでないことははっきりしている。アメリカ人の運転のモードの反映を計算に入れ込むと云うことは大事なことには違いない。急加速、急停車、エアコンの使用など、アメリカ人ドライバーの特性をきちんと入れ込んでおくことがより精度の高い計算式になることは云うまでもない。しかも、今までは燃費表示を求められていなかったトラック(日本的に云ったら大型RVとでも云うのだろうか)も燃費表示の対象に入り始める。実際の施行はずっと先のことだが、視界に入ってきたことはアメリカが大型RVの野放図な売り上げについては何か対策をとらないといけないことを認識しているとも言える。

アメリカの燃費の表示義務は消費者教育のためだけではなく、70年代の2回のオイルショック前後してのアメリカのエネルギー政策の中で、中東依存を下げるために行われた政治的、国家政策的背景もある。連邦政府は全米ハイウェー交通安全行政庁(NHTSA)に対して、自動車メーカーのフリート平均燃費(CAFE=Corporate Average Fuel Economy)を規制する方向でも動いてきた。そのときに決まったのはメーカーのフリート燃費平均が2007年値で乗用車でガロン当り27.5マイル、トラック(ピックアップトラック、バン、RV)がガロン当り22.2マイルと云うことになっている。この水準を超えるメーカーは違反金を徴収される訳だが、燃費表示の計算式を変更したにもかかわらず、この部分だけは旧来通りの計算式で許すことになったようだ。もちろん、ビッグスリーの経営環境からすると、対応できないと云う政治的な妥協もされたのだろう。

この問題を掘り下げていくと、まだまだ多くの矛盾が出てくる。民主党が議会の両院の過半数を占めたが、これとて、選挙区の動向などで政党枠で収まらない問題になっている。アメリカのエネルギー政策は、中東依存からの脱却を狙っているが、議論が良く詰められているとは言い難い。そのような中で、ロハス的な社会を作ると云うもくろみはまだ、現実味を帯びていない。ロハス的な社会を作ると云うことは、この政治的な壁を突き破るものでなければならないだろう。国民一人一人の意識を高め、民意で変えていくしか難しいのかも知れない。

Tuesday, December 26, 2006

矛盾だらけのアメリカの燃費議論(その1)


ワシントン・ポストのコラムニストのジョージ・ウィル氏が掲げた驚くべき数字を紹介しよう。これはアメリカ人の平均体重の変遷とアメリカのクルマのガソリン消費についての関連性を掲げたものである。ウィル氏曰く、「アメリカ人の平均体重は男性で191ポンド(86.6kg)、女性で164ポンド(74.4kg)であり、1960年から見るとそれぞれ25ポンドも増えた。また、別の調査によると、2003年においてアメリカ路上を走っている2億2300万台の乗用車および小型トラックを見た場合、乗員の体重が1ポンド増えるに従い3900万ガロンの年間追加的燃料消費につながると云う結果が出た。アメリカ人が1960年時代のようなほっそりした体型(相対的な話だが)だったときと比較したら、現在は(体重増分により)年間10億ガロンものの追加的な燃料消費を行っている」と。皮肉なことだがアメリカの肥満が、アメリカのエネルギー政策や外交政策、中東に関わる軍事政策までにも大きな影響を及ぼしていることになる。

もちろん、一般的に云ってアメリカのクルマは小型化・軽量化しているろ云える半面、安全面での車体強化、空力特性を引き出すために硝子面の使用の増大、エンジンの高出力化などもあり、台当りの鉄板使用量は減少しているものの決してロハス的なクルマ製造までには至っていないのは事実だ。燃費の改善、クルマの軽量化、安全の強化、空力特性の向上、車内居住空間の快適さ改善、視界の改善、トランクルームの広さ改善などは、一見して当然消費者が求めるものだが、往々にして相対する要件だと云うことは、クルマを設計する人にとっては頭痛の種に違いない。自動車メーカーが各方面での努力をしている事実を否定するものではないが、まだ、ロハスと云う概念に沿ったクルマを創出する余地は大いにあると云える。今後が楽しみなところだ。次回のブログでは連邦の規制について書くが、燃費議論は錯綜している。

アメリカの肥満は、このブログでも引き続き書いていくつもりであるが、エネルギー政策などに関わってくるとは完全に思いつかなかった。アメリカの洋服のサイズも、徐々にアメリカ人の平均体重が増えるに従い、サイズの解釈が緩やかになっていると云う。つまり、今までサイズ8だったヒトが、太っても引き続きサイズ8が着れるような場合がそうだ。クルマにしても、乗員の平均体重の変遷を受けて、シートの強度を高めたりするなど、シートの幅さえ少し余裕のあるものに変えざるを得ないかも知れない。クルマの足回りにしても定員の平均体重が増えるのであれば、それに対応をした基本設計をしなければならないだろう。肥満が、このような見えない分野にわたっても資源の無駄使いに関わってくると云うのはよく考えなければならない。

燃費の議論から少しずれるが、アメリカの糖尿病患者はすでに2100万人いると云う。この直近の10年間だけで糖尿病患者は何と80%も増大したのだそうだ。糖尿患者のすべてがタイプ1であったり、すべてが肥満であったりと云う訳ではないが、それにしても食事の問題、運動不足の問題、社会的なストレスの問題などロハス的な関わりは多い。今後のアメリカの、エネルギー政策を見るにつけ、体重も参照することを忘れたくはない。ロハスにより、アメリカのエネルギー使用の削減を目指せると面白い。

Friday, December 15, 2006

ヨガとワイン、アメリカ化するヨガ

アメリカの文化は長いこと伝道者、宣教師の文化と云われてきた。ソトの世界に自国の優れたものを伝導していこうというものだが、その傾向はまだ収まっていると云えないが、最近では、外国の文化を取り入れるようになってきている。もちろん、アメリカに入ると、アメリカ的な解釈がされることもあり、オリジナルなものと大きく変化をしてしまうこともある。筆者が長年やってきている合気道にしても、アメリカで見る合気道は、解釈が千万であるのは事実だが、これだけDVDやテレビでホンモノが放映されても、何がホンモノなのかと云う判断はつきにくいものらしい。情報が錯綜する時代に入ると、情報伝達が速くなるがホンモノを見極めることができにくくなると云うことだ。でも、オリジナルにこだわらなくとも良いと解釈をすれば、アメリカで行われていることは、時代の要請に基づく変貌と見るべきなのだろうか?

NY Times紙が伝えるところによるとウィスコンシン州マディソンのヨガ教師アンジェラ・ガルガーノさんは、ヨガとワインの合宿を行い始めている。そのきっかけはYahooのMind/Bodyコラムを担当しているDavid Romanelli氏と手を組み、今年の8月にカリフォルニアのFairmont Mission Inn & Spaで週末のヨガとワインのリトリート(瞑想合宿と云うべきか)を行ったことがそうだ。この反響の良さから、2007年は全米で多くの瞑想合宿を計画するに至っている。ガルガノさんは、全米だけでなく、スペインのバルセロナでも合宿を企画しようとしている。ガルガノさんはまた、カリフォルニアのSonoma郡のDeLoach Vineyardsを拠点に使い、シリーズでヨガとワインの合宿を組むことにもなっている。

アメリカのポップカルチャーとヨガを結びつけるのは何も新しいことではなさそうだ。Romanelli氏は現在Yahoo.comにおいて「ヨガ+アルファー」と云うことで色々と組み合わせを作っているところ。多くのホンモノのヨギはこのような傾向にウンザリしているかも知れない。例えばクンダリーニ・ヨガなどを鍛錬している人は神経系統にバランス、平衡感覚をもたらすことを目的にしているだけに、アルコールとクンダリーニはマッチングをしないことに気づくだろうと云う。純粋なヨギの人にとっては、アルコールを飲むことは身体が発生させる脈動派を抑制することになり、ヨガの求める根本概念と異なると云えるからだ。

しかし、ここはアメリカ。アイスクリームなどでもチョイスの多さがモノを云うお国柄だ。真剣にヨガをする人で真の求道者ならともかく、週に2−3回リラックスするためにヨガをやっている人のためならこれもあろうと云う。要するに、ヨガは新たな解釈と応用の世界にも入っていると云う訳だ。先日紹介した日本のUnder the Lightの鈴木真さんなら、受け付けにくい発想かも知れない。でも、何事においてもそうだが裾野が広がると云うことは、純粋な理念が維持しにくいことを意味するものだと思う。ロハスの先駆者的なヒトたちは、さらに尖った方向へ進んでいくのだが、このように先鋭的に進む人がいることによって、さらに裾野が広がる余地ができるとも考えたい。

この大衆的な、ヨガの催し物に関心のある人はNY Times紙のリンクへ行ったらよい。それらの関連リンクがすべて掲出されている。英語のままで、情報を掲出しておこう。

VISITOR INFORMATION

WEEKEND yoga-and-wine retreats will be held once a month May through September next year at DeLoach Vineyards (1791 Olivet Road, Santa Rosa, Calif.; 415-289-4544, www.deloachvineyards.com). The vineyards’ guesthouse has three double rooms, and DeLoach can recommend nearby lodging for up to 10 more people. For those staying on site, the cost is $1,000 to $1,100 a person, all-inclusive. If you stay off site, the cost for the retreat is $600 a person and includes everything but lodging and transportation.

Angela Gargano and David Romanelli’s “Yoga + Wine” workshops are scattered throughout the country next year, and include stops in Santa Monica, Calif.; Chicago; West Palm Beach, Fla.; Scottsdale, Ariz.; and New York. Full listings are at www.yeahdaveyoga.com and at www.blissflowyoga.com. Mr. Romanelli teaches yoga classes at Exhale Spa in Santa Monica and Venice, Calif. (www.exhalespa.com), Ms. Gargano at Bliss Flow Yoga in Madison, Wis.

Thursday, December 14, 2006

不法移民とロハスの問題

2006年11月に行われた議会の中間選挙の一つの大きな焦点は不法移民対策だ。選挙直前に、不法移民の問題で嫌気さしている選挙民対策として、ブッシュ政権は、アメリカとメキシコの国境地帯に壁を作ることを法制化してしまった。建設はこれからだが、まさに万里の長城並みの大きな事業になりそうだ。そんな壁を作ったところで低賃金労働者を求める市場があれば、それに向かってメキシコ人の不法移民は続くだろう。今回のような小手先の政策でこの問題は解決し得ないだろう。問題の根は深く、アメリカとメキシコの相互依存の経済は、かなり深入りしてしまっている。

アメリカにおける不法移民の数はもちろん定かではないが、推定800万から900万人以上いると云われている。その多くはヒスパニック系の人であり、毎年50万人以上増え続けていると云う。数がまだ限定的だった時は、受け入れる余裕はあったが、ここへ来て、季節的な存在からどんどんとアメリカに定着し始めているので、色々な社会費用がかさみ始めているようだ。しかも、不法滞在であるだけに、税金を払っていなかったり、社会保障の積み立てもしていなかったりするにもかかわらず、社会へ負担になり始めている。特に学校や、病院などの公的資金の負担が高まり、税金の貢献が無いのに、社会保障関係の支出が増え続けていることが、アメリカ人の癇にさわり始めた原因。

ヒスパニックやラティノ層の政治への参画は増えているのだが、低賃金に魅力を感じていたアメリカ人が、間接的に公共の費用支出が高まり増税をしなければいけなくなると、一挙に不満が高まってくる。似たようなことは北欧でもあると聞いているが、客人の線を越えてきてしまうと受け入れ側の心情が急激に悪くなっていることは間違いない。メキシコとの国境に接しているテキサス選出のブッシュ大統領が、仲の良かったメキシコのフォックス元大統領の関係があるにもかかわらず、間に壁を作ることを決意したことにも強く現れてきている。

今週の出来事としては、アメリカの国土防衛省(Department of Homeland Security)の移民取締り部隊が、急遽アメリカの食肉加工の企業に押し入って、偽の身分証明書などで仕事をしていた多くの労働者を取り調べのため、あるいは強制送還のために、身柄を拘束した。今回の強制捜査は、アメリカにいる多くの不法労働者が、偽の身分証明だけでなく、他人の身分を偽って仕事していたことに対して、最近問題になっているID Theftの問題から強制捜査をしたとしている。身柄拘束をされたヒトたちの数が多いことがニュースで大きく取り上げられている。しかも、今回の問題は、不法移民を雇っていた食肉加工企業に問題を持っていくことをせずに、ID theftをしたと云うことでメキシコの不法移民だけに法の取締りの矛先が向かったことになる。

アメリカの有機農業などでは、多くのメキシコ人が農作業をしている。厳しく、賃金の少ない手作業の多い分野だけに一般のアメリカ人は扱いたくない仕事の分野だ。不法移民を野放しにすることは当然よくないことだが、両国間の経済依存関係が強くなっているだけに問題は簡単に解決しそうにない。有機産品の需要が高まっているおり、このように生産者側を助ける人員が、身分不安定な状況と云うのは、アメリカのナチュラル、オーガニック産業に大きな問題をもたらすことになるだろう。NAFTAという北米自由貿易体制ができて何年もなるが、それが真剣に検討をされ、賢明な対策を立てられない限り、急場しのぎ、問題先送りの状況は片付かないだろう。ナチュラル・オーガニックの一消費者として気なるところだ。壁作りはロハス的ではない気がする。

Monday, December 11, 2006

連邦政府の環境無策に立ち上がる先鋭的な州や市

写真はNASAの作成した地球温暖化の経過と予想を含んだ温度上昇地図だ。米国の航空宇宙政策を司るNASAの資料がこのようなものであるにもかかわらず、ブッシュ政権は、地球温暖化抑制に対しての行動計画は無視に近い状況だと云える。今回11月に行われた議会の中間選挙においても、この温暖化の問題が多く表面化するに至り、反ブッシュ勢力に大きな追い風を与えたことは云うまでもない。

ロサンゼレスタイムズは、連邦政府の無策に対して、地球温暖化阻止に何かでも役に立てようとするアメリカの州や市が立ち上がっている状況を紹介している。特にブッシュ政権が、二酸化炭素などの温室ガス効果抑制を取り決めた京都議定書に、中国やインドが含まれないのなら意味は無いとして調印しなかったことに言及。これを受けた形で、ブッシュ政権の方針に関わらず西海岸シアトルの市長であるNickels市長は、全米の市長に呼びかけてローカルレベルで京都議定書が決めた目標水準を達成しようと動いている。同市長の呼びかけに応じて、全米で330市長の参加誓約を取り付けるまで至った。この市長たちは、今後数年間にわたり、各市における二酸化炭素排出レベルを1990年レベルに戻そうと誓約をしたのである。

私の住んでいるボールダーの参加は云うまでもない。当地のMark Ruzzin市長はより積極的に動いており、全米に先駆けてClimate Taxなるものを先回の中間選挙で住民投票にかけて、通してしまった。これは電力消費がある一定以上行くと課税されると云うもので、そこでの税収は地球温暖化対策や活動のための資金源に使用としているようだ。シアトルは駐車料金税を導入したりした上に、今後は道路交通税を導入し、御誌注がす効果ガスの発生原因として大きな原因となっているクルマの利用を抑制しようとしている。

このような動きは、リベラル的な市だけが行っていないところが今回の特徴。ノースダコタ州のFargo市のWalaker市長はすべての交通信号をエネルギーの消費が通常の電球に比べて80%も低いダイオードのランプに変えたと云う。インディアナ州のCarmel市のBrainard市長は、市の使用するクルマのフリートをすべてハイブリッド乃至はバイオ燃料のクルマに転換しようとしている。

小さい市町村はもちろんのこと、二酸化炭素排出削減を誓約した街には、ロサンゼレス、サンフランシスコ、ニューヨーク、マイアミ、デンバーなどの大都会も含まれていると云う。このような市長たちの意気込みをサポートをするような形で、映画俳優で社会運動家のロバート・レッドフォードなども自分のユタ州Sundanceの牧場に何十人もの市長を招いて地球温暖化などについて話したと云う。市長たちが、政策の比較などができるようなウェブ上でのサイトも作られている。クールな市長たちのネットワーク

国がやらなくとも、自治体レベルでもやっていこうとする。そのような強い運動が市民運動としてできつつある。エネルギーや資源の浪費国アメリカは変わるのか。ロハスの動きは新たなウネリとなりアメリカの政界も動かし始めたようだ。連邦だけではない、市町村の草の根運動から、どこまで発展をするのだろうか。震源地の一つであるボールダーから観察をするのは今から楽しみだ。

Saturday, December 09, 2006

トランス脂肪酸規制へ動くアメリカ

ここ数日のコメントは飲料や食品関係に集中している。もちろん筆者の関心事であるからだと云えばそれまでだが、アメリカにおける食品関係の動きは大きくなってきているのも事実。衛生当局についても、従来は伝染病などの防止や対策が重要な課題だったのが、最近の死亡率は伝染病、衛生面などを遥かに超えて食事を通じた栄養過多や健康に悪影響を与えるような食生活による成人病の方が大きくなってきてしまったことが大きくあるのではなかろうか。

つい先日ニューヨーク市の衛生当局は、同市における25000軒のレストランに対してトランス脂肪酸の利用を無くすように指示した。ニューヨークが動いたとなると、全米の先例になるだけに他の大都市などは戦々恐々だ。アメリカでは、連邦で動くより、市のレベルで、禁煙条例の発令や、シートベルトの装着義務などが始まっている訳であり、トランス脂肪酸などもこの事例で、かなり速い段階で全米ベースに広まると見られている。

トランス脂肪酸は、天然のものではない。人間が約100年前に油を固形化するために植物油に水素を添加して作ったものなので、人工的なものなのだ。最初に商品化したのはCrisco社で、1911年に商品開発されたもの。

トランス脂肪酸とはどのような技術なのだろうか。ニューヨーク市衛生当局のリストを見るとそれがはっきりしてくるらしい。つまり、トランス脂肪酸で作られたものの中に、フライドポテト、タコシェル、ドーナッツ、ピザ生地、クラッカー、クッキー、パイクラストなどがあげられている。これら商品に共通することと云えば、スポンジのように柔らかく始まり、熱を通すとカリッとなると云うことだろう。つまりトランス脂肪酸は、フレーバーではなく、テクスチャーを変える傾向があると云うことだ。やけ上がりが速いために、水分をあまり失わずに焼き上がるのだ。しかも保存期間が長いので、無駄も少ないとなる。

そもそもトランス脂肪酸が普及をしたのは安かったかららしい。1970, 80年代に飽和脂肪が、循環器系に毒だと判った段階で、レストランやメーカーは飽和脂肪を捨て、トランス脂肪酸へと移行した。全米レストラン業界は今回の措置に真っ向から反対しているのは、まさに、トランス脂肪酸の使用があまりにも普及しているからだろうと見られている。

トランス脂肪酸は、飽和脂肪よりタチが悪いらしい。つまり、悪玉コレステロールを引き上げるばかりか、何と、善玉コレステロールも引き下げてしまうのだそうだ。だから、ニューヨークの衛生当局者が云うのには、人工的に作られたトランス脂肪酸は身体に良いことは一つもなく、どんな少ない容量でも身体に害を与えるのだそうだ。天然の脂肪だったら、少しだったら健康的なダイエットの一環としてみていけるのに、健康に百害あるトランス脂肪酸は、今後は喫煙のように抹殺される方向で進むことだろう。

この規制の進む方向はとてつもなく大きな出来事だ。アメリカのファーストフード産業に与える影響は甚大だ。タバコ産業が禁煙運動で受けた影響とは比べ物にならないかも知れない。アメリカの食料油の生産・供給体制がどのようになるのか、供給が足りない現象が起こらないのか、コストの引き上げなどでファーストフード自体にどのように影響を与えるのか、多くの事象が不確定な状況と云える。でも、アメリカの肥満や糖尿病などのインパクトも待ってくれていないので、アメリカの食料事情が大きく変わるきっかけがニューヨークのトランス脂肪酸規制で始まったと云える。

Friday, December 08, 2006

ペプシーのナチュラル・マーケット参入努力


ホールフーズやワイルドオーツのナチュラル系スーパーに行くと、アメリカと云う市場なのにどこにでもあるコカコーラやペプシコーラのような清涼飲料が無い。商品の取り揃えを考えるときに、コンベンショナルな商品は入りにくい。誰かに指摘されないと気がつかないことだが、床面積などがこれまで比較的小さかったホールフーズやワイルドオーツに参入する障壁はある意味では高いといえる。これまで、ナチュラル系のスーパーの存在は異端児的であったのが、徐々にではあるが主流との接点が高まりつつある。それは、健康や環境などの意識が高まってきていることと強い関係がある。コンベンショナルなスーパーだとしても、基準を今までの通りにしていくと、大市場では知的層、裕福層、健康派、環境派などの客層が離れていくようになってきている。

コンベンショナルグッズを売っている食品メーカーとしては、ナチュラル系スーパーに無視されていてもつい数年前までは無視し得たことだが、ここへ来て、このままで行けば、将来的には大きな市場を失いかねないと考えだしてきている。だからペプシコ(ペプシコーラの親会社)としても、ホールフーズに受け入れられるような商材を作り始めていると云う。もちろん、オーガニック・ナチュラルを目指す顧客層をターゲットにした商材開発だ。ペプシコはホールフーズでチップスの試験販売を行い始めた。しかもスムージなども何店舗かで試験販売を始めている。面白いことに、それらのラベルには親会社のペプしこの名前は伏せてあると云うことだ。

ペプシコが試験販売を始めているスムージーはFuelosophyとの名前であり、まだ中西部とアメリカの東北部でした売られていない。Sun Snackと云うチップスは全国のホールフーズで売られ始めている。ペプシコとしてもナチュラル系市場をターゲットしてモノを開発し始めている。この、新たな裕福な市場を放っておく手はないと云うことだろう。健康の関心が高い層をどうやって取り込むのか大事な戦略となっているのだ。

これまでに、独立系の企業の商品だったもので、すでにホールフーズなどで売られていた飲料のIzze、Stacy's Pita ChipsやMother's Natural Cerealsなどを買収しているのだ。これ商品は、今後もホールフーズで売れ続けられていくことだろう。

親メーカーの名前を伏せておいて、ナチュラル系スーパーに参入をする。考えてみると社名も出せないなんてかなりみっともないことだが、それだけ消費者は大企業のブランドに懐疑的だと云えよう。でも、このように密かに売らなければいけないと云うことは、悲しい現実なのだろう。参入努力は並大抵のことではない。大手企業も、徐々にではあるが、ナチュラルの洗礼を受けてきていると云えそうだ。

ナチュラルまでの洗礼を受けなくとも、大手飲料メーカーは商品の変更を余儀なくされている。CNNが報道する記事によると、コカコーラは2007年にビタミンやミネラルを含んだダイエットコークの発売をすると予測記事を出した。業界筋によるとペプシコーラも負けてはおらず、来年はTAVAと云うビタミンなどを含んだ炭酸飲料を発売することが見込まれている。いずれにしても機能的な飲み物でないものは苦戦を強いられるようだ。

Tuesday, December 05, 2006

マクドナルドのアスレチック・ジム?

マックドナルドのゴールデンアーチと云えば、アメリカの食文化の象徴のようなロゴだ。アメリカにおける認知度の高さは抜群のロゴだ。そのマクドナルドも、利便性、手頃な値段、スピーディー、標準化された味付けなどで世界中で長い間伸びてきたブランドだ。マクドナルドをあまり健康的でないと見ているアメリカ人でも、空港や異国の地においてあのロゴを見つけるとつい入りたくなる場所と云えるような気がする。そういう筆者も子供が小さかった頃は子供と一緒にマクドナルドに行ったりしたものだ。健康のメッカボールダーに移ってきてから、マックドナルドへ足は遠のいているが、それはアメリカのメディアが、アメリカにおける肥満の問題が社会問題化するにつけて、徐々にマクドナルドのネガティブな面をどんどんと取り上げてきて、これまであったポジティブな側面は一挙に吹っ飛んでしまったからと云える。コレステロールや高血圧などが気になると、どうしても利便性や手頃さなどだけでは食べたくなってしまうのは当然だ。

マクドナルドは、そのメディアからの非難をかわすためにメニューの改善を行ってきたりしている。その傾向は収まるどころか、今後の社会ニーズによってどんどんと高まっていくことになっていくだろう。いっぺんでの改革はできないにしても、企業イメージを改善せずして放っておけば大きなしっぺ返しが予想されるために、着実に改善していくことになるだろう。それを怠れば、新たな競争相手を作り出していくことになりかねないからだ。

成功しているコンセプトを変えると云うことは容易なことではない。しかし、無策と云うのも将来性を潰すことにもなりかねない。現在、マクドナルド社のウェブサイトにも掲載されていないが、静かな実験がすでに行われている。アメリカの6店舗でアメリカでは郊外店舗に附属しているPlayPlaceを大幅に改修してR Gymなる子供向けのアスレチック・ジムを設置し始めている。子供の年齢によって分けたアスレチック活動が展開されていると云う。ボールダーに近いブルームフィールド市のお店にもこの仕組みが取り入れられたようだ。

マクドナルド本社としても、スポーツ生理学やその他の専門家を動員しての大きな動きだ。恐らくは、多くのカメラやその他のアンケートなどを通じて、マーケットリサーチも行っていることだろう。アメリカは、肥満の問題、成人病の問題を無視し続けてビジネスは行えなくなる時代がくるだろう。すでにニューヨーク市では、市の衛生当局がレストランなどでトランス脂肪酸を使った料理を制限する動きが固まりつつある。アメリカの食を変えるのは難題だが、何もしないでいることはできない。前にもレポートをしているように、アメリカにおける人気メニューのトップを行くのがハンバーガーだが、それをどのように健康と結びつけるかの戦争は、今から始まったばかりだ。