Monday, April 26, 2010

外食産業、国民の健康と連邦政府

オバマ政権は、この春これまで長い間懸案だった健康法案を議会通過させて、法律として施行をしたばかり。五月雨式に導入される多くの施策でアメリカ人の健康が一挙に向上されると思われないが、それだけアメリカ人の健康問題が、大統領にとっては、景気回復を含む経済施策やイランイラクの戦争や外交問題さえ凌駕するところに位置付けられて来たことは注目に値する。

この健康法案の中に、あまり知られていない案件として、アメリカのすべての外食チェーンに義務化される重要な案件がある。それは、ファーストフードなどのチェーン店などに、メニューごとのカロリーを表示する義務のことだ。

Image: Suat Eman / FreeDigitalPhotos.net

それはドライブスルーのレストランにも適用される。ビッグマックのカロリーが500キロカロリーを超えると知らされずに、それを買うことができなくなるのだ。自動販売機についても同じことが適用され、スニッカーズバーなどを買う時のカロリー数値も表示されないといけなくなる。

このカロリーの表示義務については、これまでのブログでも書いて来たが、市単位で行なわれていた条例が、連邦政府の法律になると云うところがミソだ。しかも、この法律はレストランチェーン業界の賛同を得ていたから、かなり簡単に法制化されてしまったのだ。つまり、各市単位で行なわれていた条例では、対応が難しくなり過ぎること、各市の求める条件が異なり始める可能性もあることから、レストランチェーン業界が、率先して連邦基準を推進してしまった背景があるようだ。

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実施については、来年を目処にしているが、その方法や実行のやり方が決まっておらず、それが決まるまでに相当の年限がかかるだろうと見られている。元々消費者のために作られるはずだった法案が、いつの間にか業界のニーズとうまくかち合ってしまったところに、何か不思議な感じがしてならない。

連邦政府が、カロリーの表示義務化をしたところで、消費者が、それを意識しないようだったら、意味がないような気がする。個人の肥満度が上がれば健康保険料率が上がるとか、税金が上がるとかという罰則規定があれば、効果が相当上がるだろうが、カロリー表示でどこまで人の意識は変わるのだろうか?大きく変わるとは考えにくい。

アメリカの健康論議を見ていると、肥満の悪者を捜しているように感じる。トランスファット脂肪酸だったり、高果糖コーンシロップだったり、澱粉だったり、清涼飲料水だったり、ビッグマックだったり、いろいろなものが叩かれている。しかし、一方では、各チェーン店は、客を呼び込むために、相当の広告費を投じており、満腹メッセージを宣伝している。やはり、スーパー・サイズ・ミーの世界はなかなかなくならないのだ。

健食と外食産業が相容れないコンセプトのようであり、それを調整していくのには、かなりの努力も要る。学校給食などで、野菜果物をより消費する動きも強くなっているが、外食産業が巨額の予算宣伝で売り込む勢いにはなかなか勝てない。連邦政府がいかにカロリー表示を義務化したところで、外食産業がうまくそれを取り入れてしまい、肥満予防の効果は生まれてこない気がする。

何ごとも、腹八分でいかなければならない。良いモノだって食べ過ぎれば、効能はなくなるどころか、毒にさえなってしまう。健康に良いとされるハチミツでさえ、飲み過ぎれば毒とことわざの通りだ。今では、外食産業において塩の制限さえ検討されている。利益を求める外食産業としては、国民の健康を願いつつも、連邦政府とのイタチごっこになりかねない。健康は、政府に決めてもらうのではなく、自らの判断で、自らの消費を通じて、健康を意識しながら、消費者一人一人が追い求めていかなければ、ことは解決しないだろう。できるだけ良いモノを、適正な範囲で食することに努めていきたい。

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