Thursday, October 23, 2008

求められるグリーン・ニューディール政策


アメリカを震源とする世界の景気後退が、深刻化しており、1929年世界恐慌以来最悪の不況になるだろうとの見通しだ。各国の蔵相などが緊急対策をとっているが、各国政府の財政金融支援にも関わらず不安定な状況が続いている。このような不況状況になると懸念されるのは、地球温暖化対策やポスト京都議定書やグリーンに関わる施策が、景気対策や財政金融支援など取って代わられ、プライオリティを下げられるだろうと云う思惑だ。現在は、景気後退のおりでもあり、石油価格などもバーレル当り150ドルの高騰から70ドルを割るような状況でもあり、再生可能なエネルギーへの関心も薄まっていく観もある。一時ガロンあたり4ドル台に高騰したアメリカの自動車用のガソリン価格は、3ドルを割り込んでおり、省エネしようとする勢いも下がっているとの観測にもつながる。石油資源が枯渇するのではないかと云うパニックの状況でパーレル当りの価格は200ドルに到達するかもしれないという悲観的な観測から、今では70ドルを割っているだけでなく、下手をすると60ドルも割ってしまうかもしれないほどの急落ぶりだ。それが何と半年という期間の間に起こった事実なので、市場の乱高下の現実はきびしい。現状では恐れられていた、資源の問題は吹き飛んでしまったかのようだ。

果たしてどうなのだろうか?グリーンな政策も後退してしまうのだろうか?気になるところだ。だが、このような時期だからこそ、世界の経済を根幹から見直す必要もあるのではないかと思う。景気後退や不況と云う言葉が出てくる以上、その根本的な対策を真剣に考えるべきときが来たと言えまいか?


約79年前の1929年に発生した世界大恐慌の対策として出された政策は、ルーズベルト大統領のニューディール政策だった。大不況から抜け出すための政策は、国家的大型公共事業の展開だった。フーバーダムなどの建設やTVAなどの建設が行なわれたのもこの頃だ。経済を学んだ者ならよく知っている事象だ。

2008年の大不況に直面して、イギリスやアメリカの学者の中にグリーン・ニューディール政策を推奨する人が多く出始めている。このグリーン・ニューディール政策は、金曜市場の不安、長期的な石油市場の問題解決、そうして食糧をも含む環境問題の解決と云う三大問題を同時に解決しようとしている学者たちの提言なのだ。今年の半ばから、気象条件などが取り返しのつかない状況になるのに後100ヶ月しかないと云う危機意識が芽生えている。この、時限的な危機意識から人々が立ち上がり始めているのだ。特に政治家たちが、大局を見ることをせずに、個別の問題にしか目が行かないところに不満を抱き動き始めている内容のものなのだ。彼らの提言が含まれている内容は下記の通りだ:

1、再生可能なエネルギーやより広範なグリーン産業への産業構造転換のための巨大投資を行なう
2、上記によって、グリーンな雇用創出(グリーンカラー)を求める
3、金融セクターの管理を高める一方で、グリーン雇用につながる資金フローを高めようとすること
4、金融バブルの状況から、その国家的指導のエネルギーを産業、環境、農業、労働組合などを結束するような方向性に転換をすること

これまでバラバラだった、問題の対応を、より包括的な目で次世代にニーズに合った形で転換しようとする環境運動派や学者たちの提言と見て良い。ルーズベルト大統領のニューディール策も、単に雇用創出としてだけでなく発電・エネルギーや農業用灌漑などの基幹産業を大公共事業を通じて展開したものであり、アメリカの経済再興を可能にしたことが知られている。

このグリーンなニューディール策を展開するのには、もはや一地方や一国だけの問題ではなく、世界的に同時に展開をすることが求められてくるわけだが、大統領になるのが徐々に確実視されてきているオバマ大統領候補も意思表明をしてきているように、2009年になれば、消費を促すための景気対策でなく、より社会のインフラを転換するような産業投資への動きが出てくるものと予想される。まだ、具体的な処方箋は出されていないが、オバマ候補のこれまでの動きからすれば、基幹産業へのグリーン転換投資がされるのは間違いないだろう。グリーン・ニューディール策が、次期政権の中でどのような姿で現れて来るのか、これからも大いに注目をして行きたいところだ。