Saturday, November 24, 2007

生牛乳を求める人たち

日本においては有機牛乳はまだ珍しいと云うのに、アメリカでは、乳製品の消費が多いためか、有機の範疇が広まっている。しかも、有機は有機でも、自然放牧の度合いまでが差別化要因になるほど、牛乳へのこだわりは大きい。まだ、主流になっている訳ではないが、今度の流行は、Raw Foodの影響を受けているものと思うが、殺菌しない牛乳を求める人が増えているらしい。殺菌は英語ではPasteurizedと言うが、通常の牛乳はこの殺菌を行なった過程でないと市販できない仕組みになっている。もちろん、衛生当局としては、生牛乳を販売させたときのリスクを考えてのことなので、理解できないでもないが、生牛乳派の主張は、

「本当に有機のえさでストレスが少なく成育している乳牛は、牛乳の質が良いだけでなく、牛がリラックスしているので牛自身の病気に対する自然な抵抗力がある。だから、一般牛のように抗生物質などを与える必要など全くない。健全な、乳牛の牛乳なので、衛生上気をつければ、問題ないはずだ。しかも、殺菌をすると云うのは、高温処理をするので、悪い菌を殺すだけでなく、善玉菌も殺してしまう。これでは、せっかくある栄養素を殺菌プロセスで除去してしまうことになる」と言うことになる。この生牛乳を飲むと、抵抗力も高まり、子供の集中力も高まると言う。誰がこのような研究をしたのかどうか知らないが、自然回帰を求める人の心理はよく理解できそうだ。

市販できないのに、それがどうして増えてきているかと言うと、自分の牛から採って飲むことについては、衛生当局とて文句は言えないと云うことなので、牛の所有を共有して行くことがなされているらしい。法律上は自分たちの牛の牛乳をどのようにして飲んでも構わないと言うことになる。この牛の共同所有が、生産側が対応できる限界を超えていると云うことで、参加するのに大きなウェイティングリストがあるらしい。しかも、その権利を得るのに支払う金額は、ガロンあたり7ドルくらいするらしい。通常の牛乳が2ドル50セントくらいだとすると、有機牛乳は5ドルを超えており、3倍くらい値段は高い。これだけ、高いコストの牛乳でも買おうとするのだから、牛乳へのこだわりが高いのは分かるだろう。

ボールダーから東に行ったところ、ブライトン市のジョンソン・エーカー農場の共同乳牛配給に加盟をするのに300名の待ちリストがあるそうだ。このような共同所有の仕組みを提供しているところがコロラド州だけでも15カ所くらいあるそうだ。300名も待ち人がいるのであれば、その人気でより多くの乳牛共同所有農場が出現し始めてもおかしくない。いずれにしても、健食を考え始めている人たちにとって、牛乳の高価格で驚くようなことはないようだ。安全な食とは何かを本当に考えさせられる動きだ。

共同所有の権利をするために申し込むサイト

www.johnsonacres.com.

コロラド州におけるその他の生牛乳生産の案内

www.rawmilkcolorado.org.

Friday, November 23, 2007

Black Fridayと反消費運動

アメリカ国民の一大行事である感謝祭の翌日は、Black Fridayと言われる日だ。感謝祭は木曜日なので、その翌日の金曜日と云うことになる。アメリカの小売業界がクリスマス商戦へ本格的に突入をする日でもあり、多くの店舗が、ショッピングの勢いをつけ始めるために、超目玉商品を超目玉価格で提供し始める日だ。特に、電気製品などは、限定数ながら、モノによっては、人気商品でも半額に近い価格で売られる。ブラックフライデーと言われる所以は、小売業界は、この日からクリスマス商戦で年間の売り上げの半分位を上げるからで、それまで赤字だった店舗が、黒字に転換するとき(願望)を表している。とにかくテレビや新聞での宣伝がすごく、消費を煽ることが多くされる。お店によっては、朝の4時に開店をすると云う滅茶苦茶ぶりが展開され、ショッピングカートをヨーイドンで開店と同時に店内に入るようだ。もちろん、お目当ての商品はだいたい見当をつけてあるので、人気あるような目玉商品については、人が殺到をするので、恐らく新宿駅などのラッシュアワーの何倍かのプレッシャーがかかるようなショッピングシーンだろう。とにかく、消費を煽ることで景気をつけようと云うことだからすごい。

ここで、ロハスと商品について少し考えてみたい。ロハスだから消費をしない訳ではないが、これでもかと云うような景気対策にでもなるように期待されている消費運動には少し幻滅する。消費者は王様と言われるが、そんなことはない。どのメーカーも市場のある程度の予測を立て、それに基づいてリスクを冒して商品の生産に突入をするのだ。市場の需要を見てから対応をすると云われるトヨタ自動車のようなかんばん方式でさえもある程度鉄鋼製品やガラス、タイヤなどの市場予測値を立てた上での商売だ。注文生産でない以上は、予測をベースにして生産されることが当然考えられる。

私も、ドイツの自動車メーカーの仕事をしていたときに、日本向けの生産については、4ヶ月半前に注文するだけでなく、年計販売計画をヨーロッパ本社に出していたので、ある程度消費を達成させると云うメーカー側の意向が強くあった。日本に輸入されたものを送り返す訳にいかないので、結局はあらゆる手で販売し尽くしていた訳だ。消費者が王様なのかと考えたくなる。消費を押し付けている姿勢がここで出てくることは否めない。

アメリカでも、反消費運動が出ているらしい。このように、メーカーの都合だけで、広告代理店などを使い、メディアでどんどん売り込み合戦をされると、消費意欲が強くなってしまうことも当然だろう。私にしても、正直言って欲しいものはいくつもある。でも、皆が同じように買い始めれば、経済は潤うだろうが、この行き過ぎた消費主義には問題がありそうだ。反消費運動は行き過ぎだが、限りある世界資源をどのように活用して行くのか、サステイナビリティをどのように考えて行くのか、もう一度考えるべきではなかろうか?今日の世界人口は60億くらいだそうだ。それが今の予測だと2050年には人口は今のままで推移すれば90億になるだろうと言われている。もちろんどこかで歯止めがかかるだろうが、30億以上の人口増加は、中国の人口の2倍以上の増加と云うことになる。

クリスマスなどの目出たいときに、買い物をするなと云うつもりは毛頭ないが、現行の経済体制をどこかで変える必要が出てきていることだけは確かだろう。ロハスをそのような視点で考えれば、消費と云う概念さえもおかしなものになる。アメリカでは、消費者と言わずco-producer(共同生産者)と云う概念が出始めている。生産者が、需要者の意向を受けて生産するので、共同生産者と云う概念だ。つまり、作ってしまったものをどのように消費させるかでなく、無駄なくニーズに応じて作って行こうと云うものだ。物質主義から、どこかで転換をするときに来たのではなかろうか。ブラックフライデーの日にそんなことを考えている。

Thursday, November 15, 2007

市のレベルで高まるグリーン活動




今月の初めにワシントン州シアトル市において2007年の全米市長会議が開催された。全米大小の市町村から参画した市長の会議の模様を多くのマスコミが取り上げた。取り上げた理由は、多分ブッシュ大統領の環境政策に対して、大きな不満を持っているからに他ならない。しかも、連邦の環境施策を待っていたら、地球の温暖化問題について対応が遅れる心配も多くあったのだろう。

ノーベル賞を受賞したゴア副大統領は、衛星を通じてメッセージを送った。やはり環境派だったビル・クリントン元大統領は会議に参加している、暗に共和党の政策を非難するような会合にもなったような記事は出ている。しかし、党派的な活動が中心になるような会合ではなく、よりグリーンな活動をどのように実質的に実施して行くかが、会合の大きな目玉になったようだ。つまり、政治の世界では市民に一番距離的に身近な市長たちのことであり、市の実体経済とかけ離れた空想論を話しても、市民から反発を受けるような事態も予想されていることから、北極グマの生態系が壊されているとか、北極の氷が溶けているという議論ではなく、より身近な、子供たちの喘息が増えているとか、外国の石油に依存していると光熱費の高騰などが必至だとかで、市長レベルでは適しているからだ。

今回のテーマの中には、資本主義と消費者などのバランスなども話題になったらしい。クリントン元大統領は、彼のプレゼンテーションで1100の市町村が、共同調達を行なうことによって、省エネ用品を安く買い付けできるように企業と交渉をしたことを披露した。また、民間の世界で最大のスーパーのウォールマートがスポンサーになり毎年気象保護大賞を企画して、市などでそれぞれの共同体で、エネルギー依存度を下げたり、排出ガスを大幅に削減して地域社会に貢献したところに大賞をあげようと云うことを決めたりしている。

http://walmartstores.com/microsite/walmart_sustainability.html.

また、アメリカ建築化協会と共同で、地球温暖化ガス排出でインパクトが高い建築物の大幅な方向転換をすると云うことで、時限を決めて活動をするようになった。2030年までにはカーボンニュートラルな建築物を作るようにしようという目標なども立てられている。

このように全米市長会議などで、年のグリーン化が横断的に議論されるのは素晴らしいことだ。連邦政府が、対応に苦慮している段階で、地球温暖観の問題をローカルなレベルでどんどん推し進めて行くことが出来れば、スプロールでエネルギー効率が極めて低いアメリカの都市から大きな変化が生まれてくるだろう。

クリントン大統領の出身のアーカンソー州フェイェットビルのダン・コーディー市長は、グリーン化を推し進めること、人間や歩行者、サイクリスト重視の都市設計などにすることによって、経済は大きく活性化されてきたと講演をしたと云う。もちろん、その陰には、近隣の超大手ウォールマートがグリーンな購買活動、会社のグリーン化を展開し始めていることが大きな支えになっているのは言うまでもないことだが、ライフスタイルの良いところが、さらに人を引きつける大きな要因になっていることが分かる。

日本などにおいても、環境型、生活重視の都市改革がなされることを願って止まない。道のりはまだ遠い。でも、動き出さなければ、私たちが住む生活環境は悪化するばかりだろう。改善へ向けてのローカルレベルでの情報交換が、今ほど重要なときはない。