Tuesday, June 27, 2006

地球温暖化と大気汚染防止法を巡る法廷闘争

今週始めにアメリカの最高裁は、マサチューセッツ州を始めとする12州、3市といくつかの環境団体が求めていた連邦環境保護庁の行政責任についてのヒアリングを、今秋から行なうことを受け入れた(Commonwealth of Massachusetts v. US Environmental Protection Agency)。

70年代に制定された大気汚染防止法(クリーンエアー法)で規定されている環境保護庁の大気汚染防止行政が機能をしていないと云う12州3市、環境団体の主張をヒアリングすると云うもの。そうして地球温暖化の進行を止めるために、環境庁が法律に基づいて、二酸化炭素やその他の温室効果ガスの発生を行政的規制により強化して抑制をするべきだと云う論争になっている。結論は来春に出される見込みであり、地球温暖化の議論は連邦最高裁で大きく取り上げられることになりそうで、ブッシュ大統領にとっても、今年の11月に予定されている中間選挙においても改選される435人の下院議員と三分の一の上院議員の選挙活動にも大きく影響を及ぼしそうだ。

この問題で特に面白いのはタイミングだ。審理公聴会が10月から始めたすぐ後に上記の中間選挙が開催されるからだ。これまでアメリカの議会は選挙民の意識が低い段階では京都議定書の上院審議においても賛同を得られなかった経緯があり、今回の12州が手始めの審理要求について、メディアの関心を呼び、議論百出することは大いに予想される。選挙民が注目し始めると、上院議員や下院議員は無視し続けられなくなると云うもの。

これに加えて、アル・ゴーア氏のAn Inconvenient Truthの映画が、きっかけとなり、より大衆レベルでの議論も増やしていることでもあり、これまで地球温暖化については、メディアに載りにくかったところでも徐々に議論が活発化されていくだろう。三権分立の、行政府と立法府で動かなかった案件を、司法の議論を通じて動かそうとするアメリカのまっとうな人々に拍手喝采だ。

この案件は、自動車の排出ガスだけでなく、広範囲な地球温暖化の原因となりうるすべての事象を含む可能性もあり、エネルギー企業などと近いブッシュ大統領や、電力発電メーカー、経営的に苦しんでいる自動車メーカーからの反発も大いに予想されるが、アメリカのエネルギー消費やライフスタイルの変化に寄与する方向が出てきそうだ。

Monday, June 26, 2006

慈善の心

アメリカで二番目にお金持ちのウォーレン・バフェット氏が、生存中に自分の財産の大部分(現在の市場価格で374億ドル相当)をビル・アンド・メリンダ・ゲイツ基金に寄付することを決めたことが明らかになった。バフェット氏は、個人的なエゴを全くもたずに、ビルゲイツと奥さんがやっている基金にカネを提供することを表明していることから、アメリカ人は彼の慈善の心に驚きと関心の目を持って見ている。

ゲイツ基金は、世界の貧しい人々の健康を願い、いろいろな慈善活動や、予防接種や生命を脅かす病気を克服するための研究に金を投じてきた。新規に入る基金により、今後はその莫大な財源をそれをうまくどのように運営していくのか大きな課題になりそうだ。しかも、ゲイツ氏自身がマイクロソフト社の仕事を徐々に引き、基金の運営に顔を出し始めることから、スタッフの自主性をどこまで認めてあげるのかなども危惧されているようだ。何人かのキーパーソンたちが最近仕事から離れていることからも、危惧されても仕方ないのかもしれない。

こうやってみると、この人たちのロハスは、地球規模的に人々の健康を考えていく使命感に燃えていると云うことであり、日本の六本木ヒルズ族の金持ちとかなりかけ離れた違いがありそうだ。日本でも昔は笹川良一氏のような人が活躍していたが、性格がちょっと違う気がする。こんな規模では難しいかもしれないが、もっともっと世界的にモノゴトを考える人が出てくるような余裕が欲しいところだ。

Friday, June 23, 2006

傷ついた巨人ゼネラル・モーターズ

日本ではあまり報道されていないと思うが、最近ニューヨークタイムズ紙とゼネラルモーターズ社(GM)の関係が厳しくなっている。GMのブログなどでも、ニューヨークタイムス紙を強く批判するようになっている。以前は、王者の貫禄で、批判をされても、対応がとてもスマートだったが、ますます落ち込むマーケットシェアの中で、何が何でも反論しようとする余裕のなさが出始めている気がしてならない。

関心のある人は次のブログサイトへ行かれることをお勧めする。
http://www.gm.com/company/onlygm/fastlane_Blog.html

ニューヨークタイムズ紙側としては、GMの泣き言を全く受けつけないばかりか、対GM批判の音量レベルを引き上げている。これだけ、アメリカでの有力紙にネガティブに書かれると、一生懸命に市場活動をしていても、それを是正するためのエネルギーは相当なものだろう。今晩のデーブ・レターマンの番組に招待されたゲストのアール・ゴーア氏もGMの怠慢を突いたりしているので、販売の伸び悩みの中での苦悩は高まるばかりだろう。そう云えば、An Inconvenient Truthの中でもGMの燃費の良いクルマの開発を怠ったことを強く批判する箇所があり、GMは地球温暖化の悪者の一社に指名されていることは事実だ。アメリカ全体で苦境にあるGMへの同情が薄らいでいるのは、このようなことからだと思って差し支えない。

これを裏付けるように、21日付けニューヨークタイムズはデービッド・レオンハート記者は米国製のハイブリッドは連邦議会に助けられていることを批判している。つまり、これまでどんなハイブリッドでも購入した場合、購入者は税額控除を受けられていたものが、売れるのはトヨタや本田のハイブリッドばかりなことに困りきったアメリカメーカーはロビーストを使い、連邦議会に働きかけて、1メーカーが使える売り上げ時の税額控除枠を6万台に押さえ込んでしまったのだと云う。こうなると需要が高い日本メーカーのハイブリッドは、枠を超えるところが出てきて、折角買っても税額控除を受けられない消費者が出てくると云うことだ。アメリカ製のハイブリッドは、宣伝をしても、燃費が凄く良くなるものを持っていないので売れないのだが、日本メーカーのクルマの販売の邪魔をするようなロビーイングをしたとは情けないとしか言いようがない。

面白いのは、Google社が、社員に対して、社員がクルマを購入するときに、ガロンあたり45マイル以上の燃費の良いクルマを買うと、5000ドルの社内報奨金を出していると云う。もちろん、経営的にうまく行っているグーグルのことだと言ってしまえばそれまでだが、民間企業の中でも、このようにトップの意識が高く、ある程度自社内のトレンドに影響を与えようとする姿勢のあるところがあるというのは素晴らしいと云えよう。

そう言えば、An Inconvenient Truthの中で、アメリカの世界に占める人口は5%なのに対して、温室効果ガスの排出レベルは世界の30%を占めていると云うところがあった。ゴーアさんが一生懸命活動をしていることをサポートしてあげて、アメリカが早く、責任のある立場を取れるような、環境を作ってあげたい。消費者は徐々に気がついてきているようだ。プリウスなどは、注文してもすぐに買えない状況が続いている。これが物語っている事実は、今後のアメリカの動きを占う上で、とても勇気づけられるものだ。

Wednesday, June 21, 2006

An Inconvenient Truth (2)

昨日ゴーアさんの映画を見てきた。100分の映画だが、大統領選に敗れたゴーアさんが、政治の世界を離れ、自分の新しい使命としていかに地球が温暖化しているのかを地球の人々に知らしめ、警告し、諸行動の軌道修正を提案している映画だった。映画の中で彼がプレゼンターとしていろいろな会場で講演したものを見事に繋ぎ合わせて、一つのストーリーにしている。

ゴーアさんは非常に説得力ある方式で、ここままいけば地球が取り返しがつかない方向へ行っていることを、科学的に説明をしており、その地道な活動は、これまでで1000回以上の講演につながっているようだ。アメリカはもとより、ヨーロッパやアジアなどにも行っているようだから、環境問題の伝道師のように使命感に燃えて活躍されている。政治家としてこのような行動力のある人が欲しいところであり、彼が大統領になっていれば、ブッシュ大統領のように、巨大エネルギー産業に有利なような状況は少なかったはずだ。

ゴーアさんの理屈がアメリカ人に理解されるかどうか分からないが、少なくともアメリカの温室効果ガス発生の責任を問い、アメリカ人にライフスタイルの是正を大きく訴えかけていることは、これまでの自分たちさえ良ければ後はどうでも構わないと云う姿勢から大きく変わっている。ゴーアさんは、現代の知恵を結集すれば、温室ガス効果の発生を抑えられるとまとめている。そうしてその警告の中にも、希望を持たせるところに、彼がいかに地球温暖化を止めようとしているのか、その使命感に圧倒される。

この映画を見た感想は、自分だけで見て終わらせるのでなく、より多くの人々にもこの問題を理解させ、エネルギーの利用についての再考を促す大きなきっかけになって欲しい。映画に付随して、活動の一環として、温暖化を抑制するための活動提案がされている。そうしてそれらを宣伝するために、次のようなウェブサイトも作られている。是非多くの人々にサイトを見てもらい、映画を宣伝普及をさせて、この問題をクローズアップさせよう。

http://www.climatecrisis.net

Tuesday, June 20, 2006

スーパーのオーガニック戦争、最初の犠牲者

つい今月の初め、ソトコト主催のイベントで講演をしたとき、ボールダーのスーパーマーケットの勢力地図の話をしたばかりだが、アメリカに戻ってすぐに、その地図が塗り替えられようとしていることが分かった。

ボールダーのスーパーマーケットの中には、自然やオーガニックを主体にしたものが多くなってきており、コンベンショナルなところは経営的に苦しくなっているのが実情のようだ。つまり、価値基準となるものが価格だけと云うものでなく、いかにオーガニックかと云うことで成り立ち始めている。コンベンショナルなものを売っているところでも、どんどんとオーガニックの棚スペースを作らざるを得ないようになっている。

このテーマについては極めて大きな動きなのでこのブロッグでも引き続きフォローをしていきたいが、今日は、スーパーのアルバートソンが今月末で2店舗を閉めることを決断したことにとどめておこう。もちろんアルバートソン全体の経営が難しくなってきていた背景もあるので、再編の中にあることは仕方のないことだが、ボールダー店の二つを閉めた背景には、やはりここの販売テーマがコンベンショナルなものと相容れなくなってきたことがあげられるだろう。

ボールダーのような小さな街に、巨大な改造投資をしている複数のスーパーがあるが、そもそも、それは新しい時代のスーパーの姿がどのようになるのかの占うためのプロトタイプ作りが始まっていることがいえる。引き続き報告しよう。

An Inconvenient Truth

2000年の大統領選挙のときに、ブッシュ大統領の対抗馬として出たアル・ゴーア氏が最近、話題になってきている。元々クリントン大統領のときに副大統領だったゴーア氏は、地球環境保護の立場は強く、それも選挙の時にアピールしていたが、全米での得票数では、ブッシュ大統領を凌駕したのにもかかわらず、代理人選出方式で決めるアメリカの特殊な選挙により敗れ去った。その後、静かにしていると思ったら、最近は映画製作の力を入れてきたと見え、彼がナレーターとなりできたAn Inconvenient Truth(不都合な真実)なる映画を公開した。

実は映画はまだ見ていないが、ボールダーでは大変な評判だ。もちろんその中には現行のブッシュ大統領が、あまりに環境派でないこと、元々ボールダーではブッシュさんがあまり支持されていないことなどで、評判をさらに呼んでいるのかもしれない。ボールダー市は、2000年と2004年ブッシュの大統領選挙時には二回とも反ブッシュ投票を行なっている街なので、この映画に対する見方が、ある意味では反ブッシュ派の、それ見たことかと云うことなのかもしれない。

ボールダーは京都議定書の目標である、温室効果ガスの削減でも市が達成を目指しており、環境問題には先端的な考え方を持つ人は多い。特に当地では、気候や大気圏なのの研究を行っている科学者も多く、地球温暖化が一部のリベラルな人の杞憂の概念だとは思っていないからだ。今週末は日本からの客人を迎え、あちらこちらを飛び回っていたので、ブログのことも書く余裕がなかったが、客人は、ボールダーの自然環境への真摯な姿勢を目の当たりにして大変に感銘されたようだ。

日本でのゴーアさんの映画公開がされるのか分からないが、もし公開されたら是非見ていただきたい。そうしてボールダーの人たちがどんなところに共鳴をしているのか、ともに体感して欲しい。しっかりした映像を通じて世界がつながると云うことも大事なことだ。ハリウッド的な映画だけでなく、自己の認識を変えるような映画を見ることで、さらに地球環境保護の問題についても深くかかわり合いを持ちたいものだ。

Friday, June 16, 2006

鮮魚の取り扱い

アメリカの食品スーパーで水槽に入った活魚を売っているところは少ない。売っているところはロブスターやカニなどを売っている特殊なところと思って良い。水槽で使って売っているところで多いのは東洋系の食品スーパーが中心だが、山奥のコロラドにいると鮮魚と云うものが懐かしくなる。だから、個人的には日本へ戻るときは築地のホテルに投宿して朝から魚を堪能するようにしている。

今日のCNNを読んでいたら、自然系スーパーのホールフーズが、ライブ・ロブスターやソフト・クラブ・シェルの水槽売りを止めると云う。理由は同社が7ヶ月の調査で、供給元がホールフーズに手渡すまでの期間、ロブスターなどへの扱いが非人道的だったことだと云うことが理由のようだ。いずれは食膳に供する訳なので、どうでも良いと思うのだが、そのプロセスに文句を付けるところなど面白いと思った。勘ぐってみれば他の理由が背景にあるかもしれないが、最近のアメリカは、このような傾向が強い。ロブスターなどへの人道的な扱いが確認されたら、販売を再開すると云う。このようなホールフーズの社会規範や視点は、なぜ起こっているのか注目してみていきたい。また機会があれば、触れてみたい。

プレーリードッグ保護問題

ボールダーを知っている人なら、いかに街がプレーリードッグとの共存を図ってきたかお分かりいただいているだろう。しかし、プレリードッグの人口抑制を図っていかなければ、生態系が変わっているので、繁殖することはあっても、減ることは少なくなる。つまり、これまでプレーリードッグを獲物としてみてきたコヨーテ、鷹なども減っている状況では、プレリードッグだけが繁殖してしまうからだ。

動物愛護の精神、環境保全の精神から、これまで街の開発とプレリードッグの住処を守ろうとするバランスが取れてきた異色の街と云えよう。外の開発業者から見れば、ボールダーは何と仕事しづらいかと云うことになるかもしれないが、ボールダーの生活者にとってはこのバランスが何とも云えなくヒーリング的な気持ちなのだ。しかし、同じコロラドでも、ボールダーから東40マイルくらいのところに農場を持っている知り合いは、プレリードッグは害虫のたぐいにしか見ておらず、ライフルをもって処分してしまう。この考え方の差は、生活がかかっているかいないかで違うのかもしれないが、いかにボールダーが異質なのかの証左だろう。

ここへ来て、ボールダーの中でもこの人口が減らないプレリードッグの問題で、意見が割れ始めた。つまり、市が作ってきた野球場やその他の公園などにもプレリードッグは進出してきている問題で、それをどのように扱うか議論沸騰しているのである。市としては、これまでいろいろなオープンスペースの空いた場所に移住をさせてきたのだが、環境派が元々そこにいなかったプレリードッグを持ってくることに移住先の生態系を破壊すると云うことで反対をしはじめている。もちろん、アウトドアスポーツ愛好家などはプレリードッグの住処よりは好きなスポーツなどを重視しようとする。動物保護派は、ワシントンの動物保護協会の介入を依頼して、プレリードッグの保護をするように政治的圧力をかけてきている。これまで自然にやさしい態度をとってきた人でも、ある線を越えると、それ以上は受け入れないようになってきていることを示している。

ボールダーが突然にプレリードッグを排除しようと動き始めたのではない。まだ、多くのコロニーは存在し、それは強い保護を受けている。問題は、生態系をいじることによって生じた歪みを、どのように解決していくのか見てみたい。ここで言うところのロハス的な要素である、環境派、動物愛護派、スポーツ派がかなり先鋭的になってきたとも言える。似たようなことが、住宅建物の歴史保古地区に住んでいる人が、本来だったら事前に改築許可を得なければいけないところ、得られないだろうと云うことで、近代的な省エネ窓を取り付けてしまった。市の条例では、歴史保存のために元のようにさせるように働きかけようと圧力をかけたが、改築をした本人は、市の省エネ奨励策を事例に出して反論をした。まさに、歴史的な記念物として残すのか、市が奨励をしているエネルギー削減の対象となるのかどちらの施策をとるかで結論は変わってくるような事態となっている。

ボールダーがロハスの聖地として言われている背景には、このように多くの対立的な立場を取りつつも、民主的な方法で何らかのバランスを模索して前進していくことにありそうだ。強権ではない、市政の押しつけではない、立場の違う人たちが妥協をするまで権利を主張し合うこと、日本的ではないかもしれないが、バランス維持のために何か参考になりそうだ。お分かりいただけるように、闘う要素は、お互いにロハス的な分子なのだから、ロハスがさらに尖って行くことだけは間違いなさそうだ。

Wednesday, June 14, 2006

ロハスはブームで終わるのか?

知人が朝日新聞の切り抜きを、メールしてくれた。それを読んでいると、日本でのロハスの動きは、まるでソトコトの小黒編集長と三井物産が仕組んだ、商売に結びつけたいと云う腹黒い陰謀のようなタッチで記事が書かれている。そのためにロハスの関する商標を獲得し、他の企業の参入妨害を狙っていたような書き方だ。一方囲みコラムではイースクエアーのピーダーセン社長がロハスに関する真っ当な発言をしているようになっている。電通も被害者のように書かれているが果たしてそうであろうか?私には何だかピーダーセン氏と電通が、結託して裏でソトコトと三井物産攻撃をしているように映る。彼らもロハスによる大きな潜在的受益者だし、すでに協力し合って市場調査などを始めたりしている。彼らも主体になりたいのが見えてくる。今後記事を読んだりすると、ピーダーセン氏が現れるときに必ずソトコト攻撃が出てくるパターンはある程度予測できそうだ。ソトコトに連載をしているから全面的に擁護をするつもりもないが、ロハスの動きをそんな低級レベルでかき回す企業があるのは不愉快極まりない。

ロハスはブームとは思っていない。ロハスと云うものは人間の思考行動パターンを整理してくれた大きなコンセプトだと見ている。戦後の日本が進んできた経済復興と繁栄は、極端な話をすると、産業革命以来続いてきた資本主義の論理の上に乗っかったものだった。そこには、多くのものをいかに安く、品質良く、効率良く生産して世界に販売をして、外貨を稼ぎ、日本を豊かにしていくのかが根本だと云うことは誰でも知っている。しかしその経済発展そのものが、多くの弊害をもたらしている事は皆が知っていながら、これが進歩なのだと甘んじていた。その間に土地は不毛化し、人々はこれまでなかった多くの疾病を経験し、ストレスが増し、社会での問題も多く発生するようにもなっている。人々は、生産性・効率性重視のなかで、あらゆる食品添加物、人工甘味料などを供され、喘息、アトピーなどのまん延が社会問題化するようになった。その「繁栄のおまけ」をもたらした資本主義は、軌道修正を余儀なくされたと言えよう。

ロハスのコンセプトは、まさに今までの資本主義思想にクサビを入れた大きなコンセプトだと思っている。80年代後半に社会主義が行き詰まり、21世紀に資本主義が見直しを迫られていると云うことが言えるのではないだろうか。官僚に頼っていた、すべての消費者保護の視点を、縦割りの社会では組み入れられない地球規模的な変革が求められてきたと見ている。インターネットがもたらした変革は、暗黒の中世を大変革の中に陥れた印刷技術に匹敵するように、個人の情報アクセス、共有をもたらしており、もはや政府官僚や天下り役人がやっていた「保護」がいかにひどいものなのか隠しきれないところまで来ていると言えるだろう。医療についても、カネが掛かり(誰かが儲かる)治療ばかりに目を向けていた方針を予防(個人の努力)へ持っていけるだけのインパクトはあったと見ている。

ロハスは、一部の企業が作るブームであってはならない。皆の努力が同じ流れに沿っていく事によって大きなエネルギーに収斂されていく。ポールレイ博士もメキシコ湾暖流の始まりは多くの暖かく、浅い河や支流がメキシコ湾に流れてくることが、きっかけとなり大きなうねりになることを示唆している。クールビズのことを昔は省エネルックで売り込んだ日本の政府。言葉は違うが、省エネでやっていくことはもう止められない。皆でこのコンセプトがブームを超えて新たな社会原則になることを信じている。

Monday, June 12, 2006

会社人間生活から解き放たれて

今日付けボールダーの日刊紙のデイリーカメラに仕事中毒だった人が、ガンと診断されて、その後生命・生活観が変わった事例が掲載されている。そ云う私も似たような経験をしているので、この記事には共感を覚えた。

ベースリングさん(61歳)はこれまで1日で場合によっては20時間働いたり、一週間にほぼ7日かすべて働いたりした経験の持ち主。それが1998年のある日、前立腺がんと診断をされ、生きる指標が変わってしまう。当然、これまで仕事一辺倒だった生活を止め、健康的でバランスのある生活を始めたのだった。生命力を養い、家族との絆を深め、一つの人生の目標と定めたのが、昨日始まったアメリカ大陸横断のRAAM (Race Across America)への出場だ。アメリカ横断と云うと約5000キロの旅程を11日か11日半で横断を目指していると云う。昨年は二人チームで出場をしているが今年は単独横断だそうだ。毎日東京から京都までの距離を走る計算だが、まさに超人的と云えよう。

この記事を読んで感じたのは、まさにボールダーのメンタリティが出ているからである。つまり、仕事一辺倒がもたらす問題から目覚めた時、健康的なものにシフトをして行く土壌がこの街にあるということだ。あるいはそのような健康を求める人を呼び込む素晴らしさとサポート体制があることだと言えるだろう。でも、その超人ぶりにはさすがにちょっと驚かされる。レースは始まったばかり、是非ベースリングさんにやり遂げて欲しいものだ。ボールダーからエールを送ろう。

Thursday, June 08, 2006

食事の変化について

ファーストフードのウェンディーズがフレンチフライを揚げるのに使う油をトランスファット抜きのものにする方向で動いているらしい。これまで、身体には百害あってまったくベネフィットがないと分かってきたのにもかかわらず、大手のファーストフードチェーンは実行してこなかった。

コストもあるだろうが、売り上げを心配して顧客が慣れてきた味から抜けきれないで悩んでいたのだろう。それが変わろうとしている。ウェンディーズが行なえば、マクドナルドやバーガーキングなども追随しなければならないだろう。これは良い傾向だ。学校における自動販売機などもコーラーなどの安くて甘いコーンシロップなどを使った清涼飲料水が置かれなくなってきている。大きな事象には見えないが、その変化のインパクトは大きい気がする。

アメリカでは国民保険制度がない訳だが、そのような中で、成人病が子供のうちから発生し始めており、社会問題化し始めている。糖尿病の発生率は、先進国、発展途上国でも軒並み伸びているようだが、食を変化させなければいけないと云う社会的な条件はどんどんと整ってきている。特にアメリカでは、教育レベルが低い人、所得が低い人などが、健康でない食事に接している事例が多いこともあり、増々取り残されていいく人が出てこよう。

これまで野菜や果物は、特に有機のものは、価格上乗せががあり、ホールフーズで売られたりするものは、社会の低所得者層には縁遠いものだったのが、今後は庶民的な価格で親しまれているウォールマートなども取り扱うことが発表された。

小さな変化の積み上げかもしれないが、それが、社会の改革へと向かって行く力となれば良い。性急にすべてを変えようとすると、どこかで、何かがうまくいかなくなるだろう。ボールダーにもファーストフードはあるが、その存在は比較的小さい。今後アメリカ全体の変化に注目してみたい。

日本のロハスブーム

最近、日本へ帰る度にロハスと云う名前が広まっているのに気がつく。
企業の広告もグリーンなことを宣伝し始めている。
日本の典型的なパターンのためか、流行りだすとその勢いは凄い。

アメリカではそのようなことがなぜか起こりにくい。
企業もこれほどにロハスロハスと云うことになると、どこかでそれはロハスでないよと云うしっぺ返しを受けかねない。
グリーンウォッシュと云うレッテルを貼られ、ロハスでもないのに、あるかのごとく宣伝していることに対する反発も強くなるかもしれない。

その点、日本ではロハスは猫も杓子も使ってもなぜかそのような反応は少ない感じがする。
便乗しているとは分かっていても、日本人の方がソフトに受けているかもしれない。
あるいは自分の意見に自信がないから言わないのかもしれない。
いずれにしてもブームになっていることだけは確かだ

日本のこの集中力と云うのは、ロハスに始まったことではない。
アメリカで始まったTQCなどの品質管理手法なども、日本の方が進んでしまった。
日本では、怪しげなものもでてしまう半面、勢いが凄いので、社会現象となり、いつの間にか悪いものは自然淘汰されて行く。
アプローチの違いを感じるが、どちらが良いのかと云えば、裾野が広い日本の方が、社会改革を行なうときにはとても便利な気がしてならない。

この勢いで行くと、日本での立ち後れた有機ビジネス、ナチュラルビジネスは、アメリカのペースを凌駕するようなことにもなりかねない。そう願っている。その意味でもボールダーが、日本のロハスと大きな絆を結び、どんどん連動することが、この勢いを益々速めて行くことになろう。ライフスタイルを求めてボールダーに9年前に来たことがこのような形で動き始めていることが、何だか自分の宿命だった気もする。