Monday, January 08, 2007

南米の農業を助けるロハス市場

ロハス市場の成長は、南米の農業従事者にとって思わぬ恩恵をもたらし始めている。しかもその恩恵と云うのは、歴史的にアメリカの大手農産物企業が南米の農業従事者から搾取してきた、バナナ、パインアップルなどではなく、オーガニックな食材で、健康食だったりすることが多いようだ。あるいは、コーヒーなどのようにコモディティ化しているものであっても、フェアトレード(公正な価格を農業従事者に支払う方式)と云うような原住民や、資本力を持たない人に多くの恩典をもたらすものが増えていると云う。

例えば、ボリビア人が大地からの贈り物としてみていたキノア(豊富なビタミンやミネラルを有する穀類の一種)などが、最近ではアメリカ人の健康意識の高い人たちに大いに受けられるようになったことなどがそうだ。ボリビアの農民は、有機のキノアをどんどんと植え付けをしているらしい。アメリカのロハス健康ブームの波に乗り、いくら作っても需要があるからだ。特にオーガニックの食材は需要が高く、キノアに限らず、その他の多くの食材も認知され、輸出され始めている。メキシコの天然甘味料のブルーアガベ(今日の写真はメキシコのハリスコ州でのブルーアガベの生産の写真だ)、ニカラグアの胡麻、パラグアイの砂糖、エクアドルの野生のキノコ、、ペルーのコーヒー、チリのドライアップルやアルゼンチンの小麦なども関心を呼び起こしているらしい。

アメリカ企業の中でも、単に有機だからだけでなく、フェアトレードをすることによってもたらされるベネフィットも理解し始めており、そのために従来型の商習慣では存在しなかった、フェアトレードの意識があり、ロハス的なディストリビューターなどの参入があり、農産物調達でもより魅力的な価格付けが行われるようにもなり、生産意欲も上がってきていると云う。

コロラド州立大学(CSU)のCenter for Fair and Alternative Trade Studies(フェア・オールタナティブ貿易慣行研究センター)のLaura Raynolds所長は、ラテンアメリカの認定オーガニック商品の作付け生産などに投入している面積は、アジア、中近東、アフリカをも凌駕するものだと見ている。同所長の推定によると、ラテンアメリカのオーガニック食品の輸出は2億5000万ドルくらいに達するだろうと推定している。この背景は簡単だ。つまり、2005年のアメリカの全般的な食材の伸びは1%ぐらいだったものが、こと、オーガニック食材になると16%もの伸びをみせ、138億ドルにも達した模様だ。有機の業界団体であるOrganic Trade Associationによれば、1997年にオーガニックの食材は全体の08%にしか満たなかったものが、2005年には2.5%にも上昇している。もちろん、供給が追いつかない事由などもあり、本来的な潜在需要はさらに高いと見なければいけない。

南米の農業は、輸出については、欧米系の大手食品メーカー主体のものだったことが多い。そのために零細の土着の農業従事者は、経済的な恩恵をあまり受けなかったと云って良い。しかも、そのように買い叩かれて生産物が買われるような従来の資本主義的な方策では、まともな生産に意欲が湧かないこともあっただろう。そのために一部の農業関係者が非合法な作物の生産に力を振り向けていたのであれば、仕方ないことだったかも知れない。ロハスの地球環境や個人の健康に対する意識がこのように、予想もしないような健全なアメリカの外交政策の一部になっていたとしたら、ロハスの役割は相当なものと云えよう。ボールダーにいると、このような南米の食材に接することが多い。経済援助などで援助依存漬けするよりは、心のこもった新しい市場や業態の成立が、同地域の経済発展に寄与していると考えればとても面白い。実態はまだまだ難しいところだが、徐々に改善されるきっかけが出ることを願っている。

Friday, January 05, 2007

グリーンな食事のすすめ



アメリカにはCenter for Science in the Public Interest(公益科学センター)と云う団体がある。この団体はこれまで35年にわたってファーストフード、レストランの食事、あるいは映画館でのポップコーンが、いかに消費者にとって悪いものであるのか唱えてきたところ。この団体の専務理事であるMichael F. Jacobsonは地球環境にやさしい食事を提唱し始め、Six Arguments for a Greener Diet (「よりグリーンな食事をする六つの理由」CSPI, ISBN: 0-89329-049-1)なる本を出版した。主席執筆者のヤコブソン氏は動物性の食品をとるより、植物性の食事をより多く食することが、健康寿命を延ばせることを証明するとともに、この植物性の食事をより多くすることで水質汚染、空気汚染、地球の温暖化、動物の苦しみなどなどを削減するだけでなく、食中毒なども減少させることができるだろうとしている。

牧畜業の問題については元旦のブログで書いたところだが、この本もそれに沿った同様の警鐘を呈している。アメリカ人は、毎日一億ポンド、あるいは一兆カロリーの食料品を食している。約3億人のアメリカ人の食糧需要(穀物、肉類、家禽類、野菜や果物)を満たすために巨大な燃料、肥料、水、殺虫剤や広大な農業用の土地が必要になっている。人間のための食糧生産のためだけでなく、家畜などの食糧などのためでもあるのだ。折角の食糧生産を行っても、家畜用の飼料となり、人間は、脂肪の多い動物性食品を食べる一方で、植物性の食糧の消費が減少している。つまり、野菜、果物や穀類などが十分に消費されない状況となってくる。その結果、心臓疾患、脳梗塞、糖尿病、癌などが発生しやすくなる。肥満などによって、多くの人の寿命なども不要に縮められている。このヤコブソンの著作は、食事のより健康な食事が、より健康な地球を維持するために如何に役に立てるかについても豊富な事実を使い書いている。

グリーンな食事をするべき理由:

*毎日野菜や果物をもう一皿余計に食べることができれば、心臓病による死亡率は16%減少することができる
*乳卵菜食主義者(lacto-ovo vegetarian)は、菜食主義者でない人に比べて心臓病による死亡率は24%も低い
*アメリカ人は推奨されている植物繊維の必要量より50%少なく摂取している
*穀物飼料で育てられた牛は、草(粗飼料)で育てられた牛の肉より、脂肪は100%余計にある
*家畜などが放出するメタンガス(地球温暖化の悪原因)は、全メタンガスの19%になること
*毎年屠殺される牛、豚、羊は1億4000万頭にも及ぶこと
*14兆ガロンの水:家畜の飼料を生産するために使われる水資源

同書は肉食を止めろと云っているのではないらしい。ただし、いくつかの食事に関するマイナーな変更をすることで地球温暖化に関するインパクトを減少しせしめることができると云う。どのようなインパクを与えるのかについても計算表のウェブリンクも紹介している。
換算表サイトリンク


ロハスを考えるときに、単なるグルメ料理やスローフードを超えたところでも地球規模的なものの考え方が必要になってきていることを如実に示している。ベジェタリアンやビーガンは単に自分の健康のためだけでなく、地球環境のためにも大きく貢献していると云う自負も産まれてくるだろう。この狭い地球で生きていく上で、皆で協調的なライフスタイルの構築が急務と云えるかも知れない。ボールダーの有機産業や、ベジェタリアンの生活様式の中には、何か深い意味が秘められている気がする。今後もこの環境と健康のテーマをできるだけ紹介していくことにしたい。

Monday, January 01, 2007

牧畜産業の成長が放つ警鐘

のどかな牧草、放牧などを連想するとまず地球温暖化とはまったく縁がない世界だと云う気になる。今日の写真は私の家の庭から見えるボールダーカウンティ−のオープンスペースであり、近隣の牧場主に牛を放牧するようにカウンティーの役所が貸し出している。こんなところが汚染の原因だとは思いたくもないし、牛糞の臭いが来ても自然を感じていたのに、どうも違うらしい。

国連のFAO(食糧農業機構)と云うきちんとした国際機関が云うことなのだから信じなければいけないが、牧畜産業について改めて考えさせられてしまった。国連の機関が云うところによれば、信じ難いことだが牧畜の方がクルマの地球温暖化排気ガスを排出するのだと云う。CO2相当で見ると、牧畜業の方が、クルマより18%ものCO2排出を余計しているのだと云う。もちろん、ガスの排出だけでなく、土壌ならびに水源の汚染にも悪影響を及ぼしていると云うのだから始末悪い。

FAOの Livestock Information and Policy Branch部長であり、リポートの作者の一人であるHenning Steinfeld氏は、家畜は環境問題の汚染源としてもっともネガティブな貢献をしている分野の一つと述べている。この問題については緊急な対策が必要だとも述べている。

世界経済が繁栄するに従って、毎年肉や酪農製品の消費拡大がされてきていると云う。世界の肉の生産は1999/2001年の2億2900万トンから、2050年には倍増して、4億6500万トンになるだろうと推測されている。その間の牛乳の生産も5億8000万トンから10億4300万トンになるだろうと見られている。

人間の活動による牧畜用地や、牧畜用地への転換などによって生じる牧畜セクターが排出するCO2は9%に留まるが、もっとタチの悪い温室効果ガスを排出しているのだ。つまり人間の活動によって生じる亜酸化窒素(nitrous oxide)の65%ものガスを排出していることになる。これが如何に悪いかを見るのには地球温暖化潜在指数がCO2の296倍にも相当すると云っただけでも理解できよう。この排出の大半は牛の糞から出てくるものなのだ。また、人間が関与するところのメタンガス発生においても37%ものガスを排出に相当する(CO2よりも23倍地球温暖化要因となる)。また、人間が関与するアンモニアの発生でも64%も出している計算のようだ。

地球全体の地上面積の30%近くが、恒久的な牧草のために使われているだけでなく、耕作可能な土地の33%もの農地が、飼料用の生産のために使われていると云う現状がある。アマゾンの原生林を牧草地にして森林資源をどんどん枯渇させている原因はまさにこの牧草地を作るための作業だ。つまり牧草地の拡大が、森林資源の現象と、二酸化炭素の上昇原因を作っていることになる。

これらの問題に加えて、水資源の汚染、土壌の劣化などを引き起こしているだけでなく、問題が錯綜していると云わざるを得ない。ここで、すべての問題を列挙するつもりはないが、牧畜や牧草の地球温暖化などに与えている影響の大きさを理解することによって、我々宇宙船地球号にいる人間が、ミクロの世界だけでなく、マクロの世界においても広く環境のインパクトを考えざるを得ない状況に至って来たことを理解しなければならない。ロハスは、きれいごとだけではない、社会改革の問題をも内含していることを十分に理解した上で、総論的に地球環境などを見るようにしたい。