Thursday, July 09, 2009

本格化するクリーンエネルギー経済

これまでグリーン経済は、特殊な分野だと見られていた。デンマークや一部の国を除き、国の重点産業政策、主力経済政策になると云うよりは、おまけ的な形で自然発生的に出てきたと言えなくもない。もちろんニーズがあるから伸びているのは間違いないが、政府が政策の根幹においてきていることはなかった。特にブッシュ政権の終了まで、化石燃料からの転換、温室効果ガス排出の抑制、新エネルギー経済への移行などは、議論されていたものの、大幅な実行策はとられていないと云っても良い。手術をしないで済ませたいような疾患治療のようなものだ。しかし、加速度的に世界経済が拡大しはじめると、もはや手をこまねいて待っているようなことができない事情にまで発展してきている。石油産出はピークから下降しはじめていると大方の専門家の判断だからだし、今まで消費市場でなかったところまで「消費型経済」へと突入しはじめたからで、資源浪費は環境から、コストから、その他の要因で難しくなるからだ。何かしないといけないと云う意識が、多くの市民の中で芽生えているのは事実だ。

クリーンエネルギー経済は、これまで、グリーンと云う括りで計測されていなかったので、注目も集めていなかったが、統計的にもクリーンエネルギー経済を測定する必要性が高まり、その扱いがグリーンとしての括りつけが始まっている。そうなってくると、クリーンエネルギー雇用の存在が人々が考えていた以上に大きいことが理解されはじめている。The Pew Charitable Trustsなる団体が行なった統計作業によると1998年から2007年の間の推移を見ていくとクリーンなエネルギー経済化での職の創出は、総体としての就労の推移に比べて二倍半の成長率であることが確認できた。Pew財団は、全米50州でのクリーンエネルギー経済の実質的な雇用口の変化について、実質的な数字を把握した上で、雇用数全体を計測しはじめたのだ。このような具体的な計測が行なわれたのは、アメリカでははじめてなので、その内容には、注目すべき結果が多く出ている。

Pew財団の調査によれば、クリーンエネルギー経済は、1998年から2007年の10年間にわたり全米で9.1%成長したのに対して、従来型の経済分野は3.7%しか伸びなかったという。州レベルでも同じことが言え、首都ワシントンと50州のうち38州で、これを裏付けるトレンドが出ている。報告書によると、この部門は、消費者の需要の高まり、ベンチャー資本の資本投下、連邦や州の政策転換により、かなりの勢いで成長することが見込まれている。これまで、政府よりの支援をあまり受けなくとも、2007年段階においてさえ、全米50州の68,200事業所が、クリーンエネルギー経済雇用を770,000まで広げている。現在、オバマ政権などで、急激にこのセクターに資本投下や重点施策の移行を行ないはじめているので、この勢いはさらに加速していくに違いない。

同財団の集計によると、これまで潤沢に政府の支援策を得てきた化石燃料産業セクター(電力ガス、石炭発掘、ガス採鉱などの分野)は、2007年で雇用水準は127万人だったという。支援対策の方向性が変わってくれば、クリーンエネルギーに雇用がシフトするのは目に見えている。
Pew財団が定義をしているクリーンエネルギー経済は次のようなものだ:クリーンエネルギー経済は雇用、企業や投資を生みだす一方で、エネルギー効率を高め、温室効果ガスの排出量、廃棄物と汚染の削減、節水、やその他資源の節約に貢献する 。これがどんなカテゴリーかと言えば5つのカテゴリにまとめられる:( 1 )クリーンエネルギー、( 2 )エネルギー効率性、( 3 )環境に配慮した生産、( 4 )環境保全と汚染の軽減、( 5 )人材育成とサポートなどである。産業全体を見ていく上で、新旧エネルギーに関わる統計が出ている意義は大きい。これにより、雇用の推移や変動、投資や経済成長の趨勢、政策策定や投資の実質的な効果がどのようなものになっているのか、ガラス張りになる可能性も高い。同レポートは、勃興しはじめているクリーンエネルギー経済は、各州において、高い賃金水準を達成していることが明らかになってきている。しかも、ある一部の職カテゴリーだけでなく、広範囲のの分野で高賃金体系の職種が生まれてきていることを示している。

コロラド州のリッター知事も、当州を新エネルギーのメッカにしようとしており、デンマークのVestas社の生産工場を誘致したり必死だ。ボールダーにおいても、Conoco Phillips社が新エネルギーの大規模な研究所を建設しはじめており、コロラドの環境関連のラボラトリーズの存在から、この地域が大きなクリーンエネルギー経済のメッカになることが見込まれている。ボールダーのロハスは、かなり先端的な、クリーンエネルギーの頭脳集団を擁するに至るだろう。もうすでにSmart Grid関連でも、日本からの視察団を多く受け入れはじめており、この州、この街ボールダーの動きは面白い。


環境保全事業はもはや、付帯的な案件で無くなってきている。先進国も発展途上国も、クリーンエネルギー経済を推進し始めるに至り、これまでの社会インフラをも、覆すような変化が出てくることになろう。オバマ政権は、経済雇用政策の問題、外交の問題、医療の問題、など多くの問題を抱えている。現在まだ国民のサポートを得ているが、このハネムーンもいつまで続くか定かでない。でも、石油、化石燃料中心型の経済は、オバマ政権であるにないに関わらず、終焉に向かっていることだけは事実だ。アメリカの雇用状況推移をきちんと見極めていきたい。

Sunday, July 05, 2009

食品メーカーのイメージ問題

食の安全は、先進国アメリカでも大きな問題だ。しかも、大手メーカーを信用できないという消費者が急増をしているという。この市場調査を行なったのは、食に直接関連しないIBM社だそうだが、市場調査サンプルは1000名、10都市で行なわれたものらしい。何と驚くことに、食品メーカーが安全で健康的な食品を提供すると信じている人は20%にも満たないと云う調査結果が出ているそうだ。

この調査で、過去二年間に発生した食品の回収問題で、具体的な品目を想起できたのは83%にも達している。このように高い想起率は食品に対する意識の高さが窺える訳だが、それだけ食品メーカーが安全対策に対して気をつけなければいけないことを示している。メディアの取り扱いの高さも当然あるので、このような結果が出ると思われるが、いざ、ある特定食品が問題視されると、カテゴリー全体のイメージが下がることが想定され、安全対策をしているメーカーの広報力やアクションの早さも重要になってくる。

昨年3月に、アメリカ人には欠かせないピーナッツ・バターがサルモネラ菌で汚染されているため、連邦食品医薬品局が回収指示をした際に、ボールダーにあるオーガニックのピーナッツ・バターを生産するJustin Nut Butterは、急遽、彼らのピーナッツバターは、回収の対象となっていないことを広報し、売り上げを急増した。牛肉の回収に至っては、比較的毎年どこかで発生しているので、その度に、オーガニック牛の販売が伸びるのだと、やはりボールダーのナチュラル牛を生産販売しているColorado Natural Beef社は語ってくれた。

IBMの調査によるとアンケートをとった49%もの人が、汚染されている際はその食品を買い控えるとしている。8%ものの人は、そのカテゴリーの食品を食べなくなると述べるとともに、大半の人は、原因の究明と対策が打ち出されるまで食べるの控えると言っている。

過去二年間で一時的にせよ、あるカテゴリーの食品を買い控えた人は47%にも及んでいる。また、面白いことは、メーカーが回収対策して、汚染食品をきちんと処分するだろうと見ている人は55%しか居ないのに対して、販売をした小売店、スーパーが回収に際してきちんと当該食品を処分するだろうと見ている人は72%とメーカーの比率よりも高い。ホールフーズなどがイメージを大事にしているのはよくわかる。ホールフーズ、あるいはクロガー、セーフウェーその他の大手スーパーへ食品を納入しようとするところは膨大な資料提出を求められるのが常で、いつか機会があれば、もう少し詳細に書いてみたい。

量産メーカーが抱える問題は、量産であるが故の問題が多い。トレーサビリティなどをきちんと行なったところで、多くの生産者から調達をする訳だから、事故が起きる可能性は高く、またそのインパクトは量産のために地理的に広範囲に及ぶことも多い。コスト面から、量産メーカー太刀打ちできないが、地産地消やファーマーズマーケットが盛んになって来るのは生産者の顔がより良く見えるからだ。大都会でもファーマーズマーケットが盛んになっていることは言うまでもない。顧客の信頼を失いはじめている食品メーカーは、今後も顧客に厳しい目で見張られていくことになるだろうから、ここをきちんと対策取れるところは顧客の信頼を受けて事業を伸ばす代わりに、対策を怠るところは、顧客に敬遠をされ事業的に失墜することも発生しかねない。

Friday, July 03, 2009

オーガニック(有機)認定連邦基準設定への疑問

オーガニックとして認定されている食品の販売は、より高価格帯なために景気後退の中で減少するだろうと見込まれていたが、伸び率こそ減ったものの安定した市場になりつつあるようだ。2008年の対前年の伸び率は、2008年後半の急激な景気後退時にもかかわらず、年累計で、食品と非食品分野において総売り上げ額246億ドル、17.1%の大きな伸びになった。2009年の統計はあまり出ていないので、ここで書くことにしないが、まだ比較的に堅調なようだ。情報がまた出てくれば、紹介をするようにしたい。

今回、話題にしたいことは、オーガニック市場の急成長は、これまでも紹介しているように大手企業の関しを引き寄せていると云うこと。大手企業がオーガニック市場に参画するとなると、良い面だけでなく、悪い側面も出てくるので、きちんとことの推移を見守っていかないといけない。私が喜んでいるのは、農薬、殺虫剤や化学肥料、遺伝子組み換え種子など生産するような企業の成長鈍化すると云うことだ。現に、自然派運動の攻撃に的になる大手のモンサント社なども従業員削減などを余儀なくされている。経営についても、ピーク時に比べると少し下がっている。下降傾向が一時的なものなのか分からないが、オーガニック食品などの成長に伴い、事業転換が迫られるようになることを願っている。需要の低下は、あくまでも人工的な農業が減ることを意味し、土壌、河川などの汚染も少なくなることを示すからだ。

しかし、より大きな問題がある。アメリカのオーガニック認定基準は比較的最近になってまとめられた連邦基準だ。これまで、各州ベースで認定されていたものを、多くの人の努力で、連邦レベルの基準へと持ち上げ、先端的なドイツなどの基準に近づいたとされていた。しかし、ブッシュ大統領時代から、あまり厳格な基準では、大手食品メーカーの市場参加のメリットが少ない、他社との差別化が難しい、市場参入が難しいなど、本来の食品をより加工度の高いモノへと変更したり、添加物などを混ぜたり、引き続きオーガニック認定を受けたい希望が強いようだ。そうして、これまで、人工添加物を入れれば、連邦の有機認定は与えられないとされていたいくつかの分野で例外処置がとられるようになってしまっている。ワシントンポスト紙が紹介する事例はベビーフードの事例だ。しかも、添加物は、思考能力や視力を改善されるとされる添加物で、オーガニックベビーフードの90%にも添加されているという。困った事態だ。

ベビーフードに限らず、いくつかのカテゴリーにおいて細かいレベルだが、基準の緩和が行なわれているようで、多くの場合、食品メーカーの強いロビイング活動の結果だと見なければならない。大手企業の差別化対策のために使われているとしたら、オーガニック認定が形骸化してしまう懸念も出ている。もちろん、オーガニックの認定には、添加物でもオーガニックのものが手に入らないので一時的に例外処理されているモノもあるとのことだが、それらの例外的処置を受けているものが減少するべきものであるにもかかわらず、数が増えていると云う問題点なども指摘されている。

ビルサック農務長官は、オーガニック認定の基準緩和圧力が出てきていると認めつつも、、一方では、法の精神をしっかりと守るように体制強化をして行く所信表明をしている。オバマ政権下でも、オーガニック基準や関連の行政支出を増やしており、明らかにこの問題は大きなテーマであることを裏打ちしている。

ボールダーには、この厳格な基準を守れという声は高い。大手メーカーの強い圧力をはね除けてでも、オーガニック基準を守ろうとする姿勢は強い。厳格な基準を守るためにロビイング活動をしている団体などもある。PR企業でそのような活動をしているのはFresh Ideas Groupなどの企業だ。何がオーガニックなのか、誰のためのオーガニックなのか、最終的な判断は消費者の財布によるので、政府の基準もさることながら、市民運動の一環で、ローカルなオーガニック、加工度の低いオーガニック、ファーマーズマーケットなどで買うようにして行くことで、大手への圧力を市民がやっていかなければならいだろう。基準は人間が作るもの。ほどよく懐疑的な目で見ていくことが必要だ。企業の立場も守らなければいけないが、消費者を主体としたオーガニック認定であることを忘れてはならない。政府、企業、消費者皆がオーガニックと云う取り決めを守っていかなければ、何のためのオーガニック認定なのかと云う問題になってしまう。