Wednesday, December 24, 2008

客寄せに必死なホールフーズ

アメリカの経済的な状況は、まだ、出口が見えない暗闇の中にある。マネーサプライがタイトになっている原因は専門家でない私にはよく判らないが、いずれにしても多くの業態で困難な状況が生じているのは事実だ。もちろん、生活必需品などは、支出を倹約しても買わざるを得ず、低価格路線を打ち出しているウォールマートやボールダーのサンフラワーマーケットなどは比較的うまくいっていると言えよう。しかし、これまで、高価格路線を歩んで来たいくつかのリテーラーでは、消費者離れが起きており、そのためにリテーラーなどが利益を無視するかのような価格付けでモノを販売しているようだ。ニューヨークにいる息子たちの報告では、メイシーズやバーグドルフ・グッドマンなどの高級店で感謝祭の翌日のブラックフライデーにはブランドモノの投げ売りのような状況があり、バーゲンセールを目がけて多くの淑女たちがブランドモノを取りあうような醜い状況だったと言う。

食品について言えば、ナチュラルやオーガニックの王者としてこれまで業績を上げていたホールフーズがここへ来て苦戦をしている。ホールフーズが悪くなったのではないと云う気がする。どの店舗を見ても、前と変わらない素晴らしい品揃えだが、ホールペイチェック(給与ごと吹っ飛んでしまうことへの皮肉)と揶揄されて来た価格政策の見直しが迫られている。

もちろん、これまでホールフーズの独断場的な存在だったナチュラル商材市場は、多くの競争相手の参入で、変化させるべきところ変化の対応が遅すぎた観がある。私はホールフーズは甦るだろうと信じたいが、確かに直面している問題は多い。特に今の経済的状況では需要は消費者の懐と切り離すことができないだけでなく、マーチャンダイジングを強化することを怠ったり、景気後退の影響で低いマージン商品に移っていく消費者の購入動向に敏速に対応をしなければどうしようもなく遅れていくだろう。

ホールフーズはこれまで、自社の名前が持つ吸引力で、販促などあまり打って来た試しがない。しかし、今年に入ってから、コンベンショナルなセーフウェー、キングスーパーがライフスタイル店を導入したり、ナチュラル商品を重視する政策を打ち出すと、オールマイティだったホールフーズも重い腰を上げ、チラシやディスカウントを行なうようになった。当然、ボールダーの郊外に拠点を構える、Costcoやウォールマートなどもオーガニック商品を増やし始めており、いくら上級ランクと言っても、客足が遠のきはじめたのは無理もない。

クリスマスイブに一大イベントとしてホールフーズが大セールを行なうことにしたのは、新聞の全面広告でも分かる通りだ。予告のために3日以上も連続して15段広告を打って来た。50%値引きの破格価格もさることながら、24日の朝6時に来た100名のお客様で25ドル以上の買い物をした人にはプレゼントを贈呈するという客寄せとなった。また、通常は開店していない夜中から朝5時までにはコーヒーやピザを無料でサービスすると言う販促だ。

同社の株価の推移を見てみるとかなりきびしいことが分かる。投資家からも相当なプレッシャーがかかっていることだろう。しかし、私はホールフーズの置かれている問題はナチュラルビジネスの低下を意味することではなく、逆に多くの競争相手の参入で競争環境が激化していることの証左であると見ている。専門店から通常店へのナチュラルの広まりは、今後ますます勢いを増していくことだろう。

Friday, December 19, 2008

クルマ共有の概念広まる

今日は任期残り少ないブッシュ大統領がゼネラルモーターズ及びクライスラー救済のための処置を打ち出した。救済ではなくメーカーは融資だと言っているが、国民の目には救済だと映っている。アメリカの景気後退の凄まじさから言ったら、何らか措置を講じなければいけないということだろうが、経営が傾いた背景には市場の資金の流れがタイトになったのはあるにしても、メーカーの自己責任が多いと多くのアメリカ人は感じているようだ。

自動車の販売はかってない水準へ落ち込んでいるが、これまでの資源利用効率の悪さから見てみると、アメリカの自動車利用の仕組みを見直すことは必要なことだろう。特に居住密度が高い都市部や既にかなりの公共輸送機関があるところでのクルマの所有が見直されてもおかしくない。都市部と言ってもクルマが全くないことも困るときがあるだろう。しかし、高い駐車場、クルマ保険、修理、などなどを考えていくとあまり必要がないのに、無理矢理所有してきた観がしないでもない。私はボールダーの郊外近いところにいるので、ないととても不便だが、無理をすれば、なくても生きていけなくもない。ニューヨークや東京のような都会だったら、特別なときにあればということで十分に用が足りるだろう。

このような背景を前提にして北米ではクルマの共有のような仕組みのZipCarが出現して、今では大きく伸び始めている。クルマを「所有」することで受けるデメリットを回避することが目的だ。ZipCarの優れていることは、単に足になるクルマを必要なときに持つということではなく、レンタルのタクシードのごとく、TPOに合わせて、クルマの車種を選定できる点だろう。もちろん、それには事前に予約する必要はあるが、所有をすれば、多くのクルマを持ち、ニーズに応じて使い道を変えていくということなどできないからだ。このZipCarのコンセプトを作り上げた人たちは、ロハスの視点でものごとを考えてきた先駆的なビジネスマンと言えるだろう。

ただ、ZipCarが大きく注目を浴びるに付けて、既存企業が手をこまねいている訳にもいかない。下手をすると新しいビジネスの動きに取り残されていくからだ。その例が今月発表になったクルマレンタルの最大手、Hertz社のZipCarについて随する行動だろう。アメリカだけでなく、ロンドンやパリなどでも動き始めているが、都会でのクルマ所有率の低下につながることは間違いないだろう。物質的なモノの所有にこだわらなければ、一時的な時間借りのシステムは資源の効率的な活用につながっていくだろう。

自転車などの貸し出しシステムも欧州を中心に始まっているが、クルマの所有パターンの変化も今後大いに予想されうるので、自動車メーカーの将来モデルを研究している人たちは、移動の自由確保、資源の効率化且つ再利用、利益確保などの要素を考えながら、動いていかざるを得ないだろう。クルマの時代が終わったとは思わないが、社会的位置付け、その存在意義などは大いに再検討をされることになるだろう。

Monday, December 15, 2008

シンプル・ライフのトレンド

ギャンブルや華やかなショーなどで多くの観光客を引き寄せ、急成長していたラスベガスが昨年あたりから景気の落ち込みで苦労をしているらしい。ギャンブル好きには景気の状況がどうなろうとも関係ないかもしれないが、無駄の多い奢侈なライフスタイルは、ロハスの時代にはそぐわないのだろう。砂漠の中でのホテル前に打ち出される強烈な噴水群、大きなエネルギーを無駄遣いするネオンサインなどは、自然との調和を求めるのではなく、あたかも自然に挑戦しているような姿勢だ。私にとって、砂漠の中に建てられているホテル群は、ロハス経済の中では蜃気楼のような、幻想的な存在でしかないように見える。住宅バブル、投機的な市場や石油で大儲けをした中東の資産家などが、実体のない博打の経済で遊び狂っていたのだ。

豊かな生活をすると云うことは、もちろん悪ではない。しかし、その豊かさの定義がどのようなものかとなると、単なる物質的なモノの所有や贅沢尽しの財を利用するということになると問題が多い。自然との調和がないこと、あるいは精神的な健康とかけ離れていることも、人の本来の充足感を満たすものではないのではなかろうか。これまで多くの場合、豊かさの定義の中に精神的な、情緒的な豊かさが忘れ去られていたものが、復活してきていると言える。もちろん、ハイペースの中で仕事をしている人にとって、経済的な余裕がない限り、精神的や情緒的な余裕を求めることさえ難しいのかもしれない。しかし、アメリカにいるとそれを求める人々が徐々に増えてきている気がする。資本主義の牙城とも言われるアメリカが、変化していることが面白い。

私は個人的に長いこと合気道の指導をしてきているが、昔はセルフ・ディフェンス、つまり護身術のためということが多かったが、最近ではより精神的な充足感を求めて来る人が多い。ロハスのコンセプトをまとめたポール・レイ博士、シェリー・アンダーソン博士なども、彼らの名著The Cultural Creativesの中で、ヨガ関係のビデオの販売がディズニーのライオンキングのアニメのビデオ販売を凌駕したと書き記したのがもう8年以上も前だ。

ニューヨークタイムズ紙のSHIVANI VORA記者がまとめているところでは、シンプルライフを求めて、ヒンズー教的なアシュラムや仏教的な禅寺などで、週末やより長期にわたり瞑想や禅の修行に来る人が増えていると言う。しかも、その来る人々が、これまでだったら、何らかヒンズー教、仏教、禅などの信者などが中心だったものが、最近では一般の市民の参加者が増えてきているのだそうだ。

朝4時半に起床をしたり、他の参加者と口を交わすことなく黙々と落ち葉を掃き掃除したり、地産地消の有機野菜をふんだんに使った菜食主義の食事をしたり、都会の喧噪を離れ、現代社会のリズムを断ち切る生活をすることによって、精神的な豊かさを経験する人が多くなってきていることは嬉しい。毎日ストレスが多い中で生活をしていると、生きるプライオリティが何なのか見失うことも多くなることだろう。こうやって喧噪から離れる体験は、記事では現実からの逃避とも書いているが、私はストレスに対抗する抵抗力になる気がする。

この記事は、ニューヨークタイムズの記事なので、同地域に近いアシュラムや禅瞑想場のことを書いているが、この現状はアメリカ中に広がっていると言って良い。特にボールダーは、ナロッパ仏教大学がある街でもあり、チベット仏教の一大センターでもあるシャンバラセンターの所在地としても知られるので、特にこの街の人々の中で瞑想をする人は多い。

現代社会は、大量生産方式を打ち出してきたことから、過剰消費を奨励し、その中で多くの人は、疑問を持ち始めてきたと言える。複雑怪奇な生活も、便利になった側面は喜べるとしても、ストレスが増えたのも事実。だからこそシンプルライフも求められるようになるのはおかしなことではない。ボールダーのロハス的な生活が、一つの回答を出してくれている気がする。

Wednesday, December 03, 2008

転機を迎えたアメリカのエネルギー政策

二年近くも続いたアメリカ大統領選挙運動が終わり、オバマ候補が44代目のアメリカ合衆国の大統領になることが決まった。大統領選挙戦終盤戦において発生した金融危機はアメリカ金融界だけでなく、経済界、産業界などにも大きな影響を与え、その余波は世界経済にも及び、11月の半ばに世界20各国の首脳が対策を練るためにアメリカに集うことになった。しかし、任期残すところわずかのブッシュ政権は、各国首脳と新たな新政策を打ち出すことができず、各国との協調策をとるという声明文だけで終わった観がある。実際のところ、大きな政策の変化は2009年1月20日に就任するオバマ新大統領を待つということになったと言って良い。

オバマ新政権は、アメリカの大統領就任の歴史の中でも最も難題が多く、複雑困難な政策課題を抱えた状況で大統領に就任をすることになった。ビッグスリーの自動車問題への救済策を含めたアメリカの経済金融危機は言うまでも及ばず、イラクからの撤退、国民の健康保険問題、不法移民の問題、グアンタナモの捕虜処遇の問題、そうしてエネルギー環境政策などへの緊急な取り組みが求められる難しい局面にある。

エネルギー環境については、今年の夏頃にはエネルギー価格が高騰していたものが、経済金融危機に陥ったことで世界的にエネルギー需給関係が緩和され、一時的に原油コストが大幅に下がってしまっている。従来であれば原油コストが下がっているときに、エネルギー政策に政策のフォーカスがいかないところだろうが、まさに、エネルギー価格が下がっているこのときに、経済活性化とエネルギー政策を同時に進めようとする政策が打ち出されるのではないかとの推測が強い。大統領に選出されたオバマ氏が、就任後10年以内でアメリカの中東やベネズエラからの石油依存を無くそうと大きく公約しているからだ。

ビッグスリー経の公的資金援助の是非についても今週後半に上下両院で二回目の公聴会が開かれる。前回はコーポレットジェットで議会に乗り込み公的資金援助を求めてきたものの、その経費削減に対する繊細さがない無神経さを議会やメディアに叩かれ、公的資金援助を受けるのであれば、その資金でどのような企業の再生を行なうのか具体策を出してこいという強い指摘を受けて、今回は、具体的な再生策を準備して乗り込んでくることになった。コーポレットジェットで殿様の様相でお出ましでなく、今回は3人とも揃って各社のハイブリッドでデトロイトから運転してくると言う。クライスラーにもハイブリッドがあったのかと今になって知るような話だが、60%以上の人が支援に反対と言うから米国民にここまで見放されてしまったのかと感じると、3社の首脳も低姿勢でいかざるを得なくなったのだろう。

とにかく、2008年夏のエネルギーコストの急騰と秋口から本格化したサブプライムローンの破綻にはじまる大幅な景気後退は、いつものアメリカだったらエネルギー価格が急落してしまえば、エネルギー政策が無策になるところが、今回は未だかってない米国産業構造の大幅な転換のきっかけになりそうな気配だ。ビッグスリーは、これまで、利益率の高い大型のトラック系のクルマに販売の重点を置いてきた。小型車開発やハイブリッド、電気、水素自動車の開発をやっているのだが、本腰を入れていたというよりは、必要になったときに技術を持ち合わせていれば良いというような安心感があったのだろうか。労組側も、コスト削減につながるような譲歩は行なってきたが、経営側と労組共々ことの重要性に気がつかないようだったと言えまいか。しかし、ここへ来て、一時的であったにせよ、ガソリン価格がアメリカでは未曾有のガロン当り4ドルを超えたときに、地球温暖化などで多くの人々が謳ってきた省資源の課題に急に火がついたように市場が転換してきているようだ。大型車を売って利益を上げていたビッグスリーは、知らずのうちにアメリカのクルマ市場の50%を切ってしまっており、いつの間にか多くの国民に切り捨てられていたのだ。だから、今回の公的援助の嘆願にも関わらず、国民のサポートが少なくなっているのだ。アメリカ国民のエネルギーを見る目は、ビッグスリーよりも健全だったと言えるかもしれない。

石油資源の自給度が30%を切っており、70%近くの石油を多くの反米的なところから購入している事実を見せつけられた点も大いにアメリカの国民感情を揺さぶったと言って良い。地球温暖化については、まだ、大問題にしていない人も多い中で、中東、ベネズエラ、アフリカ、ロシアなどの産油国を潤し、勝手なことをさせてはならないという気持ちを持った愛国心強いアメリカ人も多いようだ。もちろん、今回の大統領選挙の公約でもグリーンエネルギーへの転換を標榜するオバマ次期大統領の方向性に賛同をする若い人、まっとうな人も多いのは事実。それらの複雑分子が結集することになり、アメリカのエネルギー政策を転換せざるを得ない勢いを作ったと言える。

世界の人口の4−5%の国が、エネルギー消費は25%近くにも達する異常さが解決するときになるのだろうか?少なくともかけ声は大きい。それが政策的にどのように変革するのか、オバマ次期大統領のエネルギー長官や人事を見てみたい。国家安全保障、経済のブレーンなども発表されているが、今後の人事発表は大いに期待しているところ。エネルギー政策とグリーンな雇用創出が一体化して来る可能せいもあり、アメリカの今回の経済金融危機は、改革のための障害ではなく、大きな起爆剤になったと言えるのではなかろうか。