Friday, August 29, 2008

オバマ民主党候補指名と米国エネルギー政策

アメリカの新エネルギー・ニューディール政策か

昨晩、デンバーで開かれていた民主党党大会が閉幕した。この民主党党大会は党の大統領候補を指名する大事なイベントであり、既にオバマ候補が事実上指名されているのは、周知の事実であるとはいえ、それを公式化するイベントだった。党大会の最後を飾ったのは、オバマ候補の指名受諾演説だったが、名演説家として知られているオバマ候補の名に恥じない素晴らしい歴史に残る演説だったと言えよう。

オバマ大統領は、19ヶ月間にわたる予備選の期間において多くの演説や方針を明らかにしてきたが、アメリカ国民の中には、具体性がないと云う批判も多かった。もちろん、上院議員を一期も勤め上げていない候補だけに、彼の実績は未知数のところも多く、大統領候補として人物評価できないと多くの国民が評していたのは事実。同じ民主党のヒラリークリントン候補と競り合っていたときも、変化を求める理想論を述べることが多く、具体策が見えないと言われていたからだ。私にとっては、オマバ候補は、施政方針は比較的によく見えていたと判断しているが、主流派でないこと、黒人マイノリティーであること、ヒラリーを蹴り落としてしまった結果ヒラリー陣営の不満を買ったことなどで、具体的な非難ができないことから、オバマ候補は未知数の人とのレッテルを貼られてしまったものと思う。

デンバーのインベスコ競技場において開催された民主党党大会において、オバマ候補は「政治的」な指名受諾演説を行なったわけだが、そこで、具体的な政策目標などをはっきりと打ち出した。もちろん、民主党党大会と云う性格もあり、まだ、政策にどのように反映して行くのかは、大統領に選出されるまではどのような施策となるのか、詳細はまだ未知数だ。しかし、オバマ候補が、テレビに釘付けになっていた国民の前で公約したことは、大きな政策指標になることだけは間違いない。オバマ候補のエネルギー政策についてのところを抜粋して翻訳を試みてみた。読者にオバマが大統領になったときの方向性をご理解いただければと思う。

「、、、そうして、わが国経済、安全保障、そうしてわが地球の未来のために、大統領になったときの目標をきちんと定めておきたい。つまり、10年で中東からの石油依存を終わらせたい。われわれは、これを実行する。」

「ワシントンはこれまで30年間にもわたり、わが国の石油依存症について話をしてきた。ジョンマッケインはその内の26年間ワシントンにいた訳だ。その間に、彼はクルマの燃費規制強化についてはノーと言ってきたし、再生可能なエネルギーへの投資にもノーと言ってきた。再生可能な燃料にもノーと言ってきた。そうして、マッケイン候補が上院議員になってから、石油の輸入量は3倍にも膨れ上がっている。」

「この石油依存症を断ち切る時が来た。われわれは、(新たな)石油掘削が単に応急処置だけであって、長期的な問題の解決策ではないことを理解しなければならない。政策として取り上げるのにはほど遠いものだ。」

「私が大統領になったのなら、天然ガス資源の活用、クリーンな石炭の技術への投資、そうして原子力エネルギーをどのように安全に使うことができるか模索する。自動車メーカーに対して、未来の燃費効率の良いクルマが、アメリカで生産されるように、設備投資のために助成をして行こうと思う。また、アメリカの消費者が、これらの新しいクルマに買い替えられるように施策を講じたい。また、次の10年間にわたり、1500億ドルの資金を経済的で再生可能なエネルギーのソース:風力、ソーラー、そうして次世代のバイオ燃料に資金投下をしたい。この投資により、新規産業が形成され、高給で、しかも、アウトソースできない新規の500万人の雇用を創出するようにしたい。」

オバマ候補のエネルギーの政策目標でわかることは、アメリカのビッグスリー、あるいは既にアメリカに来ている海外メーカーの設備切り替えに、オバマ大統領は本格的に経済的な援助を行なって行くことを示していることだ。この演説を聞いて、アメリカの石油産業はどのような反応を示して行くのだろうか。自動車メーカーも、燃費効率を高める投資でなければ、政府援助を受けられない訳であり、アメリカの自動車市場は3−5年で相当変革をすることが予想される。しかも、現在の悪い燃費のクルマを持っている人の買い替えを補助することも暗に述べていることから、現在市場にあるクルマが大いにスクラップ化され、燃費効率の高いクルマの比率が高まることは、アメリカのクルマ文化の革命と同時に、政府主体としたエネルギーの「ニューディール政策」色を感じるのは、私の勝手な想像なのだろうか。燃費効率の高いクルマへと一斉に切り替えて行くとなると、その経済的なインパクトは計り知れない。もちろん、輸入車にではなく、国内で生産しているメーカーでなければ、助成策は活用できないだろう。想像するだけでも面白い事態になりそうだ。

アメリカは、世界の総人口の4−5%くらいなのに、石油消費は25%くらいだそうだ。だから、クルマの燃費改善を強行して推進して行くことで、世界の石油消費に大きなインパクトを与えて行くことは十分に想像できる。どのような具体的な政策になるのか、大いに注目したいところだ。

いずれにしても、指名受諾演説において、サステイナブルな施策が不可欠になったのは、アメリカの方向性変化を強く物語るものだ。

Thursday, August 21, 2008

ゴミの埋め立て地に風力発電か、ニューヨーク市

最近ディズニーとピクサー社が作ったアニメの映画「Wall-E」を見てきた。子ども向けだけでなく、大人にも評判が高いアニメであり、おおむね全ての映画評論家から4−5星をもらっている環境問題を主題とした映画だ。地球がゴミに埋もれ、生活環境に適さなくなったので、人類が宇宙へ脱出して、ソーラーエネジーで機能するゴミ処理の機械一台が、700年にもわたって人間が残して行ったゴミの処理を続けていると云う物語だ。主人公はロボットなのだが、そのおかれた社会環境をみると考えさせられることが多い。きれいとは言えないゴミ処理の問題を扱っている割には、実に可愛い映画だ。

当然人間が生活をすると何らかのゴミを排出している。人間が多く集まる都市ともなると、ゴミ処理は一般人はあまり目にしないが、大きな問題であることには違いない。チリも積もれば山となると言えば、少しは前向きな発言なのだが、ゴミの場合は、その処理が大きな問題になるのだ。どこへ捨てるか、どうやって燃やすか、どうやって運ぶかなどが大きな問題となる。もちろん、ゴミには生ゴミもあったりするのでメタンガスが発生するなど、その跡地の利用でもそう簡単ではない。環境汚染につながる産業廃棄物などもあり、ゴミ処理場の取り扱いには頭を悩ますものだと思う。

世界的な大都市は全て同じような悩みを持っている。しかも、近代化している都市であればあるほど、その問題は先鋭化してくると言える。ニューヨークのような大都会も同じような悩みを抱えてきた訳だが、ゴミの埋め立て地として使われてきたところがにわかに脚光を浴び始めている。その場所は、ニューヨーク市南西のスターテンにあるフレッシュ・キルズゴミ処理場跡地だ。このゴミ処理場は、操業をしているときは世界で最大の埋め立て地だったのだ。2200エーカー(890ヘクタール)のこの埋め立て地は、20世紀後半のニューヨーク市の主たるゴミ処理場となっていたのだ。開所されたのは1948年だが、地元住民の嘆願などもあり、2001年の3月に閉鎖された。(9/11の事件の時には、ゴミ処理のために一時的に再開された)。単に埋め立てだけでなく、山盛りもした関係で、ゴミの山は最盛期では、自由の女神より25メーとも高くなってしまったという。それ程チリも積もってしまった訳だ。

スターテン島の行政関係者は、ゴミ処理としての機能を閉鎖するように長いこと嘆願や運動をしてきたのだが、ここへ来て、その跡地に風力発電の基地を作ろうと運動し始めている。もちろん、ニューヨークのブルームベルグ市長もニューヨーク市をよりサステイナブルな都市になるように発言をしていることもあるので、スターテン島の関係者は、、跡地の再利用で、風力発電プロジェクトに熱が入ってきている。

これまで、ニューヨークの環境汚点の代表格だったフレッシュ・キルズゴミ埋め立て地がニューヨーク市にとって初めての大型風力発電所になる可能性を秘めてきている。7機の風力タービン(400フィートの大きさ)を設置すると云う計画になっており、それにより17メガワットの発電ができるだろうと見込まれている。この発電量は5000家庭の電力をまかなうのに十分なものだそうだ。この案は、十分な下調査のもとで作成をされているものらしく、スターテン島の電力需要の3%をまかなうものらしい。

スターテン島の話とは別個だが、カリフォルニア州の会社で屋根に風力タービンをつけているMarquiss Wind Power社が、風力発電の実力を見せるために、ニューヨーク市のビルの屋上に無料でデモ用に風力タービン設置の申し出を行なっている。高層ビルが建ち並ぶニューヨークの景観がどのように変わるか見物だが、実際問題、今後のビル設計などには当初から風力や雨水の取水、ソーラーなどの設計が当初から組み込まれることは当然になりそうだ。

ボールダーの風力についても、フォローして行くようにしたい。

Friday, August 15, 2008

ロハスな合気道、世界に浸透

今日は、通常と違った内容を書くことにしたい。と云うのも、私が英訳した「合気道開祖植芝盛平伝」が講談社インターナショナルから国内発売になったからだ。世界での発売は12月1日からだと云うことで、すでに英文のアマゾンドットコムで予約受付が始まっているくらいだ。講談社インターナショナルという出版元が良いと云うだけでなく、合気道開祖の伝記が初めて英訳されて出版されているので、それに対する期待も高いのだろうと推測している。

日本で始まった合気道は既に世界中に広まっている。合気道は植芝盛平翁によって昨世紀に創立された武道だが、武道としての位置付けだけでなく、人々の思想観までに影響を持ち始め、合気道は武道を超えたライフスタイルの領域まで進んできたものと思う。言い過ぎかもしれないが、ある意味では禅の思想のようなインパクトも持ち始めている。アメリカなどではコンフリクトリゾルーション(つまり、対立・紛争状況を解決する)するための経営的手段にも使われたり、事業を展開する上で合気道的なマインドで衝突を回避しながら皆が前に進む際のビジネスモデルに合気道を導入している人もいる。だから、英文版アマゾンドットコムにキーワードとして"Aikido"を入力すると、何と4277もの書籍の案内が出てくる。もちろんその中には絶版になったものもあるが、合気道がいかに武道を超えたところまで広まってきているのか示す一つの尺度だ。

合気道には試合がない。人々が稽古をする時にお互いに切磋琢磨する訳だ。決して弱者の武道ではないのは、機動隊や逮捕術として婦警にも合気道の指導がされていることからも判ると思う。試合がないから合気道にはオリンピックの対象にもならない。しかし、ゲーム化しないでいられるために合気道が真の武道としての奥深さが残されて行くのだと思う。もちろん、ヨガやピラテスのように健康のために稽古されている方も多いだろう。しかし、欧米だけでなく、中東、アジア、中南米、アフリカなどでも日本的な礼儀も浸透してきており、稽古する相手との切磋琢磨の過程で自然に対する畏敬の念が高まる感じがする。自分だけが、あるいは勝者だけでこの世の中で生きているのではなく、他の人々あるいは自然界との共存があってできるのだという自然のことが、植芝翁の伝記を読むにつけ理解できてくる感じだ。武農一如を唱えた植芝翁の考えはきっと、多くの人々の心を癒すことだろう。日本の武道が、武闘ではない、壮大な精神文化論、社会的なヒーリング、そうして多くの人々の健康のために一つのロハス的現象として世界に広まっているのは、心から喜ばしいことだ。

訳者としての苦労話はここで書くことをしないが、私の英訳を、見事に流れるような英語に書き直してくれたMIT大学の先生であるメアリー・フューラー女史にチーム・メイトとして感謝の言葉を捧げたい。

Sunday, August 10, 2008

節電、代替エネルギーに走る米企業


自動車文化の発達は、アメリカの都市をだだっ広く押し広める効果があった。国土が広いアメリカは、一部都市部において超高層ビルがあるが、ほとんどの街の郊外のショッピングセンターと言えば、せいぜい2−3階建ての建物だが、とてつもなく広い敷地に広大な面積で建物が建てられているのが現状だ。だから、一方では、容積に対する空調などの効率は悪いが、平たい屋根面積は多く、採光を確保したり、ソーラーパネルなどを設置するのには最適だ。私も長い間、あれだけの面積を活用しない手はないなと思っていたが、ここへ来て、特に税制面での優遇策をとっている州では、急速的にソーラーパネルの設置が行なわれるようになっているらしい。

ニューヨークタイムズは、次のように報じている。この数ヶ月、ウォールマート、Kohl's, セーフウェー、ホールフーズなどが大規模なソーラーパネルを店舗の屋根に設置はじめている。この背景には、12月末日に期限切れする税制優遇策を確保すると云うことらしい。まだ、まだ、屋根にソーラーパネルを設置したチェーンストアは限られており、設置したところでも拠点数の10%にも満たない。しかし、連邦政府が、税制優遇策を再度施行したり、州政府などでも実施するところが出てくれば、ソーラーパネルの設置は急加速化してくることが予想される。

これは、税制面だけの問題ではなく、代替エネルギーを設置している姿勢を見せることによって、環境派としてのレッテルを貼ってもらうとするPR面での意義も大きいようだ。すでに、ボールダーの店舗をはじめ、多くのところでは「グリーンエネルギ店舗」のステッカーを張り出しているところも多いが、今後このペースはますます広がってくるだろう。

デパートのKohl'sは、すでに43拠点がソーラーパネル設置をしているが、今後数ヶ月でそれを85拠点まで増やそうとしている。Macy'sにしてもしかりで、現状では18拠点あり、年末までには後40拠点に設置をすると云うことだ。スーパーの大手、セーフウェーも23拠点にソーラーパネルを設置しようとしている。その他に多くのところでソーラーパネルの設置がとり行なわれるようになっている。

慎重派として知られているウォールマートは、現状では17拠点にしかソーラーパネルを設置していないが、規模の経済を欲しいままに動かせるウォールマートとしては、かなり大掛かりなことを考えているに違いない。世界で最大のリテーラーである巨人ウォールマートは、アメリカにおけるスーパーセンターやディストリビューションセンターだけでも4100カ所を誇っており、ニューヨークタイムズ紙が報じる数字によると、その屋根面積を合計するだけでもニューヨークのマンハッタン島にほぼ匹敵する面積であるというから恐ろしい。つまり23平方マイル(約60平方キロ)と云うことだ。

現在、各企業がソーラーパネルの設置のために動いていることから、ソーラーパネルの値段はかなり高いらしい。供給が需要に追いついて行けないと云うのが、現在の状態かもしれない。しかし、需要はさらに高まりそうなので、ソーラーパネルのメーカーもキャパを増やす方向で動くのは想像できるだろう。実際株式市場のアナリストは、現在のソーラー市場は昨年までの70億ドルの市場規模から2010年までには300億ドル規模に成長するだろうと見ているらしい。これを後追いするかのように、州政府は2010年までには石炭以外などの代替ソースから発電量の20%を引き出すように義務づけているし、その数字は2017年までには33%までに引き上げられるようになっている。

一つのチェーンがソーラーパネルを設置したところで、インパクトはあまり大きくないだろう。しかし、社会的な気運の盛り上がり、グリーンなイメージの必要性から、多くの企業がソーラーパネルを設置するようになると、勢いが高まるのは事実だ。そうして、その勢いいつの間にか、ソーラーパネルの生産効率とコストの低下をもたらす直接の引き金になるだろう。ポジティブスパイラルの始まりだ。しかも、一回設置したら、その後のエネルギーコストが下がってくるので、企業側の反応もさらにポジティブになってくるだろう。

ソーラーパネルだけではない。多くのチェーン店は、最近ではUSGBC (US Green Building Council)が発行するLEED(Leadership in Energy and Environmental Design)認定を取得するべく動き始めている。当然、認定書をもらうことは申請手続きも面倒であり、コストも高いが、それだけ系統的にエネルギーの効率化を求め始めていることを示しており、ただ、単にオペレーションコスト削減だけでなく、それを消費者や投資家にもきちんと説明できるような内容にするべく努力している証左だ。こうなると、設計、建築事務所なども省エネから、より積極的な代替エネルギーを活用するビル設計へと変化することになり、認定の意味するところは大きくなってくるのは環境のためにもとても良い結果になるだろう。ロハスは、アメリカではあまり知られていない言葉だが、その概念は着実に広まりつつある。

Saturday, August 09, 2008

ホールフーズ、牛のひき肉を自主回収

ナチュラルやオーガニックビーフなどを取り扱うホールフーズが、病原性の大腸菌問題で、発病者が大量に発生する前に自主回収をすることに決めた。この牛肉の生産者は何と、コロラドのコールマン・ナチュラル・ビーフ社なのだが、原因は不明だが、衛生上問題が多いとされ、アメリカの食品衛生局としょっちゅう問題を起こしていたことがある食肉加工業者のNebraska Beef社経由で調達していたものであることが判り、ホールフーズが自主回収という緊急策に出たというものだ。

ネブラスカ・ビーフ社は、度々、衛生管理の問題からFDAの査察を受けるなど問題を引き起こしていたところとして知られ、今回、ホールフーズ以外のスーパー(クローガーなど)に卸していた牛肉のひき肉が、東部においてO157の大腸菌発生のために31人が発病するなどリコールが先行していたばかりだ。衛生当局は8月1日にホールフーズから牛のひき肉を買った人も7名発病したと聞いた段階で自主回収に立ち上がった。

ホールフーズは、信頼のあるコールマン・ナチュラル・ビーフ社から調達していたので安心仕切っていたのだろう。なぜ、ナチュラルとして伝統あるColeman Natural Beef社がこのようなネブラスカ・ビーフのような問題の多い食肉加工業者を使ったのだろうか?コールマン・ビーフ社がMeyer Natural Angus社に身売りされることになっていたこともあり、コールマンの体制に何か問題があったことだけは事実だ。とにかくホールフーズ社にとっても不思議な現象のようだ。コロラドのように、自然の恵みの雨があまり多くないところの牧草はあまり青々としていないだけか、最近では餌用の穀物の値段も高騰していたこともあり、ただでさえ、競争力がないナチュラル・ビーフのコストが、最近高くなっていたために、経営が苦しくなっていた可能せいもある。今後の関係者の情報をかき集めてみたいと思う。

コロラドは回収の対象となっていないようだが、いずれにしても地元の安心企業の不手際もあり、しかも、拙宅でもよく使うコールマン・ビーフなので、じっくりフォローをしてみたい。関係者ではないので全ての背景が判るようになるとは思えないが、少しだけ調べてみたいと思う。いずれにしても、大手の食肉加工業者のレベルの低さが、毎度問題にされてきている背景は何なのだろうか?このような事件が起きると、多くの食肉が処分されたりしているので経営的にも大きな打撃のはず。繰り返される背景に、何か訳があるのだろう、、、

Thursday, August 07, 2008

ミニ店を導入する予定のウォールマートの影響

スーパーマーケットの激戦に関して少し書いたのでもう一つ付け加えよう。これまで、ナチュラルスーパーの最大手のホールフーズは、事業を拡大するために、店舗面積を増やし、取扱商品点数も増やすような戦略をとり続けてきた。その一環で新規の店舗面積が8万平方フィートくらいのところがいくつも出てきたのは多くの方もご存知の通りだ。ナチュラルスーパーとしてはかなり大型になるボールダーの旗艦店が8万スクエアーフィートになるのは、理解されているところだ。一方では、スーパーの最大手のウォールマートなどは、低価格路線で事業を展開してきたのだが、「いつも低価格」と云うスローガンから「Save Money, Live Better」つまり、「節約して、より良い生活をしよう」と云うスローガンに変えたのはごく最近だ。ウォールマートは、スーパーセンターと言う巨大店舗を抱えているが、どうも機動力が高く、低価格路線から離れた新たなチャンネル構築を目指そうとする動きに出始めていると云うのが最近の話題だ。

ウォールマートは、ホールフーズなどの発展には大いに興味を持ってきたが、持ち前の経済力、購買力の違いにより、ホールフーズを真似することはあっても、それ程脅威を感じてきたとは思えない。本心を言えば、ウォールマートが脅威を感じているのはイギリスの最大手のスーパーチェーンのTescoのアメリカ襲来だろう。現在、TescoにしてもWalmartにしても手の内を明かさないで、着々とお互いの手を探り合っている。ウォールマートがアリゾナ州フェニックスの市場においてはっきり何をしようとしているのか定かでないが、部分的な情報の漏れから新規に取り組もうとしているいくつかの方向性が表面化している。パイロット店舗と称して動き始めているウォールマートが何をするのか注目されるところだ。ウォールマートがMarketside(マーケットサイド)と云う名前で新規店舗の実験をこの夏後半に始めることをほのめかし始めているからだ。最近その人材募集のウェブ広告が出されたりしており、メディアやブロガーたちがウォールマートの動きをパパラツィーのごとく追いかけ始めているからだ。

まず判ってきていることは、小型形式のグロッサリーで名前をMarketsideと決めたことだろう。そうして、ロゴがここに掲げられているものになりそうだと云うことだ。これがはっきりしてきたのは商標登録された情報から判ってきたらしい。

アリゾナ州のフェニックス界隈で展開される4店舗の大きさは1万5000平方フィート(約1400平米)になるなることが見込まれている。この面積が判ったのは4店舗の内3店舗での酒販免許申請に売り場面積が表示されていたからしい。この、売り場面積の1万5000平方フィートは、ウォールマートが現在所持している小売店規模では一番小さい「Neighborhood Market」形体のの3分の1くらいのプチ店舗になることが見込まれている訳だ。

もちろん、ウォールマートがこのMarketsideでどのような事業を展開するのか、実験段階なのでまだ確定していないと思うものの、関係者が想定している、事業形状は次のようになる模様:

1、必要最低限のベーシックグロッサリーを揃える
2、より上級指向の特選やナチュラルフーズ(ドライグロッサリー品)
3、フレッシュなミートおよび生鮮野菜果物
4、惣菜・テークアウトの上級もの

最後の項目については、Marketsideがどのような惣菜やデリー品目を取り揃えるか見えてこないらしいが、Tescoが展開している広範でアップスケールでないFresh and Easy Neighborhood Marketに対抗するものを出すのなら、ここが差別化の要素になるだろうと見込まれている。ウォールマートは"City Thyme" と"Field & Vine"の二つの名前を商標登録したらしいので、Marketsideの惣菜商品群のためのブランディングのために使われるだろうと憶測されている。

北米で4000のスーパーセンターを保有するウォールマートの販売力は凄いが、あまりにも大店舗なので、多くのコミュニティではウォールマートの進出が認められていないことが多い。ボールダーのように、市民がウォールマートの進出に反対してきたところも少なくない。サンフランシスコのベイエリアなどもそうだし、広大な郊外にしか不動産を取得できなかったこともあり、都市部での進出が阻害されてきたと言う戦略的なマイナスも自己認識しているのだろう。また、これまで、Always Low Prices (Everyday Low Prices)などの標語からSave Money, Live Betterとよりライフスタイルをも加味したメッセージにしてきていることもあり、ウォールマートが都市部のより裕福層にもアピールできるようにしようとしているのかもしれない。ロハスや知的層に受け入れられるようになるのには、商品形体も変えなければいけないだろう。イギリスのTescoの襲来を押し止め、一方ではナチュラルスーパーのホールフーズのこれまで持っていた市場にも食い込むことも考えていると考えてもおかしくない。

Tescoが展開し始めているFresh and Easy Neighborhood Market形体はホールフーズがボールダーのベースラインにあったワイルドオーツの前店舗を改装するときのテーマに似ている。日本的なコンビニの形体でナチュラル、オーガニックの食材を気楽に買えるような場を提供しようとして、各大手が動き始めている訳だが、店舗面積がどのように変わろうと、各社がナチュラル、オーガニックな食材を提供する方式として考えていることで、消費者のニーズを汲み取ろうとしているのは判る。ナチュラルやオーガニックのニーズがこのように高まることは、生産者に対しても大きなディマンドになることは間違いなく、アメリカにおける、コンベンショナル(一般品)な食材がよりナチュラルとオーガニックへと転換して行く原動力になりそうだ。

大手スーパー、セーフウェーのオーガニック戦略

アメリカ経済の減速とインフレの傾向が相まって、アメリカの消費者は苦労し始めている。経済が順調に発展しているときとは違い、消費者は中身を落とさないで、必需品や食品の買い物の節約に必死だ。そのことを非常に端的に現しているのが、スーパーマーケットのプライベートブランドへのシフトと急成長だ。

プライベートブランドというと、どうしても昔は自社ブランドで劣悪なデザインのパッケージングを行い、低価格で販売していた時代があった。そのためにプライベートブランドと聞くと、少し懐疑的になることが多かったのも事実。しかし、アメリカでは、各大手スーパーは、自社ブランドのイメージ発揚に躍起だ。とくにメッセージ性を高め、トップブランド商品の品質に近づけるように努力してきた結果だ。ネーミングもしっかりと定め、パッケージングデザインも光り始めている。そのために、アメリカのスーパーマーケットチェーンでプライベートブランドを提供しているところは全て大成功をしているのだ。景気が悪いと入っても、消費者が必需品の買い物を控えることができないからだ。そのために、トップブランドのものよりは、価格がよりリーズナブルなプライベート品に流れているようだ。スーパーマーケットの大手である、ウォールマート、クローガー、スーパーバリュー、セーフウェーなどは、プライベートブランド品の売り上げ増で嬉しい悲鳴を上げている。

このプライベートブランドの商品が、外見だけでなく、中身的にも改善してきたことの裏付けは、限られた家計費の人だけでなく、どちらかと言うと高額所得者層の中でも受け入れられ始めていることからも判る。当然、品質の大幅な改善があったからこそできたことだ。これまではドライグッズ、加工品などが主たるものだったが、最近では、乳製品、肉類、青果物なども対象になるなど、プライベートブランドの範囲が広まってきている。しかも、その中でも、大きな発展の基軸になっているのがナチュラルとオーガニック製品のプライベートブランド化だ。


今日ここで紹介するのは、アメリカスーパーマーケット、ドラッグストア業態の中でランキング4位のセーフウェー社は(純スーパーではクローガーに次ぐ2位、ただし、王者ウォールマートについては別カテゴリーに入っているので簡単に比べられない)、自社のO Organicsの事業があまりにも成功をしたので、自社ブランド商品を他のリテーラーにも販売して行くことを発表したくらいだ。O Organicsを立ち上げてまだ2年間しか時間が経過していないので、その急成長ぶりがうかがえるというもの。その他各社のオーガニックプライベートブランドの動向はまた報告するとしても、自社の販売網を超えたところまで売り始めているセーフウェーのオーガニック商品戦略は大いに注目するに値する。ナショナルブランドに影響を与えない訳はなく、今後のポジショニングに変化が出るのは必至だろう。

オーガニック商品は、とかくアメリカでは、特別扱いを得て、高額所得者にしか届かない価格で売られていることが多かった。しかし、大手スーパーが、徐々にオーガニックの導入と、さらにプライベートブランドでのオーガニック商品の投入によって、オーガニックはより一般大衆の手の届く範囲に入ってきた。セーフウェーは、それをオーガニックの民主化と位置づけているようだ。

セーフウェーが2005年に発売し始めた、O Organics はまさに破竹の勢いで伸び始めている。2005年の初年度だけで1億5千万ドルの売り上げを自社の1700強の店舗で達成した。現在は30カテゴリーのラインで300のSKUを持っている。2008年には売り上げが4億ドルになるだろうと見込まれている。また、もう一つのラインであるEating Right ブランド商品だけで2億ドルの売り上げを見込んでいる。このブランドは高ファイバー商品や健康に視点をおいた商品戦略なのだ。

アメリカの景気が、現在のところ芳しくないが、それでも、このオーガニックや健康に配慮したプライベートブランドは、後退する気配を見せていない。こうやって見ると、トップのチャートでホールフーズの利益率がマイナスとなり苦戦を強いられていることが判る。プレミアムの販売だけでは、景気後退の時にオーガニックの販売が壁に突き当たるのは証明されているかのようだ。オーガニックを欲しがっても、高価格帯なら、客離れが進むというものであり、その中での、セーフウェーのO Organicsの販売増はうなずけるというもの。ナチュルとオーガニック業界のリーダー的な存在である、ホールフーズが、手をこまねいている訳ではないが、戦略の転換が求められてくることになろう。ここ一年の株価の下落傾向を見てもホールフーズのおかれている市場環境がいかに難しいものか理解できるものだ。二桁の成長率を経験していたホールフーズは、店舗展開のスピードを落とさざるを得ない状況にも追い込まれている。

O Organicsの顧客対象は新生児の母親と言うことらしい。新生児の母親たちは、よりクリーンで、より健康な食品を求めているからだそうだ。利便性もプレミアムの条件に入ることから、セーフウェーのO Organicsブランドは、いろいろなセグメントカテゴリーをまたいで設定されている。ミルクやバターだったり、コーヒーも含めたり、冷凍食品などもある。しかも純正な食品だけでなく、スナック類にも手を出している。その事例がポップコーンだったり、チップスとサルサだったり、アイスクリームなどもある。O Organicsのブランドを形成しているのは Lucerne Foods, Schreiber Foods, Ready Pac Produce, Overhill Farmsなどが調達したり、加工したりした商品群だ。これらの会社はBetter Living Brands Allianceと言うグループを形成して、セーフウェーのO Organicsをサポートしている。

アメリカで、オーガニック商品需要は供給力を超えて伸びている。オーガニックの生産認定を受けるのに、切り替えに時間がかかるからだ。特に農産物の場合は、コンベンショナルな農場からオーガニックへの転換に時間がかかるからだ。だから、オーガニックの価格帯に大きなプレミアムがついてしまっている。景気後退の時期にも重なり、この産業は大きな変革の時期に直面している。流れはよりオーガニックと云うことで予測できるとしても、その中でのプレイヤーの動きがどうなるのか、予断を許さない。ロハスの発展期の悩みであることだけは言えるだろう。

Wednesday, August 06, 2008

変わるか、クルマの嗜好

今日はいくつかの長期トレンドのチャートを見ながら、アメリカが現在直面している問題が突然に現れたのではなく、アメリカの政府、メーカー、そうして消費者のエネルギーの現状を無視してきた長期的なトレンドの結果である点を示してみたい。ブッシュ大統領のエネルギー政策だけが問題ではなく、アメリカのクルマの文化自体が、制御しにくい誤った方向に行っていたのだと云うことを判っていただけると思う。しかし、現実の問題の直面し始めて、アメリカの消費者も、やっと目覚めてきたという気がしてならない。もちろん、一部の人間は、まだ、自己責任を取ろうとせず、世界の現状を無視し続ける人もいるだろう。だが、世界のエネルギー余剰の現状が変わるにつけ、アメリカの事実認識が変わることは避けられない事態のようだ。

アメリカ人は、長いこと、クルマと云う移動の自由を与えてくれる、この文明の利器に惚れ込んできていた。しかも、より大きく、よりパワーがあるもの、より自己主張できるアクセサリーがあることを求めてきていた。他人との差別化を求める心理については、今後もなくならないだろうが、大きなモノ、パワーのあるモノという欲求は変わらざるを得ない事態だ。その精神的な背景には、これまで大きなクルマでよりパワーのあるモノを買えば、周りの人が、そのヒトは成功者と判定されていたのにも関わらず、エネルギー価格高騰の中では、それが、全く違った社会判断につながり始めたからだ。現在大型車や、トラック、RVなどに乗り続けているのであれば、以前であれば、豊かさ、タフな性格、前を行く小型車を潰してしまう奢りがある人間だったモノが、周りの人は次のように判断するだろうとニューヨークタイムズの記事は報道している:

1、セカンドカーを買いたくとも買えない
2、現在のクルマのリースから抜け出せない
3、このクルマを売れないから新しいクルマに買い替えることができない

などと周りが見る雰囲気が変わってきているのだ。それに、環境的な側面も表面化して、地球環境を破壊し続けているが、このモンスターから抜け出せないでいる人と云う雰囲気なのだ。ゼネラルモーターズが、大型車の看板モデルだった軍用車から派生してできたハマーモデルを売却しようとしていることからも想像できる。

アメリカ人のクルマを廻る心理は確実に変わっているのだ。クルマがセックス・シンボルだったり、個人の成功度の尺度、物質的な所有欲のシンボルだったりしたモノが、大型車で燃費の悪いクルマを乗り続けることで、周りの見方もどんどん変わってきているので、クルマそのものの象徴的なプラスが、いつの間にか、社会的に受け入れられないネガティブなモノに変貌していると言うのだ。これまでクライエントに大型SUVなどを見せびらかせた人が、そのようなクルマに乗り続けていると、現実離れした非常識な人と見られかねない状況になった。これまでは大型化であることで快適性や安全性(自分の方が相手より安全であると云う身勝手な安心感かも知れないが)を求めていた人たちが、経済性、環境性、商品信頼性など、別の次元の要求項目にシフトしていることが考えられる。もちろん、デザインやスタイルが良いことに越したことはなく、近所や仲間の人に、羨ましがれる点があることは必須であるのは当然だ。でも、嗜好は、これまでのアメリカでは考えられない方向になってきたのは事実だ。
BMW社が買収したローバーのミニクーパーは、上級モデルやアクセサラリーがついていればいるほど売れるという。自慢をしたがる気持ちは無くならなくとも、これまでの方向性とは違っているのだ。もちろん、社会全体が変化するのに時間はかかるだろう。でも、変化が始まったことには違いない。

グリーンな嗜好をどのように満たして行くかが、今後の自動車の文化を見極める上で面白いところだ。クライエントだって、グリーンなクルマだったら、反応が良くなる世の中だ。しかも、中東や反米的な思想を持つ産油国に金を支払いたくないという「思想的」「愛国的」義務感も出てきているらしい。メルセデスベンツ社が買収したスマート車に関心が高まっているのはうなずけるところだ。

アメリカの社会的インフラは、東海岸の大都会は別として、公共交通機関は少ない。しかも、インターステートハイウェーのネットワークが出来上がった後成長した街ほど、クルマ依存の度合いは高い。今後ともプラグインハイブリッドや電気自動車の普及発達で、アメリカに再度クルマが大型化する傾向がない訳ではないと思うが、現状では、ここ当分クルマの嗜好はグリーンな方向へ動いて行くだろう。しかし、電気自動車が、インフラとともに出来上がってきた段階では、また、大型車シフトがくる気がしてならない。アメリカのクルマ文化は、広大な国土に合わせて大型車が潜在的に好まれていると考えるからだ。アメリカのクルマ文化が、どのように変わっていくか、あるいは定着して行くのか見物だ。