Tuesday, October 24, 2006

進化するロハス基準

ここ数ヶ月アメリカのオーガニック産業で大きな問題として出現をしてきたのは、オーガニックの定義そのものだ。オーガニックの定義の中に、従来だったら考えられなかった、より厳しい基準が求められ始め、活動家たちは、今までのオーガニックを数段厳しいところまで引き上げた。その定義というのは、牛乳の生産に関わる定義の中で、乳牛の扱いがどのようなものかをいうものだった。乳牛が、牛舎に閉じ込められ、牧草地での運動もできず、ただ単に乳牛として機械的に働かされているということが活動家たちの攻撃の矛先になった。大手になってきた、オーガニック牛乳メーカーが、生産効率を求めるが故に、乳牛たちの人道的な扱いを忘れていることへ、活動家たちは怒りを向けた。

かなり前にも書いたが、ホールフーズスーパーが、活ロブスターの販売を中止したということがあった。これもロブスターが非人道的な扱いを受けているとして、人道的な扱いができるようになるまで、販売を取りやめるというのがホールフーズの立場だ。水槽で動きを制限されているロブスターを見ていて、ビーガンであるホールフーズのジョンマッキー社長は何かを感じたのだろう。

日本の捕鯨問題にしても、日本不買運動まで行ってしまったアメリカ人活動家。ツナ缶にしてもマグロの捕獲のときに一緒に捕獲されるイルカを守る方式をとらない漁業をしているメーカーのボイコットなど、事例が事欠かない。また、発展途上国の社会ピラミッドの最下層にある農業生産関係の人々、(例えばコーヒー豆などのピッカーたち)の救済を求めるフェアトレードなどなどこれまで、一部の先鋭的な活動家の活動目標だったようなことが、どうでも良いではないかということが徐々に大手リテーラーが無視し得なくなるような事態となってきている。もちろん、どうでも良くないのだが、日本の消費者だったら、これが大手の販売政策にまで影響するような事態には持っていくとは考えにくい。消費者も冷めているのかもしれない。

ただ、どちらが仕掛けているのか判らなくなる事態をニューヨークタイムズは報道している。つまり、その先鋭的な活動家のテーマをちゃっかり借用してホールフーズは人道的に飼育された家畜であることを積極的にラベルで打ち出している。そのために他のディストリビューターやリテーラーとの違いを打ち出し、プレミアムを付けて豚肉や鶏肉を売り始めているという。殺されるのは殺されるのだが、人道的に飼育されたことが消費者の間で付加価値になってきているのだ。

確かにストレス下で飼育された動物を食するのはどのようなものか、今まで考えても見なかったことだが、それが一つの社会価値観になりつつあるのだろう。ロハスは人間だけの基準ではなくなるのだろうか?いろいろと考えさせられるものは多い。

Sunday, October 22, 2006

肥満抑止運動に動き始めたディズニー




世界保険機構(WHO)が最近発表した統計によると世界で栄養失調になっている人は60億人のうちの約8億人にも及ぶという。しかし、もっと驚くのは、反対の肥満の人の数が、栄養失調の人々の数字を凌駕して10億人以上になると云う。まさに世界人口の6人の内の一人が肥満ということになる。アメリカの数字は、その中でも突出していることは述べるまでもない。

そんな中で、エンターテインメントの大手であるディズニーがテーマパークで販売する食品の健康的な度合いを増やすことを発表している。トランスファット脂肪を使った食品をテーマパークで販売中止をするというものだ。しかも、徐々にキャラクター使用権についても不健康な子供食品については廃止をしていく旨発表している。



アメリカ人口の肥満の状況があまりにも危機的な状況になっているので、ディズニーの動きは注目に値する。もちろんディズニーだけなら、全体へ与える影響は限られているが、ディズニーが動いていくことで、サプライヤーもこの事態を無視できない状況が強くなることが予想される。ディズニー社は、現在の動きについては、段階的な導入を望んでいる訳だが、もっとも厳しいのはディズニーチャネルなどを運営していく中で既存の広告主の商品をすべて無視していくことは難しく、健康食の導入は徐々に展開されなければならない。経済的に成り立ってはじめて企業としても動かざるを得ない状況となろう。現にこの発表後、ディズニーの株価は下降した。市場は、そんなに簡単なことだとは考えてくれていない証拠だ。

しかい、ロハスは少しずつ動き始めている。ウォールマートが有機のビジネスを展開したり、ディズニーが健康食を推進し始めていることに対して懐疑的な人もいよう。しかし、今後は、このような視点を持った企業が増え始めると、英語で言うところのティッピング・ポイント、つまり潮が逆流をするときが近づいていることが出ていると言えよう。少なくとも健康派が主流になっていく時期が近づいていることを示している。

どちらかというと、健全な食事をはじめてきていたのは、知的層であったと言える。これまでは自分たちの問題だけを考えておけば良かったのだが、肥満は、健康保険料率にも影響を及び始めさせ、全体に対しても無視できない状況になったことを示している。まさに環境と同じだ。自分だけ良ければという発想は成り立たなくなってくるだろう。市場に悪者ととらえられるか、時代を先取りした会社としてみられるか、今後も多くの企業が悩んで上に、転換を初めていくだろう。会社だけの利益を追求する時代は終わってきている。そんなことをボールダーで考えてみた。

Friday, October 06, 2006

有機食品基準で泣き言を言う大企業


ビジネスウィーク誌の10月16日号はThe Organic Mythと云うタイトルで有機産品市場が揺れていることを伝えている。これまで何回にわたってウォールマートの記事で伝えてきたように、有機農産物が大手によって主流になってくるとどうしても有機農産物の供給が追いつかない現象があると云う点だ。ただ、記事の取り上げられ方は、有機農産物の定義は守りきれなくなるだろうと云うトーンにはいささかうんざりする。

確かに、有機農業と云うのは、これまで小規模のところが、心を込めて丁寧に仕事をしてきたところだ。そこに大手が入ってくると、大手なりの考えが発生して、独立系のオーガニックファームのやり方ではついていけないことが出ている事象も多くあるだろう。しかも大企業の論理や、投資家との関連で従来型の投資利益率を求める大手企業が出てくることは致し方ない。そのような過程で真剣にオーガニックを追求していた農家や企業が、一部において妥協をすることもあり得る。

ボールダーにおけるオーガニック産業アクティビストと話をしていると、ナチュラルとオーガニックの需要が大きくなってきたことを歓迎するとともに、小規模生産者と大規模生産者との調整が今後の大きな課題と見ている。オーガニックミルクの需給がバランスとれなくなり、供給が追いつかない現象が比較的長いこと続いている。その背景にあるのは、大規模生産者が、オーガニック認定を受けるためには、牛舎をはじめとして、飼料の調達、生産設備の新規増設など大幅な転換を試みなければいけないことと、乳牛のサイクルが生まれ変わったりしなければいけないと云う相当な圧力がかかっているからに他ならない。需給関係がバランスをしていないのは、転換をするにもこのような変更は時間とカネがかかると云うことが大きい。

このような移行期にいろいろと問題が発生することは当然考えられる。すべてが簡単に移行をしたのなら誰でも前からやったはずだ。このオーガニック農業がいかに大変かと云う点は十分承知をしているものの、オーガニックでないものを放置していく社会コスト、環境コスト、健康コストなどを考えていくと、この改革の流れを止まらせると云うよりは、大規模生産者の体質改善を徐々に行っていく心のゆとりが必要だ。金銭的なリターンだけを求めて、ルールの根本を変えると云うことになれば、地球温暖化は不可能だからといって諦めるのに等しい。

ボールダーの多くの心あるロハス的な人々は、長期的な目での変更を求めていると思う。そう、Naturally Boulderと云う会合が、今月の19日と20日に開催される。日本からもソトコトの編集部の人も来られる。より多くのまともな人たちの意見が、ビジネスウィーク誌などの出版物のトーンを変えさせるようにしてほしい。

Monday, October 02, 2006

ウォールマートが動くとき(4)

これまでウォールマートのグリーン化についてとても前向きなリポートを書いてきた。しかし、ウォールマートは引き続き労働組合やインテリ・リベラル層には毛嫌いされているところも多い。

今回はニューヨークタイムズの記事だが、ウォールマートがフルタイムを減らし、パート比率を現在の20%から40%に引き上げようとしていること、賃金に上限をつけようとしていることが非難の対象になっている。ウォールマートは、小売業界の中でも低賃金で知られ、医療費負担をしないためにいろいろと画策してきたことが暴かれている。不法移民を雇い入れ、夜中の清掃などを缶詰のような状況でさせていたと云うことで大きな非難を受けたりしている。

この従業員を扱う態度についてはロハスの世界では知られたホールフーズが対照的なので、機会があれば紹介をしてみたい。全世界の従業員数が180万人という巨大戦艦がグリーン化をする点は大いに評価し、今後の社会のよい方向での変貌に期待はするものの、株主だけに向けた目は、あまりロハスの根本精神をトップが理解していないと云えるだろう。人件費、オペレーションコストなどをどのようにみていくか、管理者の大いなる仕事だが、従業員の犠牲で成り立つと云うことであれば、かなり大きな問題と云わざるを得ない。この辺りについても、少し目を向けたいところだ。

ボールダーで懐疑的にみられるウォールマート。ロハスだと云うことが社会的に認められなかったら、この街への進出はまずはあり得ない。ボールダーの人は良くて安ければ、という視点だけで買う姿勢を持っている人は少ない。そのロハス的な発想はボールダー特有のものと云えよう。