Monday, April 28, 2008

崩れはじめた経済の集中効率のメリット

原油価格が急激に高騰しはじめ、各国政府や企業はそのインパクトの大きさを計り知ろうとしているが、現在の高騰が投機的な部分もあるために、実際を計り知ることは難しい。しかし、誰でも間違いなく判断できることは、中国、インド、東欧の消費経済に火がついたことから、世界のエネルギー需要が増えることはあっても下がることはないと云う事実であり、そのパイの取り分をどうするかということは、ゲオポリティックスをはじめ、世界経済の不安要因は、当分収まることがないと見て良かろう。原油は、限られた供給国しかなく希少資源になったと考えるべきだ。

しかし、このようにエネルギー総需要が増えることについて、ネガティブな面だけを見るべきではなかろう。これまでの低コストの原油があったおかげで、産業革命ではじまった大量生産方式が、発展してグローバル経済を可能たらしめたのだと考えてもおかしくない。あらゆる商品面で日本が豊かな生活を味わえるようになったのは、このグローバル化のおかげでもあるのだ。しかも日本も世界各国のためにも貢献することも出来たと言える。

ここへ来て、このグローバル化や集中型の大量生産方式(巨大農法も含めて)は、経済活動の利便性や効率性を非常に高めたものであるが、一方では専業化を高めすぎたために経済の拠点が、資本、技術、労働などが競争力ある地域や大きな市場のそばに集中しはじめ、独立的な経済圏が極めて少なくなったと言っても間違いない。生産加工に関しては、コストの安いところが好まれ、アメリカのような農業大国と言え、多くの食物が海外から流れ込みはじめたのだ。コンピューターの発達によって、複雑なロジスティックスの仕組みが見事に計算されて、効率の良いところに生産や加工、組み立てなどが移っていってしまうことになった。しかしどれを取ってみても、コンテナ輸送などの大量移動が可能になったことから、世界のどこへでも、どこからでもモノを移動させ、加工させ動かせることが可能になってしまった。

2週間ほど前にイギリスから友人夫妻が遊びにきた。そのときにイギリス人夫妻を囲んでアメリカ人の近所仲間も呼んで家で夕食をともにした。その際にガソリン小売価格の話になり、アメリカ人の友人は、ガロンあたり3ドル50セントにもなろうとしているガソリン価格のことを話したら、イギリスの大学教授は、イギリスではガロンあたり8ドルになってきていると話をしたら、アメリカだったらそんな価格だったらアメリカ経済は停止してしまうのではないかとまで言った。確かに現状では、日本の国土面積の21倍あると言われているアメリカの国土の食品ニーズをまかなうために使われているトラック輸送は信じられないくらい高いので、ガソリンやディーゼル価格の上昇は、商品の価格に転嫁しないという方がおかしい状況だ。ウォールマート一社のトラック輸送の走行距離は、年間で16億キロにも及ぶそうだ。一社のトラック輸送だけで地球を4万回廻っているいるのに等しいのだからすごい。また、大型トラックの燃料タンクを一回満タンにすると700ドル以上もするようになったと聞く。しかも、そのガソリン燃料を各地に配送しているトラック自体の燃料コストも上がる訳だから、商品コストに跳ね上がり、食品のインフレが急速に出てきている。


この問題は、世界的に懸念されている食糧の危機的状況と重なっているので、何回かにわたって書いていきたいが、今日は家庭でエタノールを自家生産して事業をしていこうとするアメリカの起業家を紹介しよう。現時点では、エタノールを作るための原料は買い求めなければいけないようだが、将来的にこのように、消費地において必要な者を生産していく方式が必要になっていくだろうと見てもおかしくない。家庭の屋根を使って、太陽発電をしたり、町が風力発電を行ない、遠いところに水力や火力発電所を建設しなくとも町の近場で自分たちの消費分は発電していこうとする仕組みは強くなっていくのは間違いない。

生産効率だけを考えた集中生産や加工は、これまでのところ安いエネルギー価格があって出来たことだ。エネルギー価格の上昇は、否応無しにこの産業革命以降基本とされてきた、概念を覆すことになるだろう。モノゴトを移動する価格が高くなれば、当然のことながら、それも計算の中に入れて算出されるべきであり、産業はより地域重視型のモノに転換していくだろう。

もちろん、すべてのモノが地域ごとに生産されるとは思わないが、よほどの生産優位を持つもの、気候・風土上そこでしか得られないもの、伝統的なモノなどでない限りは、輸送コストを抑えるところに勢いが移動していくように思えてならない。やるとしてもそれなりのプレミアムがつくということでもある。アイスランドで地熱を利用してバナナの温室栽培もしていると聞く。日本のように、経済発展をしているときならまだしも、現在のように中国に買い負けをするような時代になってくると、当然のように海外から求めていたモノが買い求められなくなる可能性もある。原油価格の高騰は、単なるインフレという状況でなく、どうやら、我々にとってより大きな変革を求めはじめてと言えるような気がしてならない。