Wednesday, August 06, 2008

変わるか、クルマの嗜好

今日はいくつかの長期トレンドのチャートを見ながら、アメリカが現在直面している問題が突然に現れたのではなく、アメリカの政府、メーカー、そうして消費者のエネルギーの現状を無視してきた長期的なトレンドの結果である点を示してみたい。ブッシュ大統領のエネルギー政策だけが問題ではなく、アメリカのクルマの文化自体が、制御しにくい誤った方向に行っていたのだと云うことを判っていただけると思う。しかし、現実の問題の直面し始めて、アメリカの消費者も、やっと目覚めてきたという気がしてならない。もちろん、一部の人間は、まだ、自己責任を取ろうとせず、世界の現状を無視し続ける人もいるだろう。だが、世界のエネルギー余剰の現状が変わるにつけ、アメリカの事実認識が変わることは避けられない事態のようだ。

アメリカ人は、長いこと、クルマと云う移動の自由を与えてくれる、この文明の利器に惚れ込んできていた。しかも、より大きく、よりパワーがあるもの、より自己主張できるアクセサリーがあることを求めてきていた。他人との差別化を求める心理については、今後もなくならないだろうが、大きなモノ、パワーのあるモノという欲求は変わらざるを得ない事態だ。その精神的な背景には、これまで大きなクルマでよりパワーのあるモノを買えば、周りの人が、そのヒトは成功者と判定されていたのにも関わらず、エネルギー価格高騰の中では、それが、全く違った社会判断につながり始めたからだ。現在大型車や、トラック、RVなどに乗り続けているのであれば、以前であれば、豊かさ、タフな性格、前を行く小型車を潰してしまう奢りがある人間だったモノが、周りの人は次のように判断するだろうとニューヨークタイムズの記事は報道している:

1、セカンドカーを買いたくとも買えない
2、現在のクルマのリースから抜け出せない
3、このクルマを売れないから新しいクルマに買い替えることができない

などと周りが見る雰囲気が変わってきているのだ。それに、環境的な側面も表面化して、地球環境を破壊し続けているが、このモンスターから抜け出せないでいる人と云う雰囲気なのだ。ゼネラルモーターズが、大型車の看板モデルだった軍用車から派生してできたハマーモデルを売却しようとしていることからも想像できる。

アメリカ人のクルマを廻る心理は確実に変わっているのだ。クルマがセックス・シンボルだったり、個人の成功度の尺度、物質的な所有欲のシンボルだったりしたモノが、大型車で燃費の悪いクルマを乗り続けることで、周りの見方もどんどん変わってきているので、クルマそのものの象徴的なプラスが、いつの間にか、社会的に受け入れられないネガティブなモノに変貌していると言うのだ。これまでクライエントに大型SUVなどを見せびらかせた人が、そのようなクルマに乗り続けていると、現実離れした非常識な人と見られかねない状況になった。これまでは大型化であることで快適性や安全性(自分の方が相手より安全であると云う身勝手な安心感かも知れないが)を求めていた人たちが、経済性、環境性、商品信頼性など、別の次元の要求項目にシフトしていることが考えられる。もちろん、デザインやスタイルが良いことに越したことはなく、近所や仲間の人に、羨ましがれる点があることは必須であるのは当然だ。でも、嗜好は、これまでのアメリカでは考えられない方向になってきたのは事実だ。
BMW社が買収したローバーのミニクーパーは、上級モデルやアクセサラリーがついていればいるほど売れるという。自慢をしたがる気持ちは無くならなくとも、これまでの方向性とは違っているのだ。もちろん、社会全体が変化するのに時間はかかるだろう。でも、変化が始まったことには違いない。

グリーンな嗜好をどのように満たして行くかが、今後の自動車の文化を見極める上で面白いところだ。クライエントだって、グリーンなクルマだったら、反応が良くなる世の中だ。しかも、中東や反米的な思想を持つ産油国に金を支払いたくないという「思想的」「愛国的」義務感も出てきているらしい。メルセデスベンツ社が買収したスマート車に関心が高まっているのはうなずけるところだ。

アメリカの社会的インフラは、東海岸の大都会は別として、公共交通機関は少ない。しかも、インターステートハイウェーのネットワークが出来上がった後成長した街ほど、クルマ依存の度合いは高い。今後ともプラグインハイブリッドや電気自動車の普及発達で、アメリカに再度クルマが大型化する傾向がない訳ではないと思うが、現状では、ここ当分クルマの嗜好はグリーンな方向へ動いて行くだろう。しかし、電気自動車が、インフラとともに出来上がってきた段階では、また、大型車シフトがくる気がしてならない。アメリカのクルマ文化は、広大な国土に合わせて大型車が潜在的に好まれていると考えるからだ。アメリカのクルマ文化が、どのように変わっていくか、あるいは定着して行くのか見物だ。

No comments: