Friday, August 29, 2008

オバマ民主党候補指名と米国エネルギー政策

アメリカの新エネルギー・ニューディール政策か

昨晩、デンバーで開かれていた民主党党大会が閉幕した。この民主党党大会は党の大統領候補を指名する大事なイベントであり、既にオバマ候補が事実上指名されているのは、周知の事実であるとはいえ、それを公式化するイベントだった。党大会の最後を飾ったのは、オバマ候補の指名受諾演説だったが、名演説家として知られているオバマ候補の名に恥じない素晴らしい歴史に残る演説だったと言えよう。

オバマ大統領は、19ヶ月間にわたる予備選の期間において多くの演説や方針を明らかにしてきたが、アメリカ国民の中には、具体性がないと云う批判も多かった。もちろん、上院議員を一期も勤め上げていない候補だけに、彼の実績は未知数のところも多く、大統領候補として人物評価できないと多くの国民が評していたのは事実。同じ民主党のヒラリークリントン候補と競り合っていたときも、変化を求める理想論を述べることが多く、具体策が見えないと言われていたからだ。私にとっては、オマバ候補は、施政方針は比較的によく見えていたと判断しているが、主流派でないこと、黒人マイノリティーであること、ヒラリーを蹴り落としてしまった結果ヒラリー陣営の不満を買ったことなどで、具体的な非難ができないことから、オバマ候補は未知数の人とのレッテルを貼られてしまったものと思う。

デンバーのインベスコ競技場において開催された民主党党大会において、オバマ候補は「政治的」な指名受諾演説を行なったわけだが、そこで、具体的な政策目標などをはっきりと打ち出した。もちろん、民主党党大会と云う性格もあり、まだ、政策にどのように反映して行くのかは、大統領に選出されるまではどのような施策となるのか、詳細はまだ未知数だ。しかし、オバマ候補が、テレビに釘付けになっていた国民の前で公約したことは、大きな政策指標になることだけは間違いない。オバマ候補のエネルギー政策についてのところを抜粋して翻訳を試みてみた。読者にオバマが大統領になったときの方向性をご理解いただければと思う。

「、、、そうして、わが国経済、安全保障、そうしてわが地球の未来のために、大統領になったときの目標をきちんと定めておきたい。つまり、10年で中東からの石油依存を終わらせたい。われわれは、これを実行する。」

「ワシントンはこれまで30年間にもわたり、わが国の石油依存症について話をしてきた。ジョンマッケインはその内の26年間ワシントンにいた訳だ。その間に、彼はクルマの燃費規制強化についてはノーと言ってきたし、再生可能なエネルギーへの投資にもノーと言ってきた。再生可能な燃料にもノーと言ってきた。そうして、マッケイン候補が上院議員になってから、石油の輸入量は3倍にも膨れ上がっている。」

「この石油依存症を断ち切る時が来た。われわれは、(新たな)石油掘削が単に応急処置だけであって、長期的な問題の解決策ではないことを理解しなければならない。政策として取り上げるのにはほど遠いものだ。」

「私が大統領になったのなら、天然ガス資源の活用、クリーンな石炭の技術への投資、そうして原子力エネルギーをどのように安全に使うことができるか模索する。自動車メーカーに対して、未来の燃費効率の良いクルマが、アメリカで生産されるように、設備投資のために助成をして行こうと思う。また、アメリカの消費者が、これらの新しいクルマに買い替えられるように施策を講じたい。また、次の10年間にわたり、1500億ドルの資金を経済的で再生可能なエネルギーのソース:風力、ソーラー、そうして次世代のバイオ燃料に資金投下をしたい。この投資により、新規産業が形成され、高給で、しかも、アウトソースできない新規の500万人の雇用を創出するようにしたい。」

オバマ候補のエネルギーの政策目標でわかることは、アメリカのビッグスリー、あるいは既にアメリカに来ている海外メーカーの設備切り替えに、オバマ大統領は本格的に経済的な援助を行なって行くことを示していることだ。この演説を聞いて、アメリカの石油産業はどのような反応を示して行くのだろうか。自動車メーカーも、燃費効率を高める投資でなければ、政府援助を受けられない訳であり、アメリカの自動車市場は3−5年で相当変革をすることが予想される。しかも、現在の悪い燃費のクルマを持っている人の買い替えを補助することも暗に述べていることから、現在市場にあるクルマが大いにスクラップ化され、燃費効率の高いクルマの比率が高まることは、アメリカのクルマ文化の革命と同時に、政府主体としたエネルギーの「ニューディール政策」色を感じるのは、私の勝手な想像なのだろうか。燃費効率の高いクルマへと一斉に切り替えて行くとなると、その経済的なインパクトは計り知れない。もちろん、輸入車にではなく、国内で生産しているメーカーでなければ、助成策は活用できないだろう。想像するだけでも面白い事態になりそうだ。

アメリカは、世界の総人口の4−5%くらいなのに、石油消費は25%くらいだそうだ。だから、クルマの燃費改善を強行して推進して行くことで、世界の石油消費に大きなインパクトを与えて行くことは十分に想像できる。どのような具体的な政策になるのか、大いに注目したいところだ。

いずれにしても、指名受諾演説において、サステイナブルな施策が不可欠になったのは、アメリカの方向性変化を強く物語るものだ。

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