Tuesday, June 27, 2006

地球温暖化と大気汚染防止法を巡る法廷闘争

今週始めにアメリカの最高裁は、マサチューセッツ州を始めとする12州、3市といくつかの環境団体が求めていた連邦環境保護庁の行政責任についてのヒアリングを、今秋から行なうことを受け入れた(Commonwealth of Massachusetts v. US Environmental Protection Agency)。

70年代に制定された大気汚染防止法(クリーンエアー法)で規定されている環境保護庁の大気汚染防止行政が機能をしていないと云う12州3市、環境団体の主張をヒアリングすると云うもの。そうして地球温暖化の進行を止めるために、環境庁が法律に基づいて、二酸化炭素やその他の温室効果ガスの発生を行政的規制により強化して抑制をするべきだと云う論争になっている。結論は来春に出される見込みであり、地球温暖化の議論は連邦最高裁で大きく取り上げられることになりそうで、ブッシュ大統領にとっても、今年の11月に予定されている中間選挙においても改選される435人の下院議員と三分の一の上院議員の選挙活動にも大きく影響を及ぼしそうだ。

この問題で特に面白いのはタイミングだ。審理公聴会が10月から始めたすぐ後に上記の中間選挙が開催されるからだ。これまでアメリカの議会は選挙民の意識が低い段階では京都議定書の上院審議においても賛同を得られなかった経緯があり、今回の12州が手始めの審理要求について、メディアの関心を呼び、議論百出することは大いに予想される。選挙民が注目し始めると、上院議員や下院議員は無視し続けられなくなると云うもの。

これに加えて、アル・ゴーア氏のAn Inconvenient Truthの映画が、きっかけとなり、より大衆レベルでの議論も増やしていることでもあり、これまで地球温暖化については、メディアに載りにくかったところでも徐々に議論が活発化されていくだろう。三権分立の、行政府と立法府で動かなかった案件を、司法の議論を通じて動かそうとするアメリカのまっとうな人々に拍手喝采だ。

この案件は、自動車の排出ガスだけでなく、広範囲な地球温暖化の原因となりうるすべての事象を含む可能性もあり、エネルギー企業などと近いブッシュ大統領や、電力発電メーカー、経営的に苦しんでいる自動車メーカーからの反発も大いに予想されるが、アメリカのエネルギー消費やライフスタイルの変化に寄与する方向が出てきそうだ。

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