Monday, July 28, 2008

ファーストフードへの警戒高まる


ファーストフードほどアメリカ人の合理性を示す尺度はないかも知れない。アメリカ人は何が何でもマルチタスキング(つまり複数の作業を同時に行うことを言う)をしたがる国民だろう。クルマを運転する時にコーヒーを飲み、ハンバーグを食べている。クルマの仕様でカップホルダーがいくつあるかが気になる消費者が多いのでも頷ける。全てが時間の節約、効率の高まりなどを目指して、社会経済の仕組みにも影響を与えてきた経緯がある。しかし、そのマルチタスキングは、必ずしも効率を上げないことが判ってきている。昔の日本では音楽を聴きながら勉強することなどは「ながら族」と言われていたが、今の日本でも、それは社会概念でもなくなったくらい一般的な事象になってしまっており、「ながら族」と云う言葉さえ聞かれなくなったのだと思う。

アメリカは、多民族国家であり、伝統からの束縛を嫌ってきた国であることから、一般的あるいは伝統的な食事のマナーもあまり優れていない面がある。子供の食事についてもフォークやナイフの使い方さえしっかり教えられない親も多く、食べるモノがほとんど手でつかむが多いことはこれまでも述べてきたところだ。そういう中で、ファーストフードやファーストフードのテイクアウトは、時間節約、便利さ、コスト効率などの集大成と言えなくもない。ホットドッグやハンバーグなどがアメリカのライフスタイルの象徴と言われる所以だ。

しかし、国民の中における肥満の増大で、便利で、コストが安いことだけに眼が行かなくなってきていることも事実だ。かなり極端なことかも知れないが、MSNBCが伝えるところによるとロサンゼレス市議会は、低所得者が多く、肥満の比率が高い南ロサンゼレス地区におけるファーストフードレストランの事業許可にモラトリアム(事業発給許可一時停止措置)をかけることに決めたらしい。まだ、市長の最終的な決断が求められるとのことだが、市議会議員の大多数が、ファーストフードのレストランを増やさないように決断したと云うことが画期的と言えるだろう。アメリカ的でない判断のようにも見えるからだ。

その背景にあるのは、南ロサンゼレスには、健食などを提供するレストランはまずなく、ほとんどがファーストフードで占められており、低所得者を食い物にしていると判断されたからだ。健食のオプションさえない地域なので肥満が増えるのは仕方ないという発想だ。だから、モラトリアムを導入して、健食を提供するようなレストランがくることを願っているのだろう。しかし、ファーストフードは、宣伝広告力を持っているので、教育レベルも低い地域の人々に健食を提供すると言っても、その健康の意味することを説得させることは難しいことなのだろう。市議会の活動が、悪いことだと言わないが、ファーストフードレストランのメニューを大幅に改善させるように指導しなかったら、あまり意味がない気がする。また、地域住民が、「食」についての意識を変えていかない限り、最も便利で、コストも安く、空腹を満足してくれるモノに惹かれ続けるのは当然だ。どうやってそれをやるかは頭の痛いところだろうが、若者に食(農産物も含む)を作る喜びを教えていくことから始めなければいけないだろう。私にはそんな気がしている。学校教育の中に畑作業をし始めているコミュニティーもあり、野菜などを作る喜びから始める作業で、若い人々の意識が大きく変わっているとの報告もある。

ロサンゼレス群の公共衛生部のの数字によると、南ロサンゼレスの人口の30%ははobeseカテゴリーの肥満で、都市部の19.1%、経済的に豊かな西部ロサンゼレスの14.1%に比べてかなり悪い。黒人やラティーノのマイノリティーは特に肥満度が高い。ラティーノの28.7%、黒人の27.7%が過度の肥満と云う数字だ。これに対する白人の過度の肥満は16.6%だという。ハリウッドではファーストフード婦負ションと云う風刺映画もでき、ラティーノがいかに搾取されているかなども社会風刺されている。驚くべき数字だが、南ロサンゼレスのレストランの73%がファーストフードというレポートもでている。豊かな西部ロサンゼレスのファーストフードレストラン数は、低いと言っても42%だそうだ。アメリカの食文化がいかにファーストフードで占められているか判る。

カリフォルニア州は、州レベルとして初めて健康に悪いとされているトランスファットの使用を禁止した先進的な州政府だ。日本でのトランスファットが悪いという意識はまだ少ないようなのでここでも、世界の潮流として何が行なわれているのか強調をしたい。アメリカから習った悪いモノをいつまでも保全する必要はない。日本の政府も国民の健康を考えているのだから、先端的な動きに強権を発動しても動くべきだろう。メーカー指導もどんどんするべきだと見ている。

ロハスのメッカと言われているボールダーでも、ファーストフードはあるが、極めて限られていることはこれまでも述べてきた。しかし、先進的な州や自治体は、ファーストフードの制限をしようということで動き始めているところにアメリカの切羽詰まった状況があると言えまいか?ファーストフードレストランの営業許可出さない市町村がボツボツ出始めている。いくつかは風光明媚なところで街の景観を崩す心配から認めていないところもあるが、肥満との関連で動き始めているところも多いのは注目に値する。ファーストフードのメニュー改善を盛り込み始めているところも出始めているので、この業態に対する社会プレッシャーは高くなることは間違いない。企業が自主的に動かないのなら、行政府が動くというパターンは望ましくない。しかし、変化が起きることだけは言える。

今後のファーストフードの展開については、この健食との絡みで大きな変化が出始めてくるだろう。その気配は既にでてきている。便利さやコスト安が問題なのではなく、健食をないがしろにして成長をしてきたファーストフード産業が新たな尺度で動かなければいけない時期が迫ってきていると云うことだ。ロハスの影響は、このようなところでも出始めているのは健全な方向転換への兆しと言えなくもない。

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