Monday, July 21, 2008

医療コスト増大の対策を考える

人が健康に生活をするためには、ある意味では外部社会のノイズを減らし、伝統に眼を向け、新しい科学の情報を厳格に選別して組み入れながら、自然の理にかなった「食」を摂るべきだと思う。きびしく、健食とは何かを自問自答をするべきだと言うのが私の考えだ。外食も楽しいし、自分が持ち合わせていない食感を使ったエスニックなものを食することも生きることに喜びを感じるためには大事なことだと思うが、人々は、私が言うところの外部社会のノイズに耳を傾け、メディアなどが作り上げる広告を含むノイズのために、誘惑され自分の「食」の柱を崩してしまって他人様が推奨する「食三昧」路線に走りがちだ。コレステロールや高血圧、肥満や運動不足は、本来、健食とは関係がないはずだ。全ての食事を健食だけにして、外食をするなと言っているのではない。ただし、大方健食に焦点を絞り込めば、生活習慣病などと云うような言葉さえ無くなるのだろう。

今日は食について述べるのではないが、ニューヨークタイムズに面白い記事が出ていたので紹介をしたい。この健康の関する動きは、何か常識を覆すような動きだが、よく考えてみるとこれまでの健康産業自体が間違った方向へ行っていたのではないかと考えさせられ、本来の姿を模索している、連邦政府、州政府や自治体の悩みを浮き彫りにしていると言えよう。もう数十年も前だが、日本の国の予算で大きな問題は3Kと言われていた時代があった:国鉄、米と健保だった。国鉄は一応は民営化されているので、除外するとして、洋の東西を関わらず、農産物の補助金と健康医療の問題は頭痛の種であることは間違いない。

健康医療費がうなぎ上りなのは、今日はその理由を詮索しないようにするが、国や自治体だけでなく、健康保険のサービスを提供している企業にも苦痛を与えている。国民にとっても、アメリカにおいては国民健康保険が無いために、所得層によっては健康保険サービスを受けられない層が増えており、社会的な不安の原因にもなっている。今年の大統領選挙においてもヒラリークリントン前候補が打ち出した国民階保険の政策提案は、アメリカ国民の強い政策要望であると見て良いだろう。

しかし、現在でも巨額の医療費予算がつぎ込まれているのにも関わらず、健康のサービスを賄えない理由とは何なのだろうかと多くの人を悩ませてきている事象の一つだ。アメリカの医療は多くの矛盾を抱えている。医学や病院は最先端レベルを行っているにもかかわらず、人々の受ける医療サービスはあまり高くない。この社会的矛盾を解決する方策の一つとして、ホームドクター、内科医、小児科医などに対して、報酬を引き上げてみようと云う実験がとり行なわれているという。一般的に考えると、財政難の時に、医師に対して報酬を引き上げるのは変な感じがするのだが、この実験を試みている人の考えは、報酬を高めることによって、まだ問題が発生する前の段階で医師たちがより丁寧な診断を行ない、患者と今以上に時間をたっぷりとかけることによって、その後の何千ドルもする高価で不要な検査料、専門家の診断や病院での治療を避けようとするものである。

全米で見ると、公的な医療保険のメディケーアや商業的な医療保険が負担するのは、診察一回につき60ドル程度の金額だそうだ。もちろん電話やインターネットでの往診は皆無に近い。現在のスタッフやインフラを維持するために(医師が加入する訴訟保険なども含めて)60ドル程度では、診察時間を縮めるしかないらしい。こんな短い時間での診察になると危険信号を見逃すことも多くあり、後で取り返しのつかない大病になるケースも多いらしい。そうなると、公的保険のメディアケーアや商業的な健康保険が支払う代価が数十倍に膨れ上がってしまう。このために州政府や自治体は、基本負担分は変えずとも、その他に患者さんの診察をさらに精度を高めるように、時間をかけてもらって診察するための補助をしている。費用が負担されるので、電子メールや電話による診察にも応じ始めてるところもあるそうだ。

保険企業も複数の州で試験的に数千人の医師と200万の患者などで運用のテストを行なっている。また、公的部門のメディケイドやメディケーアはノースカロライナ州の実験で2006年に1.62億ドルも節約を達成したという。その支出節約は、本来払ったであろう金額よりも11%もの節約と云う方かなり大きいと言わざるを得ない。

このコンセプトはブッシュ大統領の賛同するところではないらしいが、議会は大統領の拒否権を覆すだけの力を発揮して、このメディーアのパイロットプロジェクトテストのために1億ドルを供出することで可決したところだ。このプロジェクトの中には、医師がスタッフを雇い、より木目の細かい医療サポートを行なうことを認めている。まだ、実験の段階だが、かなり前向きな結果が予測されているからこそ、このような実験に予算を付け始めているのだろう。

病気の状況が相当悪化する前に発見し治療をしようという方針は、医師の資格を取る人が、高額の報酬を与えているような高度に専門的な医学治療分野でなく、よりホームドクターになるような分野の医師を育てようと云う目論見もあるらしい。つまり、医学部卒業者の7%しか行っていなかったホームドクター(平均年俸が15万ドル)なのに対して、胃腸科専門医(40万6千ドル)、心臓外科(43万3千ドル)という片寄った医師の配分を避けようというものだそうだ。アメリカの医師会数値によると、2006年における専門別の医師はホームドクターが251、000人なのに対して、専門分野を持っている医師は472、000人いるらしい。

このように医療の面で事態がかなり悪化するまで野放図にする仕組みにも大きな問題があることが判る。薬剤メーカーも、病気が相当悪化した時にはもっともっと専門的な薬が売れる訳だ。医療とは何なのだろうか、健康維持をすると云うことで、我々市民は誰を信じたら良いのか判らないときも出てくる。だら、平常から健康に気をつけるように、健食、運動、ストレスなどに大いに注意を払いたいものだ。健康三昧なんて素晴らしいではないか。三昧とは、もともと梵語で「心を一つのものに集中させて、安定した精神状態に入る宗教的な瞑想」を指しているらしい。みなが健康三昧をしたら、世界はきっと素晴らしいところになりそうだ。

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