Friday, July 04, 2008

地産地消を推進し始めたウォールマート

Cleantech GroupのDavid Ehrlich記者によると、アーカンソー州ベントンビルに本社を構える世界で最大のリテーラーであるウォールマート社は、効率的なディストリビューションセンターを有しているのにも関わらず、より各地地元の野菜や果物の比率を増やすようにコミットを始めることを発表したという。この背景には、地産地消というロハス的なコンセプトをベースにしているよりは、エネルギーコストの上昇による、ディストリビューションコストを削減することの方が実態に近いようだ。

ウォールマートは、青果物に関しては、ほぼ70%を国内の生産者から調達をしているが、その調達の方法を、より地元調達重視のパターンを強化して、今年だけでも地元ものの調達金額を400億円以上に持って行こうと考えているようだ。地元からの購入を増やすということは、当然フードマイレッジを削減することになる。そのために環境へのインパクトは削減される。アメリカの青果物は、現在のところ生産者から消費者に渡るまで平均して1500マイル(約2400キロ)輸送されている訳であり、アメリカ最大のリテーラーがコミットすることによって、環境へのインパクトの改善はかなりのものが見込めると云うもの。もちろん、集約されている調達方式を変更することによって、ウォールマートに口座を持っている生産者は増えることになり、調達業務はかなり複雑化するものが予想されるが、それだけ現在のエネルギーコストの上昇は、アメリカの商流にも大きな変革の機会を与えたことになる。グリーン運動をいくら声高らかに叫んでも、コストの上昇が引き出す変革のモチベーションの方が確実に高いようだ。

いくつかの事例を示しておこう。これまで桃はジョージアやサウスカロライナと云う主要生産州から調達していたものが、現在はすでに18州から桃を購入し始めている。規模が大きいだけに、ウォールマートが桃の調達先を拡大したことによって、ウォールマートは672,000フードマイルを節約し、112,000ガロンのディーゼル油節約に換算され、フレートと燃料削減によるコスト節約は1億4000万円にも及んだと云う。

シラントロにしても、これまでカリフォルニア州だけから調達して全米で販売していたものを、フロリダ州からも調達し始め、東海岸はフロリダから調達するようになった模様だ。この調達先をもう一カ所増やしただけで、1シーズンでシラントロだけで250,000フードマイレッジを節約したそうだ。いずれにしても、まだ、2カ所だけというのを見ると、全米で4000店舗以上を抱えるこの巨人が、改善できる余地はまだまだあると言えるだろう。

ウォールマートは、また、牛のガロンボトルのデザインなども変えている。これまでのデザインでは、輸送にはどうしても特殊なクレートが必要で、コストもかかり、無駄が多かったので、消費者へのコスト削減(10−20セント)も実現し、新しいガロンボトルを導入することにした。これも、ロジスティックスのコストを引き下げようと必至になっている、ウォールマートの大きな試みだ。メタルラックを無くすことで、同じスペースで9%以上の牛乳を余計に運べるようになった模様。



ウォールマートは液体洗剤においても、濃縮版を本格的導入することによって、無駄な輸送費の削減、パッケージのプラスチック使用量の削減、そうして梱包に使っていた箱材の削減なども達成した経緯があり、同社のコスト削減目標は、間接的ながら環境へ相当ポジティブな影響を与えているのは事実だ。

エネルギーコストの上昇は、あらゆる意味でアメリカ経済の根幹を揺さぶり始めている。安いエネルギーコストをベースに怠惰をむさぼっていたアメリカは、巨人ウォールマートの目覚めによってどのように生まれ変わっていくのか、面白い社会実験がはじまっている。

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