Friday, August 03, 2007

牧草育ちのステーキを食べよう

スーパーマーケットで売られている食品で、生産者の顔が見えるモノは少なくなった。場合によっては、皆無に近いと言って良かろう。生産効率、輸送効率、販売効率などを考え、食品の流れは消費者にとってブラックボックスに入ったも同然だ。最終的に奇麗にパッケージングされ、手頃なコストで販売されると消費者にとってもとても買い求めやすい土壌が長年築き上げられてきた。

私も10年前にアメリカに来てからよくステーキを食べてきた。一番好きなカットはリブアイ(Rib Eye)で、脂が適度にあり、ジューシーで肉質が良かったので、知人や友人を招いてはそれをバーベキューして食べてきたものだ。もちろんUSDA(米農務省)の高級グレードのものを買ってきては楽しんできたし、安心だと思って買ってきたのだ。Grain fed(トウモロコシなど雑穀の飼料で育ってきたもの)の特性は、ひときわジューシーで栄養価が高いものと考え買ってきた背景がある。しかし、先月紹介をしたマイケル・ポーラン氏のOmnivore's Dilemmaによると米国の大手の畜産業は必ずしも健全な食品を作ることに専念をしておらず、どうやって速く肉生産のサイクルを速めるのかに躍起であると云うことを読み、大地の恵みであるはずの肉についてはかなり懐疑的になった。それは豚や鶏でも同じであるらしい。

生育を速めると云うことは、多額の補助金で栽培されたトウモロコシを使い、畜舎に何千頭もの牛をかき集め、大量に餌を与えながら太らせると云うもの。肉生産のサイクルを速めるためにも、成長ホルモンを使ってきたことは良く知られている。ポーラン氏の本によれば、通常5年間かかるであろう成育をたった18ヶ月で達成させてしまうこともあるのだそうだ。運動もしていないので足腰が弱い牛は、良く足を骨折するらしい。それほど成長が急なものであり、トウモロコシは元来牛の餌でないものなので、牛の方も拒絶反応を示すことも多いらしい。つまり胃酸過多などを経験するなどなれないものを無理矢理食べさせられていることになると云うものだ。

牛舎には何千頭もの牛を飼うことで、その糞尿の量は恐ろしいものとなり、糞尿の池ができて数マイル先からでも異臭が漂うものとなるらしい。衛生上の問題も発生することは当然となり、牛が病気にならないように抗生物質を投与されることもあると云う。メタンガスの発生もあると云うことで、この糞尿の結集は、本来であれば肥料にもなりうるものが、逆に環境に悪い影響を及ぼすものにもなってしまうのは何とも恐ろしい。

牧草育ちの牛などは、ロハスの環境サイクルに適っている。雑草を食べながら、糞尿を落としてさらに雑草の成長をもたらしていく自然のサイクルだ。太陽エネルギーを雑草の緑が組み込んで成長をしていくサイクルを利用できることは素晴らしい。このニュヨークタイムズの記事では、ニュージランドやオーストラリアが畜産補助金をもらわずして、りっぱな輸出産業になった事例をしょうかいしている。

巨大牛舎でJR山手線並みにギューギュー(牛牛)詰めにされている姿と比べるとニュージランドの事例は健全な産業の事例だ。政府主導の貿易政策で決められる畜産の輸入には、消費者を念頭においていると云うよりは、政策的なプライオリティが働いている気もしないでもない。アメリカにおいてもColeman Meatなどのようにナチュラルなビーフを中心にしている健全な事業体もある。このようなところが、量産と成長剤などでコスト安にできた牛肉を生産して販売していると、消費者は何が良いのか惑わされていることにもなる。生産者の顔が見える販売をこれからどんどんと増やしていくことに努力をすることで、我々の財布の動きが経済的な力となり企業がより安全な食品作りに専念できるように強い圧力を作り上げていきたい。自分としては、ボールダーの郊外に自らの牧場をもち、牧草育ちの家畜をもっているエリオット家の牛肉だけを買うように心がけるつもりだ。自分が買うものは多少高くとも、ナチュラルなものが良いのは目に見えているからだ。

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