Friday, September 07, 2007

ウォールマートがロハス化潮流を無視できないファイエットビル市


アメリカ南部アーカンソー州の大学のある田舎町が突然にロハスの実験場的な変貌を遂げようとしている。ワシントンポスト紙が伝えるところによると世界で最大のリテーラーであるウォールマートの本社ベントビル市から約半時間のところにあるファイェットビルという静かなカレッジタウンがウォールマートが打ち出しているグリーン施策を受けて、一躍グリーン先端企業の集積基地化していると報道をしている。これまで、ウォールマートについて昨年何度か連載でブログ記事を書いたが、Green Washing(つまり本来はグリーンでないのに、あたかもグリーンであるかのようなフリをするときに使う言葉)と懐疑的な目で見られていたウォールマートが、より実質的にグリーン化し始めた結果、グリーン企業の城下町的な様相を示し始めたと云うことだ。

ウォールマートは、フォーチュン誌の売り上げベースでトップ500社の中でトップの大企業だ。一昨年は、石油価格の高騰で一時的にエクソンモービル社にトップを譲ったが、過去6年間の内5年トップを占めてきた正真正銘のアメリカの最大企業と云える。現在世界で190万人を雇用し(アメリカだけでも130万人雇用している)、アメリカ民間企業ではトップの雇用主であるだけでなく、隣接のメキシコやカナダにおいても最大級の雇用主なのだ。最新の会計年度(2007年1月末日締め)では売り上げが3450億ドル(トヨタ自動車売り上げよりも70%ほど大きいーいずれもフォーチュン誌からの数値)とその経済的な影響力は計り知れない。そのウォールマートが、社運をかけてロハス化を目指し始めていることはアメリカの市場全体を占う上で極めて重要なことだ。

もちろん、重要なのはアメリカだけでも61,000のサプライヤーを有しているその購入パワーだ。2006年の買い付け金額だけでも2000億ドルに及び、それがアメリカの就労に与える影響は300万人の仕事に相当すると云うことだから凄い。また、ウォールマートを訪れる買い物客は、全世界では毎週1億7600万人も及び、アメリカだけでも毎週1億2700万人が訪れている。アメリカの人口は3億人程度だから、約国民の42%が毎週ウォールマートを買い物のために訪れている計算になる。

その巨大ウォールマートが、エコに焦点を当て始めたから、この豊かな市場を目指して環境系、自然系、ロハス系の企業がウォールマートと云うお城の周りに集積を始めると云うのは自然かも知れない。その集積の候補地として選ばれたのは、大学町のファイェットビルと云うから、ボールダー、バークレー、アンアーバー、サンアントニオ、ポートランドなどのカレッジタウンが引き寄せたロハス系企業の傾向と重なっている。


ウォールマートの150万ドルの寄贈によって、アーカンソー大学はこの町にApplied Sustainability Centerを開設した。南部のこの保守的な町が、サステイナビリティのメッカになろうとしているのは普通のアメリカ人には、なかなか理解できないことに映るかも知れない。しかし、ハイテクのシリコンバレーなどに象徴されるように、この町をサステイナビリティのメッカにしようとの動きが出始めている。シリコンバレーに対抗してこの町では、ここをグリーンバレー(Green Valley)を呼び始めている。ファイェットビルのダン・クーディ市長はまさにここをサステイナブルムーブメントの中心地に仕立てようと考えている。

ウォールマートのあるベントンビル市やロジャー市は従来型のサプライヤーのベースとして巨大化しているが、大学町で少しはリベラルな町のファイェットビルは、サステイナブル企業の集まりとなり対照的な状況だ。ファイェットビルの市長は通勤に電気自転車を使い、家をソーラーエナージーで賄うように建て直すことを考えていると云う。町で任命された最初のサステイナブル部長の給与は、その部長が実行する省エネの成果の中から給与をもらうと云うことなど通常の市では考えられないことをし始めている。交通信号の電球もLEDに切り替えられ、そのため町の年間の電力使用の節約が5万3000ドルにもなった。

これらの動きはウォールマートの購買力のなせる技。すべての商品・サービスなどに行き渡るのには時間がかかることだろうが、ウォールマートがロハス化に着実に動き始めている証左だ。先のブログ記事はテキサス州オースティンのホールフーズがボールダーのワイルドオーツを買収完了をしたことについて書いた。今度は、ホールフーズがまだ足下にも及ばないウォールマートの大きな動きが出始めていることを紹介している。日本のロハスの動きも盛んになってきているが、このレベルの差はまさに隔絶の観がある。このロハスのエネルギー方向性は、もはや止めようもないとてつもないエネルギーに膨れ上がってきている。

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