Tuesday, July 04, 2006

OverweightとObeseに挑戦するアメリカ

今日はアメリカの独立記念日。もう少ししたらあちらこちらでパレードが始まり、昼間からはバーベキュー、夜は花火と云うことになる典型的な夏の日の光景。新聞は、この日を祝う意義の論説を掲載したりしているところは多い。ところがアメリカの急激の移民の増加で、そもそも独立革命の意味や経緯を真に理解している新移民は少なく、逆に最近では新移民の出身国の独立記念日などを祝う行事も多く見られている。それだけアメリカは多民族文化になってきていると云うことだろう。メキシコの独立記念日である5月5日はシンコ・デ・マーヨとして多くの街でアメリカの独立革命よりも大きな行事にさえなってきていると思う。アメリカの独立記念日は、バーベキューと花火の日になってしまったと懸念をする人々も多いのも、うなずける。ほとんど単一文化ところから来る小生にしては、何とも不思議で仕方ない。

アメリカが国家として直面する課題は多い。パックス・アメリカーナ(アメリカ主導の世界秩序維持)などは、国民の意識の中では強いだろうが、ドルを始めとした米国経済の相対的な地位の低下、世界各地での軍事的な介入などによる軍事的手薄感は拭えない。しかも、ブッシュ大統領の二期目になり、アメリカに対しては必ずしも友好的でない対米感の高まりなどによって、大きな岐路に立たされていることだけは間違いない。

さて、そのような外患もさることながら、アメリカの中において極めて大きな内憂は、国民の肥満化問題である。ボールダーに住んでいるとそのようなことは想像しにくいが、一歩コロラドを出てアメリカの他の州や町へいくと肥満の多い人がいるのに驚かされる。人を歩かなくさせているクルマ社会、利便性を追求したライフスタイル、ファーストフード、サッカーや野球など運動よりもゲームセンターで遊ぶ子供たち、農業補助で大量に安く作られるコーンシロップを使ったソフトドリンクががぶ飲みされる状況、それらを宣伝し、普及させる諸々のテレビコマーシャルなどが大きな問題にもなっているはずだ。病院や健康を職業としている人が大きな声で警告を出しても、駄目にしてしまう影響力の方が強い。そんなことに対抗しようとすれば、かなりの連邦、州、市レベルだけでなく、民間の諸団体も動かさないと、この肥満を助長する傾向は止められることはできないだろう。

アメリカの厚生省の一局であるCenters for Disease Control(疾病対策センター)は、アメリカ成人国民の3分の2がoverweight(肥満)、子供については34パーセントものがoverweight, 17パーセントもの子供たちがobese(超肥満)と云う数字を発表している。そのobeseと云う表現さえも、子供たちに使うのは彼らの人権蹂躙だと云う新聞記事も出るなど、この問題はかなり表面化し、連邦政府の大きなプライオリティにも位置づけられるようになっている。日本語の英語辞書で見ると、overweightもobeseも同じく肥満としか書いていない。日本人の感覚にはないレベルの肥満なのかもしれない。

禁煙運動でさえも、連邦政府はかなりサポートをしていたが、具体的な施策は地方分権のこととして、各州や市の判断に任せてきた。しかし、こと肥満と云うことになると、各州に任せてはいられないと云う姿勢をとり始めている。つまり、連邦政府が真剣に教育や指導を始めている。その背景には、肥満の人が増えることによって、アメリカでは、折角これまで医学の進歩などで勝ち取ってきた健康指数の改善が、一挙に心臓病、糖尿病それから、肥満との関連性が疑われているその他の成人病にも社会問題化するのではないかと云うことだ。

国家政策を見ていくときに、これまでは伝染病や基本的な衛生改善などが大きな比重を占めていたが、今後は、たとえ個人の選択範疇とは言え、医療問題、国家財政、国民全体の生産性などから、無視しえない状況になっていると云えよう。食の問題もあるが、運動の促進、街づくりの新たな視点、治療よりも予防と云うことで、今後のアメリカにおいては、資源政策、雇用政策、外交などと云った、従来のプライオリティの中にも、ライフスタイルを入れざるを得ない時流になってきた。

そのよう中でも、ボールダーの健康的なライフスタイルが、一つの指標になっていくことは間違いないだろう。日本などでも、ストレスの高まり、運動不足、栄養過多などから成人病が高まりつつあるといえる。これらの問題は、「即効的な」薬だけで解決できる訳ではなく、時間も努力も要る大きなライフスタイルの変化などで対応をするべき課題であろう。なるほど物質的に社会は豊かになったが、健康的にそれを楽しめるかどうか、皆で真剣に考えていきたい。肥満に挑戦をするのは、どうやらアメリカだけではなさそうだ。

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