Wednesday, July 12, 2006

GMのロハス転換が難しい理由

今朝、親しい友人と仕事の打ち合わせでコーヒーを飲んだ。打ち合わせの途中から、彼は新しいクルマを買ったことでとても自慢げに話をしていた。彼はこれまでサーブを乗っていた人だが、今度はプリウスにしたと云う。プリウスは全然広告をしていないのだとも説明してくれた。プリウスは注文しても3ヶ月待ちだったも告げて、広告なんて要らないくらい人気があるのだと言う。帰りにはクルマのいろいろな機能を、セールスマン以上にありとあらゆることを説明してくれた。小生もプリウスには試乗をしたことがあるので、分かっているつもりだったが、ニューオーナーの嬉しそうな顔を見るのが、今回は何とも云えない清々しさだった。最近はこのような人に多く会っている。GMが売れなくなっているのもうなずける。つい数年前は、プリウスでなく、大型車のRVが購入者の喜びを作っていた時代があった。豊かさの象徴だったのだ。だが、今回のようなプリウスへの心酔は、アメリカの市場は着実に変化をしていることを示している。

私はGMに14年間も奉職していたので、まだGM社には多くの仲間もいるし、トップのリックワゴナー会長を始め、知人も多い。有能なスタッフを抱えているのに、最近では、日産やルノーから助け舟を出されるところまで落ち込んでいる。日本車勢に追いつかれてきている、凌駕されると云う予測は前からあったにもかかわらず、大きな動きが取れずに、じり貧の形で経営は悪化してきている。人員削減、工場閉鎖、部品のコスト削減などを行なっているのに、市場での受け入れは良くなるどころか、アメリカの消費者に徐々にではあるが見放され始めている気がしてならない。

GMがロハス転換をこれまで推進できなかった理由は、トップが危機意識を本気で全米自動車労組(UAW)に訴えかけられなかったからだと思う。しかも、労組だけでなく、多くの販売代理店にも、その危機意識を伝えられきれなかった問題も大きい。GMの市場シェアーが下がっているときに、すべての自動車ブランド、キャディラック、シボレー、ポンティアックなどのディーラーに特性のあるクルマをあげることなく、どれもにたようなクルマを商品企画した罪も大きい。しかも、小型車などの開発に至っては、戦略的な意味でのビジョンがなく、ここへ来てマーケットがついてきていない大きな問題に直面をしている。小型車や燃費の良いクルマは段々と出し始めているのだが、マーケットが遠く離れてしまったのだ。今更、多くの宣伝をしても、企業イメージが燃費浪費型、故障が多い、などのイメージで見られ、それを払拭することが大変なのだと思う。サターンやポンティアックで、スポーティーなコンバーチブルを出したとしても、それらのマーケットはそれほど大きくなく、堅実的に売れる小型車を欠いていることで、イメージモデルが少し売れたところで、経営の改善まで持っていくことは難しい。

ニュースによると、GMは近い内に新規ハイブリッド車を投入し始めると云う。しかも、投入される分野は利益率の大きい大型RV部門だそうだ。私の大好きなフォーブス誌の長老のジェリー・フリント記者は、アメリカ車はかなり回復をするきっかけをつかみそうだと云うニュアンスで記事を書いているが、私にはそうは思えない。もちろん、低落ぶりは少し減少するだろうが、それでGMは危機脱出するとは到底思えない。問題は大型車に集中をしているからであり、入門編のクルマなどには十分に力を入れていないからだ。トヨタはプリウスで儲けられるところまでいったかどうか知らないが、それをベースに次のステップアップをどんどんと展開し始めた。GMのように上のカテゴリーで儲けられるようになったとしても、底辺がついてこなかったら、近々市場は枯れてきてしまうだろう。

GMの最大の問題は、もちろん短期的には設備稼働率や製造コストの削減だろう。設備を減らしている中で、稼働率が一時的に高まったとしても、長期的に見た場合、市場へ打ち出すビジョンが明確でないと、ゼネラル・モーターズの名前のごとく、何でもゼネラルになってしまいフォーカスが無くなくなり、長期にはさらに市場占有率はさらに下がるに違いない。もし、GMが、サステイナブルな事業モデルを全面的に押し出し、それを徹底し始めれば、労働組合だろうとディーラー網だろうと、個別には反対をすることがあっても、マネジメントの戦略付けには賛成をするだろう。

ロハスの中で、クルマは大きな象徴的意味を持ち始めている。何を乗っているのかが、その人の知性や人間性などにもかかわってきている気がしてならない。まだ主流ではないが無視できない存在になっている。小型車と大型車と云う区分でなく、サステイナブルかそうでないか、人のモノゴトを見る基軸は変わってきている。その点、日産やルノーを率いてくるゴーンさんも見抜いているのだろうか?アメリカでの日産の販売も下がってきていると云う。私には、ロハス基軸がいつの間にか、アメリカ産業界の変化に、大きな役割を、果たし始めていると思えてならない。

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