Thursday, August 07, 2008

大手スーパー、セーフウェーのオーガニック戦略

アメリカ経済の減速とインフレの傾向が相まって、アメリカの消費者は苦労し始めている。経済が順調に発展しているときとは違い、消費者は中身を落とさないで、必需品や食品の買い物の節約に必死だ。そのことを非常に端的に現しているのが、スーパーマーケットのプライベートブランドへのシフトと急成長だ。

プライベートブランドというと、どうしても昔は自社ブランドで劣悪なデザインのパッケージングを行い、低価格で販売していた時代があった。そのためにプライベートブランドと聞くと、少し懐疑的になることが多かったのも事実。しかし、アメリカでは、各大手スーパーは、自社ブランドのイメージ発揚に躍起だ。とくにメッセージ性を高め、トップブランド商品の品質に近づけるように努力してきた結果だ。ネーミングもしっかりと定め、パッケージングデザインも光り始めている。そのために、アメリカのスーパーマーケットチェーンでプライベートブランドを提供しているところは全て大成功をしているのだ。景気が悪いと入っても、消費者が必需品の買い物を控えることができないからだ。そのために、トップブランドのものよりは、価格がよりリーズナブルなプライベート品に流れているようだ。スーパーマーケットの大手である、ウォールマート、クローガー、スーパーバリュー、セーフウェーなどは、プライベートブランド品の売り上げ増で嬉しい悲鳴を上げている。

このプライベートブランドの商品が、外見だけでなく、中身的にも改善してきたことの裏付けは、限られた家計費の人だけでなく、どちらかと言うと高額所得者層の中でも受け入れられ始めていることからも判る。当然、品質の大幅な改善があったからこそできたことだ。これまではドライグッズ、加工品などが主たるものだったが、最近では、乳製品、肉類、青果物なども対象になるなど、プライベートブランドの範囲が広まってきている。しかも、その中でも、大きな発展の基軸になっているのがナチュラルとオーガニック製品のプライベートブランド化だ。


今日ここで紹介するのは、アメリカスーパーマーケット、ドラッグストア業態の中でランキング4位のセーフウェー社は(純スーパーではクローガーに次ぐ2位、ただし、王者ウォールマートについては別カテゴリーに入っているので簡単に比べられない)、自社のO Organicsの事業があまりにも成功をしたので、自社ブランド商品を他のリテーラーにも販売して行くことを発表したくらいだ。O Organicsを立ち上げてまだ2年間しか時間が経過していないので、その急成長ぶりがうかがえるというもの。その他各社のオーガニックプライベートブランドの動向はまた報告するとしても、自社の販売網を超えたところまで売り始めているセーフウェーのオーガニック商品戦略は大いに注目するに値する。ナショナルブランドに影響を与えない訳はなく、今後のポジショニングに変化が出るのは必至だろう。

オーガニック商品は、とかくアメリカでは、特別扱いを得て、高額所得者にしか届かない価格で売られていることが多かった。しかし、大手スーパーが、徐々にオーガニックの導入と、さらにプライベートブランドでのオーガニック商品の投入によって、オーガニックはより一般大衆の手の届く範囲に入ってきた。セーフウェーは、それをオーガニックの民主化と位置づけているようだ。

セーフウェーが2005年に発売し始めた、O Organics はまさに破竹の勢いで伸び始めている。2005年の初年度だけで1億5千万ドルの売り上げを自社の1700強の店舗で達成した。現在は30カテゴリーのラインで300のSKUを持っている。2008年には売り上げが4億ドルになるだろうと見込まれている。また、もう一つのラインであるEating Right ブランド商品だけで2億ドルの売り上げを見込んでいる。このブランドは高ファイバー商品や健康に視点をおいた商品戦略なのだ。

アメリカの景気が、現在のところ芳しくないが、それでも、このオーガニックや健康に配慮したプライベートブランドは、後退する気配を見せていない。こうやって見ると、トップのチャートでホールフーズの利益率がマイナスとなり苦戦を強いられていることが判る。プレミアムの販売だけでは、景気後退の時にオーガニックの販売が壁に突き当たるのは証明されているかのようだ。オーガニックを欲しがっても、高価格帯なら、客離れが進むというものであり、その中での、セーフウェーのO Organicsの販売増はうなずけるというもの。ナチュルとオーガニック業界のリーダー的な存在である、ホールフーズが、手をこまねいている訳ではないが、戦略の転換が求められてくることになろう。ここ一年の株価の下落傾向を見てもホールフーズのおかれている市場環境がいかに難しいものか理解できるものだ。二桁の成長率を経験していたホールフーズは、店舗展開のスピードを落とさざるを得ない状況にも追い込まれている。

O Organicsの顧客対象は新生児の母親と言うことらしい。新生児の母親たちは、よりクリーンで、より健康な食品を求めているからだそうだ。利便性もプレミアムの条件に入ることから、セーフウェーのO Organicsブランドは、いろいろなセグメントカテゴリーをまたいで設定されている。ミルクやバターだったり、コーヒーも含めたり、冷凍食品などもある。しかも純正な食品だけでなく、スナック類にも手を出している。その事例がポップコーンだったり、チップスとサルサだったり、アイスクリームなどもある。O Organicsのブランドを形成しているのは Lucerne Foods, Schreiber Foods, Ready Pac Produce, Overhill Farmsなどが調達したり、加工したりした商品群だ。これらの会社はBetter Living Brands Allianceと言うグループを形成して、セーフウェーのO Organicsをサポートしている。

アメリカで、オーガニック商品需要は供給力を超えて伸びている。オーガニックの生産認定を受けるのに、切り替えに時間がかかるからだ。特に農産物の場合は、コンベンショナルな農場からオーガニックへの転換に時間がかかるからだ。だから、オーガニックの価格帯に大きなプレミアムがついてしまっている。景気後退の時期にも重なり、この産業は大きな変革の時期に直面している。流れはよりオーガニックと云うことで予測できるとしても、その中でのプレイヤーの動きがどうなるのか、予断を許さない。ロハスの発展期の悩みであることだけは言えるだろう。

1 comment:

Alex Yoshida said...

私の日本のクライアント(北海道全道で約100店舗を展開するスーパー)から質問があったので、井沢さんのセーフウェー・オーガニックス戦略の記事を紹介させていただきました。

Health MagazineのAmerica's Healthiest Grocery Storesの記事は御覧になりましたか?

http://living.health.com/2008/10/23/americas-healthiest-grocery-stores/

セーフウェイをはじめ、各スーパーともNatural Grocery Storesを追従していますね。テーブルメサ・キングスーパー改装に見られるクローガーの戦略も、全米展開されるのでしょうか。(クローガーは南カリフォルニアではラルフを買収したんですね。)

日本の地域5スーパー(北海道、東京、大阪、神戸、沖縄、各スーパーとも50-170店舗)のウェブ・データベース システム(対メーカー・卸向け B2B スーパーのPOS情報開示システム)を開発・メインテしていますが、これからは日本のスーパーではロハス戦略はどうなるのでしょうかね?まだ専門店段階だけでしょうか?

ボルダーには1981-1985年、そして、1999年から今まで住んでいますが、ボルダーがロハスの聖地だということは、初めて知りました。そこで、アルファルファ・マーケットが出来る前のPearl Street Market(Pearl Street Mallではありません。On Pearl Stの北側で、13thの東にありました。)についてインターネットを検索しましたが、何も記事が出てこなかったのが残念。80年代初めは、そこで日本食食材を買ったり、自然に優しい台所洗剤を買ったりしていましたが。
Pearl Street Marketは、そのうちAlfalfaと合併したらしいですが。