Wednesday, December 27, 2006

矛盾だらけのアメリカの燃費議論(2)

アメリカではこれまで新車を売る場合、そのモデルの燃費を表示する義務がある。しかし、その表示された燃費と云うのは、あまりにも非現実的な数字であったため非難の対象となっていた。そのために環境保護庁(EPA)は、消費者が新車を購入するときにより現実的な基準ができるように今月にその策定方法を変えた。この変更が実施されるのは2008年モデルからとなるので、来年の秋からの実施となる。

このこと自体何もおかしいことではない。消費者のために計算基準をきっちりしていることは大いに歓迎なことと云えよう。しかし、この燃費の策定情報で一番大きな影響を受けるのはハイブリッド車になる模様と云うのには少し懸念が生じた。ハイブリッドの市内燃費がガロンあたり30%も落ちると云うのだから何か作為的なことを感じさせる。

もちろん、影響を受けるのは、ハイブリッドだけでないことははっきりしている。アメリカ人の運転のモードの反映を計算に入れ込むと云うことは大事なことには違いない。急加速、急停車、エアコンの使用など、アメリカ人ドライバーの特性をきちんと入れ込んでおくことがより精度の高い計算式になることは云うまでもない。しかも、今までは燃費表示を求められていなかったトラック(日本的に云ったら大型RVとでも云うのだろうか)も燃費表示の対象に入り始める。実際の施行はずっと先のことだが、視界に入ってきたことはアメリカが大型RVの野放図な売り上げについては何か対策をとらないといけないことを認識しているとも言える。

アメリカの燃費の表示義務は消費者教育のためだけではなく、70年代の2回のオイルショック前後してのアメリカのエネルギー政策の中で、中東依存を下げるために行われた政治的、国家政策的背景もある。連邦政府は全米ハイウェー交通安全行政庁(NHTSA)に対して、自動車メーカーのフリート平均燃費(CAFE=Corporate Average Fuel Economy)を規制する方向でも動いてきた。そのときに決まったのはメーカーのフリート燃費平均が2007年値で乗用車でガロン当り27.5マイル、トラック(ピックアップトラック、バン、RV)がガロン当り22.2マイルと云うことになっている。この水準を超えるメーカーは違反金を徴収される訳だが、燃費表示の計算式を変更したにもかかわらず、この部分だけは旧来通りの計算式で許すことになったようだ。もちろん、ビッグスリーの経営環境からすると、対応できないと云う政治的な妥協もされたのだろう。

この問題を掘り下げていくと、まだまだ多くの矛盾が出てくる。民主党が議会の両院の過半数を占めたが、これとて、選挙区の動向などで政党枠で収まらない問題になっている。アメリカのエネルギー政策は、中東依存からの脱却を狙っているが、議論が良く詰められているとは言い難い。そのような中で、ロハス的な社会を作ると云うもくろみはまだ、現実味を帯びていない。ロハス的な社会を作ると云うことは、この政治的な壁を突き破るものでなければならないだろう。国民一人一人の意識を高め、民意で変えていくしか難しいのかも知れない。

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