Thursday, December 14, 2006

不法移民とロハスの問題

2006年11月に行われた議会の中間選挙の一つの大きな焦点は不法移民対策だ。選挙直前に、不法移民の問題で嫌気さしている選挙民対策として、ブッシュ政権は、アメリカとメキシコの国境地帯に壁を作ることを法制化してしまった。建設はこれからだが、まさに万里の長城並みの大きな事業になりそうだ。そんな壁を作ったところで低賃金労働者を求める市場があれば、それに向かってメキシコ人の不法移民は続くだろう。今回のような小手先の政策でこの問題は解決し得ないだろう。問題の根は深く、アメリカとメキシコの相互依存の経済は、かなり深入りしてしまっている。

アメリカにおける不法移民の数はもちろん定かではないが、推定800万から900万人以上いると云われている。その多くはヒスパニック系の人であり、毎年50万人以上増え続けていると云う。数がまだ限定的だった時は、受け入れる余裕はあったが、ここへ来て、季節的な存在からどんどんとアメリカに定着し始めているので、色々な社会費用がかさみ始めているようだ。しかも、不法滞在であるだけに、税金を払っていなかったり、社会保障の積み立てもしていなかったりするにもかかわらず、社会へ負担になり始めている。特に学校や、病院などの公的資金の負担が高まり、税金の貢献が無いのに、社会保障関係の支出が増え続けていることが、アメリカ人の癇にさわり始めた原因。

ヒスパニックやラティノ層の政治への参画は増えているのだが、低賃金に魅力を感じていたアメリカ人が、間接的に公共の費用支出が高まり増税をしなければいけなくなると、一挙に不満が高まってくる。似たようなことは北欧でもあると聞いているが、客人の線を越えてきてしまうと受け入れ側の心情が急激に悪くなっていることは間違いない。メキシコとの国境に接しているテキサス選出のブッシュ大統領が、仲の良かったメキシコのフォックス元大統領の関係があるにもかかわらず、間に壁を作ることを決意したことにも強く現れてきている。

今週の出来事としては、アメリカの国土防衛省(Department of Homeland Security)の移民取締り部隊が、急遽アメリカの食肉加工の企業に押し入って、偽の身分証明書などで仕事をしていた多くの労働者を取り調べのため、あるいは強制送還のために、身柄を拘束した。今回の強制捜査は、アメリカにいる多くの不法労働者が、偽の身分証明だけでなく、他人の身分を偽って仕事していたことに対して、最近問題になっているID Theftの問題から強制捜査をしたとしている。身柄拘束をされたヒトたちの数が多いことがニュースで大きく取り上げられている。しかも、今回の問題は、不法移民を雇っていた食肉加工企業に問題を持っていくことをせずに、ID theftをしたと云うことでメキシコの不法移民だけに法の取締りの矛先が向かったことになる。

アメリカの有機農業などでは、多くのメキシコ人が農作業をしている。厳しく、賃金の少ない手作業の多い分野だけに一般のアメリカ人は扱いたくない仕事の分野だ。不法移民を野放しにすることは当然よくないことだが、両国間の経済依存関係が強くなっているだけに問題は簡単に解決しそうにない。有機産品の需要が高まっているおり、このように生産者側を助ける人員が、身分不安定な状況と云うのは、アメリカのナチュラル、オーガニック産業に大きな問題をもたらすことになるだろう。NAFTAという北米自由貿易体制ができて何年もなるが、それが真剣に検討をされ、賢明な対策を立てられない限り、急場しのぎ、問題先送りの状況は片付かないだろう。ナチュラル・オーガニックの一消費者として気なるところだ。壁作りはロハス的ではない気がする。

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