Saturday, September 09, 2006
変わるアメリカのクルマ文化
70年代の2回のオイルショック後、一時アメリカは小型車開発に力を入れた時期があった。80年代の半ば頃にキャディラックの出来の悪いシマロンなどの小型車などを出したときがそのころだ。その当時の日本やアジア中心国からの競争で、アメリカは相当苦労していた時代だ。議会はいろいろな反日規制法案をちらつかせながら、日本に政治的に圧力をかけ、日本のメーカーの対米進出を促す結果となった。アメリカは日本の鉄鋼、テレビ、半導体、クルマなどで相当叩かれ、日本のバブル絶好調のときだ。日本の企業のアメリカ企業を買収したりしたのもこのころだった。しかし、日本のバブルがはじけ、アメリカ自身の経済再生が行なわれた段階では、今度はアメリカが、長期間にわたって経済的に潤い始めるようになる。アメリカの小型車開発は徐々に姿を消し、海外メーカーのOEMで済ませるようになってしまい、自らは大型、多目的、安全、居住空間、(ごく最近までは)7人乗りと云う大型車全盛を思わせる時代が到来をした。小型車は売れなくとも利益率の高い大型車が売れていたために、アメリカは下からの攻撃に注意を向けなくなり、油断をした。
しかし、日本が一時的に経済的に停滞し、潜んでいる間でも、日本に変わる世界の工場として中国などが出現をした。また、これまでは経済的にテークオフできないでいたインドなどもソフトウェアやシステムと云う点から力をつけ始め、無視できない経済大国になってきている。その経済力は、当然消費市場としても大きな力をつけ始め、世界の石油需給動向でさえ大きく変わってきた。これまで、どの先進国の中で最も相対的に安いエネルギーコストを享受してきたアメリカは、省エネを怠り、世界人口の5%が、世界の二酸化炭素排出の25%と云うアンバランスを生み出す結果となった。これを急激に変えることはライフスタイルを大きく変えざるを得ず、アメリカのエネルギインフラの変更苦悩は始まっている。
アメリカのビッグ3は、高ガソリン価格により、はじめて自らの消費浪費姿勢の見直しを迫られている。高利益率の大型車重視政策が突然に売れなくなり、昨年は工場稼働率維持のためにビッグ3は、従業員価格で売ると云うすごい値引き作戦で市場回復などを達成して乗り切ろうとしたが、結果的には大変な経営負担になってしまい、今は身動きとれない感じだ。今秋にブッシュ大統領がデトロイトに赴いたのにも関わらず、フォード会長に面談せずに、面談は11月の中間選挙後に延期と云うことで逃げられてしまった。ブッシュ大統領がデトロイトに行ったにもかかわらず、GMのワゴナー会長にも面談せず、フォード会長をも避けたことの意味は大きい。
これに前後して、トヨタ自動車がミシガン州のアンアーバー南に追加的な研究施設投資を行なうと発表している。トヨタ自動車も、最量販車のカムリにも2007モデルからハイブリッド投入。本田技研は、この春に近々に6番目の北米での工場を建設する旨発表している。その工場は、ハイブリッド専用工場になることが見込まれているようだ。
フォードやGMはエタノール車の大幅導入、新規ハイブリッドの投入、そうして、消費者を引き戻すためにクルマの保証期間を延長する方針を打ち出したところ。フォードは以前に買収していた欧州の高級ブランドを手放す噂も流れるなど、体制を回復するのに躍起だ。フォード会長はCEO職を、ボーイング社からスカウトしてきた人に移譲している。
報道によると、メキシコ湾岸に新規に油田が発見され、その確認埋蔵量だけ見ても、現行のアメリカの石油埋蔵量を50%近く引き上げるものだと云う。しかし、この油田が開発され、石油が掘削され始めるのはまだまだ先のことであり、その間に、中国、インド、東ヨーロッパなどの自動車市場の発展で石油事情がさらに逼迫することも予想されよう。アメリカの自動車メーカーは、資金も厳しくなり、商品群的に市場が求めるものを十分に持っていないこと、中古車価格維持を怠ってきたことから、急激に売り上げを高めることは考えにくい。かなり辛いところにあるのだ。
日本の自動車メーカーあるいは韓国自動車メーカーの躍進により、前と比べて大きく変わった点は、燃費と云う基準がクルマを見る上で重要な指標になってきていることだ。クルマに頼るライフスタイルそのものが、ガソリンの高価格が定着していくだろうと云う考えと、地球温暖化などが是正されなければいけないと云うグリーンの勢いが増してきていると思えてならない。大型車に乗っている人は、ガソリンスタンドで、今までは成功した富の証のように思っていたクルマだったものが、ガス・ガズラーの象徴と見られ、気まずい思いをしていることだろう。最も一部の金持ちは、そんなことを意識していないだろうが、社会の勢いとしては、何が善で何が悪かの判断の尺度は少しずつ変わってきていると思えてならない。ボールダーにおいて小型車推進プログラムが検討されていることをすでに書いた。このロハスの街がどのようなアクションを続けて出してくるかは今後の楽しみの一つだ。他のアメリカの街に比べてロハス度が高いだけに、面白い変化になることだけは違いないだろう。
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