アメリカのナチュラル市場は、元々はヒッピー運動や地元のファーマーズマーケットから生じたものなので、高級イメージではなかったと云って良い。暗くて何だか薄汚いものをまとめあげて高級志向に持って行ったのがナチュラルマーケットナンバーワンのホールフーズマーケットだ。写真のホールフーズは今年の4月にニューヨークに行った時に撮影したものだが、ホールフーズと言えば、日本のハイエンドの紀ノ国屋、明治屋などに近い雰囲気のマーケットポジションであり、立場が強固なものと思われてきた。特に、ナチュラル、オーガニックの成長が現在でも右肩上がりの状況なので、ホールフーズのマーケットリーダー的なポジションは確固たるものになるだろうと彼ら自身も見ていた。
ホールフーズはとてもきれいなところだが、ハイエンドへ行ってしまった観があるので、一部では気取り屋さんのスノッビーなイメージでも受け取られている。裕福でないナチュラルフーズ愛好家の間では、ホールフーズではなく、ホールペイチェックなどと揶揄されている。ホールペイチェックの意味するところは、給与を全部巻き上げてしまうほど価格が高いというものだ。
しかし、ホールフーズと云えども、高級志向で安泰しては居られない状況になってきているのも事実。市場はまだ、オーガニック食品比率は全食品の中では3.5%くらいだと見られているが、その伸び率は眼を見張るものがあり、その他大手のスーパーが見逃している訳ではない。しかも、ホールフーズがはじまった原点のようなところを狙っているスーパーなどもあり、王者の地位は必ずしも以前のように堅固ではなくなってきている。
ボールダーにおいて、元々アルファルファやワイルドオーツの創始者だったギリランド氏が、サンフラワーマーケットを作り、舞い戻ってきて、real food,,,, silly prices つまり「ホンモノの食品をアホ臭い値段で」と云う単刀直入なスローガンで殴り込みをかけてきているからだ。しかも、その他のマーケットもそれぞれにアグレッシブなアプローチでナチュラルやオーガニックを取り扱い始めている。そうなると、ホールペイチェックなどとあまり嬉しくない肩書きなどはもらいたくないと云うのが正直なところだろう。
このような激戦化しているナチュラルマーケット市場と、最近のエネルギー価格の上昇に伴う食品インフレにより、ホールフーズは対応策を余儀なくさせられてきた。その結果、これまで、マーケティングやチラシをやって来なかったホールフーズも次第に通常のスーパーに類したマーケティング策を打ち出すようになってきている。Real Dealと命名されたホールフーズのキャンペーンはディスカウント、クーポン、やりくりなどの提案、低予算でできるレシピーやウェブ上の消費者とのインタラクティブな活動まで広い分野を含むものになった。
世界的で記録的な食品インフレに直面した消費者が、引き続きナチュラルフーズを買い求め続けられることを前提にしたとプログラムだとホールフーズ側は言う。家計にいかに負担を少なくして良いものを買い続けられるのかと云う側面を打ち出してウェブで多くのプログラムを展開し始めている。
このプログラムの中核になるのが、"The Real Deal"といわれるものであり、28ページにもわたる消費者向けのバリュー(買い得品)ガイドになっている。また、これまでになかったことにナチュラル産業のクーポン販促企業の最大手の一つであるMambo Sprouts.com社と連動をしてクーポンなどを消費者に手渡し始めている。これもバリューガイドに掲載するなどもしている。
Real Dealの一環として、さらに絶対お買い得商品(The Real Steal)と云うカテゴリーの赤札商品を紹介することも狙っている。Real Steal(値段が安すぎるので、盗み同然と云う意味合いだ)に含まれるものとして、ゴールデンパインアップルが2ドル99セント、養殖でない南米パタゴニア産のホタテ(スキャロップ)がポンドあたり6ドル99セントのような事例だと発表している。
ホールフーズの経営者にとって厳しい状況になってきているが、消費者にとってナチュラルフーズがより身近なものになって行くプロセスと考えれば、目出たいことだ。特にボールダーでの激戦が消費者へのプラスになっていることは日頃から買い物をしている筆者にとっても嬉しいことだ。
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