Monday, July 07, 2008

肥満とダイエットのイタチごっこ

一昔は、少し太り気味の人に対して貫禄が出ましたねとか言ったものだ。現在でも、一部の発展途上国では太っていることすなわち、裕福ということと結びつけられているところもあるようだ。しかし、医療の進歩や科学の発展で、人間は、少しやせ気味の方が長生きできることが研究の結果判ってきている。なぜそうなのか、と云ったことをここで書くつもりは無いが、満腹というのは、いろいろな意味で身体に余計な負担をかけることだけは間違いなさそうだ。

これもかなり昔に読んだ本に書いてあったが、人間にはいくつかの基本的な欲があるが、大体が満たされることは少ないと書いたものだった。それらの欲を羅列してみると、金銭欲、出世欲、政治欲、睡眠欲、性欲、名誉欲などに混じって食欲があった。その著者が書いていたのは、欲が満たされない場合、人間はストレスを持ち続けると云うものだったが、食欲を除くその他の欲は、多くの人間にとってなかなか満たされないものが多く、社会的ストレスが高いと云うものだった。唯一、食欲は簡単に満たされるものなので、ストレスが高まったりするときは、人間は満足感を味わうために、食欲を満たすのだという説だった。面白い論法に思えたが、アメリカの現在の肥満については、こんな議論で説明できないほど国民の肥満度は増え続けている。

CalorieLab社が毎年まとめている、アメリカ各州の肥満度地図統計が本日発表された。またしても、アメリカの各州は、首都ワシントンDCを除き、全ての州で肥満度の比率が増えていると言う。私の住んでいるコロラドは、さすがボールダーの所在州でもあり、肥満度は一番低い州となっているのが眼につくが、それにしても、これは単なる少しOverweightウェートオーバーの肥満ではなく、極度に肥満というObeseカテゴリーの数字を表しており、健康に良い指標であるはずが無い。子供なども、BMIが高まっているので、昔「成人病」と言っていたものを今では「生活習慣病」と云わざるを得なくなってきている。まったく困った事象だ。

アメリカの約66%が太り気味からObeseと云う分類もされるようになっており、国民のうち3人に1人くらいが何らかのダイエットを試みていると云う。しかも、そのダイエット食に支出されている金額が、市場調査会社の数字によると550億ドルにも達すると云う。しかも、この市場は、毎年3−4%伸びている高度成長市場ということである。この市場の大きさの凄さを見る尺度として、何とダイエット世界食品市場の約70%がアメリカの市場なのだと言われている。

あまり数字を羅列したたくは無いが、アメリカの食品の本質のどこかが間違っている気がする。本来の「食」の基本がずれているとしか言いようがない。アメリカは便利、標準やスピーディーということを念頭に入れて、食品のブランド化が凄い勢いで進められてきた。特に軽食やフランチャイズの発展を見ていくと、アメリカに敵うところは世界でない気もする。それらの「食」文化の中に欠点が出てきていることが、徐々に判ってきているが、軌道変化にはまだ時間がかかりそうだ。

一方では太らせて、もう一方ではやせるためのビジネスを展開。そのような食品業界の画策、策謀がなされているとは思わないが、翻弄されているのは一般消費者ということだけは間違いない。食べるという基本的な行動を、現在ではメーカーやメディアの広告で振り回され、本来自分にとって何が良いのかも判断できなくなっているというのが、現実だろう。アメリカでは、多くの識者が、食べることの必然性、健康との関わり合いなどについて、多くの優れた書物を著している。しかし、実体経済は、売り上げを増やし、経営基盤を強くするということで、身体に必ずしも良くないものまでもどんどんと押し付けてくる。広告が持つインパクトは、大人だけでなく、多くの子供や幼児にもすこぶる大きい。日本でもアメリカ流のファーストフードの定着化は驚くべきものであり、健康要素よりも利益要素を追求するようだったら、日本の肥満は、政府の盛んなメタボリック対策事業や広報活動にも関わらず、間違った方向に移っていくだろうと危惧している。

日本におけるロハスの活動が全てとは言わないが、正しい「食」の推進との食に関わる基盤整備を行なっていく上でとてもロハス活動は重要な役割を果たしていくことにはなりそうだ。メーカーの都合の良いロハスではなく、実際に自分の生活環境、食事環境に適った視点でものごとを見ていかないと、日本もアメリカの追随をすることになりかねないので注意が必要だ。健康に関わる自分のこだわりを見出そう。

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