戦前まではほぼ一般的には有機農法だったものが、アメリカが押し付けて行った「科学的」農法信奉のためにここ数十年、日本の良き循環型農法伝統が忘れ去られ、日本の農土は薬漬けの土になってしまった。土本来が持っている、微生物群の循環型農法が軽視され、無菌でしかも「薬依存」農法が長いこと定着してしまった。近年、トイレの水洗化とともに、昔ながらの汲取式を知らない層の時代になってしまったが、その過程で、こと農業については土の持っている魔力が、半減してしまうような世の中になってしまった。青果物などは結果は見た目は良いが、栄養価が下がったり、場合によっては、残存農薬などがあるような農産物が増えてしまい、人間が長い期間にわたって築き上げていた土壌菌などに関する叡智が突然に消え失せてしまうようなことになった。農作物は、味がまずくなり、場合によっては残存農薬などによって、食べる人にとってアレルギー反応を引き起こさせるような事態にまでなっている。加工食品なども添加物が多くなっているので、医食同源というコトバが、まるで矛盾するかのような時代だともいえる。飽食の中にあって、抵抗力の下がって行く身体は、もはや何のために食べているのか、単に腹を満たすためなのかと思わせるような現象になっている。実に困ったことだ。
土壌菌と言っても、現在の科学でさえ解き明かせない数多くの細菌群がある。それらの集合体としての共存バランスがあってこそ、健全な作物が出来ていたものが、サプリメントのビタミンを飲ませて、健康に良いだろうというくらいの安楽な気持ちで化学肥料を撒いてきたのが最近までの農業だ。それだけでなく、除草剤、殺虫剤なども撒いてきたものだから、畑や田んぼから、多くの微生物、虫や小動物が居なくなってしまう恐ろしい状況だ。
もともと看護士をされていた富山の鈴木伸子さんは、看護をしている人たちの健康状況を見て、どうも彼らの不健康は「食」に問題があるのではないかと疑いはじめたのが、もうかなり前のことだった。ふとしたことから長崎で伝染病などを含む臨床医学などを勉学してきた永田英基さんと巡り合う。鈴木さんの観察を述べると、永田さんはバランスのある細菌の欠如が成せる仕業だろうと述べたと云う。こうして平常でバランスの取れた土壌菌を畑や田んぼに入れたりしたら良いのではないかと判断をするようになる。富山県の立山連峰の山林に入り、土壌菌採集を始め、それを培養しながら、おからなどと混ぜ合わせて肥料は飼料を作りはじめた。土壌菌などの研究にも力が入り、英国のチャールズ皇太子が率いる国際的な細菌学の組織にも発見された新種の細菌を6ほど登録するなど、富山の小さな企業が、日本の大学や研究者を驚かせるようなレベルまで持って行った。
小生、鈴木さん、永田さん
世界的にも乳酸菌などへの関心は高いが、永田さんは乳酸菌は熱に弱く、単独ではあまり力にならないと話してくれた。それよりも、細菌のコロニー、つまり集団でバランスを保たせることが、土にとっても、胃腸に入った段階での消化においても効果がいっぱい出ることを確信して、多くの新規商品の開発、特許申請などとパワフルな活動を展開してきた。最近では、多くの農家でも関心が持たれはじめており、しかも動物の糞尿処理などへの活用などで、韓国や中国などからも引き合いが来ていると云う。アメリカなども大きな市場があるところであり、鈴木さん(社長さん)、そうして永田さん(技術担当)も心は、すでに国内だけでなく視野は海外まで入ってきているようだ。
土がイキイキしていることで、作物が育ち、おいしくなる。土がイキイキすると云うことは、科学的栄養剤がバラまかれていることではなく、少し分かりにくいことだが、微生物の小さなコスモス(小宇宙)が出来上がることによって、微生物が食べ合ったり、彼らの小さなレベルで糞尿を出したり、死んだり、酵素を出したりしていることが出来るからこそ栄養価の高い土地になって行くのである。私はそのような説明を受けた。鈴木さんの会社の名前は、スズキファームだ。現在、北は北海道から南は沖縄まで有機肥料を納めている。しかも、スズキファームの飼料肥料は、土壌菌やアミノ酸がいっぱいの優れものなのだ。同じ土壌菌を使い、人間様も飲める腸内細菌としてのサプリメントも出されている。このトヤマ立山連峰から取れた土壌菌をトヤマNB菌と称している。私もここ二週間ぐらい飲んでいるが、胃腸の調子とともに、気持ちがよいほど元気になってしまう。私の腸内細菌が元気に消化を代行してくれ、エネルギー吸収を助けてくれているからだろう。
佐々木淳さん
今回の岐阜や富山を案内してくれたのは、東京のIT実業家の佐々木淳社長(国立ベースにシーンズという会社を経営)。名古屋空港まで迎えに来て下さり、日本の心臓部を彼のクルマで案内をしてもらった。私は今回お目にかかった面々をボールダーに招待をして、アメリカでも人暴れがしてみたくなった。何が出来るのだろうかと考えるだけで気持ちがワクワクしてくる。今回の出張は、明日からまた別の大手メーカーとの面談を控えているが、楽しいことが多い。このような有機農法は進んでいるので、サステイナブルな農法をどのように進めていくかも楽しみだ。
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