Monday, October 26, 2009

Agriburbiaという新語

ボールダーにいると、ノーベル賞物理学者、宇宙飛行士、世界的な音楽家、ベンチャー投資家、思想家などがあまりにも多いので、小都市に住んでいる気がしない。レストランの格も全米で屈指のところが多くある。これだけの高等教育を受けた人の多様性を持つコミュニティもそれ程多くないだろう。白人系の人口比率は多いが、それでも、世界各地からの転入組みも多く、小生のような日本人が住んでいても、肩身の狭い思いをすることはない。この地には雑多な文化的多様性を受け入れる土壌がある。

この街には裕福層は多く、キャニョン街などでは5億円以上のマンションが売られている。ニューヨークであるまいし、何でこのような値段が設定できるのか不思議でならないが、それだけここの不動産価値は高い。確かに現在の景気では、さすがに最上級のマンションなどは販売に苦労をしているらしいが、そもそも、その値段で今売れなくとも、街がアメリカでも相当な人気なので他州の金持ち層が移ってくることで解決しそうだ。先日も東部から移住を検討しているスーパーマーケットチェーンのオーナーに会ったばっかりだ。昨日も夕食に友人の不動産業者の人と出たら、中堅どころの物件は、市況は熱しているとのことだった。唯一、超高額なところがあまり売れずに苦労しているようだ。ここで写真を掲出しているThe Areteの高級マンション群も、当地の資産家Tebo氏が作り上げたコンドミニアムだが、売れずとも、きっと保管していくだけの財力はある人なだけに、物件を叩き売り、市況を不安定にさせるようなことはない。

ボールダーでは、どこへでも歩いて行けるダウンタウンの物件は相当注目されているが、近隣には相当の有機農業をしている農家もあり、その農家と連動した宅地開発がされる気配が出ている。コロラド州全体が健康州として全米のマスコミにたびたびに取り上げられるので、新規の人口流入を促してしまう。しかも、きても良い物件を求めたがる人が多いので、文化的志向の高い金持ち層がさらに来てしまう結果となる。しかし、需要の高いボールダーの住宅物件は高すぎるので、新たな動きが輩出するのは難しい。だから、今日はボールダー近郊で発生している現象を取り上げよう。

タイトルのAgriburbiaという言葉なボールダー発のものではない。Agriは農業を指し、burbiaは郊外を意味するsuburbsの合成から造られたことばだ。この言葉を造ったのは、ボールダーから北東50キロくらいのところにあるミリケン市の宅地開発をしようとしているマシュー・クイント・レドモンド氏だ。同氏は、ボールダーの南にあるゴールデン市に本社があるの不動産業者で、このAgriburbiaコンセプトを何と知的資産として商標登録してまっている。同氏はTSR Groupなる会社を率い、田園と都市の要素を組み合わせた居住コンセプトをつくあり上げて、注目を浴びている。

ボールダーのように、アメリカで最初の公的資金によるオープンスペースの買い上げを行なってきたところを見て、そんな無駄な土地の使い方をする余裕が無くなってきていることを主張しているのだ。現に私の家の前は広大なオープンスペースがあり、すばらしい景観を十分に享受をしているのだが、彼の理論によればそれはもったいない土地の使い方になる。正直言って、確かにこの土地の買い上げはもったいない気がする。受益者の私が文句を言う筋もないが、より良い土地利用の実験がされてもおかしくはないと思ってきていたので、このAgriburbiaコンセプトへの関心はある。

Agriburbiaが目指すところは、宅地開発のコンセプトにオープンスペースと野生動物の生息環境を維持するのだが、それに加えその宅地開発プロジェクトにもう一つの農業要素を組み入れると云うものだ。追加される要素には、個人菜園あるいはフルスケールのぶどう苑とワイナリーなどの組み合わせをつけるとかと云うものである。レドモンド氏が売り込みたいコンセプトは、宅地の開発と食の生産を結びつけた本来人間が営んできた生活方式に少しでも戻ると云うものだ。レドモンド氏が立ち上げているプロジェクトの最初はコロラド州のミリケンにあるものだが、宅地のそばにぶどうの生産とワイナリーを併設するものを検討している。今後開発されるAgriburbia物件については、必ずしもぶどう苑、ワイナリーのパターンではなく、売りのポイントを変えて行くように考えている。レドモンド氏が言うのには、農地をそのままにしておけば、宅地開発の期間に、土地農地がすべて開発されてしまい収入がストップすることなく、住宅分のセクションだけが、売れるまで収入がない形式を考えているようだ。

コロラド州は人気州だけにできることだと思うが、ミリケンプロジェクトはこれから工事をはじめるところだ。618エーカーの広大な土地に、944軒の家の建設が予定され、その内108エーカーがバックヤードファーム、その上さらに152エーカーには灌漑されたコミュニティファームが予定されている。計画では、その農場で収穫された農作物を居住者に与えられ(支払いの仕組みは定かでない)、同地区の建てられるレストランなどの食材としても活用する方向だと言う。レドモンド氏は、このコロラドにこの他13のAgriburbiaを夢見ている。同氏は、アメリカでは3100万エーカーの土地に芝生が植えられていると言う。彼は、それを無駄と見て、そのスペースを食の生産に振り替えたいとも夢見ている。

このAgriburbiaプロジェクトが成功するか定かでない。ボールダーで始まったオープンスペースに触発されて、Agriburbiaはテークオフをしようとしている。ボールダーはあまりにも豊かになり過ぎ、コスト高になったので、こうやって近隣で別の実験が行なわれようとしている。日本で過疎化で悩んでいる地方の再生にもつながるようなプロジェクトにも見える。日本の方で見学をしたい人がいれば、いつでも仲立ちをするのでコンタクをしていただきたい。今後このAgriburbiaを暖かく見守っていこう。

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