世界の小麦生産が、落ち込んでいるとの報道されている。そのために、小麦を使った数多くの製品価格が跳ね上がっているのだ。小麦と云えば、パンがすぐに思い出されるが、パンに限らず、パスタ類なども供給が足りないために価格が上がっているので、ことの重大さは理解いただけよう。しかも、価格の跳ね上がり方が半端でなく、原料価格を最終消費者にそのまま転嫁できないメーカーは、大問題だろう。シカゴの先物取り引きで先週小麦価格の1ブッシェルあたりの価格が8ドル87セントまで急上昇して、今週の月曜日に8ドル75セントに落ち着いた。しかし、この価格帯は、昨年ものが3ドル95セントだったことを見ればいかに異常な水準、上がり方であるか分かるだろう。
小麦の生産が落ち込んでいる理由は、悪天候や気象の変化、干ばつ、あるいは逆に洪水などの理由が上げられている。小麦の生産輸出国であるオーストラリア、南アフリカやアルゼンチンで干ばつが起こったのに対して、アメリカでは干ばつと洪水の混合みたいな状況が発生したためと説明されている。しかし、このような気象の変化だけでこの問題は説明できないようだ。つまり、専門家筋の解釈によると、今回の小麦粉供給落ち込みの裏にある背景を見ると生産者側が、小麦からエタノールに使われるトウモロコシに作付け面積を増やしたことがあるとも上げられている。
ご存知の通り、エタノールは、再生可能なトウモロコシを使い、ガソリンに添加する燃料としてにわかに脚光を浴びつつあり、市場の石油価格の高騰が故に、エタノール増産への勢いが増してきているものだ。現にアメリカの農業政策もトウモロコシを家畜の飼料や、コーンシロップや多くの食品に使われてきていたものが、エタノールに供給シフトが発生してきているために、家畜飼料やその他食品全般に影響を与えてしまっているのだ。つまりアメリカのエネルギー政策のツケが、食品価格高騰と云う別の問題に跳ね返っている。しかも、その影響がトウモロコシ関連だけでなく、小麦にも飛び火したことで、アメリカのエネルギー政策が世界の家庭の事情を火の車と化してしまったと云える。
この問題で一番大事な点は、エネルギー政策を見るときに、省エネを求めるのではなく、これまでの生活水準を維持しようと云う、はなはだ無駄なライフスタイル保全がまかり通っている点だろう。アメリカはエネルギーの使用については決して倹約国家としては知られていない。無数のハイウェー、大きなRV車群、無駄なエネルギー利用国家として世界でも特筆だ。その、無茶なライフスタイルを維持しようと云うことで、トウモロコシからエタノール生産が始まったものだろうが、これでは、地球温暖化などは解決されにくい。
もう一つ問題なのは、トウモロコシや小麦などの基礎食品生産が大規模農場化しており、生産品目の多様化より、より単一化に向かうおかげで、市況の需給変化によって、生産の切り替えが突然行なわれたりするので、これまでに無いインパクトが発生している。経済効率を追求する大規模農法がもたらす問題点だと言える。
今後このように個人のレベルをはるかに超えたところで発生する問題をいかに、管理抑制するか検討をしていかなければいけないが、この大規模農法をそのまま受け入れるのではなく、新たなロハス的な地元に密着した消費者と生産者の連携を考える時代にもなりつつあると云えるかも知れない。もちろん、スケールメリット(経済規模)をすべて否定をするのではなく、環境や消費市場へのインパクトを良く含んだ上で、解決するようにすることが緊要だろう。いずれにしても消費者は、カネと云う投票権をフルに使い、徐々に無秩序に行なわれるこのような行動を許さないように気をつけていかなければならない。
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